薬理学を学んでみよう -...

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1

薬理学を学んでみよう薬理学を学んでみよう講義の目的

1 薬理学 てなんだろう

Pharmacology

1.薬理学ってなんだろう

2.副作用ってなんだろう

プロローグ医療を変えた画期的な発明(一例)

エーテル麻酔 (1848:Morton)ペニシリン (1928:Fleming)H2ブロ カ (1980年代:Black)H2ブロッカー (1980年代:Black)Caチャネルブロッカー

(1980年代:Fleckenstein)イベルメクチン (1980年代:北里研究所)塩酸ドネペジル(アルツハイマー病治療薬)

(1990年代:エーザイ)

薬理学とは薬についての理屈を扱う学問薬についての理屈を扱う学問

薬はどのようにして効くのか?

副作用はどうして起こるのか?

(たくさんのカタカナが出てくるが、「いや」にならずに勉強して欲しい)

薬理学を基礎とした薬物治療学は、医療(医学)の中核をなしている!

薬物治

解剖学 生理学

生化学 免疫学

病理学

治療学

微生物学

外科学内科学 診断学

行動学

現場では現場では、、投薬して医療投薬して医療が完結する!が完結する!

1.薬の作用

病気ってなんだろう?病気ってなんだろう?薬はどうして効くのか?薬はどうして効くのか?

動物にはホメオスタシス(恒常性)がある。

病気とはホメオスタシスの乱れである。

動物にはその乱れを回復させる自動調節機能がある

そもそも病気とは何か?そもそも病気とは何か?

自動調節機能がある。

2

ホメオスタシス(正常)

危険因子危険因子(病原菌、環境悪化、ストレス)(病原菌、環境悪化、ストレス)

免疫力の低下・過剰免疫力の低下・過剰

ホメオスタシスの破綻(病気)

遺伝的要因遺伝的要因

ホメオスタシス(正常)

危険因子危険因子((病原菌病原菌、環境悪化、ストレス)、環境悪化、ストレス)

免疫力の低下・過剰免疫力の低下・過剰遺伝的要因遺伝的要因原因療法

ホメオスタシスの破綻(病気)

対症療法

乱れの原因を取り除く

乱れたものを整える

7回膜貫通型受容体GPCR(G-PROTEIN COUPLED RECEPTOR)

ヒト遺伝子の総数は22000、その中でGPCRは650と推定されている

薬はどこに作用するか?薬はどこに作用するか?

今までに開発された医薬品の45%はGPCRに作用する。今までに開発された医薬品の45%はGPCRに作用する。

GPCRに共通の構造(7回膜貫通)

αβγ

GDP

酵素イオンチャネル など

不活性型

受容体

生理的リガンド作動薬

3量体Gタンパク質

外界の刺激

βγ

酵素イオンチャネル など

活性型

α

GTP

イオンバランス 分泌物質代謝形態変化 転写調節

Gタンパク質の結合

細胞応答

1)1) 動物種差動物種差例:ヒスタミンの致死量(I.V. /KG体重)

薬の効き方は動物の種類・薬の効き方は動物の種類・年齢・個体などによって異なる年齢・個体などによって異なる

モルモット 0.3 mg

ウサギ 1.8 mg

イヌ 3.0 mg

サル 50 mg

マウス 250 mg

ラット 380 mg

(死因:気管支平滑筋の収縮による窒息)

2)年齢差2)年齢差

・ 胎子

薬物代謝酵素活性が低い

排泄機能が未発達

器官形成期では奇形が生じやすい

若齢・ 若齢

薬物代謝酵素活性が低い

血液脳関門が未発達

・ 老齢

高齢動物では肝機能、腎機能ともに低下しているが、腎機能の低下が著しい

3

3)個体差3)個体差 一塩基多型一塩基多型 SNPSNP(Single Nucleotide Polymorphism)

