高性能高分子ポリマー材料実践講座Ⅰ 高性能高分子...

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ポリマー材料実践講座 Ⅰ

高性能高分子~エンジニアリングプラスチック・

スーパーエンプラ~

近畿化学協会 化学技術アドバイザー

上野捷二

はじめに

1.エンプラとは

2.分子設計

3.合成法、高性能化とポリマー構造

4.物性と評価法

5.特徴と用途

6.成形加工、複合化

7.新規エンプラの動向

8.エンプラ事業の考察

プラスチックの分類

汎用エンプラ

スーパーエンプラ

PE,PVC,PP,PS,ABS,ASPMMA,PVA,PET etc.

1 ポリアミド2 ポリアセタール3 ポリカーボネイト4 変性ポリフェニレンエーテル5 ポリブチレンテレフタレート6 GF強化ポリエチレンテレフタレート

・・・PA・・・POM・・・PC・・・m-PPE・・・PBT・・・GF-PET

○○△△○○

1 ポリスルホン2 ポリエーテルスルホン3 ポリフェニレンスルフィド4 ポリアリレート5 ポリアミドイミド6 ポリエーテルイミド7 ポリエーテルエーテルケトン8 ポリイミド9 液晶ポリマー10 ふっ素樹脂

・・・PSF・・・PES・・・PPS・・・PAR・・・PAI・・・PEI・・・PEEK・・・PI・・・LCP・・・PR

△△○△△△○△○○

○ ・・・Crystalline Resin △ ・・・Amorphous Resin + ・・・Crosslinked Resin

熱可塑性樹脂

汎用プラスチック

エンジニアリングプラスチック

(高性能)

熱硬化性樹脂

フェノール、尿素、メラミン +アルキッド、不飽和ポリエステル +エポキシ、シアリルフタレート +ポリウレタン、シリコーン etc. ポリイミドetc (非熱可塑性) +

熱可塑性プラスチック 熱硬化性プラスチック

代 表 例

ポリエチレン フェノール樹脂

ポリスチレン エポキシ樹脂

ポリ塩化ビニル シリコーン樹脂

分子の形

分子量 10,000 ~ 1,000,000 ~ ∞

熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の比較(1)

鎖状 網目状

熱可塑性プラスチック 熱硬化性プラスチック

成形

特 徴

物理的変化(分子構造変化せず) 化学的変化(反応・硬化)

サイクル 速い 反応速度による

再形成 可 不能

一 力学的性質 比較的強靱 硬くて脆い

般 加熱時 軟化・流動 軟化せず

的 耐熱性 小 大

性 耐溶剤性 侵されるものが多い 侵されにくい

質 電気絶縁性 比較的小 大

熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の比較(2)

素材

軟化溶融

(流動)

成形品

加熱 冷却

原料

重合縮合(流動)

成形品

反応 硬化

エンプラとは

エンジニアリングプラスチック(エンプラ):

耐熱性に優れた合成樹脂(プラスチック素材・熱可塑性樹脂)

エンプラ

耐熱温度:100 ℃以上、強靭

五大汎用エンプラ

ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)

変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)

スーパーエンプラ

耐熱温度:150 ℃以上、高温で長期間使用、強靱、優れた耐溶剤性

ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド

フッ素樹脂

エンプラの歴史

1930年代 PA66 (1938) 繊維から (Du Pont)

1940年代 PA6 (1942) PET (1949)

1950年代 POM (1956) PC (1958)

1960年代 PSF (1965) TPX (1965) m-PPE (1966)

1970年代 PBT (1970) PES (1972) PAR (1973)

PPS (1973)

1980年代 PEEK (1980) PEI (1982) LCP (1984)

半芳香族PA (1987) PCT (1988)

1990年代 COP (1990) 脂肪族ポリケトン (1996)

SPS (1997)

エンプラ市場導入時期

5

4

3

2

1

01930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000年

エンプラの導入年代

エンプラの市場導入時期 1950年から1970年初期までに

スーパーエンプラの市場導入時期 1970年から1980年代に

現在の世界のエンプラ需要量

5大汎用エンプラ 約 750万トン(約80%)

スーパーエンプラ 約 150万トン(約20%)

新規エンプラの市場導入数

市場導入数

生産量推移

エンプラは1980年代に年率10%以上の高度成長

総生産量は約20年間で10倍に増加(1980年10万トンと2000年代初頭100万トン)

今後は海外への製造業の移転等で成長は鈍化

1200

1100

1000

900

800

700

600

500

400

300

200

100

0

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 (年)

(1,000トン)

フッ素樹脂

PBT

m.PPE

POM

PA

PC

856.4841.7

886.7934.8

867.3909.5

1,018.6 1,027.61,085.1 1,087.0 1,114.5

日本のエンプラの生産量(1997-2007年)

エンプラの価格比較

品目と価格(円 / kg) 取引単位

汎用樹脂 高密度PE(モールド用) 215 1 m³バッグ

PVC 145 ロ―リ

HIPS (弱電向け) 195 1 m³バック

ABS (着色、工業向け) 230 20-30 トン

MMA (ペレット) 465 10 トン

エンプラ ナイロン66 (工業用) 580 5 トン

POM (射出成型用) 350 5 トン

PC (工業用) 580 1 トン

変性PPE 410 1 トン

PBT 420 1 トン

PPS 1000 1 トン

LCP,PES 2000-4000 詳細不明

PEEK 10000前後 詳細不明

(2007年の相場価格)

分子設計(1)主鎖

主鎖骨格の基本的な構造

耐熱性の指標であるガラス転移温度を決める要因:

