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教育コンテンツ

組織管理・ガバナンス・Teaming

浜松医科大学医学部附属病院

医療福祉支援センター長

小林利彦

tokoba@hama-med.ac.jp

内容

•組織管理

•ガバナンスとマネジメント

•リーダーシップ

•Teaming

組織とは?

•意識的に調整された2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステムである

•ある目的を達成するために、分化した役割を持つ個人や下位集団から構成される集団

•特定の役割・機能をもつ人々が集まって、一つの秩序ある集団を構成すること

•1人の人間の力では実現できないような困難な目標を達成しようとするときに生じる複数の人間の協同

チェスター・アーヴィング・バーナード(Chester Irving Barnard)

組織成立の3要件

1. 共通目的(common purpose)

2. 貢献意欲(willingness to serve)

3. 意思疎通(communication)

共通目的 理念

•組織がどうあるべきかという最も根本となる

抽象的な考え方

•永遠で根本的な目的

•組織の存在意義

•創業精神

共通目的 ビジョン

•理念を突き通した結果、このような未来に

なっている、なっていて欲しいという絵?

•企業が目指すあるべき「社会」の姿

•企業が「この先どのように在りたいか」を示す

将来像

•3年後、5年後、10年後・・・

ビジョンを実現するための「基本方針」

各部門・各部署における具体的計画

ミッションとバリュー

「ミッション」

ビジョンを実現するために会社がどのように社会

に貢献するか、どんな行動を起こすかを示したもの

「バリュー」

その実現に向けて従業員や個人が持つべき価値観

貢献意欲

•組織目的に対して貢献しようとする意欲

•コミットメント(理念の共有・コンプライアンス)

構成員がコミットメントある状況にあれば

組織の品質は必ず保証される

•モチベーション

•インセンティブ

経営資源としての人の特徴

•人には意思や感情、欲求がある

•人の能力は向上し、時には低下する。また、能力の種類も変化する。

•意思、感情、欲求、能力などは、「変えよう」と決めても直ぐに変えられるものではない。無理に変えようとすると、抵抗が生じることも多い。

•意思、感情、欲求、能力などのあり方や変化の程度には個人差がある。同一人物でも注目するタイミングによって、感じ方や欲求の程度が異なる場合がある。

•意思、感情、欲求、能力などの組み合わせに基づく何らかのメカニズムによって、人の行動はある程度決まる。

モチベーション(動機づけ)とインセンティブ(モチベーションを高めるもの)

整合性

モチベーション(個人)

インセンティブ(組織)

金銭的動機

社会的動機

自己実現動機

金銭的報償

社会的評価

自己実現の場の

提供

A.H.マズローの欲求階層説

自己実現の欲求

尊敬への欲求

社会的欲求

安全への欲求

生理的欲求

人間は

自己実現を

望むもの

専門職?

一般職?

必ずしも給与が

上がるわけではない

この上に「自己超越」

X理論(ダグラス・マグレガー)

•普通の人間は生来仕事が嫌いで、できれば仕事はしたくないと思っている。

•たいていの人間は強制されたり、統制されたり、命令されたり、処罰するぞと脅されたりしなければ、十分な力を出さないものである。

•普通の人間は命令されるほうが好きで、責任を回避したがり、あまり野心をもたず、なによりもまず安全を望んでいるものである。

Y理論(ダグラス・マグレガー)

