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Economics of Regulations 1

規制政策・規制の経済学

第1講 Introduction

今日の講義の目的

(1) この講義の進め方、受講の際の基本的な考え方を理解する

(2) 規制と競争政策との関係を理解する

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お知らせ

(1)講義資料のファイルは私のHP(http:// dbs.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/PUBR2019.html)で公開します。アドレスを忘れても社会科学研究所のHPからリンクをたどれます。ファイルは講義の40時間前までにはアップするよう努力します。

(2)期末試験は試験期間中に行われます。日時は決まり次第お知らせします。講義と同じ曜日(水曜日)・時間帯の予定です。いま掲示しているものの1週間後になる可能性もあります。

(3)試験も含め、原則として経済学部のスケジュールにあわせます。

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お知らせ

(4)経済学部で「規制の経済学」の単位を取得した者が公共政策大学院で再び「規制政策」の単位を取得するのは原則として認めません。

(5)この授業は隔年開講です。従って来年度は開講されません。関心のある人は来年度回しとせず、今年度受講して下さい。

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この講義のルール(1) 講義中いつでも質問・発言して下さい。

(2) 講義中当てることもあります。

(3) 出席は取りません。平常点は出席点ではなく講義中の発言等を評価します。どんな発言も歓迎します。

(4) 講義終了後の質問・指摘も歓迎しますが、講義中

の発言であれば加点されたであろう発言でも、講義終了後では加点されないケースもあります。

(5) 合理的な理由で欠席・遅刻・早退する場合には届を私(松村)に直接提出してください。また 平常点を

付ける名簿作成のため登録用紙を提出してもらいます。書式は前述のHPにあります。

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この講義の前提(1)ミクロ経済学の道具を使います。最低限のミクロ経

済学の素養が必要です。課題(宿題)に対する事前の準備が必要となることもあります。

(2)欠席した場合には自助努力で補ってください。ファイルはHPで公開します。また欠席・遅刻・早退した場合にはHPを訪れ注意事項がないか確認して下さい。

(3)文献リストは予習のためでなく、講義を休んだ場合

の補充用、あるいは更に進んだ勉強をしたい人のための資料です。教科書を含めリストにある本を読まなくても理解できる講義を目指します。

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平常点のつけ方(1) 出席を取るわけではありません。講義中当てます。

これが一つ一つ小テストです。これを採点して平常点を付けます。従って出席していても回答しなければ無意味です。間違っていても点数が付くことはあります。

(2) 多くの回数指名するために原則として同じ問題を

複数の人にあてます。他の人が考えている間、自分も答を考えていて下さい。問題が理解できない場合には、指名される前に質問をしてください。

(3)講義中質問・発言して下さい。良い発言には指名された上で回答したものと見なして点数を付けます。

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平常点のつけ方

(4) スライド、HP等の誤字・タイポの指摘も、立派な発言

と見なします。原則として最初に指摘した一人のみ点数がつきます。

(5) 難問に正解すれば高い点数がつくことがあります。

(6) 講義終了後の質問も受け付け、非常によい指摘に

ついては講義中の発言と同様に点数がつくことあります。しかし一般に講義中の発言に比べると、点数が付く確率は下がります。

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回答の際の注意点(1) 指名され解答するのは試験です。隣の人等に答えを

聞くのはカンニングです。教員からは、会話が私語なのか答えを教えているのか区別できないので、指名時点で周りの人と話していれば点数を失います。他の人の迷惑にならないよう私語は厳禁です。

(2) 携帯等を使った通信によるカンニングは発見確率が

低くなりますので、公平を期すために発覚した場合はもちろん疑わしい行為の場合にも学期中のすべての平常点を失う可能性があります。メールの送受信、確認、対話型のアプリ等の使用は控えてください。パソコン等を持ち込む場合には、カンニングと誤認される行動(メールの読み書きをする、回答をネット上で検索する等)を慎んで下さい。

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回答の際の注意点

(3) 代返は替玉受験と同じでカンニングよりも更に重い不正行為です。絶対にやめてください。

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提出書類(履修届)

