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日本の森林利用の現状
シンポジウム 日本の森林をどう守り、利用するか
~持続可能でバランスのとれた利用のために~
2015.07.03
日本の森林利用の現状
伊藤幸男
岩手大学農学部
2
1 人工林資源の充実
�戦後の拡大造林により人工林は1,000万haへ。
�人工林資源を中心に森林蓄積が増加。
�蓄積は、年平均8,000万
3
793 938 1,022 1,040 1,036 1,035 1,029
1,551 1,444 1,367 1,338 1,335 1,338 1,343
173 145 137 137 141 137 1362,517 2,526 2,526 2,515 2,512 2,510 2,508
0
1000
2000
3000
S41
(1966)
51
(76)
61
(86)
H7
(95)
14
(2002)
19
(07)
24
(12)
その他 天然林面積 人工林面積(万ha)
(年)�蓄積は、年平均8,000万~9,000万m3増加。
�育成段階から収穫段階へ。
(1966) (76) (86) (95) (2002) (07) (12)
(年)
5.6 8.0
13.6
18.9
23.4
26.5
30.4
13.3
13.9
15.0
15.9
17.0
17.8
18.6
18.9
21.9
28.6
34.8
40.4
44.3
49.0
0
10
20
30
40
50
60
S41
(1966)
51
(76)
61
(86)
H7
(95)
14
(2002)
19
(07)
24
(12)
天然林その他蓄積 人工林蓄積
(億m3
)
(年)
図 森林面積の推移
図 森林蓄積の推移
資料:平成26年版森林・林業白書より
100.0 14,000外材
国産材
(1,000m3) (%)
2 外材が圧倒する時代
� 1985年のプラザ合意による急激な円高ドル安。�それに伴う国産材生産量の減少と自給率の低下。�山元立木価格の下落。
� 2013年 スギ:2,465円/m3、ヒノキ:6,493円/m3
�国産材生産量は2003年から増加に転じる。
プラザ合意
50,000
(円/m3)
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
80.0
90.0
0
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000
12,000
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55
19
57
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59
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63
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67
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19
71
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73
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77
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89
19
91
19
93
19
95
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97
19
99
20
01
20
03
20
05
20
07
20
09
20
11
国産材
木材自給率(右軸)
240円/$
80円/$
図 木材需要量と自給率の推移(用材)
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
45,000
50,000
19
55
19
57
19
59
19
61
19
63
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65
19
67
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69
19
71
19
73
19
75
19
77
19
79
19
81
19
83
19
85
19
87
19
89
19
91
19
93
19
95
19
97
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99
20
01
20
03
20
05
20
07
20
09
20
11
20
13
スギ
ヒノキ
マツ
図 山元立木価格の推移
3 森林整備の時代
(2)造林の減少
• 資源的になお育成段階であったこと、立木価格の急激な下落など、伐るに伐れない状況下で間伐の遅れが顕在化。
• 温暖化防止対策など含め間伐が政策的に推進される。
5
2,0001994年
(1,000ha)700
国有林
(1,000ha)
森林吸収源対策
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
2,000