•仕事で心身を使うのはごく当たり前のことであり、遊びや休憩の場合と変わりない。

•外からの統制や脅しだけで働くのではなく、自分が身を委ねた目標のために自分にムチ打ち働く。

•普通の人間は条件次第では責任を引き受けるばかりか、自ら進んで責任を取ろうとする。

•企業内の問題を解決しようとする比較的高度の想像力、手練、創意工夫をこらす能力はたいていの人に備わっており、一部の人だけのものでない。

•現代の企業においては、日常、従業員の知的能力はほんの一部しか生かされていない。

ハーズバーグの動機づけ・衛生理論

職務不満足感 職務満足感高 高

職務満足感をもたらす動機づけ要因・ 昇進の機会・ 個人的成長の機会・ 表彰・ 達成

職務不満足感をもたらす衛生要因・ 管理者の質・ 給与・ 会社の方針・ 物理的な作業条件・ 対人関係・ 職務補償

内的要因外的要因

*「満足」の反対は「満足なし」、「不満」の反対は「不満なし」

医師が病院にコミットするための要件

経験年数

個人のキャリアパス

組織からの承認

・良き指導者・適正な症例数

病院管理者・病院上層部

魅力あるカリキュラム緩すぎないガバナンス

院内ルールの徹底と遵守

・能力評価に基づく尊敬・自己実現のための「権限移譲」

権限移譲職位の授与給与ほかの待遇

医師は、本来・・・

•ジョブ(職業)やキャリアにCommitし、

組織(病院)へのCommitmentが弱い(苦手な)

人種である。

•病院組織にCommitできなければ、場を変える

ことに躊躇はしない。

•組織に対する信頼感を失った時、専門性の高い

人材ほど離職・転職という道を選ぶ傾向にある。

組織人として成熟させることが極めて困難!

医師の転職事例からの学び

•教授選に落ちた准教授

→ 近隣の自治体病院へ「副院長」として

(副院長が10人も居る自治体病院)

•現役の教授・准教授を、給与ではなく「場」の提供と

「権限委譲」にて獲得した私的病院もある

• 2008-2012年 (私の)副病院長時代

給与はアップしない「病院教授」制度の導入

→ 離職防止?

岡山駅の新幹線ホームにて・・・

意思疎通(コミュニケーション)

• ノンテクニカルスキルの重要性

•読む、書く、話す、聴く

•共感による傾聴←同情ではない

1) オウム返し

2) 相手の言葉を自分の言葉に

3) 相手の気持ちを言葉に

4) 2)+3)

• Teaming

医療事故のパターン

誤認

(患者・部位・

検体・チューブ他)

医療水準・質

(鏡視下手術など)

組織構造

ガバナンスの欠如

(縦社会・隠蔽)

その他

(ノンテクニカルスキルの欠如など)

東京慈恵会医科大学附属病院ウェブサイトから

Team STEPPS(Team Strategies and Tools to Enhance

Performance and Patient Safety)

1. リーダーシップ

2. 状況モニタリング

3. 相互支援

4. コミュニケーション

組織の構造(1)ヒエラルキー

看護部長

B病棟

看護師長

A病棟

看護師長

外来

看護師長

安全・教育看護副部長

副師長

指揮命令

報連相

20-40人がフラットの限界

ライン

スタッフ

周知徹底と情報共有が常に問題!

職位

組織の構造(2)マトリックス

職種

医師

看護師

薬剤師

管理栄養士

セラピスト

MSW

事務職

病棟A

外来

事務部門

病棟B

病棟C

勤務部署(部門)

組織の構造(3)職種によるヒエラルキー

医師

PT

OT

ST

検査技師

放射線技師

ME

薬剤師

看護師

管理系技術系

事務職員

(管理職・総務)

栄養士

MSW

医療クラーク

診療情報管理士

医事課

診療報酬請求

病院長

病院執行部会

(病院長・副院長・看護部長・事務局長)

診療科長・中央診

療部門長会議

病棟管理会議

外来診療会議看護部会議 各種委員会

病院運営企画室会議 医療安全管理室・感染管理室会議

・医療安全対策委員会・感染対策委員会・医療情報管理委員会・個人情報保護委員会・診療情報管理委員会・倫理委員会・保険診療委員会・薬事委員会・安全衛生委員会・教育委員会・臨床研修委員会・広報委員会

・手術室部門会議・化学療法部会議・放射線部門会議・臨床検査部会議・救急・ICU部門会議・リハビリ部門会議・栄養部門会議・治験部門会議

・地域連携部門会議・患者相談部門会議・入退院支援連絡会議・医療クラーク連絡会議・サービス関連部門会議

組織図の在り方:職位・意思決定

病院の重要な3要素

Sustainability(持続性:経済的・人的ほか)

HospitalityAmenity

Quality

Structure

Process

Outcome

主観的?

