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JR 東日本 E129 系一般形直流電車 3

JR 東日本 E129 系一般形直流電車※水

みず

谷たに

 恵けい

介すけ

 

写真 1 外観

要旨東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、輸送品質の安定性と快適性とを高め、お客さまに安心してご利用いただける鉄道づくりを推進している。今回、新潟地区で運行している老朽化の進む 115 系一般形直流電車の置き換え及び 2015 年 3 月 14 日の北陸新幹線の金沢延伸に伴って開業した“えちごトキめき鉄道株式会社”へ E127系一般形直流電車 10 編成を譲渡することで生じる車両不足を補うため、新潟地区では E127 系以来 18 年ぶりの新形電車となるE129 系一般形直流電車を投入することとなった。E129 系は、現在首都圏の主力形式であるE233 系一般形直流電車の技術を基本に、仙台地区の最新形式であるE721 系一般形交流電車と同等の短編成に必要な設備を付加するとともに、新潟地区の実情に合わせた車両となっており、さらに、いくつかの新技術も導入している。開発に当たっては、新潟地区沿線の方々に愛され、親しみを感じていただける車両を目指した。以下にE129 系の概要を紹介する。(編集部注:E127 系は本誌 184 号 1995 年 6 月、E233 系は 233 号 2007 年 3 月、E721 系は 233 号 2007 年 3 月参照)

1 はじめに従来、新潟地区を走る JR 東日本の普通電車は、115 系及び E127 系一般形直流電車を用いて運行してきた。これらの車両のうち、主力として活躍してきた 115 系は、数々のリニューアル改造を実施しているものの、新造時から数えて 40 年以上を経過した車両もあり、老朽化及び陳腐化が進み、お客さまサービスの観点から見ても不十分な状況であった。また一方、北陸新幹線開業に伴って、信越本線の一部が第三セクター“えちごトキめき鉄道株式会社”に切り替わることを受けて、JR 東日本からは新潟地区で保有している E127 系 13 編成中の 10 編成 20 両を譲渡することになった。これらの状況を受けて、115 系の老朽取替及び E127 系の譲渡によって不足する車両数を確保するため、新形式と

※ 東日本旅客鉄道㈱ 鉄道事業本部 運輸車両部 在来線車両G

写真 2 室内

2015- 9「車両技術 250 号」4

会社・車両形式 東日本旅客鉄道㈱・E129 系使用線区 信越本線、白新線、越後線、上越線、羽越本線ほか 軌間(㎜) 1 067基本編成 4M、2M 使用線区の最急勾配用途 通勤、近郊移動用 電気方式 直流 1 500 V車体製作会社 ㈱総合車両製作所新津事業所 製造初年 2014 年台車製作会社 ㈱総合車両製作所新津事業所 製造予定両数 160 両主回路装置製作会社 東洋電機製造㈱ 車両技術の掲載号 250

基本編成及び主な機器配置

凡例 �●;駆動軸 ○;付随軸 VVVF;主制御装置 SIV;補助電源装置 CP;空気圧縮機�BT;蓄電池 >;パンタグラフ >;霜切り用パンタグラフ ◎;車椅子スペース�便;便所

   連結器 ▽;密着 +;半永久 *;電気連結器個別の車種形式 クモハ

E129-0モハE128-0

モハE129-0

クモハE128-0

クモハE129-100

クモハE128-100

車種記号(略号) Mc M' M Mc' Mc Mc'空車質量(t) 37.2 31.6 32.7 37.0 37.2 37.2定員(人) 140 154 154 133 140 133うち座席定員(人) 54 60 60 46 54 46特記事項 各車両電動車(0.5M車)

電気駆動系主要設備

集電装置

形式/質量(kg) PS33G、PS33D(霜切り用)方式 シングルアーム式

制御装置

形式/質量(kg) SC�102制御方式 2レベル PWMインバータ仕様 1C2M制御×2群

主電動機

形式 /質量(kg) MT75B方式 三相かご形誘導電動機1時間定格(kW) 140回転数(min-1) 2 360特記事項

最大限流値

力行(A)ブレーキ(A)

