革新的輻射熱反射技術の開発 -...

Post on 05-Apr-2020

1 Views

Category:

Documents

0 Downloads

Preview:

Click to see full reader

TRANSCRIPT

東京大学、ファインセラミックスセンター(JFCC)

岐阜大学、横浜国立大学

物質•材料研究機構(NIMS)

1

平成27年2月24日

研究開発代表者

東京大学先端科学技術研究センター 香川 豊

(発表者 西岡 潔)

革新的輻射熱反射技術の開発 (新しい輻射熱反射コーティングの開発)

研究開発の背景

高温での熱伝導、対流の制御は既に活用されているが 「熱輻射」を積極的に制御可能な技術はない

輻射熱エネルギーは

温度の4乗に比例

高温における熱輻射の

影響は極めて大きい

輻射熱制御技術の活用の可能性

高効率熱交換器 発電用大型

ガスタービン 発電用マイクロ

ガスタービン

輻射熱制御技術はさまざまな分野での活用が期待される

汎用エンジン ミラー

熱源

電気炉・溶融炉等

熱源

対流制御

熱伝導制御

室温

熱源

対流制御 熱伝導制御

室温

熱輻射制御 機能の追加

輻射熱制御(反射)技術活用のイメージ(炉の熱制御)

想定される技術の波及分野

耐火物厚の低減

熱効率の向上

熱伝達形式に対する温度の影響

積層構造による輻射熱の反射

• アワビの貝殻真珠層の光沢は、積層構造による光の多重反射

→積層構造による熱(=電磁波)反射の可能性

• 「輻射熱反射技術(積層コーティング)」を高温における熱制御の新たな手段として開発に取組み

積層構造を用いた輻射熱制御

輻射熱エネルギーは温度の4乗に比例

→高温における熱輻射の

影響は極めて大きい

B787

0

10

20

30

40

2011 2020 2030 2040

世界全体の商用航空分野

CO

2排出量

(億トン/年

)

(年)

日本の総CO2

排出量(2009)

航空機のCO2削減は緊急の課題

燃費改善 → 機体の軽量化(CFRP)

→ エンジン部材の軽量化 → 〃 の耐熱性向上 (冷却に要するエネルギーを削減)

航空機一機当たりの重量

計312ton 計178ton

重量

B737型機 (1997年)

B787型機 (2010年)

エンジン

機体

積載燃料 (最大)

Turbojet Engine

5

【燃焼領域】 温度:1600~2000ºC ,空/燃比(重量比):14~18/1 →部材を空気冷却 (トータルの空/燃比:60~130/1)

ALCAにおける研究開発の背景

航空機エンジン軽量化への取組み

• SiC/SiC*は将来の高温材料の切り札

• 10年先の次世代エンジン材料

• GE(米) SNECMA(仏)がエンジン軽量化に低圧部分で利用開始→将来は高圧部分

機体の軽量化は限界

エンジンの軽量化・高効率化が今後の課題

● 軽量化によるエンジン重量削減

● 耐熱性向上による燃焼効率向上

耐熱金属

(Ni系)

SiC/SiC

複合材料

密度 9g/cm3

密度

2~2.5g/cm3

耐用温度>1300℃

熱伝導率: 15〜40W/m・K

破壊靭性: KQ〜50MPam1/2

熱膨張係数 : 〜4x10-6 K-1

*SiC/SiC: SiC繊維強化SiCマトリックス複合材料

次世代の航空機エンジン用材料に確定しているSiC/SiC複合材料を前提とした熱効率向上技術の開発が重要

超高温での輻射熱反射の活用

SiC/SiC部材

水蒸気損傷なし

コーティングは熱伝導のみを利用

[酸素遮蔽(Al)]

[酸素遮蔽(O)]

[水蒸気遮蔽]

輻射熱反射デザイン 新規材料(コーティング技術)開発

課題解決に向けて

ボンドコート層

Al-Y2Ti2O7

Hf-Al2O3

Y-Al2O3

9

• 電磁波との相互作用機構の異なる領域での凹凸形状と散乱機能

→ 凹凸形状のFFT解析(異なるスケールでの特徴の抽出)

→ 最適だと思われる構造のシミュレーション (製造プロセスとの整合性)

Al2O3/Al2O3複合材料Al2O3/Al2O3複合材料

fn(x) fn-1(x)

f0(x) Normalized wavelength

of roughness, L/l

Mie

散乱理論

幾何光学

散乱理論

1

Fourier 変換

dxexfsF sxj2)()(

輻射熱反射デザイン

積層(コーティング)構造の設計

10

Al2O3層とY2Ti2O7の積層構造(平面や凹凸)により50%以上の輻射熱エネルギー反射可能

【技術のポイント】

シミュレーションと解析式を併用することによる最適構造探索

コーティング組織に形の効果を組み込むことによる全方位

からの入射輻射熱エネルギーに対応が可能になる

高性能熱反射 コーティングの 構造・組織を決定

Uref = U(l) ×RH l,q0,h,L( )ò dl

520

1270

2270

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

0 9 18 27 36 45 54 63 72 81 90

波長

, l

(nm

)

入射角, q0 (deg.)

