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PROCYON初期運用成果の詳細(2015年4月6日時点)
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PROCYONミッションの概要(PRoximate Object Close flYby with Optical Navigation)
1. 50kg級超小型深宇宙探査機バス技術実証(ノミナルミッション)a. 深宇宙での発電・熱制御・姿勢制御・通信・軌道決定b. 超小型電気推進系による深宇宙での軌道操作
2. 深宇宙探査技術の実証(アドバンストなミッション:加点対象ミッション)c. 窒化ガリウムを用いた高効率X帯パワーアンプによる通信d. 深宇宙での超長基線電波干渉法による航法e. 小惑星に対する電波・光学複合フライバイ航法f. 視線追尾制御による小惑星の超近接・高速フライバイ観測
3. サイエンス観測g. ジオコロナ(地球コロナ)撮像
ミッションシーケンス2014年12月: 打上げ
各種技術実証ミッションの実施2015年12月: 地球スイングバイ2016年1月以降:小惑星フライバイミッションの実施
フライバイ相対速度>数km/s
最接近距離数10km
視線制御
視線制御
超近接距離でフライバイし,駆動鏡を用いた機上の画像フィードバック視線追尾制御により高分解能画像を取得する。
<小惑星に対する超近接・高速フライバイ観測の概要>
太陽
打ち上げ(2014/12/03)
地球スイングバイ(2015/12)
フェーズI
フェーズII小惑星フライバイ(2016/01~)
1. 50kg級超小型深宇宙探査機バス技術実証(ノミナルミッション)a. 深宇宙での発電・熱制御・姿勢制御・通信・軌道決定b. 超小型電気推進系による深宇宙での軌道操作
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打上げ後4ヶ月間の運用成果の概要
• ノミナルミッション– 電源系・熱制御系:SAP正常、熱制御正常、熱設計の妥当性を確認– 姿勢系:分離後の自動制御シーケンス正常、3軸姿勢制御確立など– 推進系:深宇宙における小型推進系の世界初実証
RCSによる角運動量管理(アンローディング)小型衛星で最長のイオンスラスタ運転と軌道変換能力実証
• ノミナル~アドバンストミッション– 通信・軌道決定:XTRP、GaNアンプ等の正常動作を確認
• アドバンストミッション– VLBI軌道決定:
NASA深宇宙用地上局と協力して本格観測を実施(データ解析中)• 科学観測
– ジオコロナ観測:1月5日にジオコロナ観測を実施(データ解析中)
ノミナル ミッション(超小型探査機バス実証) 達成.アドバンスト ミッションも,既に一部達成している.
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(a) 超小型深宇宙探査機バス技術(電源・熱制御)(ノミナル・ミッション)
・探査機各部の温度を正常範囲に維持・軌道上温度と地上で構築した熱モデルがよく一致(太陽入熱量の変動とイオンスラスタ等による内部発熱変動に対応した超小型深宇宙探査機熱設計の妥当性が確認できた)
(太陽電池パネル動作曲線(地上計測結果)と軌道上動作点の対応)
・SAP(太陽電池パネル)を正常に展開・ほぼ想定通りの発電量を確保・電力制御分配装置の正常動作確認太陽電池からの受電,アナログPPT制御搭載機器への電源供給ロケットI/F(分離検知)
電源系
熱制御系
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(a) 超小型深宇宙探査機バス技術(姿勢制御)(ノミナル・ミッション)
OBC起動
FOG起動
角速度制御開始
探査機初期化中
太陽捕捉開始
初期自動太陽補足シーケンス3軸姿勢制御によるMGA地球指向姿勢変更マヌーバ
MZ方向にトルクを出すようRCS作動
RCSによる角運動量調整
姿勢変更中 姿勢変更中
MGA地球指向中MGAでの通信成功!