電気ブレーキの方式 回生ブレーキ、発電ブレーキブレーキ抵抗器

形式/質量(kg) MR183

補助電源設備

補助電源装置

形式/質量(kg) SC103方式 電圧形 3レベルインバータ出力 210 kVA

蓄電池種類/質量(kg) アルカリ蓄電池容量(Ah) 80(5 時間率)主な用途 制御用

車両性能

最高運転速度(㎞/h) 110加速度(m/s2) 0.56(2.0 ㎞/h/s)減速度(m/s2)

常用 1.00(3.6 ㎞/h/s)非常 1.00(3.6 ㎞/h/s)

ユニット当りの定格

ユニット構成 Mc+Mc’、Mc+M’、M+Mc’出力(kW) 560速度(㎞/h)引張力(kN)

ブレーキ制御方式

回生、発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ、直通予備ブレーキ、耐雪ブレーキ、抑速ブレーキ(応荷重、滑走再粘着、遅れ込め制御付き)

制御回路電圧(V) DC�100抑速制御 あり

運転保安装置ATS-P、ATS-Ps 自動列車停止装置

列車無線 デジタル列車無線非常時運転条件その他

表 1 JR 東日本 E129 系一般形直流電車 車両諸元

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 5

その他の主要設備

空調装置形式/質量(kg) AU725A-G6方式 天井集中式容量(kW) 48.8

暖房装置容量(kW) 腰掛下など 12.5~14.8、空調内蔵 6形式/質量(kg) HE251 など

標識灯前部標識灯 LED後部標識灯 赤色 LEDその他

その他

空気ブレーキ設備

電動空気圧縮機

形式/質量(kg) MH3108-C1200MA圧縮機容量 1 200 ㍑ /min圧縮機方式 単動往復式 2段圧縮

空気タンク元空気タンク 330 ㍑供給空気タンク 165 ㍑

ブレーキ制御装置

形式/質量(kg)C209(Mc’車)、C210(Mc車)、C211(M’車)、C212(M車)

台   車

形式動台車

先頭車 DT71C中間車 DT71D

付随台車先頭車 TR255D中間車 TR255E

車体支持装置 ボルスタレス式けん引装置 一本リンク方式枕ばね方式 空気ばね上下枕ばね定数 /台車片側(N/㎜)

動台車 390付随台車 390

軸箱支持方式 軸はり式軸ばね方式 コイルばね

上下軸ばね定数 /軸箱(空車時)(N/㎜)

コイルばね先頭車 1 527中間車 1 272

ゴムばね先頭車 19 614中間車 19 614

総合先頭車 1 417中間車 1 194

軸距(㎜) 2 100台車最大長さ(㎜) 3 014�/�3 988(雪かきを含む)車輪径(㎜) 860基礎ブレーキ

動台車 踏面ブレーキ付随台車 ディスクブレーキ、踏面ブレーキ併用

ブレーキ倍率3.2(M台車)、1.0(T台車踏面)、2.4(T台車ディスク)

制輪子動台車 焼結合金制輪子付随台車 焼結合金制輪子

ブレーキシリンダ×個数

動台車 4付随台車 4

駆動方式 平行カルダン駆動方式 2軸 /両歯数比(減速比) 97:16=6.06継手 TD継手軸受 密封複式円すいころ軸受

質量(kg)動台車付随台車

記事

車体の構造・主要寸法

構体材料 /構造 ステンレス車両の前面形状 貫通形運転室 全室構造

長さ(㎜)先頭車 19 570中間車 19 500

連結面間距離(㎜)

先頭車 20 000中間車 20 000

心皿間距離(㎜) 13 800車体幅(㎜) 2 950

高さ(㎜)屋根高さ 3 620屋根取付品上面 3 985(パンタ折り畳み高さ)

