歴史友の会が選ぶ シンガポールで一番ポピュラーな...

Post on 08-Aug-2020

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 朝食と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。シンガポールには、チキンライスやバクテーなどたくさんのソウルフードが ありますが、朝食の定番として人気なのがカヤトーストです。カヤトーストの多くは、コピティアムと呼ばれるコーヒーショップで提供されています。コピティアム(KOPITIAM)のKOPIはマレー語の「コーヒー」の意味でTIAMは福建語の「店」のことです。コピティアムは、いつも朝食を食べるシンガポール人で賑わっています。今回は、そんなシンガポールの朝の定番であるカヤトーストやコピティアムの魅力について紹介します。

1.カヤトーストとは カリカリに焼いた薄めのパンに、カヤジャムを塗り、さらにスライスしたバターを挟んだものがオーソドックスなカヤトーストのスタイルです。パンにカヤジャム、さらにバターも挟まれていると聞くと、すごくしつこいのではないか、という印象を受けますが、実際に食べてみると、すっきりとした甘さで、シンガポール人が癖になるのも納得です。

シンガポールで一番ポピュラーな朝食

店頭に陳列された種類豊富なカヤジャム

カヤトーストセット(写真:トーストボックス本社より提供)

今なお愛されているキリニー・コピティアム本店

シンガポールの歩道に植わっているパンダンの木

店内に掲げられたシンガポールブックオブレコード

 カヤジャムの「カヤ」とは、マレー語で「豊かな」という意味です。このカヤジャムは、ココナッツミルクと卵、砂糖、パンダンリーフを煮詰めてつくられます。カヤジャムの独特な緑色と香りはパンダンリーフという植物によるものです。 スーパーマーケットやコンビニでも、瓶やプラスチックの容器に入ったカヤジャムを目にすることが多いのではないでしょうか。その種類や価格も様々で、 シンガポール人に親しまれていることがわかります。

2.老舗 No.1のカヤトーストのチェーン店 「キリニー・コピティアム(Killiney Kopitiam)本店」 シンガポールの中心地、オーチャードからほど近いところにあるキリニー・コピティアム本店。都心に位置しているにも関わらず、ローカルの雰囲気を楽しめる店内には、地元の人々が多く来店しています。ここは、シンガポール最古のコーヒーショップとして、シンガポール ブック オブ レコード(SINGAPORE BOOK OF RECORDS)にも登録されています。

1)キリニー・ コピティアムの歴史 キリニー・コピティアムの歴史は、約100年前にまでさかのぼります。1919年創業のケン・ホー・ヘンという店がキリニー・コピティアムの前身で、白パンを使ったカヤトーストで有名でした。店は当時からこの場所(67 キリニーロード)にありました。この店のカヤトーストを愛した常連客が、1993年にケン・ホー・ヘンを買収した際に、店名を変更し、キリニー・ コピティアムとなりました。

歴史友の会が選ぶ

史蹟史料部 歴史友の会

3.知名度No.1のカヤトーストのチェーン店 「ヤクン・カヤトースト(Ya Kun Kaya Toast)」 こちらは赤い看板がトレードマークで、シンガポール人なら誰もが知る1944年創業の有名店です。シンガポールだけでなく、国外にも店舗があります。

1)ヤクン・カヤトーストの歴史 このお店のカヤトースト誕生は、1936年頃にさかのぼります。海南からシンガポールにわたってきたアークン(Ah Koon)の妻が、自家製カヤジャムをトーストと組み合わせカヤトーストを作りました。そして、1944年にヤクン・コーヒーストール(Ya Kun Coffeestall)として当時のテロックアヤー(Telok Ayer)エリアに出店し、現在に至ります。現在も本店はテロックアヤー駅近くに位置しています。

ヤクン・カヤトースト本店

トースト・ボックスの店内の様子(写真:トーストボックス本社より提供)

同店の植物が描かれた食器とコピ

参考文献・ 史蹟史料部(2014)「喰いだおれ in Singapore」 シンガポール日本人会・ 丹保美紀(2015)「シンガポール絶品!ローカルごはん」 株式会社ダイヤモンド社・ 「アジア食文化紀行 シンガポール料理」 発行年:2001年初版 著者:ウェンディ・ハットン編 富田裕子訳 出版社:タトル出版・ キリニー・コピティアム HP http://www.killiney-kopitiam.com・ ヤクン・カヤトースト HP http://yakun.com・ トースト・ボックス HP https://www.toastbox.com.sg/index.html

2)カヤトーストをシンガポールのソウルフードに 2000年から店舗数とメニューを増やしていき、2004年および 2005年のスーパー ブランド アワード(Superbrands Award)、 2008年のSPBAシティ ビジネス リージョナル ブランド アワード