高分子中の内部回転障壁、双極子―双極子相互作用、水素結合など

高耐熱樹脂(高いガラス転移温度と融点)の合成設計

内部回転に高い障壁を有する芳香族基を主鎖に取り込み

双極子-双極子相互作用や水素結合が生じるような置換基

主鎖の連結構造

エーテル結合は熱安定性と良好な加工性に寄与

スルフォン結合、スルフィド結合、ケトン結合、アミド結合、イミド結合:熱安定性、耐薬品性、耐候性に優れる

エステル結合、カーボネート結合は溶融成形時のみならず、製品になっても高温で加水分解しやすい

分子設計(2)原子団と特性

原子団とプラスチックの特性

冷延伸法によるナイロン繊維(水素結合の効果)

分子設計(3)結晶・非晶

結晶性 Tg とTm が存在

流動性良好、耐熱性良好、耐薬品性良好ガラス繊維等による補強効果大 (強度、弾性率、耐熱性)

非晶性 Tg のみ存在

透明性良好、耐衝撃性良好,異方性小、成形収縮小

結晶性、非晶性高分子のTg,弾性率

分子設計(4)液晶・結晶

液晶ポリマーと結晶性ポリマーの特徴

分子設計(5)分子鎖

非晶性、結晶性、液晶性の分子鎖

成形加工と分子設計(1)成形性

エンプラが実用的に使われるには、射出成形機、押出成形機等で成形し、

製品化することが必須⇒溶融時の熱安定性、流動性が特に重要。

共重合による熱安定化

POMはエチレンオキサイドとの共重合で熱安定化

適正な分子量

分子量は力学的性質と成形時の溶融粘度で相反関係

結晶性ポリマーの成形性

結晶化速度、結晶核剤

液晶構造で高流動

液晶芳香族ポリエステル

アロイ化

PPEは成形困難。しかしHIPSとのアロイ化で市場開花

添加材による成形、物性向上

添加材;熱安定剤、可塑剤、補強材(ゴムほか)、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維)

成形加工と分子設計(2)分子量

強靭性と加工性のバランス

一般的に分子量とともに、分子の絡み合いが強くなりエンプラの強度が上昇

強靭さと溶融時の熱安定性、溶融粘度の相反を考慮した分子量の 適化

PCの分子量と破壊挙動

非晶性のPCの場合、延性破壊から脆性破壊に変わる分子量依存性が大きい

成形加工と分子設計(3)結晶化速度

結晶化速度が大きいことは、とくに射出成形材料として 適。

成形サイクルが短くなるから

(POMに焦点をあて、結晶化速度と化学構造的な要因を後述)

エンプラ結晶化速度の比較

成形加工と分子設計(4)結晶核剤

結晶核剤はPPやポリエステルなどの結晶化を助ける

(核剤の例;PPではロジン系など)

核剤の効果 成形性 ;結晶化温度の上昇、 成形効率の向上

物性; 剛性向上、HDT上昇、 透明性向上

原料と重合法(1)代表的な汎用エンプラ

原料と重合法(2)代表的なスーパーエンプラ

高性能化とポリマー構造(1)POM1

POMの安定化

ホモポリマーは末端をアセチル化

コ―ポリマー(環状エーテル共重合 2 mol%)は末端をヒドロキシエチル化

POMの結晶構造

オキシメチレン単位9個が螺旋状に

5回転したものが 少反復単位

繊維周期17.39 Åの三方晶系の結晶

結晶融点 ホモポリマー 178 ℃

コポリマー 167 ℃

結晶化温度 150 ℃

PA、PBTに比べて結晶化速度が

極めて大きい

POM結晶の立体構造

高性能化とポリマー構造(1)POM2

結晶化度が75-85%と高結晶性、球晶を形成しているラメラ厚みは通常100 Å程度

ガラス転移温度はTanδのピーク温度から-56 ℃

極めて高度に結晶化した部分と、エラストマー的な非晶部分を有するポリマー

機械的性質:

高度に結晶化した結晶部のため強度、弾性率が高い

柔軟な非晶部分で衝撃エネルギーを吸収するため高い衝撃性を示す

Tgが低く融点が高いので、成形品の実用温度範囲(-30℃~100℃)での

強度、弾性率の変化が小さい。

成形加工性:

結晶化速度が高く、Tgも低いので成形サイクルも短く、ハイサイクル性

高性能化とポリマー構造(1)POM3

高性能化とポリマー構造(2)PPS1

開発当初は、直鎖状の分子量を上げることが困難

酸素存在下150℃以上融点以下での熱処理で高粘度化

⇒強度向上、射出成形が可能

(硫黄や酸素を介した架橋構造を推定)

PPSの製造フロー

NaOH NaSH

Na2S

DCB

NaCl

直鎖型 PPS

架橋型 PPS

極性溶媒

重縮合工程

樹脂分離工程

洗浄工程

乾燥工程

熱処理工程

塩化リチウム、有機酸塩、水などを重合系に共存させることで直鎖状でかなりの高分子量化が可能⇒ フィルム化、繊維化

高性能化とポリマー構造(2)PPS2

(射出成形用)

PPS単独ではもろい材料

ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状強化材、あるいは無機フィラーなどで強化

項 目 非強化 40%GF強化

引張強さ(kgf/cm2)

引張伸び(%)

曲げ強さ(kgf/cm2)

曲げ弾性率( ×104kgf/cm2)

アイゾット衝撃強さ

(ノッチ付き)(kgf/cm/cm)

アイゾット衝撃強さ

(ノッチなし)(kgf/cm/cm)

熱変形温度(℃)

670

1.5

980

3.9

<3.7

11

135

1400

0.9

1820

12

7.0

27

>265

高性能化とポリマー構造(2)PPS3

直鎖高分子化(成形品、フイルム、繊維用)

PPSの架橋タイプ、直鎖タイプの比較

項 目 架橋タイプ 直鎖タイプ

引張強さ(kgf/cm2)

伸び(%)

曲げ強さ(kgf/cm2)

曲げ弾性率( ×104kgf/cm2)

アイゾット衝撃強さ

(ノッチなし)(kgf・cm/cm)

