自閉症、知的障害のある 子どもへの言語指導最前線nagasawa/2007language.pdf ·...

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自閉症、知的障害のある子どもへの言語指導最前線

要求から「自己選択」へ

新潟大学教育人間科学部

特別支援教育担当 長澤正樹

ことばの発達過程(1)おなかがすくなど、不快な状態になると本能的に泣く

泣く、声を出す意図的な発語声の質の多様化

大人を呼ぶために声を出す

ことばで大人を呼ぶ

「ママ」「ネー」など、明確なことばに近づく

ことばの発達過程(2)

動作や音声の模倣

やりとり

一緒に見つめる

一緒に行う

交互に行う

大人が提示したものに注目する

ことばの獲得に必要

大人のまねをして同じ活動をする

やりとり役割交代

やりとり:繰り返し

ことばの指導の基本:発達段階に応じたかかわりの大切さ

発達検査や発達段階表の使用

「できそうな項目」を指導目標に

大人のまねをして簡単な動作をする:○

大人のまねをして「アー」と発語する:△

大人のまねをして「マンマ」という:×

できる項目を増やしていく

目標

発達段階に応じた言語訓練(Nu-LATプログラム)

長澤によるホームページhttp://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/languagecontent.html

このHPの使い方

子どもの実態を把握し、目標を考えます。

その目標に近い(似ている)項目を段階表から探します。

項目とその前後の項目を参考にしながら、再度子どもの目標を決めます。

参考にした項目をクリックし、指導内容例を見ます。

指導内容例を参考にしながら、子どもの指導方法を決めます。

実際に指導し、必要に応じて指導方法を変更します。

このプログラムの指導方針

ものや活動を要求することばを教える

ことばの指導にふさわしい場を設定する

自分からことばを出そうとする「自発性」を高める工夫をする

場面にあったことばをとき、すぐにその内容にあった対応をする(即時強化)

不完全なことばに対しては、モデルを提示し、できたと見なす(シェイピング)

「ちょうだい」「やって」「もっと」

遊びの中で、おやつの時など生活の中で

欲しいものが手に入らない、もっと欲しい

要求にすぐ応える

「バ」→「そうバナナって言えたね」(といってバナナを与える)

自閉症、知的障害の子どもへの言語指導

最近の研究から

自閉症(広汎性発達障害)の定義

社会性の障害

コミュニケーション障害:言語発達の欠陥、特異な話しことば

行動の障害

言語発達の遅れが見られない

アスペルガー障害

認知の特異性

感じ方、ものの見え方聞こえ方の特異性過敏性、耳ふさぎ、偏食

考え方、判断の仕方の特異性話しことば理解が困難見通しがもてない言語が思考の中心ではない:イメージによる処理時間感覚が特異である

過剰刺激からの逃避反応:自己刺激行動こだわり

他にも、

知覚異常、運動障害、てんかん、多動

自閉症の児童生徒への支援

獲得させたいスキル(技能)

生きるために役立つスキル

これらを重視したプログラムにより予後が良好

知的障害の程度は予後を予測しない

問題行動の改善

コミュニケーション行動の獲得問題行動ではなくコミュニケーション行動を

強化する(分化強化)

幼児期の対応の基本

ことばの表出よりことばの理解、指示理解を

子どもと行動や注意の共有、ことばで表現してあげる

繰り返しによるパターンの形成

大人との一対一の信頼関係の形成、「みんなで」を強要しない

理解言語の指導

共同注視、共同行為

他者理解・共感について

自閉症グループは他者理解が困難だと言われています。

なぜでしょう?