個人レベルの遺伝子配列の多型が、薬物作用の発現に影響を与える。特に、薬物代謝酵素におけるSNPは副作用発現の差の原因となる。

これまで 多くの医療事故がこれまで、多くの医療事故が「体質のせいだ」とかたづけられてきた。

注 : 多型polymorphysmとは集団の1%以上の頻度と定義され、変異mutationとは区別される。

2.薬の投与法薬の形態のことを「剤形」「剤形」という。

注射剤、液剤、散剤(粉末)、

錠剤 カプセル剤 吸入薬 軟膏錠剤、カプセル剤、吸入薬、軟膏、

クリーム剤、パッチ剤(貼付剤)などがある。

経口投与経口投与口から入った薬はおもに小腸で吸収される。利点: 1)投与が簡単なので、飼い主の手で動物に薬を与えられる。

2)薬の効果が比較的長い時間にわたって続く。3)投与した直後に薬の血中濃度が急激に上昇しないので、

急性の副作用がおこりにくい。

注射投与注射投与注射だと、薬が分解されずに体内にすみやかに吸収される。利点: 1)迅速かつ確実に効果が現れるため、緊急の治療に適している。

2)注射する場所により 効き方を加減できる2)注射する場所により、効き方を加減できる。(静脈注射、筋肉内注射、皮下注射など)

血液中の薬物濃度

時 間 (h)

注射投与

経口投与

外用外用局所で効く、あるいは吸収されて全身で効く。利点: 1)様々な剤形があり、効き方を加減できる。

(軟膏、クリーム剤、パッチ剤(貼付剤)、点眼剤、坐薬など)

3.家庭での薬の与え方:その基本を理解してもらうために

「用量依存性」を理解しようそして、

「投与法をまることがなぜ大事か?」を「投与法をまることがなぜ大事か?」を説明できるようにしよう

薬の作用は血中濃度に依存する薬の作用は血中濃度に依存する

主作用: 薬が期待する効果副作用: 薬の望ましくない効果

「副作用は「副作用は、薬の濃度が上がれば必ず出てくるもの」

用量-反応関係

4

主作用だけが出る薬の用量範囲を「治療域」という

薬物の量と作用の関係薬物の量と作用の関係 アスピリンを例に

0 1005010 150

血液中のサリチル酸濃度

有効量 中毒量

(mg/dl)血液中のアスピリンの濃度(mg/dL)

鎮痛作用解熱作用

抗血小板作用抗炎症作用 強度中程度

消化性潰瘍止血異常

血管運動調節の失調意識喪失脱水

致死作用中毒作用副作用

無効量

腎機能傷害

毒性域飲ませ忘れ飲ませ忘れ

濃度

薬を薬を飲ませるの飲ませるの忘れてしまった忘れてしまった→→ 飲ませ忘れた分をまとめて飲ませる飲ませ忘れた分をまとめて飲ませる

なぜいけないか?なぜいけないか?

治療域

無作用域

閾値

時間 (h)投与1回目

2回目

3回目

4回目

5回目(3回分を1度に投与)

血液

中の

家庭での薬家庭での薬の与え方の指示の与え方の指示 6 6 箇条箇条

1. 服用する時刻をまもる

2. 飲み忘れた薬をいちどに飲ませない

3. 薬の投与を勝手にやめない

常 直 獣 師 連絡4. 異常が現れたら直ちに獣医師に連絡する

5. 妊娠の可能性があるときや、別の薬を飲んでいるときは獣医師に相談する

6. 人間用の薬をむやみに与えない

4.薬の副作用

「薬に副作用は薬に副作用は

つきものですねつきものですね、、、、、、」小泉首相 発言小泉首相の発言:

抗ウイルス薬タミフル中毒について

2005.11

医薬品副作用被害訴訟に悩むアメリカ医薬品副作用被害訴訟に悩むアメリカ

COX-2阻害薬レフェコキシブ(Vioxx®)を例に

5

HHOHENHEIMOHENHEIM PPARACELSUSARACELSUS(1493-1541)

毒性学の父毒性学の父

All substances are poisons: there is none which is not a poison. The right dose differentiates a poison from a remedy. すべての物質は毒である : 毒とならない物質などこの世には存在しない。正しい用量が、薬が治療薬となるか毒となるかを分けるのである。

薬は異物である!薬は異物である!