2014/12/3
2014/12/9
2014/12/5
・分離後の自動制御シーケンス正常完了:右下(起動~SAP展開~回転停止~太陽捕捉)・3軸姿勢制御確立:下・通信/軌道制御/理学観測運用のための姿勢マヌーバ:下・RCSによる角運動量調整を定期的に実施:右・高精度姿勢安定化による理学観測ミッションの達成
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(a) 超小型深宇宙探査機バス技術(通信系)
(ノミナル・ミッション)
1. 概要搭載通信系の主要コンポーネントは,小型Xバンド深宇宙デジタルトランスポンダ(XTRP), 軽量アンテナシステム,GaN SSPA, VLBITXで構成されている.COTS部品を積極的に使用した結果,システム総重量 約7.3kg(計装を除く),消費電力 約54.3[W](2way通信時)を達成し,超小型衛星としては世界初となる,深宇宙通信を可能にした.中核となるXTRPは民生用FPGAの採用と受信部のシングルコンバーション化により部品点数を大幅に削減した.消費電力12 [W](2Way通信時), 重量 1.17 [kg]を実現し,2015年現在, 世界最小・最軽量・低消費電力の深
宇宙トランスポンダである.搭載通信系は打上後,チェックアウトを完了し,現在も深宇宙空間において安定した通信測距を継続している.
2. 成果の波及効果
超小型衛星やローバ、ランダーなどの低コスト・低リソースな深宇宙探査の実現には,軽量・低消費電力の搭載通信系が不可欠であり,今回達成した成果によって新たな探査の道が切り開
かれた.また技術移転により,代表的な科学衛星の通信系の低コスト化も期待される.
図1 PROCYON搭載XTRP FM品
項目 仕様
通信周波数帯 Xバンド
アップリンク周波数 7.1 [GHz]
ダウンリンク周波数 8.4 [GHz]
コヒーレント比 749/880
送信機定格出力 15 [W]
コマンドビットレート 15.625, 125, 1000 [bps]
テレメトリビットレート 8 [bps] 〜32 [kbps]軌道決定方法 R&RR, DDOR
通信システム総重量 約7.3 [kg](計装を除く)通信システム消費電力 約54.3 [W](2way通信時)
地上局適合性UDSC64m,USC34m
(CCSDS準拠)
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PROCYON通信系機器
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(a/b) 超小型イオン/コールドガス統合推進システムI-COUPS: Ion thruster and COld gas thruster Unified Propulsion System
高圧キセノンガスをイオンスラスタとコールドガススラスタで共用することで
軽量化を実現
8系統ガススラスタにより3軸両方向回転+4方向並進制御が可能に
超小型イオンスラスタ(軌道遷移)と3軸コールドガススラスタ(RCS/TCM用)を
統合させた超小型の推進システム
全推進システム: 9.96 kgドライ質量: 7.43 kg推進剤質量: 2.53 kg
全消費電力: < 39 W
PROCYON Hodo-1 Hodo-4 Hodo-3 SkySat3 StSat-3 FalconSat-5 SNAP-1
軌道 深宇宙 LEO LEO LEO LEO LEO LEO LEO
宇宙機サイズ 約65 kg 60 kg 66 kg 60 kg 120 kg 180 kg 180 kg 6 kg
化学推進 コールドガス8基
H2O21基 なし H2O2
1基H2O24基 なし なし コールド
1基
電気推進 イオン なし イオン なし なし ホール ホール なし
(ノミナル・ミッション)
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深宇宙における小型推進系の世界初実証
小型衛星初の3軸両方向RCSによる角運動量調整の実用
小型衛星最長のイオンスラスタ運転と軌道変更能力の実証
H2A小型副衛星初の高圧ガス系搭載/実証
深宇宙運用によるアウトプット(成果)超小型深宇宙探査機という選択肢
