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規範と同調 (Y. Imai) 2011/9/4
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集団規範と同調行動(Group Norm and Conformity)
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☆ 本章の目標
① 集団規範、リターン・ポテンシャル・モデルを理解する。
② 同調行動の規定因を理解する。
☆ Key Words
2
(1) 集団規範
•
• 集団メンバーとして期待されるを示すもので,集団における自分の行動を選択する際の基準となる。
(心理学辞典)
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① 集団規範の機能(a) 他のメンバーの が可能とな
り、どう対処すればよいかを準備できるようになる。
(b) 自分の をもたらし、どのように行動したらよいか悩まなくてすむ。
• 規範は、社会的相互作用の中から形成されてくる。集団の半数以上のメンバーが規範であると認めるならば、それが規範になる場合が多い。
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② 規範の形成並びに集団行動への影響
(a) 重要な事項に関して規範が形成される。
(b) 規範は集団の全員に適用されるものもあれば、
集団の一部のメンバー(例えば、役職者)に適用されるものもある。
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(c) 各集団メンバーの規範 には、差がある。
例) 赤信号で止まる。速度制限を越えて運転しない。
(d) 規範によって が異なる。例) 他人を殺すことを禁ず。
他人に無礼であってはならない。
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③ 規範への同調Deutsch & Gerard (1955) 2種類の社会的影響
(a)集団メンバーからの期待に同調した結
果生じる社会的影響(例)
「他のメンバーから排斥されることを避けたい。だから、多数派の意見を取り入れることにしよう。」
他のメンバーから受容はされるが、集団全体で誤った判断をしてしまう可能性がある。
cf. 集団的浅慮
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(b)正しい判断を下したいと思っている場合
に、集団のメンバーの意見や判断を参考にすることによって生じる社会的影響
(例)「他者からの承認や排斥よりも、とにかく
正しい判断を下したい。そのために、他のメンバーの意見を参考にしよう。」
「多くの人が支持している答えならば、正しいに違いない。」
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④(Jackson, 1960; 佐々木, 2000)
集団規範遵守の定量的測定(例) 1時間の討議における発言回数
横軸-発言回数
縦軸-他者からの評価(是認、否認)
a. 最大リターン点-理想的行動パタン
b. 許容範囲-集団から是認される行動パタン
c. 規範の結晶度-各メンバーのリターン・ポテンシャル曲線が一致している程度
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• 佐々木(1963)
大学試験におけるカンニングへの処置
質問紙を用いた場面想定法
<状況と質問項目>
試験の代理監督をしていたあなたがカンニング・ペーパーを使っていた学生を見つけました。学生は観念したように「バレたか」と言いました。
あなたの行動として次の5つが考えられます。あなたならどの行動を取りますか?
それぞれの対処行動に対して担当教授と学友は、どのように判断すると思いますか?
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<選択肢>
A. カンニング・ペーパーと答案用紙を取り上げ、直ちに退場を命じ、後で担当教授に報告する。
B. カンニング・ペーパーを取り上げた上で、そのまま受験させ、後で担当教授に報告する。
C. その学生が何か別の口実を設けて自発的に受験を放棄するように勧める。応じない場合は、やむを得ずカンニングの事実を担当教授に報告する。
D. カンニング・ペーパーだけを取り上げ、そのまま受験を続けさせる。担当教授には報告しない。
E. 見て見ぬふりをし、担当教授にも報告しない。
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(2) 同調行動
•
→ 個人と集団の整合性が増大
• 対立する他のメンバーの見解(集団圧力)を受け入れること
(心理学辞典)
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①集団内の社会的影響過程
Moscovici (1985)
集団内でコンフリクト(葛藤、紛争、意見の対立)が生じた後に生じる反応パタン
a.
妥協によって葛藤を回避する。
葛藤解決の方向を示す規範はなく、各個人が譲歩によって合意に達する。
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b.
多数派の意見に集約される形で問題が解決される。
c.
少数派が新しい意見を提出し、既存の(多数派の)価値観を突き崩し,集団内の一貫性を混乱させ、葛藤を引き起こす。
少数派は自律的に一貫して自説を主張することによって、集団に革新をもたらす。
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(a) 規範化(妥協)
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多数派 少数派
(b) 同調
(c) 変革
② Asch(1951) 同調実験
標準刺激 A B C比較刺激
標準刺激と同じ線分は、A~Cのうちどれ?
