立体カムの3次元モデリングの手法pub.nikkan.co.jp/uploads/magazine_introduce/pdf_5c5d...単に行える手法を開発した。以降に,その概要を...

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27第 63 巻 第 3 号(2019 年 3 月号)

カム機構活用の新たな展開 特集

はじめに

 3次元CADシステムが,設計作業にとって有効なツールであることは,誰しも認めるところであろう。それゆえ,すでに多くの企業に導入されている。しかし,そのほとんどがシステムで用意された操作画面上のメニューの標準的なコマンドを用いてモデル化を行う作業例が多いように思われる。このような処理形態では,モデル化がとても難しい場合に遭遇するはずだ。とくに,機能的な表現で定義される機構部品などは,その代表的な例である。その1つとして,立体カム機構を挙げることができる。 そこで本稿では,とくに立体カムの3次元モデリングの手法に焦点を合せ,筆者が処理している方法について紹介する。

立体カムとは

 図1にいくつかの立体カムの例を示す。この図で,左側にある円筒カムは古くから多種類の機械に使用されており,見かけることが多いと思われる。この円筒カムの右側にあるローラギヤカムは,NC工作機械の自動工具交換装置(ATC)やパレットチェンジャー(AWC),また,電子部品を製造する高速駆動の自動機などに組み込まれ,使用

されている。 この立体カムの機構学的な特徴を少し挙げよう。円筒カムの場合には,カム本体の回転に応じて,出力軸側には,溝で拘束されているカムフォロアを保持しているアームに,直動または揺動の運動が発生する。円筒カム以外のたとえば,ローラギヤカムの場合には,カム本体の回転軸に対して,出力軸が直交し,かつ,オフセットして構成されている。そして出力軸側にはタレットおよびカムフォロアが配置されている。したがって,カム本体を回転させると,カムフォロアを介してタレットが揺動または回転運動する。

立体カムの製作における問題点

 平面カム(板カム)と異なり,立体カムは,製作上少し面倒なことがある。その主な点としては,少なくとも2点挙げることができよう。

立体カムの3次元モデリングの手法テーマ3

テクファ・ジャパン 香取 英男*

*かとり ひでお:代表取締役 URL:http://www.tevpha.com

図1 立体カム機構の種々の形式

ローラギヤカム(揺動形)

ボールタイプギヤカム

平面カムおよびローラギヤカム

(インデックス形)による複合カム

円筒カム

28 機 械 設 計

 その1つは,立体カムでは,輪郭制御の回転テーブル付きすなわち4軸以上のNC工作機械が必要になることである。しかし,多軸制御NC工作機械が普及し始め,比較的利用しやすい環境にな

ってきたことで,この問題点は解消されつつある。この種の機械を用いるならば,カムフォロアの直径と加工機械のカッタを同径にして,図2に示す立体カムのベクトル表現における,カム本体の回転に応じて,式⑴に基づきベクトルCおよびL

でFを作り出すよう加工機械の駆動軸を運動制御すれば,カム面を生成できる。しかも,この運動制御の計算は比較的簡単である。したがって,カム面上のデータがなくても加工できる。 しかし,加工後に生成されたカム面の検証をどうするかという問題が生じる。

なぜならば,カム面上のデータ(座標値)がないので,加工面との厳密な比較検証ができないからである。後述するが,立体カムにおいては理論的に正しいカム面上のデータに基づく3次元モデル化の処理は難しい。このため,加工は行えるが,厳密な検証は省かれてきたのである。 最近になり,2,3の国内の測定機メーカーにより,理論的に正しい立体カムの3次元モデルのデータがあれば,カム面の計測が簡単にできる測定システムが確立された(図3)。これに対応して,筆者は立体カムの3次元モデルデータの生成を簡単に行える手法を開発した。以降に,その概要を述べる。

 立体カムの 3 次元モデル化のプロセス

 立体カムにおける3次元モデル化のプロセスを図4に示す。この流れに沿って説明する。

(1)カム機構に関する定義とデータの解析 図5に示す,カム機構の設計計算システム

『WinCam』により,機構およびタイミング線図を

図2 立体カム機構の3次元ベクトル化

タレット

カムフォロア

カム本体

立体カム(ローラギヤカム)機構

C

P

FN

L

θ

xy

z τ

360°θ θ θ

τ

タイミング線図

図3 立体カムの3次元形状測定[出典:(株)輝工作所のWebサイト]

29第 63 巻 第 3 号(2019 年 3 月号)

カム機構活用の新たな展開 特集

定義することで,機構の運動に関するデータを生成する。

(2)�3次元CADシステムへのコマンドスクリプトの生成

 前項(1)で生成された機構データおよび図6に示す素材形状データを用いて,WinCam3Dにより,CADシステムへの入力データになるコマンドスクリプトを生成する。このコマンドスクリプトには,図7に示す流れに沿って,素材モデルおよびカム面モデルを自動生成する手続きが含まれる。 図4 立体カムの3Dモデルデータの生成の流れ

カム機構設計システムWinCam

3次元CADシステムPTC CreoElements/Direct

Modeling

機構データ

素材形状データ

3D Command Script(Macro Command)

3D Model Data

(1)

CamMechanismOrientedAPIWinCam3D

(2)

(3)

図5 WinCamによる立体カム機構計算の定義例

タイミング線図の定義カム機構の定義

図6 素材形状のパラメータ表現から素材モデルの生成

素材形状データのテンプレート図

素材形状データのパラメータの定義ファイル

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