超小型衛星によるランデブ/高精度位置制御
超小型衛星による軌道遷移,大気抵抗補正
超小型副衛星の利用用途大幅拡大
0.00
5.00
10.00
15.00
20.00
25.00
Ion beam current/mA
Doppler shift/mms-1
Thrust:366 μN
0.04
0.06
0.08
0.10
0.12
Cold-gas thruster maneuvering
Norm of the angular momentum/Nms
コールドガススラスタによる角運動量調整(アンローディング)
イオンスラスタ運転時によるドップラーシストと推力推定
累計68回(このうちペア作動33回)の作動成功 累計223時間&350μNのイオンスラスタ運転に成功
期待されるアウトカム
(a/b) 超小型イオン/コールドガス統合推進システム(ノミナル・ミッション)
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・制御ソフトバグによる流量制御異常
CMD運用の工夫により解決
・中和器電圧の異常増加
・高電圧異常による停止 現在,復旧運用中
大流量作動により解決+その後ゆるやかに症状改善
これまでの経緯およびトラブル/対策
(a/b) 超小型イオン/コールドガス統合推進システム
223時間にわたり高電圧放電の探査機への影響なし深宇宙における安定なプラズマ着火を実証実機測定推力が地上予測値と良好な一致(実際は3-5%高かった)超小型イオンスラスタの極超高真空での作動データを取得
深宇宙運用によるアウトプット(技術)
イオンスラスタとコールドガススラスタとの同時作動を実証民生品による高圧ガス/コールドガス系の健全性実証膨張ガスによるトルク生成データの取得
・イオンエンジンに必ず伴う懸念解消・超高真空のため地上試験の不確定要素・試験/推定方法の裏付け・グリッド損耗の主要因の電流
12月初旬 コールドガススラスタ作動開始12月中旬 イオンスラスタコンポ機能チェック12月下旬 イオンスラスタの初宇宙作動
1月初旬 制御ソフトウェアバグによる流量異常と中和器電子放出電圧の異常状態の把握
1月中旬~2月中旬 両トラブルへの対処方法検討
2月下旬 両問題への対処方法確立
2月末~ イオンスラスタ定常運用を開始イオン/コールドガスの併用運転実施
3月中旬 イオンスラスタ223時間の運転達成高電圧異常が発生,イオンスラスタ休止
3月下旬 高電圧異常への復旧運用
イオンスラスタ
(要因:未解明)
・広範囲の流量調整機能・豊富な地上試験実績
・柔軟なOBC機能・EM検証
(要因:検証不足)
トラブル
(要因:大流量+α)
対応策
コールドガススラスタ
意義/波及効果
・地上試験がほぼ不可能・民生品ガス系構築の指標・グリッド損耗の主要因の電流
(ノミナル・ミッション)
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(c) GaNを用いた高効率X帯パワーアンプによる通信
(アドバンスト・ミッション)
1. 概要PROCYONでは,搭載X帯固体電力増幅器(SSPA)(図1,2)に,JAXA宇宙科学研究所において独自に研究開発を重ねた技術に基づき製作した窒化ガリウム(GaN)を用いたパワーアンプを内蔵した.2014年12月3日の打上げ以来,GaNを用いたX帯SSPAとしては,世界初となる深宇宙空間での安定した動作を継続している(図3).これまでの2600時間以上の軌道上での連続動作を通して,SSPAコンポーネントの効率は30%台中盤となっており,GaNを用
いることで超高効率な特性を実現した.これによって,世界で初めて,超小型探査機であっても大型探査機と同等に超遠距離な深宇宙通信が可能であることを示した.
2. 成果の波及効果
一般にバス機器で最も消費電力を消費し,発熱量も多いのは送信用の電力増幅器である.超小型での深宇宙探査の実現には,電力増幅器の高効率化は必須であり,今回達成した成果によって,新たな深宇宙探査時代が幕を開けたと言える.今後,深宇宙軌道上での長時間連続動作試験によって宇宙環境耐性および信頼性の検証を続け,その知見を将来の大型探査機・科学衛星に発展させていきたい.さらに,消費電力・発熱量の大幅な低減により,新たなミッションの可能性を拡げていく.