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• 8人集団に線分の長さ判断課題を与えた。• 1人で回答する場合には、ほとんど間違
わないような課題であった。
• 8人のうち実験参加者は1人であり、残り7人は実験協力者であった。
• 実験参加者は毎回7番目に回答することになっていた。(実験によって多少手続きは異なっていた)
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• 全部で18試行あったが、実験協力者は12試行でわざと間違えた。
• 実験参加者は12試行のうち何試行において実験協力者からの集団圧力に屈したのか?
• 同調の測度(従属変数)実験参加者が多数派と同じ判断を
下した頻度・比率
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• その結果…
平均誤答数 実験群= 回
統制群=0.08回
同調率 実験群=
統制群= 0.5%
ただし、実験群の実験参加者50人のうち13人は一度も同調しなかった。
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• 実験参加者が2人の場合
同調率= %
• 実験参加者以外に常に正答する実験協力者がいる場合 %
• 途中まで味方してくれていた実験協力者が多数派へ寝返る場合 %
• 多数派の人数を変えた場合
多数派が3, 4人で同調率は最大( %)になり、それ以上同調率の上昇は認められなかった。
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③ 同調行動の規定因(Reitan & Shaw, 1964)
a.・ 知能が高い人ほど同調しない傾向・ 年齢と同調との間には逆U字型の関係
・ 外的統制型の人(物事の責任を自分以外のものに帰属する傾向)は、内的統制型より同調しやすい。
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・ 女性は男性よりも同調する傾向がある。(ただし、女性に親しみのある課題では、
女性の方が同調しなかった。)
・ リーダーとしての能力 (r = )社会的参加の程度 (r = )責任感 (r = )
の高い人ほど、同調しない傾向にある。
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(b)
・ Aschの実験に代表されるような、任意に集団規範が形成される状況では、刺激が曖昧であるほど同調も多くなる。
*Sherif & Sherif(1956)自動運動現象 ( %)
*Shaw, Rothchild & Strickland (1957)メトロノームの音の数 ( %)
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*Nickols(1964)幾何学図形の面積 ( %)
上記2つの場合とは異なり、客観的な正解は存在するが、形の異なる図形の面積を比較することはむずかしい。
*Asch(1951)線分の長さ ( %)
正解が一目瞭然の課題
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c.・ 集団の大きさ Asch(1951)・ 全員一致の崩壊
d.・ 集団凝集性が高い場合・ 多数派と自分の能力差に関する認知
Costanzo, Reitan & Shaw (1968)自分の能力が高いと認知している人は、
低いと認知している人に比べ、同調しなかった。
しかし、多数派の能力が高いときには、同調する傾向があった。
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・ 当該集団における将来的な所属Lewis, Langan & Hollander (1972)
・ 以前自分を支持してくれた人に対する返報的な同調
Darley, Moriarty, Darley & Bersheid(1974)
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• これらの要因は同調行動に対して加算的に機能しているのであろうか?
• Nickols (1964)・黙従傾向
(社会的黙従尺度, Bass(1956))・集団の大きさ
(2人、4人集団)・課題の曖昧さ
(自動運動現象、線分長さ判断)
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上記3規定因に重みづけをした。(例)・ 黙従傾向小、集団の大きさ2人、
線分判断: 1+2+3=6・ 黙従傾向大、集団の大きさ4人、
自動運動現象: 2+4+6=12↓
・ 同調行動の規定因は、加算的に機能
・ 最初のうちは集団圧力が大きくなるほど同調率も上昇したが、ある限度を越えると同調率は増加しない。
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④ 同調によってもたらされる結果
(a) 同調による望ましくない現象・・・ 集団メンバー「普通の人」になって
しまう。↑
盲目的に、考えなしに多数派に追随してしまうタイプの同調が原因
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(b) 集団規範に同調することには、集団存続のために有益なことも多い。
↓・・ 各メンバーの行動の協応化・・ 効率的な集団運営を図るための
適切な行動
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⑤ 規範からの逸脱(非同調)集団規範から逸脱したメンバーに対する
罰の付与
Schachter (1951)男子学生7~10人の討議集団少年非行に関する事例を読まされ、そ
の非行に対してどのように対処すべきかを個別に7点尺度上に回答した。