床面高さ(㎜) 1 130

車体特性・構造及び主要設備

相当曲げ剛性(MN・m2)相当ねじり剛性(MN・m2/rad)曲げ固有振動数(Hz)ねじり固有振動数(Hz)

内装材アルミ化粧板、FRP、アルミ塗装板ほか

側窓構造 下降式(一部�固定式)妻引戸 片引戸、両妻に設置

側扉構造 両引戸片側数 3

戸閉め装置形式 TK122方式 単気筒複動式

腰掛方式 セミクロスシート車体連結装置

先頭車 密着連結器、半永久連結器中間車 密着連結器、半永久連結器

空調換気システム

冷房方式 屋根上集中式ユニット空調装置暖房方式 シーズ線式(腰掛下取付、空調内蔵)換気方式 自然換気送風方式 天井ダクト

室内灯照明方式 直接照明灯具方式 LED

移動制約者設備 車椅子スペース 

便所主要設備 車椅子対応大形洋式便所汚物処理 真空式

その他の主要設備

主幹制御器形式/質量(kg) MEC14方式 左手操作ワンハンドル

速度計装置 直動式指示計車両情報制御システム

モニタ装置 MONモニタ表示器 液晶カラーモニタ

非常通報装置 通話機能付き非常通報装置

行先表示器前面 フルカラー LED側面 フルカラー LED

車内案内表示3色 LED(千鳥掛けに配置、出入口上 3箇所)

放送車内向け スピーカ 8台(自動放送付き)車外向け スピーカ 4台

車両間連結電気系 ジャンパ連結器

空気管系空気ホース、密着連結器(先頭部)

2015- 9「車両技術 250 号」6

車椅子

車椅子

車椅子

霜切り用

車椅子

車椅子

車椅子

付き)

付き)

付き)

付き)

付き)付き)

図1 

編成

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 7

戸閉め:赤色)

どいどい

畳み高さ)

畳み高さ)

付き)

(霜切り用)

図 2-1 形式図 クモハ E129-0(Mc)、クモハ E129-100(Mc)

戸閉め:赤色)

どいどい

図 2-2 形式図 モハ E128-0(M’)

2015- 9「車両技術 250 号」8

戸閉め:赤色)

どいどい

畳み高さ)

図 2-3 形式図 モハ E129-0(M)

戸閉め:赤色)

どいどい

付き)

車椅子スペース

図 2-4 形式図 クモハ E128-0(Mc’)、クモハ E128-100(Mc’)

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 9

との

台枠

台枠

枕はり

との

との

との

における

より

との

どい

どい

との

との

との

ばね

くつずり先端と車両限界との離隔

ばねたわみ

における

より

台枠

  

  

  

  

  

  

  

  

  

 a)

 ロ

ング

シー

ト部

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

 b

) ク

ロス

シー

ト部

3 車

体断

2015- 9「車両技術 250 号」10

なる E129 系一般形直流電車を新造することとなった。投入両数については、2両編成を 30 編成、4両編成を 25 編成の合計 55 編成 160 両とする予定である。主な走行区間は、信越本線(直江津-新潟)、上越線(水上-宮内)、羽越本線(新津-村上)、越後線(柏崎-新潟)、白新線(新潟-新発田)及び弥彦線(弥彦-東三条)である。