(SPBA CitiBusiness Regional Brands Award)等、数々の賞を受賞し、現在のような有名店に成長してきました。カヤトーストを国内に広め、シンガポールのソウルフードとしたのはこの店だとも言われる所以です。

4.国内店舗数No.1のカヤトーストのチェーン店 「トースト・ボックス(Toast Box)」 インテリアにもこだわりが見られるおしゃれなお店「トースト・ボックス」。ノースエリアに13店舗、サウスエリアに10店舗、イーストエリアに12店舗、ウエストエリアに8店舗、そしてセントラルエリアに31 店舗、合計74店舗をシンガポール国内に構えています。ちなみに、キリニー・コピティアムは国内店舗数32、ヤクン・カヤトーストは69店舗ですから、トースト・ボックスがシンガポール国内店舗数No.1と言えます。外出の際、いたるところで目にすることができるため、訪れたことがある人も多いのではないでしょうか。(各店舗数:2019年6月現在)

1)トースト・ボックスの歴史 現代的スタイルのコーヒーチェーン店の象徴になるべく、2005年10月、トースト・ボックスは創設されました。その背景には、1960年から1970年代に南洋のコーヒーショップで提供されていたトーストやコーヒーの文化を守っていきたいという思いが秘められています。 このような思いをもって、シンガポール国内で着実に店舗を広げていったトースト・ボックスですが、人々に愛されているこの文化を他国の人 と々も分かち合いたいと考え、中国やインドネシア、マレーシアなど海外の国々にも今なお進出中です。

2)内装も楽しめるトースト・ボックスの魅力 トースト・ボックスは、生活様式体験をコンセプトとして、開業時期によって店舗の内装を変えています。2005年から2007年の間に

開業された店舗は、昔の南洋の雰囲気を出すために年代物のラジオや照明が設置されています。2008年から2009年は、白を基調とした英国植民地風のシンプルだけどかわいらしい店がつくられました。また、2010年から2015年につくられた店舗には、田園生活のモダンで素朴な雰囲気が漂っています。そして、2016年から現在においては、シンガポールの人々が新たな経験を受け入れ、住民が新しいコミュニティを築いていった1970年代のHDBに焦点を当てた内装が考えられています。 このような斬新なアイデアが認められ、シンガポール プレステージ ブランド アワード(Singapore Prestige Brand Award 2018)において評価の高い商標として総合優勝するなど、さまざまな賞を受賞しています。ぜひ、こだわりぬかれた内装にも着目しながら食事をお楽しみください。

5.シンガポールで必ず飲んで欲しい!コピティアムのコーヒー コーヒーの種類や名称も欧米や日本とは異なり、独特です。基本のコーヒーはコンデンスミルク入りとなっていて、「コピ(Kopi)」と呼ばれます。砂糖入りブラックコーヒーは「コピ・オー(Kopi O)」、エバミルク(無糖練乳)と砂糖入りのコーヒーは「コピ・シー(Kopi C)」、ブラックコーヒーは「コピ・コソン(Kopi Kosong)」と注文します。これらの独特な呼び方は、マレー語や中国語等が元になっています。 コピ・オーは、中国語で珈琲烏と表記されています。黒い体をもつ烏(からす)という字で、ミルクが入っていない黒色のコーヒーを表していると考えられます。「C」がつくものはエバミルク(無糖練乳)入りです。 「C」は、新鮮な牛乳を意味するxian na i(爽褪)の省略形です。

「コソン(Kosong)」は、マレー語でゼロという意味で、何も入っていないことを表しています。ぜひシンガポール流のコーヒーの注文方法を覚えて自分好みの美味しいコーヒーを見つけてみてください。

6.おわりに シンガポールでは、今回紹介した店以外に、ホーカーやショッピングモールのカフェなどでも、手軽にカヤトーストを食べることができます。また、店ごとにカヤジャムの味はもちろん、パンの厚さや種類も異なります。シンガポールライフの新たな楽しみとして、様々な店を訪れてカヤトーストを食べ比べ、お気に入りのカヤトーストや店舗を見つけてみてはいかがでしょうか。

 筆者も実際にお店に足を運びました。外観は他店舗とは異なり、クリーム色の壁で落ち着いた老舗の雰囲気がありました。店内には店の歴史に関する掲示がいくつもあったり、天井にいくつも扇風機が取り付けられたりしていました。食器には他店舗のようなお店のロゴではなく、植物の絵が描かれており、お店の雰囲気をより引き立てていました。

文責・写真:史蹟史料部 歴史友の会 一山ちなみ、小俣葵

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