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
1994年
2011年
(齢級)0
100
200
300
400
500
600
19
95年
19
96年
19
97年
19
98年
19
99年
20
00年
20
01年
20
02年
20
03年
20
04年
20
05年
20
06年
20
07年
20
08年
20
09年
20
10年
20
11年
20
12年
国有林
民有林
図 人工林の齢級別面積
図 間伐実施面積の動向
3 森林整備の時代
(2)造林面積の減少
� 伐らないので植えられない、
植えられないので伐らないと
いう悪循環により、造林面積
が著しく減少。
� それに伴い、苗木生産量も減
少。
� 近年、主伐が増加傾向にあり、
苗木不足が問題になりつつあ
6
31
40 40
3735
23
16
11
76
4 3 2
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45(万ha)
拡大造林
再造林
苗木不足が問題になりつつあ
る。
S25
(1950)
30
(55)
35
(60)
40
(65)
45
(70)
50
(75)
55
(80)
60
(85)
H2
(90)
7
(95)
12
(2000)
17
(05)
22
(10)
12.0
13.4 13.0
10.9
5.9
4.7
3.0
2.0 1.4
1.0 0.8 0.6
0
2,000
4,000
6,000
8,000
0
2
4
6
8
10
12
14
16
S30
(55)
35
(60)
40
(65)
45
(70)
50
(75)
55
(80)
60
(85)
H2
(90)
7
(95)
12
(2000)
17
(05)
22
(10)
その他
カラマツ類
マツ類
ヒノキ
スギ
苗畑面積(右軸)
(ha)(億本)
図 造林面積の動向
図 山行苗木の生産量の推移
資料:平成26年版森林・林業白書より
4 国産材の活用の時代へ
(1)大規模国産材製材工場の登場と合板工場の国産材化
� 2002年からの10年間で国産材生産量は約300万m3増加。
� それを牽引したのは国内合板工場。
� 国内で消費される製材用素材の7割は国産材
� 1割弱の大型製材工場で64%の素材を消費。
7
163
214
198
249
252 260
537 526 447 445
455
484
377
404
360
185
113
132 133 124
4%
6%
7%
10%
19%
22%
31%
54%
64%
65% 65%
68%
10
20
30
40
50
60
70
100
200
300
400
500
600
700
国
産
材
の
割
合
合
板
用
素
材
入
荷
量
輸入材
国産材
国産材の割合(右軸)
(%)
552
311
399
523518
464
539
491
472465
540
381386 384
(万㎥)
材を消費。
610 556 487 433 398 368 345 311 278 243 206 186 180 163
1,055 985 866 784
756 721 687 642 574 517 444 438 434 426
1,044
1,077
1,006
979 999
1,045 1,027
1,077 1,069
1,002 897 945 1,001 1,024
39% 41% 43%
45% 46% 49% 50%53%
56% 57% 58%60% 62%
64%
0
10
20
30
40
50
60
70
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
H11
(1999)
12
(2000)
13
(01)
14
(02)
15
(03)
16
(04)
17
(05)
18
(06)
19
(07)
20
(08)
21
(09)
22
(10)
23
(11)
24
(12)
大規模(300.0kw以上)
中規模(75.0~300.0kw)
小規模(75.0kw未満)
大規模工場の素材消費量の割合(右軸)
(%)
(年)
(万m3
)
大
規
模
工
場
の
素
材
消
費
量
の
割
合
素
材
消
費
量
2,708
2,619
2,359
2,196
2,153 2,1342,059
2,0311,921
1,762
1,547 1,5701,615 1,613
442工場
5,485工場
16 14 18 28
36 55
86
114
163
198
3% 3%
4%
6%
0
10
0
100
H11
(1999)
12
(2000)
13
(01)
14
(02)
15
(03)
16
(04)
17
(05)
18
(06)
19
(07)
20
(08)
21
(09)
22
(10)
23
(11)
24
(12)
(年)
図 出力規模別製材用素材の消費量
図 合板用素材入荷量の推移
資料:平成26年版森林・林業白書より
4 国産材の活用の時代へ
(2)FITによる木質バイオマス発電ブーム
• 安定した発電量が見込める木質バイ
オマス発電が全国各地で計画
• (木質)バイオマスは再生可能エネル
ギーの電源としての位置づけは低い。
• 大量の木質燃料を消費することから、
森林・林業への影響が懸念されてい
8
認定容量
(万kW)
割合
太陽光(住宅) 379 4.3%