670

1.5

980

3.9

11

800

12

1100

42

90

耐クリープ性

耐熱性

ビン圧入性

ウェルド強さ

×

×

×

×

液晶芳香族ポリエステルの主鎖骨格の基本はポリオキシベンゾエート

ホモポリマーは剛直であるために融点や液晶形成温度より低い温度で分解

異種モノマーとの共重合で液晶形成温度を低下

1) 単位鎖長の異なる剛直鎖の導入 Ⅰ型 LCP

2) ナフタレン骨格の導入によるクランクシャフト効果の利用 Ⅱ型 LCP

3) 柔軟なスペーサー単位の導入 Ⅲ型 LCP

高性能化とポリマー構造(3)LCP

O C

O

O O C

O

C

O

m n

O C

O

O

C

Om

n

O C

O

OCH2CH2O C

O

m nC

O

高性能化とポリマー構造(4)ポリイミド

ポリイミドはイミド結合と直接結合した芳香族環が共役構造⇒剛直で強固な構造

芳香族環が同一平面に配列、分子鎖が互いに密に充填。極性の高いイミド結合⇒分子鎖間の結合力も強固

O O

O

O O

O

H2N O NH2

HOOC COOH

NH

O O

HN O

n

N

O O

N O

nO O

+

Heat or Cat.HOOC COOH

NH

O O

HN O

n

ポリイミドは 高の優れた化学的、物理的性質を有するが、不溶不融。

ポリアミド酸の溶液を金属のドラムベルト上に押し出して乾燥し、 終的に300-500℃で熱処理してポリイミドフイルムを作る。

高性能化とポリマー構造(5)ポリエーテルイミド

ポリエーテルイミド:

• 非晶性 (Tg; 217℃)の熱可塑性樹脂

• 機械的性質は汎用エンプラでは得られない強度(高温時)をもつ

• 非強化グレードでHDT190℃⇒非晶性樹脂の中で優れた耐薬品性、耐熱水性

• 自動車分野、電気・電子分野、食品用途(電子レンジ容器)

ポリイミドの優れた性能を有しながら、熱可塑性の性能を付与⇒ 射出成形、押出成形可能なスーパーエンプラ

加工性を改良するため、主鎖にイソプロピリデン基、エーテル基を入れ、分子骨格の剛直性と柔軟性をバランス化

C

O

C

O

N

O C

CH3

CH3

C

O

C

O

N

On

ポリエーテルイミドの分子構造

重合技術の進歩(1)環境対応PC

ビスフェノールAとホスゲンから界面重縮合で現在大量に工業生産

ホスゲンの毒性、溶媒として大量の塩化メチレンと苛性ソーダ水溶液を使用⇒安全面、環境面で問題

ジフェニルカーボネートを用いて溶融重縮合する方法が旭化成によって確立

• ビスフェノールA,炭酸ガス,エチレンオキサイドからPCとエチレングリコールが生成

• 世界で合計十数万トン/年の規模。

PCの新製造法

HOOH

OO

O

O

(MeO)2CO

MeOH

PhOH

(PhO)2CO

CO2+

Polycarbonate

HO OH

ROMP

R1 R2

CH2CH2

n

mCH2=CH2

R1 R2 n R1 R2 n

H2

開環重合型

付加共重合型

開環メタセシス重合

付加共重合

水素化

重合技術の進歩(2)COP

光学特性に優れる新しいエンプラとして注目

熱的性質

荷重たわみ温度、連続使用温度、線膨脹係数

機械的性質

引張り強度、曲げ弾性率、衝撃強度(ノッチ付きアイゾット、面衝撃)

疲労特性、摺動特性(摩擦係数)

化学的性質

耐薬品性、ストレスクラッキング

電気特性

燃焼特性

限界酸素指数、UL規格

耐候性

光学特性

透明性、複屈折

加工性

実用物性(1)評価項目

実用物性(2)特徴のまとめ

エンプラ・スーパーエンプラの特徴一覧表

ABS PA6

PA66

POM PC 変性PPE

PBT GF-PET

PPS PAR PSF PES PEEK PEI PAI

軽量性 ◎ ○ ○ △ ○ ◎ △ △ △ ○ ○ △ △ △ △

成形性 ◎ ○ △ ○ △ ○ ○ △ △ △ △ △ × × ×

成形収縮率 ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎

吸水性 △ × × ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ △ △

耐煮沸水性 × △ △ ○ ○ ○ × × ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ △

低温物性 ○ ○ ○ ○ ◎ △ ○ ○ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

強靱性 ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎

耐クリープ性 △ △ △ ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

耐溶剤性 △ ◎ ◎ ◎ × △ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎

耐候性 × △ × × ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎

難燃性 ○ ○ ○ × ◎ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

電気特性 ○ △ △ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

耐摩擦摩耗性 △ ○ ○ ○ △ △ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎

容積コスト ◎ ◎ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ △ △ △ × × × ×

◎;特に優れる ○;優れる △;あまり良好でない ×;劣る

実用物性(3)熱的基本性質

エンプラの熱的性質

比重比熱 熱伝導率 線膨張係数 ガラス 融点

Kj/kg・K W/m・K 非強化 GF30%化 転移点 ℃10-5/K 10-5/K ℃

PA6 1.14 2 0.2~0.3 8~15 2.2~3.0 30~50 219~226PA66 1.14 2 0.2~0.3 8~10 2.5~3.0 50~65 259~265

POM 1.42 1.5 0.05~0.2 8~122~4(GF25%)

