今井研究紹介 - keio universitycogpsy.sfc.keio.ac.jp/cns2011_public/imai0608.pdfpz p4 * * *...

Post on 12-Jul-2020

0 Views

Category:

Documents

0 Downloads

Preview:

Click to see full reader

TRANSCRIPT

今井研究紹介

知りたいこと

• 心の中のレキシコンと概念の仕組み→心のレベル、脳のレベル

• レキシコンの学習の仕組み→母語での学習の当初から大人における学習、外国語のレキシコンの学習まで

• ヒトの一般的な学習の仕組み→領域をまたがってヒトはどのように学習をはじめ、知識を深め、熟達していくのか

• ヒト固有の知性とは何か→ヒトの知性はヒト以外の動物やコンピュータとどのように違うのか→ヒトの知性の普遍性と文化・言語固有性

レキシコンの発達

• 子どもはどのように初めて聞く語の意味を学習するのか

– クワインのガヴァガーイ問題(帰納推論の問題)

• 内包なしで外延は決定できないが、外延の理解なしでは内包の抽出はできない

• 外延:当該のことばの指示対象の集合内包によって決定される

• 内包:当該のことばが指示する概念

制約の問題

• 帰納推論の問題→制約(バイアス)が必要

– どのようなバイアスが制約として働いて語意の推論が可能になっているのか

知らない人工物についた新しいことば

Imai & Haryu, 2001, Child Development

同一性の問題

• 「同じ」とは何か

• ことばが切り取る様々な「同一性」を子どもはどのように見つけるのか

– 概念的類似性 vs. 知覚的類似性

– 物体の名前と物質の名前

– 名詞と動詞

– 概念の階層構造

カテゴリーか形か

上位カテゴリーを共有する事物ではなく形状類似の事物に新奇なラベルをマッピング

Imai, Gentner, & Uchida, 1994,Cognitive Development

語意推論を制約するバイアス

• カテゴリーバイアス(ことばは個ではなくカテゴリーに対応する)

• 形バイアス

• 相互排他性バイアス

すでに名前を知っている人工物についた新しい名前

Imai &Haryu,2001, CD

すでに名前を知っている動物についた新しい名前

Imai &Haryu,2001, CD

Imai & Gentner, 1997, Cognition; Imai & Mazuka, 2007, Cognitive Science

形か素材か:存在論的概念と語意

モノの名前と動作の名前の「同じ」性

Imai, Haryu, Okada, 2005; Imai et al., 2008; Child Development

メタ知識の生成と適用制御

• すばやくパターンを抽出し、メタ知識をつくる

• メタ知識をつかって学習を制約し、加速させる

• メタ知識の適用を制御するcf. フレーム問題

cf. D. Marr: A representation is a formal system making explicit certain entities or types of information, together with a specification of how the system does this.

人にとって最も自然で普遍的な概念は何か

• 子どもが語を学習する際に、もっとも優先的に覚えるのはどのような種類の語か

– 自然な概念?

– 普遍的な概念?

• Object names over Action names: 日本語、英語、中国語の3言語での比較 (Imai et al., 2008, Child Development)

• Path over Manner:英語、日本語、スペイン語3言語での比較 (Maguire et al., 2010, Cognition)

Path vs. Manner

Maguire et al., 2010, Cognition

生得性の問題

• 語意推論を可能にするバイアスは生得的なのか

①レキシコンの学習に特化した生得的な制約がある

②知覚経験と領域一般の認知能力のみで最初の一歩が踏み出せる

• カテゴリーバイアスか、形バイアスか

• 形バイアスは生得的知識なのか、知覚バイアスから創成されるのか

• 形バイアスの適用の基準となるモノの個別性に関するontological knowledge

シンボル接地の問題

• 乳児はどのように世界を記号(語)に対応づけることができるのか

– そもそも「記号を意味を持つ」という洞察をどのようにして得ることができるのか

– チンパンジーはこの洞察を持ちえるのか

ヒト以外の動物は命名の洞察を持ちえるのか

ヒトの子どもはどのように命名の洞察を得るのか

• ソシュール シンボルの恣意性 vs. 音象徴性

• 養育者は乳児に語りかけるときにあらゆる身体的手がかりを与える→日本語の場合、オノマトペの多用

• 視覚、聴覚の多感覚統合により、音声言語に意味を「感じる」のではないか

• そもそも言語はどこまで恣意的なのか、身体感覚と結びついているのか(embodiment cognition)

2歳児の音象徴抽出能力

ノスノスしているのはどっち?Where is it doing nosunosu?

Imai et al., 2008 CognitionKantartiz, Imai & Kita., 2011, Cognitive Science

11カ月児の音象徴検出能力

• 音と形の対応を検出する能力はword learning以前からあるのか

• サルなどの、ヒト以外の動物と共有する能力なのか?

• Ramachandran & Hubbard (2001), Maurer et al(2006)

Shape-Sound Correspondence

KipiMoma

When? How?

What kind of?

Experimental Conditions

KIPI MOMA

Spikyfigures

Roundedfigures

match

mismatch

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

ms-950 -700 -450 -200 50 300 550 800

Results: mid-posterior regionBabies

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

C3

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

uV 05

10152025

-5-10-15-20-25

CZ C4

P3 PZ P4

* *

*

More negative-going deflections in the mismatch condition

MatchMismatch

Visual onset

Auditory onset

(300-600ms after the auditory onset)

言語学習を可能にする領域一般の認知能力

• 生得的な「知識」を想定しないなら、どのような認知能力が言語学習を可能にするのか

• 言語学習のbuilding blocksとなっている能力は何か– Ontological knowledge?– 同一性(invariant)を抽出できる能力

– 統計的分布やco-variationを検出する能力

– 対称性推論能力あるいは思考バイアス

– 意図の理解?