コミュニケーションの発達

一緒に見つめる

一緒に行う

交互に行う

自閉症の子どもはこれが困難

ことばが育たない

他者理解が困難

他者理解・共感ができるためには

一緒に見つめる

一緒に行う

交互に行う

ごっこあそびゲーム

活動(仕事、小集団活動)

他者理解

共感

役割の明確化ストーリーの明確化

役割交代活動後、感想を聞く → 他者理解・共感

活動→役割交代→感想:他者理解・共感

1. A:遠くを眺める、B:Aを肩車2. A:Bを肩車、B:遠くを眺める3. 感想A:「遠くが見えた」 「肩車はつらい」4. Bも肩車をしているときはつらいけど、肩車をしてもらったら遠くが見えた

他者理解・共感へ

共通体験の重要性

知的障害(精神遅滞)の定義

1. 知能指数、70未満2. 日常生活や行動、振る舞いが同年齢に比べて幼い

3. 1と2両方が当てはまる

知的機能の障害が発達期にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別な援助を

必要としている状態にあるもの(療育手帳の基準)

ここから言語指導法

3つの代表的な言語指導法

1. マニュアル第一:行動分析による言語指導

2. 自然性重視:機会利用型指導法

3. 繰り返すことに意義がある:共同行為ルーティン(スクリプトによる指導)

行動分析による言語指導Lovaasの言語訓練伝統的なオペラント法

訓練室で先生と一対一で

集中訓練

マニュアル第一

着席行動、注視行動

動作模倣、言語模倣

命名訓練

効果と課題学習の構え、ことばの形成に有効

日常生活の中でことばがうまく言えない・・・

先生に注目↓

カード提示↓

「これは何ですか?」↓

正解:ごほうび不正解:モデル提示

(これを繰り返す)

機会利用型指導法Incidental Teachingフリーオペラント法

ことばは役に立つ道具だ

「話をしたい」状況が大事

日常生活が指導の場面

方法

環境設定

要求するまで待つ

手厚い支援

効果と課題

ことばを「使う」ことを教える

おもちゃを高い場所に置く↓

要求するまで待つ↓

要求:おもちゃ接近:「何が欲しい?」「チョウダイ」(モデル)

場にあったことば

指導回数が足りない!

共同行為ルーティンJoint-Action Routine(スクリプトのよる指導:Script)

小手先だけじゃだめ!知識を獲得させなければ

繰り返すことに意義がある

活動は流れ、繰り返す:ルーティンの形成

いろんなルーティン

サーキット

買い物ごっこ、トースト作り

自然さと指導回数の確保:双方の長所を取り入れた

日常生活の中で繰り返し行われる活動の例繰り返す活動

は、ことばの指導に最適 あさの会、かえりの会

給食、掃除

作業学習

生活単元学習:買い物、調理

制作活動:図工

自由遊び

ゼンマイ仕掛けのおもちゃ、ボール、積み木

スクリプトとは?

ここで事例を見てみましょう言語指導の事例ではありませんが・・・・

セルフマネジメントスキルの指導(自己管理技能)

