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症例解析3(狭心症)

小林恵里奈

65歳男性【診断】労作性狭心症

『主訴』 労作時の胸の痛み

『現病歴』 2ヶ月前より、重たいものを運んだり軽く走ったりする際に胸部の違和感を感じるようになったため受診した。外来での12誘導心電図に安静時のT波平板化を認め、負荷心電図で運動時のST変化を認めたため入院精査となった。冠動脈造影検査にて左冠動脈前下行枝の90%狭窄がみとめられたため、安定狭心症の診断のもと責任冠動脈に対して経皮的冠動脈形成術を施行(ステント留置)した。

虚血性心疾患

・狭心症

・心筋梗塞

心筋虚血

・心筋の酸素需要量と酸素供給量の不均衡により生じる

・冠動脈の狭窄や閉塞のため、心筋に血液が十分に供給されなかったり、完全に遮断された状態

冠動脈

・左に2本(左前下行枝、左回旋枝)・右に1本(右冠動脈)

虚血侵襲が

15分以内 ⇒ 狭心症 (可逆的)

20分越え ⇒ 心筋梗塞(不可逆的)

狭心症

・発生要因…冠動脈硬化がもっとも多い・冠動脈における一過性の血流減少や途絶により一過性(数分~数10分)の胸痛発作を主徴とする

・前胸部の圧迫感、重圧感、絞扼感が数分間持続

・痛みの左肩への放散や冷汗・悪心を伴うことも

心筋梗塞

・冠動脈の粥状硬化を基盤とした病変で、粥腫が破裂し、そのうえに血栓が付着して冠動脈を閉塞することによって、血流が途絶するために生じる不可逆的な心筋壊死状態

・前胸に持続性(30分から数時間にかけて)の強烈な痛み

・悪心、嘔吐、発汗、排便感

心電図変化

・ST変化が重要な所見

発作時に

労作性狭心症 ⇒ ST波低下

安静狭心症 ⇒ ST波上昇心筋梗塞

心電図

・P波は心房内興奮伝播で生じる

・興奮が寝室を心内膜側から心外膜側に伝播するときにQRS波が生ずる

・T波は心室の再分極で生ずる

狭心症の分類

・誘因からみた分類

・経過からみた分類

誘因からみた分類

①労作性狭心症

②安静狭心症

心筋虚血の発生機序

・心筋の酸素需要の増大に酸素供給が追いつかなくなる(相対的酸素不足状態)

⇒労作性狭心症

・酸素供給自体が減少(絶対的酸素不足状態)

⇒安静狭心症

労作性狭心症

・労作・緊張・興奮・入浴・食事・排便などの身体的・精神的労作により、生体の酸素消費量が増加

・心拍数増加、血圧上昇、心拍出量増加、心筋酸素消費量増加

・冠動脈の動脈硬化等が原因で需要に見合う供給量が維持できない

安静狭心症

・冠動脈に発生する攣縮(スパスム)が原因で安静時にも虚血

・夜間安静時や早朝や過呼吸時に一過性の胸痛発作

経過からみた分類

①安定狭心症

②不安定狭心症

安定狭心症

・閾値が一定

・安定労作狭心症

閾値=(心拍数)×(収縮期血圧)

により把握 …ドレッドミル運動負荷試験

不安定狭心症

・閾値は絶えず変化

・安定狭心症より発作の頻度が高く、増悪性変化を示す

・心筋梗塞に移行しやすい

検査

・心電図検査

・運動負荷心電図

運動により心筋虚血を誘発して診断

運動中に起こる発作の心電図を記録

・Holter心電図日常生活の中の心筋虚血を診断

自然の虚血発作や合併する不整脈を診断

・血液検査

心筋梗塞が生じていないかどうか?

クレアチニンキナーゼ(CK )、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)・心臓超音波検査

・心筋シンチグラフィー

・冠動脈造影

狭心症の確定診断

治療

・発作時

安静

ニトログリセリンの舌下投与

・非発作時

薬物治療

血行再建療法

冠動脈インターベーション、冠動脈バイパス術

薬物治療

・硝酸薬

硝酸イソソルビド ニトログリセリン

・Kチャネル開口薬ニコランジル

・β遮断薬

・カルシウム拮抗薬

ニフェジピン ジルチアゼム

・抗血小板薬

アスピリン シロスタゾール チクロピジン

危険因子

・高血圧症⇒塩分制限などの食事療法、降圧薬

・糖尿病

・脂質異常症、高コレステロール血症

・喫煙

・家族歴

ライフスタイルの改善

・食生活

塩分制限により高血圧予防

コレステロール、動物性脂肪の制限

肥満にならないように

・禁煙

1日20本未満で危険度が3~4倍、20本以上で6~7倍

・適度な運動

・経皮的冠動脈形成術(PTCA)狭窄した冠動脈を広げるために、バルーンつきの

心臓カテーテルにより物理的に内腔を拡張する。

*必要に応じてステントと呼ばれる網目・筒状の金属で冠動脈を広げた状態に保持する。

⇒ステント血栓症の予防にアスピリン

経皮的冠動脈インターベーション

65歳男性【診断】労作性狭心症

『主訴』 労作時の胸の痛み

『現病歴』 2ヶ月前より、重たいものを運んだり軽く走ったりする際に胸部の違和感を感じるようになったため受診した。外来での12誘導心電図に安静時のT波平低化を認め、負荷心電図で運動時のST変化を認めたため入院精査となった。冠動脈造影検査にて左冠動脈前下行枝の90%狭窄がみとめられたため、安定狭心症の診断のもと責任冠動脈に対して経皮的冠動脈形成術を施行(ステント留置)した。

