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NanoDrop One を用いた 205 nm 吸光度測定によるタンパク質およびペプチドサンプルの定量

サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社

キーワードNanoDrop One、DNA、RNA、生体分子、核酸、タンパク質、ペプチド、紫外可視、分光光度計

概要Thermo Scienti� c™ NanoDrop™ One/OneC 超微量分光光度計には、ペプチドサンプルやタンパク質サンプルを定量するためのA205 吸光度測定アプリケーションのプログラムが組み込まれています。このアプリケーションには、サンプルのアミノ酸配列(トリプトファン残基やチロシン残基の含有有無)に合わせて適切な測定ができるように複数のメソッドをご用意しています。 NanoDrop One/

OneC を用いることで、わずか 2 µLのペプチドサンプルを短時間で定量することができます。

はじめにさまざまな生体分子(タンパク質や核酸など)をルーチンですばやく定量できれば、下流の実験を進める判断がスムーズになります。タンパク質定量法には、重量分析法、比色分析法、280 nm紫外吸収分析法、アミノ酸分析法など多くの選択肢がありますが、いずれの定量法にも長所と短所があります。中でも紫外吸収分析法による直接測定は、操作が簡便で専用試薬や標準溶液が不要なことから、よく利用される定量法の一つです。微量のサンプルで測定できるNanoDrop One 分光光度計には、紫外吸収分析法のためのA280アプリケーションおよび A205アプリケーションが組み込まれています(図1)。本アプリケーションノートでは、このうちProtein A205アプリケーションについて記載しています。

タンパク質のペプチド主鎖(ペプチド結合)は深紫外領域(190 nm~ 220 nm)の光を吸収します。この吸収を利用した205 nm紫外吸収法では、アミノ酸側鎖の光の吸収を利用する280 nm紫外吸収法と異なり、アミノ酸配列の違いに起因するタンパク質ごとのばらつきが低く、205 nmにおける高いモル吸光係数によって高感度な測定が可能になります。しかしながら、分光光度計の迷光性能、深紫外領域における直線性、紫外線吸収成分を含む緩衝液の影響がA205測定データを得る上で課題となっており、これまでは容易に実施できませんでした。NanoDrop One

では、特許取得済みのサンプル保持テクノロジーと低迷光性能の実現により、A205測定法による微量タンパク質定量が可能になりました。

本アプリケーションノートでは、NanoDrop One の Protein A205アプリケーションに備わった測定メソッドについて測定データと併せてご紹介します。

図1: NanoDrop One の [Proteins] のホーム画面 あらかじめ組込まれている各種タンパク質定量アプリケーション

から目的手法を選択できます。

ペプチドおよびタンパク質測定時の A205 吸光係数NanoDrop One の Protein A205アプリケーションには、205 nm

における吸光係数の設定が異なる3種類のメソッド(図2)をご用意しています。吸光係数は205 nmにおける吸光度からタンパク質濃度を算出する際に使用するファクターです。

• ε205= 31 メソッド• Scopes メソッド2

• Other = カスタムメソッド ε205 1 mg/mL

これまでに、さまざまなタンパク質溶液の吸光係数(ε205 1 mg/mL)

が 1 mg/mL において30 ~ 35 の範囲にあることが報告されています2。一般的に、トリプトファン残基(Trp)やチロシン残基(Tyr)が少ないペプチドの場合、ε205= 31 mL mg-1cm-1 が利用されます1。一方、 Trp やTyrが多いタンパク質の場合、Scopes メソッドの ε205 を用いた方がより正確な濃度が得られるとされています。

Trp やTyrの芳香族側鎖は、205 nmにおける吸光が大きく、このことが測定値に影響してしまいます。Scopesメソッドでは、この影響を考慮し、 A280 と A205 の比を用いてTrp とTyrの芳香族側鎖の吸光を補正しています3。また、アミノ酸配列が分かっている高純度なペプチドやタンパク質の場合、画面(図2)に表示されているOtherのメソッドがお勧めです。Other(=カスタムメソッド)はAnthis と Clore が提唱する配列固有の ε205 算出式1に基づいた方法です。

NanoDrop One の A205 測定評価Trp や Tyr を含まない、塩基性のポリペプチド抗生物質であるポリミキシンを 0.01% Brij™ 35 に溶解し、NanoDrop One および Thermo

Scienti� c Evolution™ 300 を用いて紫外分光光度測定を行いました。0.01% Brij 溶液で作成したポリミキシンの希釈系列を用いて、Evolution 300の測定値が検出器の直線範囲内に入ることを予め確認しました。NanoDrop One による測定では台座に 2 µLのサンプルを直接ピペッティングし、Evolution 300 分光光度計による測定では10 mm 石英キュベットを使用しました。各機器の測定で得られたポリミキシン濃度データ(表1)をそれぞれ横軸と縦軸にプロットした結果が図3になります。回帰直線から、NanoDrop