2 編成及び車両性能と主な特徴E129 系は、Mc-M’-M-Mc’の 4両編成及びMc-Mc’の 2両編成を基本として、これらの編成を組み合わせることで、2+2の 4両編成、2+4、4+2、2+2+2の 6両編成を構成可能とし、旅客需要に柔軟に対応できるようにした。車種形式は、4両編成を 0番台、2両編成を 100 番台と区分している。E127 系を含む他形式との併結については、緊急時を除き考慮していない。構体は、E233 系をベースとした片側 3扉の軽量ステンレス構体を採用している。扉間でロングシート部とセミクロスシート部とに分けた構成の客室は、ユニバーサルデザインを考慮したインテリアの導入、一人当たりの座席幅の拡大などの快適性向上を図ったほか、車内外の情報案内装置を充実させている。また、車両は、新潟地区の気候を考慮した耐寒耐雪構造となっている。制御方式は、M系車及びM’系車を各 1両ずつの計 2両でユニットを組む方式であるが、ユニット内の 4台車のうち、中間の 2台車を動台車、両端を付随台車として、車種間の重量差が小さくなるようにした。なお、最高運転速度は 110 ㎞/h、加速度は 0.56 m/s2(2.0 ㎞/h/s)、減速度は1.00 m/s2(3.6 ㎞/h/s)である。また、風に強い車両とするため、風の影響を受けやすい先頭車及び床下に搭載する機器が少なく比較的軽いM’車の床下には、デッドウェイトを搭載して低重心化を図った。保安装置は、ATS-P 及びATS-Ps(1 台で共用するタイプ)を搭載し、列車無線は、デジタル列車無線 2形及び防護無線を搭載した。また、EB・TE装置を装備している。

3 デザイン3.1 エクステリアデザインエクステリアデザインは、新潟地区沿線の方々に愛され、親しみを感じていただける車両のイメージを目指して、機能とデザインとの両立を図った。前面窓下部及び側腰板部は、秋の稲穂をイメージした黄金イエロー色と佐渡及び新潟に生息している朱

鷺き

の体色をイメージした朱鷺ピンク色との 2色を上下に並べた帯を配置した。また、側幕板部には、朱鷺ピンク色の帯を配置した。なお、この色は、引退した上越新幹線 E1系及び 2014 年から塗色を変更した E4系の腰板部に配した帯と同じピンク色である。これらのカラーデザインは、場所、季節を問わず、都市、田園、山々、海、雪原などの様々な沿線風景に溶け込み、包み込むように映える配色とした。先頭部は、白を基本色としているが、両前面窓の周囲及び貫通扉の上部を黒色とすることで一体感をもたせるとともに、その黒色部の下辺は、車体中心から左右に向かって緩やかに弧を描いた扇状にしている。また、その下側にある白色部は、黒色部よりも一段くぼませたデザインを採用

することで、前面に付着した雪を外側に押し出す形状を連想させ、排雪性能を高めた前面下部の覆いとともに雪に対する強

きょうじん

靭さを表している。3.2 インテリアデザインインテリアデザインは、機能を優先させながら、自然豊かな環境と都会的な上品さとを併せもつイメージを目指した。壁及び側小天井は、E233 系などと同じ白系として清潔感を表現した。腰掛は、冬の新潟においても車内で暖かみを感じられるように暖色系の配色を採用し、表地の色はピンクブラウンとした。

4 車体構造4.1 主要寸法車体断面は、一車両当たりの定員を増やすことで混雑の緩和を図ること及びクロスシート部の通路を車椅子で移動できることを考慮して、腰部から下の幅を狭めた裾絞り形状をもつ側構基準線間が 2 950 ㎜の拡幅車体とした。床面高さは、115 系が 1 225 ㎜であったのに対して、E129 系は、E127 系と同じ 1 130 ㎜とした。床面高さを電車・客車共用ホームの高さ 920 ㎜に可能な限り近づけるとともに、高さ 1 100 ㎜の電車専用ホームに対しても入線可能な高さとすることで、ホームとの段差を低減した。4.2 構体車体構造は、E233 系などの従来車両と同様の軽量ステンレス構体を採用して、台枠の一部を除きステンレス鋼を用いて構成している。前頭構体は、踏切事故対策として、E721 系と同等の前面強化を行った。また、側面からの衝撃に対する安全性向上策として、側構体の柱の位置に幕板補強及び屋根構体の垂木の位置を合わせる E233 系と同等の強化を行っている。