-50~-60 163~180

PC 1.2 1.3 0.2~0.3 6~7 2~3 150~156 -m-PPE 1.06 0.2 6~7 2.5~3.5 140~150 -PBT 1.31 1.2 0.1~0.2 8~10 2~3 20~25 224~228PET 1.35 0.3 - 3~5 67~71 254~260PAR 1.21 5~6 3~6 181~195 -PSF 1.24 1.1 0.1~0.2 5.5 2~4 181~190 -PES 1.37 1.1 0.2 5.5 2.3 222~225 -PEI 1.27 0.2 5.6 2 210~217 -PPS 1.34 1 0.3 2~4 2~3 85~88 278~285PEEK 1.3 1.3 0.3 4~5 1~3 143~145 334LCP(1) 1.3~1.4 0.3 -0.5~11 1.5~2.0 400~450

[鉄] 比重 7.4 熱伝導率80 線膨張係数1.2 [アルミ] 比重2.7 熱伝導率237 線膨張係数2.4 単位;上表と同じ

実用物性(4)短期耐熱性

荷重たわみ温度(HDT: Heat Distortion Temperature)

1)原理

試験片の両端を加熱浴槽中で支え、

中央の荷重棒によって、試験片に

所定の曲げ応力を加えつつ、加熱媒体

の温度を2 ℃/分の速度で上昇させ、

試験片のたわみが所定の量に達した

ときの加熱媒体の温度をもって、その

材料の熱変形温度とする

2)特徴

0.01 mm毎のたわみ温度の表示可能

ビカット軟化点温度の測定も可能

3)測定範囲

試料数; 6本掛け

温度範囲; 常温から200 ℃

変異設定範囲; 0 - 0.35 mm

HDT測定器

実用物性(5)長期耐熱性

UL規格による定義:数万時間の高温暴露により物性が半減する温度

短期耐熱性と長期耐熱性は大まかには相関するが、ガラス繊維のようなフィラーが入った場合には全く相関しない場合もあることに注意。

実用物性(6)フィルムの耐熱性

ポリマー 常 態加 熱

250℃ 10分

加熱処理

350℃ 10分

加熱処理

450℃ 10分ポリエチレン 分解 分解

ポリプロピレン 分解 分解

ポリ塩化ビニル 分解 分解

ポリエステル 分解

ポリウレタン 分解 分解

ポリスルホン

ポリエーテルイミド

ポリエーテルエーテルケトン

ポリテトラフルオロエチレン

ポリアミドイミド

ポリイミド

実用物性(7)機械的性質

プラスチックの特徴的な機械的性質環境温度に著しく依存し、長期間応力の負荷で変形⇒粘弾性、クリープ現象

引張試験;機械的な物性試験のなかで、もっとも基本的なもの

曲げ試験;実際に使用するときは引張りより、曲げの状況で力が加わるケースが多い

耐疲労性;繰り返し応力を加えた場合、一回の応力より少ない応力で破壊

曲げ弾性と温度の関係 エンプラの疲労曲線

実用物性(8)衝撃特性1

プラスチックに高速で荷重を加えた場合は、低速のときよりも遥かに弱い荷重で破壊試験方法(1):ノッチ付きアイゾット衝撃試験、シャルピー衝撃試験、引張り衝撃試験試験方法(2):物が落下し衝突する際の衝撃性は落錐式衝撃試験(面衝撃)

PCのメルトフローと耐衝撃性の関係

衝撃特性(高速荷重特性)

実用物性(8)衝撃特性2

各材料と耐衝撃性

実用物性(9)摺動特性・硬さ

摺動特性

摩擦、摩耗に関する性質

プラスチックを機構部品として使用する場合十分考慮して設計が必要

硬さ

評価方法:ロックウェル硬さ(鋼球圧子を一定の 荷重で押しつける)

:ショアー硬さ(針状圧子)

各種プラスチックの動摩擦係数

実用物性(10)耐薬品性1

プラスチックは耐薬品性という面で様々な注意すべき点をもっている。

耐薬品性

耐酸・耐アルカリ性

耐有機溶剤性

耐スチーム性

耐熱水性

環境応力劣化(ストレスクラッキング)

応力が内部、または外部に存在したとき、薬品と応力との相互作用により

成形品表面に亀裂が発生

ストレスクラックの材料要因:分子量分布、結晶化度、熱履歴等

実用物性(10)耐薬品性2

エンプラのストレスクラッキング

薬品類種類

PC 変性PPE PA66 PBT POM

無機酸 △~○ ○ ×~△ ×~△ ×

無機アルカリ ×~△ ○ ×~△ × △~○

無機塩類 ○ ○ ×~△ ○ ○

アルコール ×~△ ×~△ ○ ×~△ ○

ケトン × × ○ ○ ○

エステル × × ○ ○ ○

塩素化溶剤 × × ○ ○ ○

芳香族系溶剤 × × ○ ○ ○

ガソリン × × ○ ○ ○

灯油 ×~△ × ○ ○ ○

一般潤滑油 △~○ ○ ○ ○ ○

グリース ○ ○ ○ ○

実用物性(11)電気・燃焼・耐候性

電気的性質

1)電気絶縁性;体積固有抵抗、表面固有抵抗

吸水量の変化、補強材、安定剤の種類によっても変化

2)絶縁破壊電圧;分子構造内に極性基をもたない材料が高い絶縁破壊圧を持つ

3)誘電率;高電圧や高周波機器の絶縁材料にはεおよびtanδの小さな材料を選ぶ

tanδの小さな代表例として、PPE,PPS等

4)耐アーク性;プラスチック表面でアーク(コロナ放電)を発生させると、アークの高熱

より分解、やがて炭化する。高電圧下の材料の絶縁体選定には

耐アーク性が必要。

燃焼性: 電取法、IEC、UL、CSA、MVSS - 302等

耐候性:人工促進試験、屋外暴露

実用物性(12)光学特性

CD,DVD等記録媒体透明PC基板に精密な(ミクロンオーダー)溝(グループ)片面に記録層の金属の薄膜が蒸着された鏡面溝に沿って、レーザー光線を当て記録の書き込みや読み取り

