外国語教育におけるictを効果的に利用した 教授法の研究 · 2011. 10. 24. ·...

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  • 第35回 実践研究助成───33

    小学校

    研究課題

    外国語教育におけるICTを効果的に利用した 教授法の研究

    副題

    ~自立学習システムと最適な外国語学習環境の構築を通して~

    学校名 つくば市立葛城小学校

    所在地 〒305-0822

    茨城県つくば市苅間689番地

    学級数 12

    児童・生徒数 346名

    職員数/会員数 20名

    学校長 海﨑 豊

    研究代表者 野村 光弘

    ホームページ アドレス www.tsukuba.ed.jp/~katsuragi

    1.はじめに

    平成 20 年3月 28 日告示の小学校学習指導要領で、日本の

    外国語教育史上初めて小学校に「外国語活動」が導入された。

    目的は、外国語を通じて、言語や文化について体験的な理解

    を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の

    育成を図ることである。さらに、外国語の音声や基本的な表

    現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を

    養うことがあげられている。

    これを受けて本校では、平成 20 年度の移行期に向けて小

    学校における「外国語活動」の研修を行ってきた。取り組み

    としては、全学年で月に1~2回程度(1モジュール 20 分、

    年間 18 モジュール)の英語活動「Enjoy English」の時間を

    設け実践してきた。「Enjoy English」の時間の英語活動と

    AET 訪問の英語学習(AET とのコミュニケーション活動)