5 客室5.1 客室構造天井部は、車体中心に配置した天井風道の左右に室内灯を配置した構成である。天井風道は、アルミサンドイッチパネルを用いた構成で、風道内部は室内の温度が均一になりやすい構造となっている。室内灯は、E233 系 6000 番台(横浜線)などと同じ LED照明を採用した。従来の蛍光灯と比較して、約 6割の消費電力量となり、省エネルギー化の推進に貢献している。また、客室内の壁面は、メラミ

写真 3 先頭部

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 11

ン化粧板及びアルミサンドイッチパネルで構成している。5.2 室内設備2 両編成の座席配置は、前位側の扉間に 11 人掛けのロングシートを 2脚、後位側の扉間に 4区画のボックスシート(向かい合わせにクロスシートを配置したもの)及び 2人掛けロングシート 4脚を配置したセミクロスシートとした。また、Mc車の車端寄りに 4人掛けロングシート 2脚を配置している。なお、4両編成は、2両編成を 2編成分連結した場合と同様の座席配置としたほか、2両編成の編成間に位置する運転室のスペースとなるM’車の後位及びM車の前位の車端寄りには、3人掛けロングシート 2脚を配置した(図 1参照)。クロスシート並びに 11 人掛け及び 3人掛けロングシートは、片持ち式としたが、その他の腰掛は、け込み板付きの脚台構造を採用して、脚台の内部を主電動機の風道及びその他の機器のスペースとした。ロングシートの一人当たりの座席幅は、E127 系に比べて 10 ㎜広い 460 ㎜とした。また、ボックスシート部の向かい合う座ぶとん同士の間隔は、115 系及び E233 系よりも約 110 ㎜拡大した 540 ㎜としている。5.3 窓及び扉扉配置は、E721 系と同じく、車椅子対応大形洋式便所を設置するMc’車に合わせて、全車種とも 3扉の配置が前後非対称となっている。また、4両編成のM車及びM’車に関しても、2両編成を 2編成分連結した場合と同じ扉位置となるよう配置した(図 2参照)。扉間の側窓は、下降式と固定式とを組み合せた大窓と固定式の大窓とを交互に千鳥掛けに配置(写真 2参照)し、車端部の側窓は、4人掛け部を固定式、3人掛け部を下降式とした。これらの側窓のガラスは、E233 系と同じ IR(赤外線)吸収仕様の合わせガラスを採用している。妻引戸は、701 系、E721 系などのワンマン仕様に対応した車両に採用した両引式の 2枚扉とはせず、片引式の 1枚扉とした。その代わりに、車両間の視認性を確保するため、E233 系と同等の大きさの大形窓ガラスを採用するとともに、車椅子の通行ができるように有効開口幅寸法を800 ㎜とした。5.4 バリアフリー・ユニバーサルデザイン対応設備バリアフリー・ユニバーサルデザインに対応する機能の拡充として、次駅名などを表示できる LED式の車内案内

表示器を側かもい点検ふた部に千鳥掛けで 1両当たり 3箇所に配置した。また、側引戸の戸先部は、E233 系と同様に、化粧板で黄色の帯を表示して容易に識別できるようにしたほか、乗降口の端部は、小判形の滑り止めがついた黄色の床敷物を設けて、識別を容易にするとともに滑りにくい仕上げにしている。車椅子スペースは、Mc’車の便所の向かい側に設けた。同スペースには、車椅子に着座した状態で使用可能な高さに、通話形の非常通報装置を設けている。5.5 便所・洗面所設備Mc’車の後位には、E721 系や新潟地区を走るキハ E120などと同等の車椅子対応大形洋式便所を設置した。汚物処理装置は、真空式である。

6 運転室設備運転室は、E721 系に準じた半室構造であり、連結時などは、助士側をお客さまに開放できる構造である。主幹制御器は、左手操作ワンハンドル式を採用した。標識灯は、地上側からの視認性を向上させるため、左右前面窓の上部に設けた。前部標識灯及び後部標識灯は、灯具を LED式とした。なお、前面窓ガラスは、標識灯を内蔵する箇所にも防曇用の熱線ヒータを配置して、降雪時の標識灯周辺への着雪を避けるようにした。