『既往歴』高血圧カンデサルタンレキセチル(プロプレス) ARB4mg/1×朝食後2型糖尿病グリベンクラミド(オイグルコン) SU剤5mg/2×朝夕食後ボグリボース(ベイスン) αグルコシダーゼ阻害薬0.9mg/3×毎食直前効果が不十分な場合は1回0.3まで増量脂質異常症アトルバスタチンCa(リピトール)10mg/1×朝食後

『生活歴』

喫煙習慣(20本/日を45年間)機会飲酒(+)

運動習慣(-)

『家族歴』 父:心筋梗塞(58歳にて発症)

『身体所見』

身長160cm、体重68kg、BMI26.6、腹囲80cm

血圧125/79mmHg、心拍数70回/分

『検査所見』

LDL-C135mg/dL HDL-C52mg/dLTG108mg/dL FPG 165mg/dLHbA1c 9.8% AST21IU/L LDH185IU/L SCr 0.91 BUN22mg/dL

症例解析に関する質問

Q1、労作性狭心症に典型的な自覚症状(S)を列挙しなさい。また発生機序を病態生理の観点で説明しなさい。

・身体的労作時や精神的労作時に一過性の胸痛を感じる

・労作により生体の酸素消費量が増加する

・心拍数増加、血圧上昇、心拍出量増加、心筋酸素消費量増加を生じるが、冠動脈に狭窄があると需要に見合う供給量を維持できなり、心筋虚血が生じ、狭心症発作が発現する。

Q2、狭心痛の痛みの性質や持続時間の特徴を述べなさい

・肋骨裏面あるいは前胸部に圧迫感、絞扼感、鈍痛、ときに灼熱感を感じる。

・その症状が左肩から腕の内側、指先へむかって広がっていくこともある。

・ 持続時間はせいぜい15分くらい。

Q3、他覚所見(O)のうち狭心症に関連する身体所見と検査所見を列挙しなさい。

LDL-C 135mg/dL

BMI26.6(肥満)

HbA1C 9.8%(高血糖)

FPG 165mg/dL

Q4、この患者に存在する動脈硬化のリスク因子を列挙しなさい

高血圧、2型糖尿病、脂質異常症の既往歴

喫煙習慣(20本/日)、運動習慣(-)の生活歴心筋梗塞の父をもつ家族歴

肥満

年齢

男性

処方

アスピリン(バイアスピリン)100mg

1錠分1 朝食後アテノロール(テノーミン)25mg

1錠分1 朝食後アトルバスタチンCa(リピトール)10mg

2錠分1 朝食後

生活習慣の是正:1日最低30分、週3~4回以上の有酸素運動と1日摂取カロリーの見直し。目標体重は63kg。血糖コントロールに関しては専門医に照会。

治療に関する問題

Q1、冠動脈病変にステント留置術を行ったあとの薬物治療について述べなさい

アスピリン、チクロジピンやシロスタゾールがステント留置後の再狭窄予防薬として用いられる

Q2、患者の生活習慣改善の観点からアドバイスすべき項目について述べなさい

・禁煙

・身体活動の増加

→血清脂質値の改善や血圧の低下、インスリン抵抗性や耐糖能障害の是正、血管内皮機能の改善や易血栓傾向の軽減

・適正体重の維持、内臓脂肪の減少

・食生活の改善

・食事療法

塩分制限 6g/日未満低カロリー食

栄養素配分の適正化

炭水化物 60%

タンパク 15~20%

脂肪 20~25パーセント

コレステロール 1日300mg以下食物繊維 25g以上アルコール 25g以下

糖質の制限

Q3、血圧、LDLコレステロール濃度、HDLコレステロール濃度、中性脂肪、HbA1c値の管理目標をのべなさい

血圧 130/80mmHg未満LDL-C <100mg/dLHDL-C ≧40mg/dLTG <150mg/dLHbA1c <6.5%

血糖コントロール指標と評価

220以上180~220未満140~180未満

80~140未満

食後2時間血糖値

(mg/dl)

160以上130~160未満110~130未満

80~110未満

空腹時血糖値(mg/dl)

8.0以上7.0~8.0未満

6.5~7.0未満

5.8~6.5未満

5.8未満HbA1c値(%)

不良不十分不可

可良優指標

降圧目標

135/85mmHg未満

140/90mmHg未満

脳血管障害患者

125/75mmHg未満

130/80mmHg未満

糖尿病患者慢性腎臓病(CKD)患者心筋梗塞後患者

135/85mmHg未満

140/90mmHg未満

高齢者

125/80mmHg未満

130/85mmHg未満

若年者・中年者

家庭血圧診察時血圧

Q4、アテノロールは狭心症と高血圧治療を1剤で行う意図で処方されているが、変更するとしたらどの薬物が考えられるか?

プロプラノロール

メトプロロール

カルベジロール

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