高用量を使用すればor

薬物代謝能力を超えて使用すれば

ホメオスタシスをかえって乱してしまうホメオスタシスをかえって乱してしまう

薬の副作用はなぜ起こるのか?薬の副作用はなぜ起こるのか?

薬の副作用は、「主作用の過剰」によることが多い

「過剰」はどの様にして起こるのか?

投与量の過剰

= 薬物代謝能力を超えた投与

異物である薬はどの様に利用され、代謝され、排泄されるか?

過剰投与は過剰投与は薬物動態の破綻に起因する!薬物動態の破綻に起因する!

「薬物動態学」の基本を学ぼう!

薬薬の吸収から排泄までの経路の吸収から排泄までの経路

Absorption 吸収Distribution 分布Metabolism 代謝Elimination 排泄

ADMEアドメという

代謝機構の基本代謝機構の基本

PhaseⅠPhaseⅠ反応反応 (活性を低下させかつ第Ⅱ相反応を受けやすくする反応)酸化還元加水分解

PhaseⅡPhaseⅡ反応反応 (水溶性が高まり尿中へと排泄しやすくする反応)グルクロン酸抱合 (ネコで欠除)グルタチオン抱合

中でもシトクロームP450(Cyp)による酸化が重要

グルタチオン抱合硫酸抱合アセチル抱合 (イヌで欠除)

薬物 代謝物

代謝臓器

6

薬物代謝のために重要な臓器(薬物代謝のために重要な臓器(肝)肝)

加齢とともに、肝実質細胞の容積は減少し、

肝血流量は減少し、これらは主に、

酸化代謝酵素(Cyp)の活性の減少として現れる。

■ 肝代謝が遅延する

■ 生物学的半減期が延長する

加齢とともに①ネフロンの数が減少する

②腎血流量が減少する

薬物代謝のために重要な臓器(腎)薬物代謝のために重要な臓器(腎)

②腎血流量が減少する

③尿細管における能動輸送能が低下する

■腎は体内から薬物を除去する最も重要な臓器であり、

老化で排泄能は確実に低下する

併用禁忌:併用禁忌: 薬物の相互作用薬物の相互作用

単一の薬を投与したときに生じないことが複数の薬を投与したときに起こる。

通常は1種類の薬で治療することは少なく、常に頭に入れておく事項である。

作用が増加する場合

作用が減弱する場合

副作用が発現する場合

シトクロムP450活性の変化(よくある原因)シトクロムP450活性の変化(よくある原因)

1)同種のCypで代謝される薬物を併用すると互いに

拮抗する場合

2)Cypの構成要素であるヘム鉄に作用して酵素活性

が低下する場合 (酵素抑制)

イトラコナゾール、ケトコナゾールなど

3)Cypの発現を誘導する場合(酵素誘導)

フェノバルビタール、フェニトインなど

特異体質・薬物アレルギー

薬剤が通常示す作用から予測されない反応が、患者の素因、素質により表れる場合

を 薬物過敏症薬物過敏症 と うを、薬物過敏症薬物過敏症 という。

これにアレルギー反応が関与する場合(繰返しの適用により発症する場合)、

薬物アレルギー薬物アレルギー という。

薬物アレルギーを起こす代表的な薬物薬物アレルギーを起こす代表的な薬物抗血清、ホルモン、ワクチン

抗生物質(ペニシリン その他)

下熱鎮痛薬(アスピリン)

ヨード造影剤

局所麻酔剤(プロカイン、テトラカイン)

症状症状症状症状

じん麻疹、紫斑(過敏性血管炎)、気管支喘息 など

全身症状を表す場合、薬物アナフィラキシーという。(ショック症状を呈する)

循環不全(末梢血管拡張による血圧低下)

粘膜浮腫, 気管支筋の攣縮(呼吸困難)

体温下降 など

7

5.薬の種類と名前

一般名と商品名(製品名)一般名と商品名(製品名)

薬の名前の付け方薬の名前の付け方

開発段階開発段階:: 製薬企業独自の製薬企業独自のコード番号コード番号

薬になる可能性が出てきた段階:薬になる可能性が出てきた段階:一般名一般名(ルールがある)(ルールがある)