7 機器配置7.1 床下機器配置床下機器配置は、Mc車及びM車にVVVFインバータ装置などの主回路機器を搭載し、Mc’車及びM’車に補助電源装置、電動空気圧縮器などの補助機器を搭載した(補助電源はMc’車のみ)。基本的にMc車とM車、Mc’車とM’車とで機器配置の共通化を図っている。

写真 4 車椅子対応大形洋式便所及び車椅子スペース 写真 5 側出入口

2015- 9「車両技術 250 号」12

差し

閉め

らせ

遮光板

遮断基盤

遮断基盤

かぎ

及び

図4 

運転

室機

器配

写真

6 運

転台

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 13

つなぎ

a) 

床下

機器

配置

 ク

モハ

E12

9-0(

Mc)

つなぎ

b) 

床下

機器

配置

 ク

モハ

E12

9-10

0(M

c)

図5 

床下

機器

配置

2015- 9「車両技術 250 号」14

c) 

床下

機器

配置

 モ

ハE

128-

0(M

’)

d) 

床下

機器

配置

 モ

ハE

129-

0(M

図5 

床下

機器

配置(

続き

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 15

㍑つなぎ

㍑つなぎ

e) 

床下

機器

配置

 ク

モハ

E12

8-0(

Mc’

)、ク

モハ

E12

8-10

0(M

c’)

5 床

下機

器配

置(続

き)

写真

7 ボ

ック

スシ

ート

写真

8 運

転室

背面

仕切

2015- 9「車両技術 250 号」16

空気箱

広帯域空中線

霜切り用パンタグラフ

パンタグラフブレーキ抵抗器

図 6-2 屋根上機器配置 クモハ E129-100(Mc)霜切り用パンタグラフ設置車

空気箱

広帯域空中線 パンタグラフブレーキ抵抗器

図 6-1 屋根上機器配置 クモハ E129-0(Mc)、クモハ E129-100(Mc)

ブレーキ抵抗器

図 6-3 屋根上機器配置 モハ E128-0(M’)

パンタグラフブレーキ抵抗器

図 6-4 屋根上機器配置 モハ E129-0(M)

空気箱広帯域空中線

ブレーキ抵抗器

図 6-5 屋根上機器配置 クモハ E128-0(Mc’)、クモハ E128-100(Mc’)

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 17

ブレーキ装置

輪軸

ブレーキ配管

主電動機

空気ばね

軸箱

軸箱支持装置

台車枠

860

図7 

動台

車(D

T71C

写真

9 

2015- 9「車両技術 250 号」18

輪軸

ディスク

ブレーキ装置

台車枠 

空気ばね

速度発電機

軸箱

軸箱支持装置

セラミック噴射装置

雪かき

踏面ブレーキ装置

860

セラミック噴射

装置配管

セラミック噴射

装置配線

ブレーキ配管

図8 

付随

台車(

TR22

5D)

写真

10 

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 19

図9 

主回

路つ

なぎ

2015- 9「車両技術 250 号」20

図11

 カ

行性

能曲

線(2

両編

成25

0%乗

車時

)図

10 

カ行

性能

曲線(

2両

編成

空車

時)

図12

 ブ

レー

キ性

能曲

JR 東日本 E129 系一般形直流電車 21

7.2 屋根上機器配置E129 系は、長大下り勾配時の回生失効によるブレーキ力不足対策として、ブレーキ抵抗器を設置した。この抵抗器は、豪雪時の地絡対策のため、床下ではなく屋根上に設置しているが、屋根上のスペース及び車体質量の均一化の観点から各車両に分散して配置した。そのほかの屋根上機器としては、各車にユニットクーラ、Mc 車及びM車にパンタグラフ、先頭車に無線アンテナを設置している。7.3 車両間設備先頭部床下に設置した電子警報装置(電子笛)のうち、Mc’車の電子警報装置には、転落防止警報機能を付加した。この機能は、目の不自由なお客さまが先頭車同士の連結部分へ誤って転落するのを防ぐため、警告音と警告アナウンスとを放送するものである。