(1) 名簿作成のために登録用紙を提出してもらいます。用紙をもとに名簿を作成し、その名簿を確認した段階で登録とします。この登録は事務で行う履修登録を代替するものではないので、これとは別に正式な履修登録もしてください。

(2) 提出は講義終了後ないし開始前に教室で教員に直接提出して下さい。事務等に提出しないこと。やむを得ない場合にはメールでの提出も認めますが、その場合にはメールの本文に必要情報を直接書き入れて下さい。添付ファイルは使わないこと。届いた場合には必ず返信するので、返信がない場合には不着と認識して下さい。

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提出書類(履修届)(3) 所属、学籍番号、名前は必ず書き入れて下さい。名前にはふりがなを忘れないで下さい。

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提出書類(欠席・遅刻・早退届)

(1) 欠席・遅刻・早退することが1週間以上前にわかっ

ている場合には事前提出用の届を提出すること。事前届があった回には指名しないように努力します(指名しないことを確約はできません)。

(2) 事前届無しに、やむを得ない理由で欠席・遅刻・早

退した場合には、事後提出用の届を提出することができる。理由に応じて最終的な成績評価時に考慮する。説得力のない届が1枚でもある場合には、それ以外のものも含めて全てを考慮しません。届を出す代わりに口頭で理由を説明するのはルール違反です。講義を注意深く聴かなかった者と見なして原則として減点します。

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提出書類(3) 提出は講義終了後ないし開始前に教室で教員に直接

提出すること。事務等に提出しないこと。やむを得ない場合にはメールでの提出も認めますが、不着、文字化け等の責任は全て送信者が負うことになります。メールで提出する場合には、本文に必要事項を書いてくれれば、ファイルを添付する必要はありません。ファイルを添付する場合にはpdf fileでお願いします。pdf file以外のものが添付されたメールは原則として見ません。

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講義の目的

ミクロ経済学・ゲーム理論の道具を使って現実の日本の規制を分析する視角を学ぶ

・経済的規制

→市場の失敗の補正:経済効率性の改善

・社会的規制

→経済効率性以外の社会的な目的の達成

主に前者(経済的規制)を扱う

日本の多くの社会的規制は、社会的規制のふりをした実質的な「経済的規制」

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成績評価

Max(試験の点数, 試験の点数×0.5+平常点)

=点数

試験100点満点、平常点上限50点

原則として可(C)の成績は付けません。可に当たる成績の場合には不可(D)と付けます。但し試験の

答案において受講生が明確な意志表示をした場合には、可に当たる点数の時には可を付けます。意志の示し方は講義中に説明します。

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講義の経緯2005年度 規制・競争政策(4単位)、大橋・松村の2人で担当

2006年度 規制政策(2単位) 松村担当

2007年度 - 2009年度 規制政策・規制の経済学(2単位) 金本・松村の2人で担当

2010年度 - 2014年度 規制政策・規制の経済学(2単位) 松村担当

2015年度以降 隔年開講へ

⇒規制はありとあらゆる分野に存在。そのような規制を扱う講義ではなく、「競争政策」とセットになるような規制政策をカバーするのがこの講義の目的

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ミクロ経済学の特徴

個々の経済主体の意思決定(選択)

→社会全体の構造

大げさに言うと方法論的個人主義

一方で個々の経済主体の選択は社会全体の構造に依存する

個々の経済主体の意思決定は社会全体の構造が決まらないと決められないが、個々の経済主体の意思決定なしには社会全体の構造も決まらない

⇒同時決定の体系

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ミクロ経済学の体系

原理的にはあらゆる意思決定を分析できる

まず何をどれぐらい生産して消費するかという選択から出発

・消費者の理論・生産者の理論(個人の意思決定)

・市場均衡の理論(同時決定の体系を閉じる)