(数値化・可視化困難)

客観的?

(数値化・可視化可能)

Sustainabilityを確保するためのGovernment と Governance

•Government:政府(行政)、統治、監督、支配

管理、制御

お上の言うことを聞いていれば良い時代は終わった?

国から県へ、県から市町村へ丸投げされつつある

•Governance:統治、支配、管理、制御

組織を維持するための、内部統治が求められている

自主的な改善活動や継続的努力が必要となる

集団の要素

1)規範 行動基準・規定ほか

2)役割 期待される行動様式

3)地位 獲得はモチベーションに

4)集団の規模 意思決定スピードに影響

5)多様性 コンフリクト→高い成果

6)凝集性 求心力・動機づけ

求められるガバナンス

•ルールやシステムを作る(Structure)•プロセスを決める(Process)•周知する

•遵守・徹底が容易ではない WHY?

飴と鞭? 外圧? 納得?

•事故が減る(Outcome)→質向上→ブランディング←凝集性↑

リーダーシップ

•変革を推し進める機能•(長期的な)ビジョンの提示• ビジョンの伝達とメンバーの統合• メンバーの動機づけ

• Empowerment(力を与えること)→ 権限移譲

↑ 正当な評価と報償能力の把握と資源の提供

* マネージャーは管理する、リーダーは変革する。

リーダーシップとは?

• 「ロードマップ」ではなく「コンパス」を重視する

• 「選択」であり「役割」である

•結果重視の「変更」でなく目標重視の「変革」である

• 「パラダイム」である

• 「人格」であり「傾聴」である

• 「ミッションステートメント」である

• 「サーバント」である

• 「プロセス」である

• 「他者のリーダーシップを導く」

4つのレベル

組織

チーム

人間

関係

個人

インサイド・アウト

セルフ・リーダーシップ(人格・能力)・人格誠実・成熟・豊かさマインド・能力専門的能力概念的能力相互依存の能力

信頼

シナジー

•二者択一ではない

•Win-Lose(妥協)ではない

•「第3の案」を求める

•統一性(同調性)ではなく多様性を認める

•「あなたから自分を守る」のでなく「あなたの考えを求める」

•1+1を「0.8」とせず、1+1を「3」にも「5」にもする

ダイバーシティ(効率でなく創造)

A B

妥協

統一(不要)

シナジー(相乗効果)

Management(マネジメント)

•組織を指揮し管理する(ための)体系的活動

•管理: manage, control, administer,

govern, direct, superintend,

supervise, keep・・

• Management=「やりくり」

by 西田在賢(静岡県立大学)

*上層幹部感覚ではなく、現場感覚が大事!

家庭の主婦の「やりくり」

•不況の折り伸び悩むお父さんの給料で

•マイホームのローンを返して

•大学生の息子に仕送りをしつつ

•家族には日々の食事を作り

•洋服もたまには新調して

•光熱費を払い、携帯代を払い

•時には貯金をくずしながら

•何とか家計を維持する活動・・・・

私がこれまでに学んできた知識・スキル

(勝つことが前提)

•紛争学(法律)

• ディベートスキル

• クリティカル(ロジカル)シンキング

•交渉術

(勝ち負けではない)

•双方向的議論・ブレーンストーミング

•調停学(ADR・メディエーション)

• コーチング

• カウンセリング

GroupとTeamの違い

• Group:

複数の人間による空間的・心理的・目的理由

の集団

機能しなくても可? 成果は求められない

• Team:

達成すべき目標やアプローチ等を共有し連帯

責任を果たせる補完的スキルを備えた集団

1+1+1 > 3となるような成果が期待される

(シナジー効果)

Teamingを成功させる要素

•率直に意見を言う(言える)

