大学・学部 | 東邦大学 - アルコールと循環器疾患...2019/07/13  · boffetta p,...

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アルコールと循環器疾患

東邦大学医療センター佐倉病院 循環器内科 野呂 眞人

アルコールと死亡率 1: アルコール15ミリ・リットル (日本酒0.5合、ビール小瓶1本、ウイスキーシングル1杯) 2: アルコール30ミリ・リットル (日本酒1合、ビール大瓶1本、ウイスキーダブル1杯)

Boffetta P, Garfinkel L: Epidemiology 1990;1:342

適度なアルコールは 1) 血液を抗凝固作用 2) HDL – cho (善玉コレステロールを増加させる) 赤ワインのポリフェノールは 1) 動脈硬化抑制 2) 痴呆予防の効果 フレンチパラドックス

Jカーブ

飲酒

顔が赤くなる 体の隅々まで暖まる

血管が拡張し、 末梢血管まで拡張する

脈が速くなる 血圧が低下する

交感神経が活性化される

血管が収縮し、 手足が冷え、 顔が青くなる

血圧が上昇する

飲酒量

飲酒により 1) 夜間の血圧は低下 2) 明け方の血圧が高くなる 3) 昼間帯はあまり変化ない

血圧の日内変動は血管壁を健全にする しかし、この差が大きくなり過ぎると血管損傷が惹起される。

✔ ✔ ✔ ✔

血圧が高い

強い力で流れる

内皮細胞が傷つく

内皮細胞 内膜 中膜 外膜

内皮細胞が障害される: 1) まず、細胞膜が障害される(家の壁が壊される、丼が割れる)。 2) これを修復するため、補修材、セメントが運ばれて来る: コレステロールが障害された内皮細胞に集まって来る。

川なら周囲を削って広がる 生体は傷ついても修復機構が働く

コレステロールは体に必要?

コレステロール 1) 副腎皮質ホルモン 2) エネルギー 3) 細胞膜の成分

細胞膜: 家の壁のセメント、丼の器のようなイメージ

✔ ✔ ✔ ✔

LDL HDL

余分な LDL

コレステロールにはHDL コレステロールとLDLコレステロールがあります。 HDLコレステロールは善玉 LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれています。

障害された内皮細胞を修復するためにLDLコレステロールが集まって来ます。 余った、LDLコレステロールを運び去るのがHDLコレステロールです。 LDLコレステロールは必ずしも悪玉ではありません。 現在、一次予防でLDL/HDL < 2.0, 二次予防で < 1.8 を目標としています。

LDLコレステロール (Low density Lipoprotein) Low: 低い、 Density: 濃度 分子が小さいため、 内皮細胞が障害された部分から 内膜に入り込み、 酸化LDLコレステロールとなる。

内膜にとっては異物

単球(体の警察)がこれを追って、 内膜に侵入マクロファージに変身し、 これを貪食する

内皮細胞が障害された部分は血管内でも 体表面と同様に血小板が凝集する。

フィリッピンの刑務所

✓ ✓

✓ ✓ ✓

アルコールはLDLを増加させます。

Criqui MH,Ranger RD,et al: Circulation 1989;80:609.

アルコール1日30 mlあたり、血圧は3ミリ上昇する 過度のアルコールは動脈硬化が進行させる

J カーブの意味

お酒に含まれる成分 (ポリフェノール、等)はHDLを増加させます。

適度なアルコールは 1) 血液を抗凝固作用 2) HDL – cho (善玉コレステロールを増加させる)

赤ワインのポリフェノールは 1) 動脈硬化抑制 2) 痴呆予防の効果 フレンチパラドックス

アルコールそのものは循環器系には好影響はないと考えられる。むしろ、毒素!! ストレス解消、楽しい気分、等は精神科分野で、、、、

アルコール心筋症

継続的なアルコール摂取で心筋障害が惹起される

心臓の壁が薄くなる 心臓が拡張する 心臓の動きが低下する

拡張型心筋症様 心不全発症

原因

特定はされていないが 1) アルコールの直接心筋障害 2) アルコールの血管に及ぼす影響 3) 自律神経障害

治療

断酒 心不全への対症療法

お酒を飲む時、おつまみを食べますか? 食事を摂りますか?

食べる:

食べない:

脚気;ビタミンB1欠乏により神経障害が起こり、自律神経も障害され末梢血管が拡張して 心臓は過剰に収縮するが、体に十分な血液が送れず、肺に血液が溜まり心不全発症 その後、心臓は肥大し肥大型心筋症となる。

高脂血症、高血圧

脚気心

【総括:循環器からのアルコールに対する意見】

1) 適度なアルコールは循環器系に良い影響を与える (フレンチパラドックス)?

血液の抗凝固作用や HDL – cho (善玉コレステロールを増加させる)のはお酒に含まれる成分で、アルコールの作用ではない可能性が示唆

2) アルコール自体は心・血管系に対しむしろ悪影響が多い

提示した症例は極端な症例、しかし、アルコール摂取を中止する事で i) 血圧低下 ii) 高脂血症の改善 iii) 心筋症 (心臓の動き) の改善 が得られる。

循環器からは アルコールは摂取しない方が良い

との結論

1.5

0.2

2.1

0.3

飲酒で危険率が「心血管系」で 男性 0.2減少 女性 0.3減少

飲酒で危険率が「外傷および外因死」で 男性 1.5増加 女性 2.1増加

あなたは、どちらを選びますか?

最後に

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