対象:自閉症小学生

課題:掃除の手順を知り、掃除をする

教材:掃除カード

手続き

これから行う活動のカードを取り、隣へ置く

カードに描かれた活動をする

次のカードを取り、隣へ置く

掃除活動のセルフマネジメント

帽子をかぶる

からぶき

ごみを払う

終わりの挨拶

結果

すぐにマネジメントができるようになった

すぐに掃除ができるようになった

別の教室の掃除もできるようになった

指導から1ヵ月後もできる状態である

掃除活動にかかわることばを言うようになった

「ゴシゴシ」「キュッキュッ」

お掃除スクリプト(掃除に関する知識)の獲得

自己管理スキルの指導 清掃スキルの獲得

場にあったことばの自発

掃除の手順を覚えることで掃除の仕方を学び、ついでに掃除場面にあったことばを

獲得した

体験活動

様々なスキルコミュニケーション

買い物掃除

体験や活動を繰り返すことで知識として定着し、ことばがいえるようになる

スクリプト

体験活動

場にあったことば、行為

体験や活動を繰り返すことで知識として定着し、ことばがいえるようになる

スクリプトの例

おやつ作りスクリプト

指導者の働きかけ 子どもの行動

お菓子作りの手順の説明

「どっちがいいですか?」

「何が欲しいですか?」

「何を作るの?」

「チョコをのせますか?」

「誰のですか?」

「クッキー」と答える

「ピーナッツ」と答える

「お菓子作り」と答える

「はい」と答える

「私のコップ」と答える

2種類のお菓子を提示

2種類のバターを提示

2種類のトッピングを提示

できたおやつを提示

貼り絵スクリプト

場面 活動 目標となることば

色を塗る T:紙を与えるクレヨンを与える

「なにをするの」

C:色を塗る

クレヨンをください

色を塗ります

絵を切り抜く T:鋏の提示

鋏を与える

「なにをするの」

C:絵を切り抜く

鋏をください

絵を切ります

絵を貼る T:糊の提示

糊を与える

「なにをするの」

C:絵を貼る

糊をください

絵を貼ります

要領

シナリオを作成する

子どもと一緒に行う活動を決める

子どもに教えることばを決める

一緒に活動する

活動の手順が理解できてきたとき、ことばを教える

できるだけ繰り返す

慣れてきたら、活動やことばを増やす

おやつ作り、朝の会、給食手順を整理する

ことばを教えることを焦らない

単純なシナリオから複雑なシナリオへ

場面に応じた指導技法

一対一で集中的に:伝統的なオペラント法

シミュレーションで:スクリプト

日常生活場面で:機会利用型指導法

スクリプト

代表的な指導の形態

個別指導専門機関自立活動

伝統的なオペラント法

シミュレーション指導生活単元学習遊びの指導

日常生活場面での指導家庭地域職場

機会利用型指導法スクリプト

スクリプト

ことばにはさまざまな機能(役割)があります

ことばの機能

要求:「ちょうだい」

応答:「はい」「お母さんと行きました」

質問:「どこにありますか?」

叙述:「花が咲いています」

:「悲しい」「うれしい」

自閉症の子どもの場合、要求機能を教えましょう!

「会話ってなんだ?」

ことばは覚えたけれど。。。

要求言語の次は何?

我々は何のために会話するのか、考えたことがありますか?

コミュニケーションの目的

要求伝達

自己の目的のために他者を動かすこと

相互伝達

他者とかかわること自体が目的

おしゃべり

自閉症の場合、あいさつができればOK!

自分の意思を伝える

自己決定へ

自己決定の指導 「おかわりください」「いやです」

「この服を着ます」

自分で選ぶ、決める

「教えてください」「手伝ってください」

メモを見ながら自分で仕事をする自分で解決する

自分の気持ちを表現する

「この仕事が好きです」「私にこの仕事をさせてください」「○○さんの意見に賛成です」

得意なこと、苦手なこと自分の性格、障害自分の人生観

自分という人間を理解する

すべては自己選択からはじまる自己決定は権利

選択のチャンスを

みんながすぐに応えてあげる

誰もが自分できめる権利がある

生活の中で選んだり、きめたりする機会を保障する

どんな決定もまずは尊重すること

要求から自己決定へ!

ことばだけが手段ではない

身振りサイン

視線、手差し、指さし

絵カード、写真カード、文字カード

コミュニケーションボード

絵、写真、抽象図形、文字

ワープロ、コミュニケーション機器

トーキングエイドAACスライド

おわりに

「うったえる」ことを教える

意思を表出する手段の確保

意思を表出する機会の提供

周りの応答性

「できない」のではなく、「(要求)できる」ための支援を考えましょう

参考文献

「スクリプトによるコミュニケーション指導」長崎勤他編、川島書店「応用行動分析入門」加藤哲文他編、学苑社「一人でできる力を育てる」長澤正樹編、川島書店「スクリプトによる社会的スキルと発達支援」:川島書店

研修をお手伝いします

長澤研究室http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/メールマガジン

COMPAS、個別の教育支援計画LD、ADHD、アスペルガーへの対応

研究物チャレンジルームの様子

資料:http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/#materials

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