基板に必要な特性レーザー光で読み取るため透明かつ複屈折が小さいこと。流動性、耐衝撃性、吸水率とコストが重要。 近旭化成によって開発された溶融重合法PCが 適である。

(PCは分子量をさげても耐衝撃維持し、流動性アップ可⇒成形歪が小さくなり、複屈折が小さくなる)

実用物性(13)加工性

1.流動性

成形における流動性(Liquidity)は加熱溶融時に圧力を加えた際の樹脂の挙動。

メルトフローインデックス(Melt Index MI)測定;

ヒータで加熱された円筒容器内で一定量の樹脂を、定められた温度で加熱・加

圧し、容器底部のノズルから押し出された樹脂量を測定。単位はg/10min

2.溶融粘度特性

高化式フローテスターを用いて測定。ランナー設計、キャビティ内流動の検討を

行うためには、せん断速度ーせん断応力の関係、溶融粘度の温度依存性など

を測定

3.スパイラル流動性

射出成形における流動特性を測定する方法; 蚊取り線香様の渦巻き溝を持つ

射出成形用金型を用いて、樹脂の流れる長さ(単位:mm)を測定し流動性を計測

特徴と用途まとめ(1)五大汎用エンプラ

五大汎用エンプラの市場におけるポジション

PC PA m-PPE POM PBT

特徴透明、耐衝撃性、軽量

高靭性、耐熱性低変形、難燃化が容易

自己潤滑性、耐薬品性、軽量

耐熱性、難燃化が容易

市場への導入

透明、軽量を活かしガラス代替(既存のPVC、PMMA、PSでは耐熱性不足)

工業用チューブ、食品包装フィルムモノフィラメント 分野で既存のPVC、オレフィンを代替

機器ハウジングの難燃化対応でPC、ABS、PSを代替

量産性、デザインの自由度大の特徴を活かし(*)亜鉛、アルミダイキャスト部品を代替

フェノール、DAPなどの熱硬化性樹脂(コスト面で課題)を代替

主用途

カーポート、サンルーム等の建材シートCD、DVD等記録媒体

自動車エンジンルーム構造部品、ハーネス コネクター等電子部品

プリンター、FAX機器ハウジング

金属性のギヤ、軸受け、レバー等機械部品

電子部品、自動車電装部品

備考

世界市場300万トン/年(エンプラで 大)

(*)部品単価を大幅ダウン

連続使用可能温度120℃

主要アプリケーション

機構部品 構造部品 デバイス

家電・情報機器

自動車

その他

(建築・工業)

PA

特徴と用途まとめ(2)エンプラ共存マップ

エンプラ共存マップ

POM

m-PPE

PBT

PA

PC

特徴と用途まとめ(3)スーパーエンプラ

PPS 連続使温度 200℃~240℃

高強度、剛性を保ち、高温クリープ性があり、

寸法精度、寸法安定性良好で極めて低い吸水率

LCP 荷重たわみ温度 240℃~280℃を有す。

難燃性、耐薬品性、低成形収縮率。

高流動で高い耐熱性

PES 連続使用温度 180℃。

アルカリ オイル類 アルコール類に優れる。

150℃~160℃のスチーム耐水性

TPI 連続使温度 240℃

PEEK 連続使用 250℃

耐薬品、耐摩耗性

PAI 射出成形可能な樹脂の中では、 高部類に入る280℃の耐熱性を有す。

耐薬品性、摩擦摩耗特性に優れる。

高温での連続し使用温度に耐えうる。

Ex 260℃×1500時間

特徴と用途(1)半芳香族ナイロン

テレフタル酸を共重合した半芳香族ナイロンは脂肪族ナイロン(PA6,66)に比

べて、ガラス転位温度や融点が高い。

半芳香族ナイロンの構造と熱的性質

特徴と用途(2)PA9T

PA9T(半芳香族ナイロン)

耐熱性がPA6,66より良好

耐熱性はPA6T,PA46系など

と同等であるが、吸水時の寸法

精度に優れている

(長鎖 ジアミン構造の効果)

クラレが独自開発

自動車部品、コネクター、LED

反射板等 用途開発が急拡大

吸水時の寸法変化

特徴と用途(3)PPS

PPSの特徴

耐熱性がよい。スーパーエンプラ中PEEKに次ぐ。HDT;260℃、連続使用温度;200-240℃、低温特性‐50℃でも常温と同等

線膨張係数はエンプラ中でも極めて小さく、金属と比較しても小さい。成形時、高温、高温高湿下での寸法変化が非常に少ない。

難燃剤を添加しなくてもUL94V-0/5(無滴下)

耐薬品性;200℃以下では溶かす溶剤なし。酸、アルカリに強い。

電気絶縁性および高周波特性にすぐれる。

成形性がよい。薄肉成形、精密成形に向いている。

欠点は脆いこと

用途

射出成形;金属や熱硬化性樹脂代替を中心に各種用途に向けられる

フィルム;PETとPIフィルムの中間の性能。コンデンサーや電気絶縁材等

繊維;耐熱バグフイルター(東レ、東洋紡)等

特徴と用途(4)PPS繊維

PPS繊維 バグフィルター

PPS繊維高温時の耐酸、耐アルカリ性、耐熱水性が大きな特徴全芳香族アラミド繊維より優れている。

特徴と用途(5)ポリスルホン

PSFTg190℃で非晶性透明樹脂酸やアルカリに対する耐性。耐熱水や耐スチーム性、オートクレーブ殺菌可能分離膜用途PESTg225℃で非晶性透明樹脂で 高水準の耐熱性PSFを上回る耐薬品性や耐加水分解性光学フイルム用途、炭素繊維/エポキシ複合材料の靭性向上材など。

ポリスルホン系樹脂

特徴と用途(6)LCP

LCPの全需要の60%がコネクター

LCPはコネクターの技術革新に伴う材料転換の流れに乗ることに成功。

コネクター環境変化と材質転換

年代 1970 1980 1990 2000 2010

実装条件の変化 リフロ-→SMT化(1977) →ハンダの無鉛化(1998)