仕事上の対立はOK ・人間関係の対立は×

•協働する

トップダウン(慣れ)からの脱却

ミッションの共有・リーダーの権限委譲

相手の専門性を尊重する

コミュニケーションスキルの重要性

•試みる

•省察する

リーダーシップ行動

•機能するための骨組みを作る

フレームワークを作るのはリーダー

自己防衛→学習志向チームへ

•心理的な安全な場を提供する

リーダーがすべき最初の仕事

•失敗から学ぶ

•職業的、文化的な境界をつなぐ

必要な職種を引き入れる

最初のリーダーが「心理的安全性」を高められるか?

•直接話のできる、親しみやすい人になる

*現在持っている知識の限界を認める

•自分もよく間違うことを積極的に示す

•他職種に参加を促す

•失敗は学習する機会であることを強調する

•具体的な言葉を使う

•境界(ルール)は設けるが、責任をともなう相互乗り入れは許容する

•上記のような「場」・「組織風土」を提供する

ミッションの共有学習する組織化

自律化

医師がLeader

適材者がLeader

①専門職種の垣根を外す②職位の差を縮める* 権限委譲* 役割分担の明確化* 隙間の共有

トップダウン型リーダーシップ

調整型リーダーシップ

協働型リーダーシップ

「真のチーム医療への過程」

チーム医療におけるPatient Centered(患者中心)の誤解

患者

医師

看護士

薬剤師

栄養士

PTOT

ST

ME

事務職

患者が中心に居て関係専門職種が1対1で診ている看ている観ている

見ている人も居る

分業?

真のPatient Centered(患者中心)

患者の願い

(Goalを共有)

問題解決

医師

看護士

薬剤師

栄養士

PT

OT

ST

ME

事務職

患者

家族

患者家族と共に多くの人が集まって

患者の願いを叶えるTeamとして機能を発揮する

医療におけるTeamingのポイント

「医療」の多文化性・多様性

日本では、民族の違いは少ないが・・・

職業的な違い(資格・実行権限)

境界(サイロ)を作らないでいられれるか

職位による「ヒエラルキー」

支配からの脱却が可能か

情報リテラシー

非対称性・どこまでオープンに出来るか

学習する力の差異

真のチーム医療とは

•多人数が集まるだけなら(単なる)「烏合の衆」!

•仲が良い(いたわり合う)だけなら「仲良しグループ」!

• Teamとして専門性が補完されるためには、リーダーの存在とリーダーシップの発揮が期待される。

• Team内で、メンバーは自身の専門領域を主張すべき!

•与えられた仕事ではなく、すべき仕事・出来る仕事を 探すことが重要⇒他のメンバーの仕事を一部奪うくらいで全体の機能が漏れなく発揮できる!

• TeamからTeamingに変化するには、意見を言い合える環境が重要(専門性の境界を外す⇔心理的安全性)

• Teaming達成により、患者満足度も職員満足度も高まる

まとめ(1)

•組織を機能させるためには、構成員による「理念」の共有、リーダーによる「ビジョン」の提示が基本となる。

•専門職種を組織にコミットさせるためには、適正な評価のもと、的確なインセンティブ(場)を与えることが有用である。

•専門職種を「組織人」として成熟させることは容易でないが、「規範」を守らせることが「ガバナンス」の一面を表している。

• ルール(体制・プロセス)を作ることは容易だが、周知・徹底・遵守させることは容易でない。

まとめ(2)

• リーダーシップは「職種」や「職位」に付くものではなく、個人の人格・能力に由来する「セルフ・リーダーシップ」があって成り立つものであり、人間関係・チーム・組織における「信頼」により強化される。

•医療界のような「複雑系」組織では、集団の「Team」化が必要であり、職種によるヒエラルキーが強い職場において「心理的に安全な場」を確保・提供することが重要となる。

•適切な評価と権限委譲がなされれば、爆発的なシナジー効果が発揮され、ガバナンスの実施も容易となる。

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