 半球反射率

R

H(l

, q

0, h,

L)

図A-1-4 FETDシミュレーションに用いたモデル。入射電場はコーテ

ィング層に対して45º入射し、反射する電磁波のエネルギーは仮想領域で評価した。この初期条件を代表的なものとして取り扱った。

50%

11

炉心管

200 ºC 500 ºC 800 ºC

110 ºC

溶媒霧化 粉末捕集 熱分解

超音波振動

Air ポンプ 120 ºC

Y2Ti2O7前駆体溶液 [Y(NO3)3+TiCl4 ]

噴霧熱分解法によるY2Ti2O7粉末の合成

霧化器 粉末捕集器 熱分解炉

排気処理室

制御盤

原料液体

基板

製膜室

ノズル

排気

Al2O3粉末

粉末搬送用ガス

粉末巻上用ガス

ヒータ

室温で緻密質膜の形成が可能

(高温での膜の焼成収縮を抑制)

均一組成の球状粉末の合成が可能

今後、噴霧熱分解法にて合成したY2Ti2O7粉末を用いて成膜

粉粒体成膜装置(AD:エアロゾルデポジション法)

コーティング技術の開発

12 積層構造の基本構成となる材料開発&輻射熱干渉効果を証明

ゾルゲル法 AD法

コーティング用新規酸化物の開発

13

コーティング構造の安定化(Al2O3層) EBCの環境遮蔽性・構造安定性の向上

流束

(m

ols

–1) 10-15

10-17

10-19

10-20

O

1300ºC

酸素拡散抑制 Al拡散抑制

AYT Y-Al2O3 Hf-Al2O3

酸素遮蔽効果

PO2(lo)=10-13Pa PO2(hi)=105Pa

10-14

10-16

10-18

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0

膜厚比

Al

ボンドコート層

SiC

f/S

iCm

Al

Al2O3合体層(無添加) 【技術のポイント】

Al2O3層に添加する微量元素の最適配置によりAl2O3層中の物質移動を抑制し,EBC全体の酸素遮蔽性と層構造安定性を向上

(特願2012-129359) 【Yの粒界偏析】 酸素の内方向拡散抑止

【Hfの粒界偏析】 Alの外方向拡散抑制

(層構造崩壊抑制)

コーティング層の輻射熱反射能力を評価するために、幾何光学領域および

Mie散乱領域での解析手法を確立

幾何光学領域とMie散乱効果を合わせて50%レベルの輻射エネルギー反射

が可能であることを確認

積層構造の基本構成となる新たな酸化物系セラミックス材料を開発

コーティング材料として必要な、積層材料の長時間安定性を確認

積層コーティング材料全体の環境遮蔽性と構造安定性のさらなる向上を

図るための方法を提案

コーティング用新酸化物系セラミックスの開発

ALCAの研究成果

1300℃レベルの過酷な環境での実用化可能性を実証 高温域での輻射熱反射利用のベース技術を確立した

輻射熱反射コーティングの設計(輻射熱反射デザイン)

15

本技術の特徴(既存技術との比較)

ALCAの

開発目標

航空機用エンジンを念頭に、高温物体やガスから放射される輻射熱エネルギーを、積層構造コーティングと電磁波の相互作用を利用して高効率で反射することにより、 飛躍的な熱効率の向上を実現する

輻射熱制御の既存技術としては、300℃以下では、プラスチックや塗料、300℃以上では、金属板で部材温度は400℃程度が上限であり、1000℃以上で、酸化物系セラミッ

クスと材料の相互作用を利用して「輻射熱を制御できる技術」はない。

積層構造と電磁波の相互作用を利用して輻射熱エネルギーを制御する試みは国際的にも例のないものである

本技術の内容

既存技術

輻射熱制御における本技術と既存技術の比較

16

幅広い分野での活用に向けて 技術の波及分野

高効率熱交換器

発電用大型

ガスタービン

熱源

電気炉・溶融炉等

CO2削減効果の例(国内)

発電用マイクロ

ガスタービン 445トン/年

タービン1台当たりの

CO2削減効果

年間のCO2削減量

445万トン/年

10000台に導入と仮定

タービン入り口温度1500℃、

無冷却化が可能(SiC/SiC)

1000℃の炉面内で熱効率が

10%向上

炉1台当たりのCO2削減効果

(1辺1mの立方体型炉を想定)

40トン/年

年間のCO2削減量

200万トン/年

50000台に導入と仮定

ALCA開発目標

今回技術の応用

輻射熱制御技術が各種燃焼系や光学系への応用につながっていくことが期待される

汎用エンジン ミラー

輻射熱制御技術 輻射熱制御技術

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :熱反射材

• 出願番号 :特願2012-199700

• 出願人 :(一財)ファインセラミックスセンター1),岐阜大学2)

• 発明者 :松平恒昭1),北岡諭1),和田匡史1),田中誠1),

香川豊3) ,櫻田修2) ,吉田道之2) ,大矢豊2)

3) 東京大学

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :多層体

• 出願番号 :特願2012-129359

• 出願人 :(一財)ファインセラミックスセンター

• 発明者 :松平恒昭,北岡諭,和田匡史,早川一幸

お問い合わせ先

東京大学 先端科学技術研究センター

特任教授 西岡 潔

TEL, FAX 03-5452-5413

e-mail knishi@hyper.rcast.u-Tokyo.ac.jp

(一財)ファインセラミックスセンター

主席研究員 北岡 諭

TEL 052-889-1666(内線543)

e-mail kitaoka@jfcc.or.jp

top related