製品として市場に出すとき:製品として市場に出すとき:

商品名商品名(製品名)(製品名)

多数の製品(多数の製品(ジェネリックジェネリック))

特許期間中は独占的に販売できる特許期間中は独占的に販売できる

商品名

一般名

獣医臨床で使われる獣医臨床で使われる薬の分類薬の分類

1.動物用医薬品

2.人体用医薬品

3 獣医師の判断で3.獣医師の判断で

使われるその他の医薬品

(輸入医薬品など)

4.サプリメント

動物用医薬品の種類動物用医薬品の種類

1.要指示薬獣医師の処方箋を必要とする薬:間違った使い方をすると、副作

用が出たり、動物の病原菌に耐性を生じやすいために、使用する

際に、獣医師の専門的知識と技術が必要とされるものとして、農

林水産大臣が指定したもの

薬2.使用規制対象医薬品使用できる動物種、その日(月)齢、投与量および休薬期間が定

められている医薬品で、この規制を守らないと畜・水産物に動物

用医薬品が残留するおそれがあるもの

3.一般薬一般の薬局で購入できる薬

(OTC: Over The Counter Drug)

医薬品の適正使用(添付文書)医薬品の適正使用(添付文書)

1.対象動物2.効能または効果3 用法および用量3.用法および用量4.使用上の注意

これを守っていれば事故が起こっても使用者の責任が問われることはない

(製造物責任法)

添付文書の例添付文書の例

8

6.インフォームドコンセント& コンプライアンス

インフォームドコンセントとはインフォームドコンセントとは ;;

①医師が診断結果や治療の方針について、患者に十分な資料・情報を提供し、これを説明する。

②これに対して患者が理解・納得し、同意あるいは選択したうえで治療を受ける。

獣医師が行うインフォームドコンセントの内容獣医師が行うインフォームドコンセントの内容 ;;①検査内容 ②病状 ③治療内容

④予後 ⑤費用 (くすり)

コンプライアンスコンプライアンス CCOMPLIANCEOMPLIANCE 「従うこと」「従うこと」

患者が処方どおりに服薬できている場合;「コンプライアンスが良好である」「コンプライアンスが良好である」

そうでない場合;「ノンコンプライアンス」「ノンコンプライアンス」

405060

== 投薬遵守投薬遵守

010203040

【ファイザー社資料】

コンプライアンスコンプライアンス を守ってもらうための会話術を守ってもらうための会話術

看護師看護師

「薬をきちんと飲ませましたか?」

飼い主飼い主

「はい、、、、」

看護師看護師

「薬をきちんと飲ませましたか?」

飼い主飼い主

「はい、、、、」

看護師看護師

「お薬を飲ませるとき、何か難しいことはありましたか?」

飼い主飼い主

「うーん、、、、この子なかなか飲んでくれないんです。すぐ吐き出すんです。」

看護師看護師

看護師看護師

「お薬を飲ませるとき、何か難しいことはありましたか?」

飼い主飼い主

「うーん、、、、この子なかなか飲んでくれないんです。すぐ吐き出すんです。」

看護師看護師会話が途切れてしまう!会話が途切れてしまう!

看護師看護師

「あー、吐いちゃうんですか。どうやって飲ませているんですか?」

飼い主飼い主

「口の横から押し込むんですが、しばらくするとペッと吐き出してしまうんです。」

看護師看護師

「確かにむずかしーんですよね、、。」「でもこの薬は続けることが大事な薬です。ちょっとコツを教えてあげましょう、、。」

看護師看護師

「あー、吐いちゃうんですか。どうやって飲ませているんですか?」

飼い主飼い主

「口の横から押し込むんですが、しばらくするとペッと吐き出してしまうんです。」

看護師看護師

「確かにむずかしーんですよね、、。」「でもこの薬は続けることが大事な薬です。ちょっとコツを教えてあげましょう、、。」

【CLINIC NOTE 2008.8 を改変】

会話が途切れてしまう!会話が途切れてしまう!Yes or NoYes or No で答えを求める質問はよくない!

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学習研究社(2009年1月発刊)ISBN:4054039057

定価:3,800円

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