→厚生経済学の第一定理=市場均衡は以下の3条件が満たされていればパレート効率的である

(a)完備市場(b)完全競争(c)完備情報

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市場の失敗(1) 不完全競争

完全競争:全ての経済主体が価格受容者

価格受容者:自分の行動が価格に影響を与えないと思っている経済主体

買手(売手)が価格受容者→自分の購入量(生産量)が市場価格に影響を与えると思わない消費者(生産者)

不完全競争:少なくとも1人価格受容者ではない者(価格支配者)が存在する~ごく普通の世界

完全競争の理論的な根拠(a) Cournotの極限定理 (b) Bertrand Model

(c) Evolutionary Stability, 相対利潤最大化モデル(d) 戦略的会社分割モデル

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不完全競争に伴う市場の失敗への対応

(1) 競争の弊害となる要因を除去し競争を促進ないし競争環境を維持し不完全競争による損失を軽減

自由競争を前提→競争政策・独占禁止法の世界

(2) 競争状態を維持することが困難→競争をあきらめて、不完全競争状態を前提とし、規制によってその経済厚生上の損失を軽減

→規制政策の世界

現実にはこのようにきれいに2つに分けられない

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競争政策と規制政策の連続性

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競争政策の世界 規制政策の世界

膨大な中間領域

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競争政策と規制政策の連続性

(a) 規制政策と競争政策の代替性

(1) 従来自然独占市場で規制が不可欠と思われていた分野でも競争メカニズムが働く可能性の認識

~コンテスタブルマーケットの理論(第3講)

一定の条件が満たされれば規制政策の世界を競争政策の世界に変えることも可能

同じ土俵で、特定の指標の程度の差で競争政策がよいのか規制政策がよいのかが変わるようになった

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競争政策と規制政策の連続性

(a) 規制政策と競争政策の代替性

(2) 参入規制と競争政策の代替性

参入退出が自由である市場では、ある種の競争政策が消費者余剰に与える影響がなくなる

~参入規制が撤廃されていると、ある種の競争政策が不要になる(Davidson and Mukherjee 2007, IJIO).

(3) 政策手段の連続性

卸役務提供(自由競争の世界に近い)か接続か(規制の世界に近い)~裁量規制の手段でもある(第6,13講)

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競争政策と規制政策の共存

(b) 規制政策と競争政策が補完的な役割を果たす

従来自然独占市場で規制による統制が不可欠と思われていた分野に競争を部分的に導入するスキームが発達した~電気通信・電力・都市ガス

しかし一定の規制がなければそもそも競争メカニズムが働かない→規制政策と競争政策を同時に行う必要性~不可欠施設の議論

逆に、原則競争の市場で、部分的に規制を入れるスキームも存在

(例) 最終供給保証、一部のプライスキャップ規制、約款規制、非差別規制

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競争政策の世界と規制政策の世界の双方向性

(c) ネットワーク外部性の効果が従来の自由競争の世界に多数現れる

事後的な競争制限の可能性~通信、電力、都市ガス、鉄道などに見られるボトルネック設備と同種の問題

ボトルネック規制の経験を他の分野に拡張する(規制政策の世界を競争政策の世界に拡張する)可能性

(例) マイクロソフト、グーグル、アップルのような問題を一般法に任せておいてもよいのか?

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競争政策と規制政策の政策担当者の連続性

(d) 競争政策も競争

(1)規制改革の背後に競争評価

→事業官庁も競争評価を行うようになる

(2)特定産業向けの競争政策 vs 一般法による競争政策

(3)合併審査と産業再生・競争力強化の競争

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競争政策と規制政策の不可分性

競争政策と規制政策の垣根が急速に低くなりつつある

→2つをバラバラに学ぶのはまずい。

⇒2005年度 競争・規制政策

4単位の授業は履修上望ましくない⇒2006年度から競争政策(2単位)と規制政策(2単位)に分ける

でも本当は同時に学ぶのがよい。

(次善の策) 競争政策との関連の深いトピックスも敢えて少し取り上げる←残念ながらタイトなスケジュールで十分にはできない。

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外部性

(a)の条件が満たされないために起こる市場の失敗の典型例

外部性(公害など)、公共財

⇒政府が直接規制したり、税などで間接的に民間経済主体をコントロールする必要性

規制の文脈でも重要。この講義の範囲内でもネットワーク外部性及び環境規制の文脈で議論する

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不完備情報による市場の失敗

完備情報:全ての人が同じ情報を持っている

完全情報:全ての人が全ての情報を持っている

情報が不完備~情報が非対称的~情報が偏在

・情報が偏在することによる市場の失敗の典型例

(a)モラルハザード

(b)逆淘汰(逆選択)