端子ピッチの変化 標準ピッチ → ハーフピッチ → クオーターピッチ

環境条件の変化 → ノンハロゲン化(1998)

材質の変化 PBT、PA66 → PPS → LCP、耐熱PA(PA9T、PA46) →LCP

特徴 DTUL:210度 DTUL:264度 高流動性 ハロゲン系難燃剤不使用

240度 パリレス

特徴と用途(7)LCP表面実装

表面実装

SMT(Surface Mount Technology)と呼ばれる。

電子部品を持つほとんどの製品で採用

プロセス

クリームハンダ印刷機で基板上へハンダ印刷

チップマウンターで部品の実装

リフロー炉で熱を加えハンダを溶かし

部品を基板に固定

表面実装

LCP採用の理由鉛フリーハンダ採用 HDT280℃以上ファインピッチ化(超高流動性が必要)ノンハロゲン化(環境問題から)

特徴と用途(8)PEEK

PEEKの特徴

難燃材を加えなくてもV-0(UL-94規格)

耐熱水性(エーテル、ケトン結合は加水分解に極めて強い)、

高温時の耐酸性、耐アルカリ性(ポリイミドは劣る)

耐摩耗、耐摺動性

電気特性良好

連続使用温度240℃、融点334-340℃、Tg143℃であり、エンプラ中 高クラス

用途;航空宇宙、自動車、電気・電子、食品加工、医療

ポリエーテルケトン(PEK)

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

ポリエーテルケトンケトン(PEKK)

PTFEの特徴

連続使用温度がマイナス100℃から 高260℃まで

耐候性、耐薬品性、低摩擦性を有する 高級スーパーエンプラ

その歴史と多彩な用途

第二次世界大戦中米国マンハッタン計画のウラン235濃縮工程でフッ素やフッ化

水素酸に耐えるライニング素材として開発

国内年産3万トン弱、そのなかでPTFEが70%、PFA(四フッ化エチレン・パーフル

オロアルコキシ共重合体)は熱溶融成形可能。その他FEP、ETFE、PVDF等の共

重合体を含め9品種

ライニング、パイプ、チューブ、塗料ほか

日用品;炊飯器、フライパンやアイロンの焦げ付き防止用や離型剤

特徴と用途(9)フッ素樹脂

特徴と用途(10)PTFEの高機能性

PTFEの超高機能用途例抜群の耐候性;ガラス繊維にPTFEをコーティング。数10年の使用に耐える。東京ドー

ムのテントなどにも採用。鉄橋の防さび塗料など2軸延伸フィルムは14億個 ⁄ m²の微細な穴。水蒸気は通すが、雨は通さない。アウ

トドア品、とくにレインウエヤなど

サッカー南ア大会競技場のテント 防水透湿性のメカニズム

成形加工技術(1)進歩

成形加工技術

プラスチックスの発展と軌を一つにさまざまな技術革新

メカトロニクスの目覚ましい発展⇒成形材料(耐熱エンプラ)の厳密な温度制御と連続安定成形

射出成形機にどのような機能が必要か。

高度な射出制御機能

高性能スクリューと正確な計量制御機能

繰返精度および再現性の優れた機能

成形機の材質の選定、また金型の温度制御、材質にも要注意。

ガス射出成形

大形部品の成形に有用

プラスッチックを金型に充填、保圧をかけ冷却する際に金型に不活性ガスを導入

成形品のひけ、そり、表面の平滑度や光沢の改善

成形加工技術(2)PCの例

1.射出成形

精密成型技術 寸法精度1/100mm

カメラ部品(鏡胴、外装)、OA機器(FDDキャリッジ、複写機ギヤ類)

1)薄肉化、形状の複雑化

2)抜きテーパー小

3)表面状態(外観、粗さ)

超精密成形技術

光学ディスク基板や光学レンズはミクロンオーダーの精度

材料-金型-成形機含めたシステム技術

2.押出成形技術(シート関連技術)

3.表面機能化技術

塗装、印刷、メッキ

ハードコードはUV硬化タイプ、アクリル系、ウレタン系、シリコン系

オートバイ風防、保護具、ゴーグル、窓ガラス、レンズ等

複合化(1)機能

複合化により付与される機能と充填剤

機 能 特 性 複 合 素 材 (例)

力学的

機能

引張特性 CF、GF、有機質繊維(合成繊維、コットン)

圧縮特性 マイカ、ガラスフレーク

衝撃特性 GF、繊維質材料

摩擦・摩耗特性 CF、黒鉛、硫化モリブデン

電気的

機能

絶縁特性 マイカ、クレー

導電性 CF、CB、金属粉および繊維(Au、Ag、Ni、Cu、Al)、金属コーティング

フィラー

熱的機能

耐熱性 CF、GF、タルク、マイカ

耐燃性、

難燃性

水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、三酸化モリブデン、含水無機材料

磁気的機能 磁気特性 磁性材料(フェライト、希土コバルトなど)