    をリンクさせることによって、一年間を通して充実した外国

    語活動を継続的に行い、英語に慣れ親しむことが目的である。

    その結果、昨年度の校内学習発表会では、第5学年の児童が

    英語劇に挑戦し、家庭や地域の方々の前で堂々と英語による

    演劇ができるまにでなった。このような体験的な外国語活動

    を通して、児童は英語の音声や基本的な表現の仕方に慣れ親

    しんでいった。しかし、児童の活動状況を分析してみると次

    のような課題が残った。

    (1)音声英語の基本的表現力の完全習得が不十分である。

    (2)積極的なコミュニケーション能力と態度が育っていない

    (体験不足)。

    (3)自主学習の意識が低い。

    (4)音声面の指導が不安である(教師の外国語指導に対する

    意識改革)。

    これらの課題を解決するためには、児童が自ら学習課題を

    設定して自主学習に取り組み、他者とのかかわり合いを通し

    て様々な考えを知り、問題を解決していく交流学習の充実が

    必要不可欠である。さらに、児童一人一人の個性や能力に応

    じた学習プログラムを開発し、インターネットや ICT 機器

    の活用を工夫して基本的な学習内容(音声英語の基本的表現

    力)の習得と交流学習が連続して行われる学習活動を展開す

    る。これによって、交流学習が総合的に構築され児童の学び

    を広げ深めることができるのではないかと考えた。

    2.研究の目的

    「外国語活動」の時間において、英語を手段としたコミュ

    ニケーション能力を向上させ、言語・異文化理解、国語力の

    育成を含めた広い意味での言語力を高めるためには、デジタ

    ル教材やネットワークを活用した体験的な「外国語活動」を

    さらに充実させる必要がある。そこで、本研究では ICT を

    利用した効果的な「外国語活動」の教授法の在り方を追究す

    るために以下の目標を設定した。

    (1)無線 LAN・ICT 授業支援システムを活用した「学びの

    連続性」の追究と検証

    (2)ICT を用いた自立学習支援システム(e ラーニング)の

    構築と検証

    実践研究助成

    小学校

  • 34───第35回 実践研究助成

    <資料1:授業支援システム>

    3.研究の方法

    (1) 無線 LAN・ICT 授業支援システムを活用した学び

    の連続性の追究と検証

    電子情報ボードと無線 LAN ノートパソコン、プロジェク

    タを一式にまとめた無線 LAN・ICT 授業支援システムを構

    築する(資料1)。教室でのデジタル教材(デジタル教科書、

    コンテンツなど)を活用した音声面を中心とした言語活動と、

    コミュニケーション能力や異文化理解を高めるための交流学

    習の二つの活動を行う。それらの活動が教室を移動すること

    なく、連続して行うことができる学習スタイル(学びの連続

    性)を究明し、その効

    果を検証する。

    さらに、外国語活動

    の時間で検証した無線

    LAN・ICT 授業支援シ

    ステムを各教科の学習

    活動に応用し、授業改

    善のための学習効果を

    検証する。

    (2) ICT を用いた自立学習支援システム(e ラーニン

    グ)の構築と検証

    外国語教育への ICT の導入を考えたときに、時や場所を

    問わず児童の自己管理によって進められる「自立学習」を切

    り離して考えることはできない。各自のペースで容易に取り

    組める ICT を活用した「自立学習」が今後の外国語教育改

    革の切り札になることは確かである。

    そこで、「外国語活動」の授業が終了した後でも、児童が

    自己管理のもとで、いつでも、どこでも自由に学校生活の中

    で外国語学習に取り組める自立学習支援システム(e ラーニ

    ング)を構築する。そして、ツールとして習得した英語を、

    交流学習(オーストラリアの小中学生)などの試せる学習場

    面へとスムーズに移行できるような学習過程を究明し、その

    学習効果を検証する。

    4.研究の内容と経過

    (1) 無線 LAN・ICT 授業支援システムの構築を通して

    ① 情報量が豊富なデジタル教材の活用

    音声面を中心とした言語活動を充実させるために、英語ノ

    ートのデジタル教材を普通教室でいつでも、すぐに活用でき

    るようなシステムを構築した。実際は、無線 LAN ノートパ

    ソコンとプロジェクタ、電子情報ボード、書画カメラ、スク

    リーンをワゴンに設置し、教室間の移動をスムーズにした。

    これにより、AET の訪問がなくても外国語活動の音声面の

    指導が充実した。教師は、自信を持って授業に臨めるように

    なった。

    さらに、自作のデジタル教材やゲーム、チャンツなどが効

    果的に用いてできるようになり、児童は自信をつけながら分

    かる授業で楽しく英語を学習していった。

    ② 日豪での小中学生遠隔交流学習

    コミュニケーション能力や異文化理解を深めるために、

    NPO 法人ランゲージディスカバリーが提供する小中学生・

    新国際理解プログラムの「パレーゴメール」を使用した。こ

    のシステムは、オーストラリアの小中学生とのコミュニティ

    が構築されており、児童は個人の ID とパスワードを取得す

    る。特殊パレットの使用により、日本からは日本語を選んで

    文章にすることで、オーストラリアへは英語に変換されて送

    信される(資料2)。オーストラリアでは、英語で入力され

    るが日本へは日本語に変換して送信されるため、誰もが楽し

    んで現地校の小中学生と交流することができる。

    授業では、はじめに「オーストラリアを知ろう」という課

    題でオーストラリアについて調べ学習を行った。そこで活用

    したのが、パレーゴメール「NEWS」のコンテンツである。

    オーストラリアの歴史や文化、学校・家庭生活について学習

    した。次に、オーストラリアの小中学生との国際交流学習に

    向けて、メールの下書きをワークシート「国際交流カード」

    に記入した。下書

    きをさせることに

    よって交流の目的

    を明確にし、常に

    目的を意識してパ

    レーゴメールを活

    用していった(資

    料3)。

    オーストラリア

    の小中学生とのメ

    ール交流を通して、

    体験的なコミュニ

    ケーション活動を

    行い、日本とオー

    ストラリアの文化

    の違いや良さにつ

    いて、理解を深め

    ていった。

    <資料2:送られてきたパレーゴメール>

    <資料3:国際交流カード>

  • 第35回 実践研究助成───35

    小学校

    (2) ICT を用いた自立学習支援システム(e ラーニン

    グ)の構築を通して

    休み時間などに、児童が各自のペースで予習や復習ができ

    るようにするため、高学年棟の廊下に ICT を用いた自立学

    習支援システムを構築した(資料4)。ノートパソコンには、

    「わくわく英単語フラッシュエキスパート(一斉指導用外国

    語活動ソフト)」、「ATR CALL BRIX(自学学習用外国語活動

    ソフト)」、「パレーゴメール(小中学生・新国際理解交流プ

    ログラム)」の

    3つの外国語学

    習ソフトをイン

    ストールした。

    児童は、各自の

    学習進度や個人

    差に応じて、学

    校生活の中で自

    主的に学習を進

    めていった。

    5.研究の成果

    (1) 音声英語や基本的表現力の完全習得と教師の外国

    語指導に対する意識改革

    無線 LAN・ICT 授業支援システムの構築により、HRT 単

    独の外国語活動の授業で ICT 機器を活用した授業が日常的

    に可能になった。これにより、一番の不安項目である音声面

    の指導が効果的に行うことができるようになり、教師の外国

    語指導(音声面)に対する自信を高めることができた。

    (2) 積極的なコミュニケーション能力、態度の育成と

    他教科での ICT を活用した授業改善

    普通教室の授業で無線 LAN・ICT 授業支援システムを活

    用することにより、英語(音声)学習と交流学習の二つの学

    習活動が、場所や時間を区切らずに連続して行うことが可能

    になった。これにより児童の学びが連続し、積極的に英語を

    使ってコミュニケーションを図ろうとする態度と技能を育成

    することができた。

    本校の児童6年生45名についてアンケート(自己評価)調

    査を行い、今までの授業と比べて本実践の評価を児童の立場

    から行った。

    質問事項 はい

    変わら

    ない片側確率

    1 今までより外国語活動の時間は

    楽しかった。

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