・情報の偏在への対応

⇒シグナリング⇒これが更に新たな市場の失敗を生む(第6,14講)

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対象となる学生(公共政策大学院)

・経済学基礎orミクロ経済学を受講することが望ましい(学部時代ミクロ経済学を取っていれば多分大丈夫)

・競争政策の講義を受講することが望ましい

・2年生だけでなく1年生も歓迎~就職活動・公務員試験を控えた学生にも有益な講義を目指す

対象となる学生(学部学生)・産業組織の授業を合わせて受講することが望ましい

・この科目に卒業をかけるのはリスキー(単位取得が難

しいわけではない。「就職先はもう決まっているので単位下さい」と答案に書いても自動的に単位を与えないという意味。)

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必要な基礎知識(ミクロ経済学)

・価格受容者(price taker)、 価格支配者(price maker)、限界収入、限界費用、平均費用、固定費用(埋没費用)、

可変費用、需要曲線、供給曲線、消費者余剰、生産者余剰、死荷重(Dead Weight Loss)、機会費用、完

全競争、不完全競争、割引現在価値、税の超過負担、市場の失敗、社会的限界費用、外部性、公共財、期待効用、情報の非対称性(情報の不完備性)、モラルハザード、逆淘汰(逆選択)、シグナリング

上記の用語で4個以上聞いたことがないもの(忘れたのは可)があるときには先にミクロ経済学を受講するこ

と。その他不安があれば担当教員に相談してください。

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必要な基礎知識(ゲーム理論)

戦略型ゲーム、展開型ゲーム、利得、戦略空間、ナッシュ均衡、反応曲線、戦略的代替・戦略的補完、後方帰納法(backward induction)、部分ゲーム完全均衡(subgame perfection)、コミットメント、空脅し、繰返しゲーム

上記の用語で6以上聞いたことがないもの(忘れたは可)があるときには担当教員に相談すること。特に

赤字で書いた3つを聞いたことがない場合には必ず相談すること。

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Text

Viscusi, W. K., J. E. Harrington, and J. M. Vernon

Economics of Regulation and Antitrust,

4th Edition

MIT Press, 2005.

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Schedule (1)(基礎理論)第1回 イントロダクション、第2回 規制影響評価RIAと行動経済学 (教科書19,20章)

第3,4回 寡占市場の経済分析(教科書1,2,5章)

第5回 市場の競争度と経済厚生(教科書5,6,7,12章)

(規制の理論)

第6回 規制の基礎理論(教科書10章)

第7回 自然独占(教科書11章)

第8回 ネットワーク外部性とスイッチングコスト(教科書12,15,18章)

第9回 垂直統合、不可欠設備と接続規制(教科書8,12,15,18章)

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Schedule (2)

(日本における諸規制とその改革)第10回 電力市場の規制(教科書12,18章)

第11回 ガス市場の規制(教科書12,18章)

第12回 電気通信市場の規制(教科書15章)

第13回 運輸・交通産業の規制(教科書17章)

第14回 環境、安全に関する規制(教科書21,22,23章)

予備:公企業の民営化政策(教科書14章)

あるいは情報開示規制

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過去の講義との変更点

(1) 講義で扱うトピックスの分量を減らしました。

(2) かわりに講義中に出す設問を増やしました。

~多くの内容を詰め込むことを諦め、質問によって理解を確認しながら進む色彩を少し濃くしました。

(3)スライドのコピーの配布をやめました。必要な人はHPから自分でダウンロードする方式にしました。

(4) 講義の最後(講義時間内)に質問の時間を意図的にもうけるよう努力します。

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