8 主要機器8.1 主制御装置主回路の制御方式は、三相誘導電動機をVVVFインバータで制御する方式である。制御単位は、主電動機 1両分2台を 1群とし、1台のインバータ装置には 2両分 2群のインバータを搭載している。また、主制御装置は、通常の回生ブレーキの機能に加えて、ブレーキチョッパリアクトル及びブレーキ抵抗器を用いて、回生ブレーキの失効時などにブレーキチョッパ制御を行う機能をもっている。8.2 主電動機主電動機は、E233 系などで用いているMT75 を基本としているが、豪雪地帯の走行を考慮して、車体風道方式の冷却に対応しており、形式をMT75B とした。8.3 集電装置パンタグラフは、Mc 車及びM車に引きひも対応のPS33G を設置した。また 2両編成のうち、特定の編成に対しては、Mc前位側に霜切り用のパンタグラフを設置した。この霜切り用のパンタグラフは、上下線の走行に対応するため、集電できる構造としたが、引きひもを設けないため、E233 系などと同じ PS33D を使用している。8.4 ブレーキ装置ブレーキ方式は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキである。このほかのブレーキの機能としては、直通予備ブレーキ、抑速ブレーキ、降雪時に踏面と制輪子との間に雪が挟まることを防ぐ耐雪ブレーキ機能をもっている。E129 系は、全車種ともに、1両に動台車と付随台車とを各 1台ずつ取り付けた構成のため、ブレーキ制御装置は、この 0.5M-0.5T に対応したものとなっている。8.5 電動空気圧縮機電動空気圧縮機は、E127 系と同タイプのレシプロ式空気圧縮機をMc’車及びM’車に搭載している。8.6 補助電源装置補助電源装置は、入力 DC�1 500 V、出力AC�440 V 三

相 60 Hz、容量 210 kVA の装置をMc’車に搭載した。この装置は、主回路素子に高耐圧 IGBT モジュールを使用し、直接変換形インバータ方式とすることで、シンプルな回路構成を実現するとともに、部品点数を低減することで信頼性を向上させている。8.7 蓄電池蓄電池は、80 Ah(5 時間率)の定格容量をもつアルカリ