対称性推論

• P→Qのとき、Q→Pは必ずしも真ではない

• ことばが対象の「名前」であることを理解するためには対象とことばの音の間に対称的な関係があることを理解することが必要

対称性推論は言語学習のタマゴかニワトリか

• 「対称性推論をしてしまう」バイアスはことばの学習から生まれたものなのか、あるいは対称性推論ができるから言語獲得が可能なのか

• 対称性推論(あるいは他のヒューリスティックなバイアス)が有益な条件

情報処理システムの最適化[注意のrestructuring]

• ゼロ、あるいはミニマムな知識から膨大で精緻で構造化された知識を構築する過程で何が起こっているのか

– 母語の学習に特化した情報処理システムの構築→選択的注意と制御

• 対象の個別性に関する自動的注意

• オブジェクト vs. 背景情報への注意

背景情報への注意の喪失(英語)と保持(日本語)

• 動詞のlexicalization (どの意味要素が動詞の中に組み入れられるか)のパターンは言語によって異なる(Talmy, 1985)

• 英語、ドイツ語、オランダ語→Manner dominant

• スペイン語、フランス語→Path dominant

• 日本語→Ground/Path (Muehleisen & Imai, 1997)

Figure/Groundへの注意

Göksun, Hirsh-Pasek, Golinkoff, Imai, Konishi & Okada, in revision, Cognition

既習の語の意味の再編成

• 知識の再編成

– 新しい語の学習が既存の語の意味を修正する

– 新しい語がレキシコンに入ると意味領域全体が再構造化される

新奇ラベルの下位カテゴリーへのマッピング

典型形状→下位カテゴリー名

Haryu&Imai,2002 Child Development

新奇ラベルによる新カテゴリーの設立と既知カテゴリーの境界の修正

非典型形状→既存の語の境界を修正、対比カテゴリー名として解釈

Haryu&Imai,2002 Child Development

意味領域全体の再構造化

• 語の意味は意味領域全体との関係に依存する

– 「青」の意味→「緑」「紫」など隣接する色との境界に依存

– Runとハシル

tuobao

bei

ding

jukua kang

duanlin na

jia

ti

peng ChineseSaji, Imai et al., 2011, Cognition

抱える 載せる

背負う 掛ける

担ぐ 掲げる

持つ

Japanese

kkida

teulda

Korean

antta

meda

ida

意味と概念の表象

• ことばの意味は心の中で、そして脳内でどのように表現されているのか。

• ことばと概念の関係

– 語の意味は概念と等価なのか

– 概念の普遍性

• 異なる言語の間で概念と語の対応づけが異なる場合、異なる言語の話者は異なる概念を持つのか(言語相対性仮説)

名詞の文法カテゴリー

• 一般的にすべての名詞がどれかの文法クラスにカテゴリー分けされる

• 可算・不可算文法

– 物理的に存在するモノだけでなく、抽象的な概念もどちらかもカテゴリーにカテゴリー分けされる

• ジェンダー文法

– 生物の生物学的な性とは関係なく分類される

– 性を持たない人工物にも性が割り当てられる

– メスのイヌも男性として扱われ、オスのネコも女性として扱われる(ドイツ語)

助数詞

• 名詞を100をこえる助数詞カテゴリーに分ける

• 名詞の上位カテゴリーをまたぐカテゴリー

• 「本」:バナナ、キュウリ、野球のバット、ゴルフのクラブ、木の枝、鉛筆、ソフトウエア、ホームラン…

• 「枚」皿、紙、肉や魚のスライス、下敷き、ホットケーキ….

可算、不可算文法の有無が個別性の認識に影響を与えるのか

(Imai & Mazuka, 2007, Cognitive Science)

可算・不可算文法がもたらすobject bias(Imai & Mazuka, 2007, Cognitive Science)

• 個別性によるontological distinctionは普遍的で前言語的

• 対象の個別性についての自動的注意の有無が日本語話者、英語話者で異なる

• 英語話者はモノをオブジェクト(個別化された存在)として見る強いバイアス

助数詞は二つの事物の間の類似性に影響を与えるカ

• Taxonomic relationと助数詞ではどちらがより大きな影響を与えるか– Tax+JPCH Classifier– Tax (-JPCH Classifier)– JPCH Classifier (-Tax)– JP Classifier (-CH Classifier, -Tax)– CH Classifier (-JP Classifier, -Tax)– Control

Saalbach & Imai, 2007, Journal of Experimental Psychology: General; Saalbach & Imai, in press, Language and Cognitive ProcessImai, Saalbach & Stern, 2010; Frontiers in Cultural Psychology

動詞と名詞の形態的区別の有無(Imai et al., 2008, CD)

• 中国人の子ども→Object naming biasが増幅される

• 新奇語を動詞として与えてもモノが同じシーンに語を汎用

• ただし、成人までにこのバイアスは克服される

• ビデオに潜む社会的手がかりに日本語、英語児よりも敏感に反応

言語発達と概念・思考発達の関係

• 人間の思考はどこまで言語に依存するのか

• 言語の学習は概念知識を前提としているのか

• 言語のない思考は可能なのか

top related