防音機能 遮音性 鉛、鉄粉、酸化鉄、砂鉄

GF:ガラス繊維 CF:炭素繊維 CB:カーボンブラック

複合化(2)GF強化

プラスチック 熱変形温度(℃)18.6kg/cm2 ガラス繊維添加による熱変形温度

の増加(℃)分

名称 ガラス繊維

無添加

ガラス繊維

20%添加

ABS樹脂 88 102 14

AS樹脂 91 102 11

ポリスチレン 93 104 11

変性PPE 129 143 14

ポリカーボネート 132 143 11

ポリスルホン 174 182 8

ポリアセタール 124 157 33

アセタール共重合体 110 163 53

ポリプロピレン 60 120-149 60-89

高密度ポリエチレン 49 127 78

変性ポリプロピレン a) 60 149 89

エチレン-プロピレン共重合体 49 143 94

ナイロン6-10 57 143 159

ナイロン6 49 216 169

ナイロン6-6 71 218 183

ポリエチレンテレフタレート 104 227ー254 123

a:HERCULES社製<PCO72>

複合化PCの流動特性と成形収縮率

複合化(3)PCの例

ナイロンの複合化技術

クレイ(ケイ酸塩)系のナノコンポジット

ナノメーターサイズ(1/1000ミクロン) 通常のガラス繊維やタルクノ強化剤は

ミクロンサイズ

「ナノ分散」モデル

d;粒子間距離、A;粒子の全表面積

r;粒子半径、 V;体積分率

一定濃度(体積分率)で粒子半径が

小さくなる⇒、急に粒子間距離が減少

し、粒子表面積が増大。

数%のフィラーで粒子間距離を

ナノメータ-領域 ナノコンポジットナイロンの透過電顕写真

d=[(4π21/2/3V)1/3-2 ]・rA=3V/100r

複合化(4)ナノコンポジット1

複合化(4)ナノコンポジット2

ナノコンポジットナイロンの吸水寸法変化

アロイ(1)目的

制振性、極細繊維化、粘着・接着性、生体適合性、多孔性、高分子化、制電性、自己潤滑制、めっき性親水性、透明化、相溶化、可塑化、その他

耐衝撃性、耐環境応力亀裂性、高強度・高弾性率化、難燃化、耐トラッキング性、耐屈曲、疲れ性、耐摩耗性、耐引裂性、摩擦特性、透過特性、寸法安定性、耐クリープ・応力緩和性、その他

耐熱性、耐寒性、耐抽出・移行性、耐油性、耐水性、耐薬品・耐剤性、耐候性、耐変色性、耐オゾン性、その他

流動性、収縮性、バラス効果、表面肌、グリーン強さ、熱溶融強さ、フロー成形性、接着性、離形性、結晶性、配向性、作業性、その他

機能化

高性能化

耐久性

物 性

成形加工性

増量、代用、省資源、リサイクル、その他経済性

アロイ(2)市場

)PA POM PC PPE PBT PET PPS PSF PAR

ポリオレフィン ○ ○ ○ △ ○

変性ポリオレフィン ◎ ○ ○ ○

ABS ◎ ○ △ ○

PS樹脂 ◎ ● ○

ポリウレタン ○ ○

PA ○ ◎ △ △ ○

PC △ ○ ○

PBT □ ○ △

PET □ ○ ○ ○ ○

PPE ◎ △ △

PAR ○

LCP □ □ □ □ □

PTFE △ △ ○ △ △ △ △ △

● 市場規模大(数万t/y以上)、◎ かなりの市場規模(数千-万t/y)、○ 本格 市品、△ 市場開発中、 □ 研究中

新規エンプラ(1)現状

1990年代にシクロオレフィンポリマー、脂肪族ケトン、SPS、2000年代には

ポリ乳酸が市場導入された。

1)ポリエチレンナフタレート(PEN);PENフイルムは1989年に帝人がはじめて事業化。徐々に市場拡大

2)シクロオレフィンポリマー;日本ゼオンがはじめて事業化。光学特性に優れ、

市場拡大

3)脂肪族ケトン;シェル社、3、5万トン/年

POMと類似の性質であったが、成形時の

熱安定性、耐候性等の課題があり生産撤退。

旭化成は高強度繊維として検討中か

4)SPS;出光/ダウ(日本5000トン/年、ドイツ3万トン/年)結晶化PSで、高い耐熱性と耐薬品性。市場掴めず生産撤退

5)ポリ乳酸;2002年にカーギル・ダウ(14万トン/年)。2005年ダウは撤退し、代って2007年帝人が参画、他社も市場開発中。徐々に市場拡大か

エチレンとCOの交互共重合体

新規エンプラ(2)PEN

ポリエステル ジカルボン成分 テレフタル酸

2、6-ナフタレンジカルボン酸

ジオール成分 エチレングリコール

1、3-プロパンジオール

1、4-ブタンジオール

1、4-シクロヘキサンジメタノール

ポリエチレンナフタレート(PEN)

PETに比べて、耐熱、強度が優れる

ガス(酸素、炭酸ガス、水蒸気)透過性

が低い

帝人で商品化され、APS写真、

電子部品用素材、太陽電池 等

PENの構造

新規エンプラ(3)ポリ乳酸

ポリ乳酸

トウモロコシなどの再生可能な植物資源からとれるデンプンを原料に、乳酸発酵

ポリマーは自然界で水と二酸化炭素に分解される

透明硬質樹脂である。

耐熱性、耐衝撃に劣る。加水分解しやすい。結晶化速度が遅い等の欠点が、近

年克服されてきた

PPなどとのアロイ化でも実用物性が改善

用途;フィルム用途、携帯電話ほか

カーボンニュートラル;バイオプラスチック

はサーマルリサイクルしても大気中の

炭酸ガスのバランスをくずさない。

ポリ乳酸

新規エンプラ(4)SPS

新規エンプラ(5)COP

シクロオレフィンポリマー(COP)

脂環構造をもつ、炭化水素系の新エンプラ(日本ゼオン)

低吸湿性、耐熱性、透明性、低屈性率など光学特性に優れる

レンズ分野、液晶ディスプレー分野で開花(光デイスクでは成功せず)

吸水率と寸法変化(50℃、湿度90%)

