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120(286)がん分子標的治療 Vol.13 No.2

はじめに CHAARTED(ChemoHormonal Therapy Versus An-drogen Ablation Randomized Trial for Extensive Disease in Prostate Cancer)試験は,2014年の米国臨床腫瘍学会

(ASCO)のプレナリーセッションで発表され,日常診療を大きく変える可能性を秘めた結果であったため,前立腺がんの診療に関わる医療者に大きな衝撃をもたらした。本稿執筆時にはまだ論文として発表されていない状況であるが,米国 National Comprehensive Cancer Network

(NCCN)ガイドライン(Version 1. 2015)にはすでにこの結果が反映されており1),UpToDateでもgrade 1Bとして強く推奨されている2)。 本稿では,本試験の概要を述べるとともに,現在発表されているかぎりの内容における問題点,そして将来の展望について述べたいと思う。

試験の概要 CHAARTED試験は,ホルモン感受性の転移性前立腺が んに対して,現在の標準治療であるホルモン療法に殺細胞性抗がん剤であるドセタキセル(D)を上乗せすることで全生存期間(OS)を延長させうるかを検証した無作為化第Ⅲ相臨床試験である3)。 新規に診断されたホルモン感受性の転移性前立腺がんを対象として,アンドロゲン除去療法(androgen deprivation therapy;ADT)+D

(75mg/m2,3 週間隔,6 コース)の併用療法と,ADT単独療法に 1 対 1 の割合で無作為化割り付けされた。層別化因子は,腫瘍量(high vol-ume vs. low volume),抗アンドロゲン薬の30日を超えた使用の有無,年齢(70歳以上vs. 70歳未満),Eastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)( 0 ~ 1 vs. 2 ),先行するADTによる術後療法(12ヵ月以内vs. 13ヵ月以上)であった。腫瘍量のhigh volumeは,臓器転移または 4 ヵ所以上の骨転移(少なくとも 1 ヵ所は脊椎もしくは骨盤外の転移で

あることが必要)を有する状態と定義された。主要評価項目はOSであり,OS中央値(mOS)を33.3%改善させることを,80%の検出力,αエラーは片側0.025で評価するために,780人の症例が設定された。今回,追跡期間中央値29ヵ月,ADT+D群とADT単独群の死亡がそれぞれ101例,136例の時点で,第 4 回の中間解析が行われた。 790人が登録され,ADT+D群に397人,ADT単独群に393人が無作為化割り付けされた。ADT+D群とADT単独群の患者背景は,それぞれ年齢中央値が64歳(36~88歳)と63歳(39~91歳),ECOG PSは両群ともに 0 ~ 1 が98%以上含まれており,腫瘍量high volume症例の割合は66.2%と63.9%と両群で差はなかった。前治療歴は両群ともに約73%の割合で局所治療が実施されていなかった。前立 腺除去全摘術が実施されていたのはADT+D群とADT単 独群でそれぞれ20.4%,18.6%であった。 主要評価項目のOSの結果は,mOSがADT+D群で57.6ヵ 月に対してADT単独群で44.0ヵ月であり,ハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間(CI):0.47~0.80,p=0.0003)と,ADT+D群で統計学的有意な延長を認めた(図1)。また,腫瘍量別のサブグループ解析において,high volumeサブグループでは,全体の結果と同様にADT+D群とADT単独群のmOSが そ れ ぞ れ49.2ヵ 月,32.2ヵ 月(HR 0.60,95%CI:0.45~

図 1 OS(Sweeney C, et al:Abstract #LBA2. ASCO 2014, Chicago, 2014より引用)

0.00 12 24 36

OS

48 60 72 84(月)

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

HR 0.61(95%CI:0.47~0.80),p=0.0003

mOS     

57.6ヵ月44.0ヵ月

ADT+D群ADT単独群

生存率

CHAARTED試験CHAARTED trial

三浦 裕司Yuji Miura

虎の門病院臨床腫瘍科

CTM1302_120-123_LearnMoreFrom_Miura_F初.indd 120 15/07/02 2:29

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