蓄電池をMc’車及びM’車に搭載している。8.8 空調装置及び暖房装置空調装置は、48.8 kW(42 000 kcal/h)の容量をもつAU725 系を採用した。暖房装置は、シーズ線ヒータを採用して、片持ち式の腰掛には座ぶとん下部につり下げ、その他の腰掛は脚台の内部に設置している。また、車椅子スペース部には、壁掛け式ヒータを設置した。暖房装置の容量は、各車種で 12.5~14.8 kWとなるようにした。8.9 戸閉め装置戸閉め装置は、E721 系などで使用している装置をベースとした単気筒複動式空気式戸閉め装置である。E129 系は、EV-E301 系(編集部注:248 号 2014 年 9 月参照)と同様に一旦停止機能を省略しているが、戸閉め力弱め機能については、継続設置している。8.10 車両情報制御システム車両情報制御システムは、システムの中枢部であるモニタ装置、ヒューマンインタフェイスであるモニタ表示器及びスピーカ、モニタ装置内に記録された各種データを書込むための ICカード R/Wから構成される。情報制御装置で使用する各モニタ装置は、実績がある既存システムの演算機能、サービス機器制御機能、乗務員支援機能、検修機能、車上検査機能及び記録機能に加えて、E129 系同士の併結機能を有している。8.11 運転保安装置運転保安装置は、新規に開発した統合形ATS車上装置(Ps 形)を搭載している。この装置は、ATS-P 及びATS-Ps の機能を 1台に集約し、さらにブレーキ出力を非常ブレーキのみとすることで、装置自体の小形化を実現したものである。また、運転台の動作表示器は、新規に開発したP・Ps 統合形動作表示器を採用した。この表示器は、従来の P表示灯、Ps 表示灯及びパターン速度インジケータを1つのユニットに集約したほか、ATS ブレーキの作動要因及び装置の故障要因を表示できる機能を追加している。車上装置は、送受信制御部と継電器盤とで構成され、4両編成ではMc車及びMc’車に 1台ずつ、2両編成では、Mc車に 1台を車端の機器室に搭載している。8.12 車内案内表示装置車内案内表示装置は、3色 LED の 1段式表示器を採用し、1両当たり 3箇所の側引戸かもい点検ふた部に千鳥掛けに配置した。この表示器は、現在駅、次停車駅、行先駅、ドア開方向案内、ワンマン案内、急停車案内及び各種案内文章をスクロール表示する。8.13 行先表示器前面行先表示器は、高輝度フルカラー LEDを採用し、運転路線名、列車種別及び行先駅名を表示する。側面行先表示器は、フルカラー LEDを採用し、運転路線名、列車種別、行先駅名、停車駅案内及び次停車駅名を表示する。この表示器は、側幕板部に設置しているが、先頭車については 1両当たり 1箇所、中間車は 1両当たり 2箇所に設置した。なお、新潟駅では、異なる 3方向に路線が伸びているため、乗客が誤って違う路線の列車に乗車することがないように、前面及び側面行先表示器の表示は、3線ごとに色分けを行い、路線の区別を容易にしている。8.14 放送装置及び非常通報装置放送・連絡・非常通報装置は、乗務員から客室への放送

2015- 9「車両技術 250 号」22

(車内、車外、車内+車外)、乗務員間連絡通話、乗務員・客室間非常通報通話の機能をもっている。これらの機能は、E129 系同士の併合編成運用にも対応しているほか、2両編成におけるワンマン運用にも対応している。非常通報装置は、全て通話機能付きで、2両編成については各車に 2台ずつ、4両編成は各車に 1台ずつを設置している。さらに、Mc’車の便所内にも通話機能付き非常通報装置を設けている。8.15 ワンマン運転設備 2 両編成の各車は、ワンマン装置を装備している。ワンマン装置は、ワンマン制御器、液晶式運賃表示器、運賃箱、設定器、操作器リモコン及びDC-DC コンバータで構成している。同装置のシステムは、車両情報制御システムのモニタ装置からの情報及び車体からの信号をワンマン制御器が受信することで作動する。モニタ装置とワンマン制御器とのインタフェースは、双方向の通信で制御される。

9 台車E129 系は、2両ユニットの内側の 2台車を動台車、外

側の 2台車を付随台車としており、各車種ともに一両当たり、動台車及び付随台車をそれぞれ 1台ずつ配置している。これらの台車は、E233 系用のDT71 系及びTR255 系を基本に設計したボルスタレス台車で、動台車がDT71C及び DT71D、付随台車がTR255D 及び TR255E である。E233 系向けと比較すると、軸ばねダンパの非設置、自動高さ調整棒受の強化などの違いがある。また、2両編成の両先頭軸には、滑走防止のためにセラミック噴射装置を設けている。なお、先頭車の付随台車には、強化形の雪かきを取り付けている。

10 おわりにE129 系は、2014 年の冬にデビューし、投入については2017 年まで続く予定である。新潟近郊の通勤通学時間を快適なものとするだけでなく、グループ旅行などの長時間乗車の場合でも快適に過ごせる車両に仕上がっており、お客さまにご好評いただいている。走行線区は、新潟県のほぼ全域と群馬県の北部とをカバーする地域であり、E129系は、115 系に代わって新潟地区のシンボル的存在になると思われる。

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