COP PMMA

COP PMMA

エンプラ事業(1)歴史から学ぶ

1、期待どおり伸びなかったエンプラから学ぶこと

成長牽引力となるターゲット分野の明確化

適な市場導入タイミング。 早すぎても、遅すぎても成功確率は小さくなる

既存材料との市場オーバーラップが少ないこと

過大な設備投資を避けること

特性に大きな問題がないこと、とくに成形加工性の欠点は致命的

期待どうり伸びない、または撤退したエンプラにはコスト―パフォーマンスの問題もあるが、加工性の欠点が目立っている。

2.エンプラ事業のジレンマ

1990年以降に導入されたプラスチックはコスト競争に問題

既存の対抗品と競争のため、 初から大規模プラントの建設⇒低稼働率は採算性で厳しい。

「筋の良い(=伸びる)」エンプラかどうか。その見極めはますます困難

エンプラ事業(2)耐熱・価格

2000年以降に新規導入発表されたエンプラの多くは多大な設備投資の必要のない

既存ポリマーの改質やアロイであった。

すでに既存材料で市場は概ねカバーされている。「耐熱―価格曲線」の下方に位置するエンプラの新規参入は難しい

新規プラスチック事業の黒字化は5年程度は稀で、多くの場合10年以上を要す

エンプラ市場カバーマップ(耐熱―価格曲線;結晶性樹脂)

エンプラ事業(3)LCP

エンプラ事業の成功例といわれるLCP;市場導入から離陸期までに10年を必要

LCPの成長プロセス

エンプラ事業(4)環境・資源

環境・資源が個々のエンプラの市場競争にどのような影響を与えるか。

1)地球資源保護の観点から環境にやさしい、リサイクルしやすいエンプラへのシフト。

また環境対応技術開発が重要。

2)鉛フリーはんだ

耐熱性が220℃から280℃以上へ

3)ハロゲンフリー

西欧のWEEE&RoHS指令対応;例としてハロゲン系難燃剤使用のABSから非ハロ

ゲン系難燃剤使用のPC/ABSアロイへ

4)REACH規制、改正化審法

化学物質の規制による影響(添加剤フリーが有利)

エンプラ事業(5)国際化と生産統合

1.グローバル化とともに電気、自動車等の製造業の生産が国内から海外に移転が加速⇒エンプラ原料並びにエンプラ製造の生産拠点が国内統合、または海外移転へ2.エンプラ製造工場の統合例⇒PBTのバッチ重合(2万トン/年以下)から連続重合へ(5-6万トン/年規模)

ポリプラ・帝人(国内 2002年)、 東レ・BASF(マレーシヤ 2006年)

PBT原料と重合

おわりに

1.低炭素社会に向けて

エンプラの原料、製造プロセス、物流、グレード統合、リサイクル等の技術革新による低炭素化加速

例えば自動車の車体軽量化で燃費改善⇒ 金属部品、窓ガラス等のエンプラへの置き換え加速化。売れ筋のハイブリッド車、エコカー減税対応車

2.環境対応(RoHS指令); ハロゲンフリー難燃化、鉛フリーSMT

省エネ、長寿命 かつ公衆の安全、安心に寄与する材料

3.グローバル化

海外生産拠点の移転、現地完結型研究開発に伴うグローバル化への対応

4.高機能エンプラの可能性

付加価値で、特定分野をターゲットしたエンプラ創成の機会が増加⇒ 電気・電子

材料、電池、自動車、航空宇宙、原子力、医療分野などで複合的な特性 を有する

高性能・高機能エンプラ

ポリマー略号

汎用プラスチックス、その他

PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)HIPS(高衝撃ポリ

スチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共

重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVA (ポリビニルアル

コール)

汎用エンプラ、その他

PA(ポリアミド、ナイロン)、POM(ポリオキシメチレン、ポリアセタール)、PC(ポリカーボネート)、m-PP

E(変性ポリフェニレンエーテルまたはm-PPO;変性ポリフェニレンオキサイドともいう)、PBT(ポリブチ

レンテレフタレート)、GF-PET(GF強化ポリエチレンテレフタレート)、TPX(ポリメチルペンテン)、PCT(ポ

リシクロヘキサン ジメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマーまたはCPO;環状ポリオレフィンとも

いう)、SPS(シンジオタクチックポリスチレン)、PA6(εカプロラクタム)、PA66(ヘキサメチレンジアミン/

アジピン酸)、PA610(ヘキサメ チレンジアミン/セバシン酸)、PA6T(ヘキサメチレンジアミン/テレフタ

ル酸)、PA9T(ノナメチレンジアミン/テレフタル酸)、PA46(ジアミノブタン/アジピン酸)、PEN(ポリエ

チレンナフタレート)

スーパーエンプラ、その他

PSF(PSU)(ポリスルフォン)、PES(ポリエーテルスルフォン)、PPS(ポリフェニレンスルフ イド、PAR(

ポリアリレート)、 PAI(ポリアミドイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、TPI(熱可塑性ポリイミド)、PI( ポリ

イミド)、LCP(液晶ポリエステル)、 PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、FR(ポリフルオロエチレン

;フッ素樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)

熱硬化性樹脂

PF(フェノールホルムアルデヒド樹脂)、UF(尿素ホルムアルデヒド樹脂)、MF(メラミンホルムアルデヒド

樹脂)

参考文献

1)片岡俊郎他 エンジニヤリングプラスチック 共立出版(1987)

2)安田武夫 エンジニアリングプラスチック活用ガイド 日刊工業新聞社(1991)

3)荻野一善他 高分子化学 基礎と応用 第2版 東京化学同人(1998)

4)井上俊英他 エンジニアリングプラスチック 共立出版(2004)

5)府川伊三郎 化学と教育 54巻 1号 (2006)

6)岡田常義 Seikei-Kakou Vol.20、No.8(2008)

7)化学工業年鑑 2008年版 化学工業日報社(2008)

8)日本化学会 化学ミュージアム

9)旭化成(株)プラスチック豆辞典

10)三協化成(株)ホームページ

11)クラレ(株)技術資料

12)帝人(株)ホームページ

13)出光(株)ホームページ

14)東洋紡(株)技術資料

15)フリー百科事典 ウィキぺディア

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