One の測定で得られたタンパク質濃度が、従来の紫外可視分光光度計の測定結果と一致することが確認できました。

表1: NanoDrop One と Evolution 300 の測定で得られたポリミキシン濃度

ターゲット[濃度]mg/mL

NanoDrop One Evolution 300

A205 標準偏差

[濃度]mg/mL

[濃度]mg/mL

0 -0.01 0.04 -0.18 -0.025 0.11 0.01 3.60 5.0510 0.27 0.01 8.84 10.5315 0.44 0.02 14.08 17.0950 1.68 0.01 54.14 55.32100 3.39 0.01 109.44 108.48200 6.64 0.03 214.16 222.50

2

NanoDrop One では ε205 = 31 メソッドを用いて各溶液を5回ずつ測定しました。Evolution 300 では吸光度が1.0 Aを超える溶液を希釈し、3回ずつ測定しました。

図2: NanoDrop One の Protein A205アプリケーションの画面

図3: NanoDrop One および Evolution 300 の測定で得られたポリミキシン濃度のプロット 回帰直線から、NanoDrop One による測定で得られたタンパク質濃度が、従来の高性能紫外可視

分光光度計で得られた結果と一致することが確認できました。

表2: NanoDrop One A205アプリケーションのScopes メソッド、または ε205 = 31 メソッドを用いて算出した各種タンパク質溶液の濃度

タンパク質試料Trp および Tyr の数

Trp Try A205 標準偏差 [濃度] e205= 31(µg/mL)

[濃度] Scopes 法(µg/mL)

BSA 1 3 21 3.960 0.013 127.73 131.80BSA 2 3 21 37.271 0.218 1202.30 1261.71BSA 3 3 21 70.044 0.239 2259.48 2387.91BSA 4 3 21 129.170 1.458 4166.77 4345.20BSA 5 3 21 271.027 0.851 8742.81 9198.13

Lysozyme 1 6 3 29.069 0.169 937.71 795.95Lysozyme 2 6 3 53.651 0.545 1730.68 1459.05Lysozyme 3 6 3 102.713 0.668 3313.32 2814.79Polymyxin 1 0 0 0.112 0.015 3.60 3.12Polymyxin 2 0 0 0.274 0.014 8.84 10.12Polymyxin 3 0 0 0.437 0.021 14.08 16.03Polymyxin 4 0 0 1.678 0.014 54.14 60.99Polymyxin 5 0 0 3.393 0.014 109.44 125.16Polymyxin 6 0 0 6.639 0.034 214.16 244.87

吸光係数 Scopes メソッド、またはε205= 31メソッドから得られるタンパク質濃度を確認するため、芳香族側鎖を持つアミノ酸残基の数が異なる3種類のタンパク質を比較しました。具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA、Trp 残基が 3、Tyr 残基が 21)、リゾチーム(Trp 残基が 6、Tyr 残基が 3)、ポリミキシン(Trp 残基および Tyr 残基ともになし)を用い、それぞれの希釈系列を測定しました(表2)。

結論NanoDrop One を用いた 205 nm 吸光測定の性能を検討するために、ポリミキシン濃度の測定結果を迷光性能に優れた Evolution

300 分光光度計の測定結果と比較しました。その結果、両機種で同等の測定値が得られました(図3)。また表1に示した通り、NanoDrop One 測定値の標準偏差は 0.04 以下と、ばらつきの少ない結果が得られました。NanoDrop One の A205 アプリケーションに組み込まれている各吸光係数(Scopes メソッドおよび

ε205= 31 メソッド)の比較では、トリプトファン残基およびチロシン残基の数が算出濃度に大きく影響することが確認できました(表2)。これは、Scopes メソッドでは A280 と A205 の比を用いた芳香族側鎖の A205 吸光度補正を行っているためです。このデータから、ε205= 31 メソッドによる A205 定量が、タンパク質に含まれるトリプトファン残基が少量の場合にのみ有用なことが分かります。

一般的によく使用されるタンパク質緩衝液の多くは、 205 nmに吸収を持つ物質を含んでいます。A205 吸光分析を適切に行うため、測定前に、タンパク質溶液中に205 nmの吸光度に影響を及ぼす物質が含まれていないか確認することをお勧めします。

参考文献1. Anthis, NJ and Clore, GM 2013 . Sequencespecific

determination of protein and peptide concentrations by

absorbance at 205 nm. Protein Science 22:851-858.

2. Goldfarb, AR, Saidel, LJ, Mosovich E 1951. The ultraviolet

absorption spectra of proteins. Journal of Biological Chemistry

193(1):397-404.

3. Scopes, RK 1974 . Measurement of prote in by

spectrophotometry a 205 nm. Analytical Biochemistry

59:277-282.

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サーモフィッシャーサイエンティフィックライフテクノロジーズジャパン株式会社

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