各メンバーの回答が発表され、その後、実験協力者3人の意見も発表された。
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実験協力者は3つの条件に割り振られた。
a. the deviate: 終始、極端な意見(厳罰)を主張
b. the modal: 常に多数派の意見(保護観察)を主張
c. the slider: 初めは極端な意見を主張するが、他のメンバーの意見に動かされて多数派の意見に変更
↓その結果、
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・ 討議の当初は、逸脱者(the deviate & the slider)に対して意見が向けられた。
・ The sliderに対するコミュニケーションは、the sliderが多数派の意見を受け入れるにつれ減少
・ The deviateに対するコミュニケーションは、一旦、増加後、減少
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Levine, Saxe & Harris (1976)
・ 逸脱者に対する好意度は、逸脱者が集団規範に同調しないほど低い。最終的に反対を表明した場合の好意度は低かった。
・ 集団規範からの逸脱は、他のメンバーからの無視、排斥をもたらす。
・ その逸脱が集団過程の に生じる場合は、逸脱者に対してそれほど悪影響はない。
・ 集団規範に同調するように自分の意見を変えれば、集団に認めてもらえるようになる。
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⑥ 社会的アイデンティティ理論からの解釈
・
(自分があるカテゴリに所属すると認知)→
・ 内集団のステレオタイプ的な規範の認知 →
・ 内集団規範をプロトタイプとして認知→
・ そのプロトタイプを自己に適用 →
・ 内集団の規範に基づいた行動( )
(自分が内集団に所属していると認知するほど{外集団との差が顕著になるほど}、内集団規範に同調する)
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(3) 集団的浅慮 (groupthink)
• 「三人寄れば文殊の知恵」は常に正しいか?
• 同調行動によるネガティブな集団現象
• 集団的浅慮(集団思考)とは、
• Janis(1972, 1985)は、アメリカの対外政策の意思決定過程を分析して、集団的浅慮の規定因、防止策をまとめた。
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(例) キューバ侵攻 (1961年4月)
・ J. F. Kennedy大統領
キューバのカストロ政権(社会主義国)を倒すために、1,400人のキューバ人亡命者部隊をピッグス湾に侵攻させた。
1,200人が捕えられてしまった(大失敗)。
侵攻軍の士気やカストロ軍兵力を読み誤った。
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• ケネディ政権の優秀なスタッフがなぜ誤った政策決定をしたのか?
その他にも…・ ルーズベルト大統領
真珠湾攻撃準備の誤り
・ ジョンソン大統領
ベトナム戦争の拡大
・ ニクソン大統領
ウォーター・ゲート事件
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① 集団的浅慮の症状
1. でどのような危険な方策でも選択してしまう、自信過剰的幻想
(例) 亡命キューバ人の侵攻作戦にアメリカが関わっていることを隠し通せると判断していた。
2. 自分たちに不利な情報を割り引いて受け取ったり、歪めて解釈したりする。
(例) 失策を認めず、あと少し経てば成功すると信じ続けてしまった。
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3. 自分たちの集団決定における非倫理性や反道徳性を無視
(例) 亡命人を自国の攻撃に利用する。
4. 集団内の逸脱者に対して、それは忠実
なメンバーのやることではないと積極的に をかける。
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5. 自分の判断結果に疑念をもっても無視
し、集団から逸脱することを積極的に回避
6. によって、「自分たちは正しい」という自信が集団内に生じる。
7. 集団の正しさを逸脱者や疑念から守り通そうとする集団への が出現
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② 集団的浅慮の規定因
(集団的浅慮をもたらす要因)
・
・
・ 集団の周囲からの孤立
・ 問題解決の困難な、ストレスフルな
状況
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③ 集団的浅慮の防止策
1. 集団内の する。
2. は問題を提示しても、そ
れに対する自分の好みや意見を述べない。
3. を設定して別々に議論させ、その結果を全体で検討する。
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4. 外部から を招いて、集団の中核的メンバーと議論させる。
5. 選択肢を評価する際に、わざと
(devil’s advocate、悪魔の唱道者)を設定し、活躍させる。
6. 最終結論を出す前に、各メンバーが他のメンバーと最終原案について討議し、それを集団にフィードバックする機会を設ける。
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それでは、また来週…。
• 次のテーマは「コンフリクトの解決」です。
• 「質問・意見カード」
を提出したい人は、
教壇までどうぞ…。
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