図1 PROCYON搭載GaN SSPA FM品
図3 GaN SSPAによって増幅され,地上局に届いたPROCYONからの変調信号スペクトラム(1kbps)
図2 PROCYON内部に搭載されたGaN SSPA
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世界初
成果• 世界初となるチャープDDOR計測を、JAXA,
NASA,ESAと共同で実施した(現在データ解析中)• 世界初となる広帯域幅86MHzのDORトーンペアに
よるDelta-DOR計測を実施した(従来はNASA火星探査機の79MHz帯域幅が最大)
(d) 深宇宙での超長基線電波干渉法(VLBI)による航法
(アドバンスト・ミッション)
図1 2014年12月27日Canberra-Goldstone 基線 Delta-DOR 観測量のO-C(上の白い点列がクェーサ遅延量、下の白い点列がPROCYON のDOR計測量である)
図2 チャープDORのスペクトラムとCW(N0N)の掃引帯域幅の関係
Fs2 = 47.97MHzFrequency separation (Fs)Fs1=38.02MHz
Bs(Sweep Band width) Bs
Bs
Time
PriodBs
Bs
Bs
Frequency
Amplitude
Fc = Tone1
Fc = Tone2
Fc = Tone3
Frequency
Fc = Tone1
Fc = Tone2
Fc = Tone3
チャープDOR
従来型固定DOR
実験の概要:深宇宙探査機の精密軌道決定に欠かす事が出来ない技術であるDelta-DOR計測の主要誤差源である“帯域内位相 ripple によるバイアス誤差”を大幅に低減させる方法として、帯域内でトーンをスイープさせる機能を考案し実装した。海外機関と協力の上実証実験を行なう。
実験の詳細:Delta-DOR計測では、天球面上で探査機の近傍に位置するクェーサからの熱雑音(white noise)を各局で取得し、相互相関を取り群遅延を計測して探査機のDOR(Differential one-way range)の校正のために使用する。クェーサ計測時は8MHz帯域幅の中の位相変化の一次成分で群遅延が定義されるのに対し、探査機計測時は、2つのトーンが存在している2つの周波数位置の位相の差によって群遅延が定義されるため、トーンが存在している周波数に位相 ripple が存在すると校正時にバイアス誤差が生じる。この点を改善するため、探査機のトーンをクェーサ観測帯域内でスイープさせ局所的な位相rippleの影響を取り除き、バイアス誤差を大幅に低減させる事を目的とする。
実験結果(暫定):現在データ解析中であり統計的有意性を議論する段階には至っていないが、チャープDOR計測時にのみ、遅延量にうねり(位相rippleの影響)が存在しているように見える(図1参照)。今後実験を継続しデータサンプル数を増やして詳細な評価を行なう。
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(g) ジオコロナ(地球コロナ)撮像(理学観測)
[参考]アポロ16で得られたジオコロナ分布[Carruthers et al., 1976]
• 地球コロナの全球観測はアポロ16号以来行われておらず、また20地球半径以遠は観測例がない
• 高高度のジオコロナ分布が磁気嵐に伴って変動することが最近(2010~)になって分かってきた
• 周回機では遠方の観測が困難
深宇宙からのジオコロナ撮像!
・Focal length 400mm・FOV 3 deg・Angular resolution 0.03 deg・Spectral range 122±10 nm・Sensitivity 6.5 × 10−5 [ ⁄cts ⁄s ⁄pix R]・Effective diameter 41.5 mm
ジオコロナ画像を2015/1/5に取得→アポロ16号以降できていなかったジオコロナの広視野撮像に成功(論文準備中のため画像自体は現時点で非公開)
○ 20地球半径以遠は観測例が他になく、結果についてデータ解析中
FM主鏡の接着
光学系の設計・製作を学内(立教大)で実施
宇宙で使用可能な接着技術の開発(特許出願済)
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