太陽光(非住宅) 7,884 89.9%
風力 229 2.6%
表 電源別認定容量(2015年3月時点)
森林・林業への影響が懸念されてい
る。
風力 229 2.6%
中小水力 66 0.8%
地熱 7 0.1%
バイオマス 203 2.3%
合計 8,768 100.0%
木質バイオマス発電の6つ課題① 熱利用を伴わない発電は熱力学的にエネル
ギー損失が多すぎる② 多くの地域は大規模な木材需要に応えられる
生産力と生産性を持ち合わせていない③ しばらくは32円/kWh(税別)の電力を作れな
い!?④ 発電事業によって得られた利益の行き先は?⑤ 化石燃料の純減につながっているのか⑥ 民主的なプロセスを経ているのか
木質バイオマス発電の6つ課題① 熱利用を伴わない発電は熱力学的にエネル
ギー損失が多すぎる② 多くの地域は大規模な木材需要に応えられる
生産力と生産性を持ち合わせていない③ しばらくは32円/kWh(税別)の電力を作れな
い!?④ 発電事業によって得られた利益の行き先は?⑤ 化石燃料の純減につながっているのか⑥ 民主的なプロセスを経ているのか
経済産業省HPより
9
1 安い木材を大量にかつ安定供給出来るのか?(1)需給のミスマッチの懸念
�北海道、東北、九州で素材生産量の65%を占める。�資源と木材産業の集積の特徴により地域ごとの生産力、生産性が大きく異なる。
10
4,000
(1,000ha)
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
北
海
道
青
森
岩
手
宮
城
秋
田
山
形
福
島
茨
城
栃
木
群
馬
埼
玉
千
葉
東
京
神
奈
川
新
潟
富
山
石
川
福
井
山
梨
長
野
岐
阜
静
岡
愛
知
三
重
滋
賀
京
都
大
阪
兵
庫
奈
良
和
歌
山
鳥
取
島
根
岡
山
広
島
山
口
徳
島
香
川
愛
媛
高
知
福
岡
佐
賀
長
崎
熊
本
大
分
宮
崎
鹿
児
島
沖
縄
図 都道府県別素材生産量
4,000
4,500
5,000
(1,000m3)
1 安い木材を大量にかつ安定供給出来るのか?(2)安い燃料を供給することの難しさ
11
C材
Ex. 平均単価 10,000円/m3立木代金 3,000円伐出費用 5,000円運送費 2,000円
� 現状では燃料用木材のみを生産することは困難。� 製材等の用材に出来るだけ仕向けることで供給可能に。� さらなる燃料材供給には木材産業の成長が必要。
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
木材チップ用
合板用
製材用
A材
B材
C材
図 東北地域における用途別素材生産量
資料:木材需給報告
運送費 2,000円
販売先製材用 12,000円×0.5m3=6,000円合板用 10,000円×0.25m3=2,500円チップ用 5,000円×0.25m3=1,250円合計合計合計合計 9,7509,7509,7509,750円円円円
1 安い木材を大量にかつ安定供給出来るのか?(3)労働力の確保
• 「緑の雇用」の成果で一定の若返り。
• 日本全体、特に地方における生産年齢人口が大きく減少する段階で労働力の確保は大丈夫か?
• 生産量、生産性が上昇した東北、九州において賃金は全国最低レベル。
12
女
男
(人)
24,114
19,151 14,254 10,468 8,006 4,488 3,020
122,208 107,192
86,243
71,09659,552
47,685 48,180
146,321
126,343
100,497
81,564
67,558
52,17351,200
8%
10%
14%
23%
30%
27% 21%
10%
8%6%
7%
10%
14%18%
0%
10%
20%
30%
0
20,000
40,000
60,000
80,000
100,000
120,000
140,000
160,000
S55
(1980)
60
(85)
H2
(90)
7
(95)
12
(2000)
17
(05)
22
(10)
林林林林
業業業業
従従従従
事事事事
者者者者
数数数数
高齢化率(右軸)
若年者率(右軸)
(年)
資料:平成26年版森林・林業白書より
図 林業従事者数の推移
2 森林の管理目標と
の整合性
• 燃料用材需要の発生により、各地域の森林管理や
施業計画に影響を与えな
いか?
• 現状の各計画は必ずしも燃料材需要を念頭に置い
たものになっていないと
考えられる。
• 特に、森林経営計画との
13
• 特に、森林経営計画との整合性は?
• 林野庁は主伐と再造林を推進する方向にあるが、
どのような森づくりをし
ていくのかという地域ご
との議論は十分か?
補足:森林経営計画とは
• 森林経営計画とは、「森林所有者」又は「森林の経営の委託を受けた者」が、自らが森林の経営を行う一体的なまとまりのある森林を対象として、森林の施業及び保護について作成する5年を1期とする計画。
• 認定要件を3種類に設定。• 基本的に計画認定を受けることが補助事業の条件。• 相続税の納税猶予など様々な優遇がある一方で、計画が遂行されなければ
14
• 相続税の納税猶予など様々な優遇がある一方で、計画が遂行されなければ補助金の返還が必要など厳しい措置も。
林班計画 区域計画 属人計画
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