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兵庫教育大学 研究紀要 第522018 2 pp 79 87 エネルギーの変換 ・ 利用に関す る中高生の イ メ ージの構造 と 環境生活意識への影響 An Analysis of Student's Images for Energy Conversion & Utilization, And it's Influences on their Consciousness About Environmental Protection in Daily Life 森 山 * 池田垣 ** 黒 田 昌 克 *** M ORIYAM A Jun IKEDAGAKI Minoru KURODA Masakatsu 萩 嶺 直 孝**** 山 本 利 - ***** HAGIMINE Naotaka YAM AMOT0 Tosikazu 本研究の目的は, エネ ルギーの変換 ・ 利用に関す る中高生のイ メ ーン、の構造 を明らかにし , そのイ メ ージがエネルギー 環境問題に関す る生活意識 (以下, 環境生活意識) に与える影響を把握するこ とである。 「エネルギー」 を刺激語とする 言語連想によ っ て作成 し た質問項目 を用いて, 中高生計537(有効回答488) を対象 と し た調査 を実施 し , 因子分析 を 行った。 その結果, 中高生のエ ネ ルギーに対す るイ メ ー ジの構造 と し て, 「エネルギーの変換と生成」 因子, 「エネルギー 環境保全」 因子, 「エネルギー利用上の課題」 因子, 「エネルギーの活用」 因子, 「エネルギー資源」 因子の 5 因子が抽出 さ れた。 こ れらの因子の形成度が環境生活意識に及ぼす影響について検討 し たと こ ろ, エネ ルギー環境問題に関す る興味 ・ 関心や具体的な行動の生起には, 中学生では 「エネルギー環境保全」 因子が, 普通科高校生では 「エネルギー利用上の課 題」 因子や 「エネルギー資源」 因子が, 工業科高校生では, 「エネルギーの変換と生成」 因子がそれぞれ影響しているこ と が示唆 さ れた。 キ ーワ ー ド : 中高生, エネルギー変換に関する技術, イメージ, エネルギー環境問題 Key words : junior and senior high school student, energy conversion technology, image, environmental issue of energy utilization 1. はじめに 本研究の目的は, エネルギーの変換 ・ 利用に関す る中 高生のイ メ ー ジの構造 を明 ら かに し , そのイ メ ージが環 境生活意識に与える影響について検討するこ とである。 私たちの日常生活や経済活動は, すべてエネルギーに よって支えられており , 世界的にエネルギーや環境の問 題は喫緊の課題といえ る。 我が国に目を移すと , エネル ギー資源の 9 割以上を海外から輸入しているというエネ ルギー資源の問題, 大都市化によるヒートアイランド現 , c 0 2 排出によ る地球温暖化の対策等の問題 を抱え て いる。 また, 2011 年の東北地方太平洋沖地震では, 甚大 な被害が発生し , 福島第一原子力発電所での事故は国民 に大きなイ ンパク ト を与えた。 皮肉なこ と に, こ の事故 が我が国のエネルギー問題への関心を高める契機と なり , 全国各地に ガソ ー ラ ーが建設さ れるな ど再生可能エネ ルギーが注目されるこ ととなった。 このよう に, 我が国 のエネルギーや環境の問題に対する動向は転換期を迎え ており , 未来を担う 子ども達へのエネルギーや環境に関 する教育は, その重要性が さ ら に増す こ と が予想 さ れる。 2017 年に公示 さ れた新 しい中学校学習指導要領の技術 ・ 家庭科の技術分野では, エネルギー変換の技術の内容に ついて, 「こ れからの社会の発展とエネルギー変換の技 術の在り方を考える活動などを通して, 次の事項 を身 に 付けることができるよう指導する。 生活や社会, 環境 と の関わり を踏まえて, 技術の概念を理解するこ と。 技術 を評価 し , 適切な選択と管理 ・ 運用 の在 り 方 や, 新たな 発想に基づ く 改良と応用について考え るこ と。」 と明記 している ') 。 また, この内容について新しい中学校学習 指導要領解説の技術 ・ 家庭編では, 「社会の発展のため のエネルギー変換の技術の在り 方や将来展望 を考え る活 動などを通して, 生活や社会に果たす役割や影響に基づ いてエネルギー変換の技術の概念を理解させると と もに, より よい生活や持続可能な社会の構築に向けて, エネル ギー変換の技術 を評価 し , 適切に選択, 管理 ・ 運用 し た , 新たな発想に基づいて改良, 応用 し たり す る力 を育 成す る こ と を ね ら い と し て い る。」 2) と解説している。 こ れは, 岐路に立つ我が国のエネルギーや環境の問題を 主体的に考え , 自らの生活の中で様々な行動を決定して * 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育コース, 教育実践高度化専攻授業実践開発コース 教授 平成291025 日受理 * * 神戸市立科学技術高等学校 * * * 兵庫教育大学大学院 (専門職学位課程) 教育実践高度化専攻授業実践開発 コ ース * * * * 熊本県八代市立第六中学校 * * * * * 埼玉大学教育学部 79

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兵庫教育大学 研究紀要 第52巻 2018年 2 月 pp 79 87

エネルギーの変換 ・ 利用に関する 中高生の

イ メ ージの構造と 環境生活意識への影響

An Analysis of Student's Images for Energy Conversion & Utilization, And it's Influences on their Consciousness About Environmental Protection in Daily Li fe

森 山 潤* 池田垣 稔** 黒 田 昌 克*** MORIYAMA Jun IKEDAGAKI Minoru KURODA Masakatsu

萩 嶺 直 孝**** 山 本 利 -*****HAGIMINE Naotaka YAMAMOT0 Tosikazu

本研究の目的は , エネ ルギーの変換 ・ 利用に関す る中高生のイ メ ーン、の構造 を明 らかに し , そのイ メ ージがエネ ルギー

環境問題に関す る生活意識 (以下, 環境生活意識) に与え る影響 を把握す るこ と であ る。 「エネルギー」 を刺激語と す る

言語連想によ って作成 した質問項目を用いて, 中高生計537名 (有効回答488名) を対象と し た調査を実施し , 因子分析を

行っ た。 その結果, 中高生のエネルギーに対す るイ メ ージの構造と し て, 「エネルギーの変換と生成」 因子, 「エネルギー

環境保全」 因子, 「エネルギー利用上の課題」 因子, 「エネルギーの活用」 因子, 「エネルギー資源」 因子の 5 因子が抽出

さ れた。 こ れらの因子の形成度が環境生活意識に及ぼす影響について検討 し たと こ ろ, エネルギー環境問題に関す る興味 ・

関心や具体的な行動の生起には, 中学生では 「エネルギー環境保全」 因子が, 普通科高校生では 「エネルギー利用上の課

題」 因子や 「エネルギー資源」 因子が, 工業科高校生では, 「エネルギーの変換と生成」 因子がそれぞれ影響 し ているこ

と が示唆 さ れた。

キーワー ド : 中高生, エネルギー変換に関する技術 , イ メ ージ, エネルギー環境問題

Key words : junior and senior high school student, energy conversion technology, image, environmental issue of energy

uti lization

1 . はじ めに

本研究の目的は, エネルギーの変換 ・ 利用に関する中

高生のイ メ ージの構造 を明 ら かに し , そのイ メ ージが環

境生活意識に与え る影響について検討するこ と である。

私たちの日常生活や経済活動は, すべてエネルギーに

よ っ て支え ら れており , 世界的にエネルギーや環境の問

題は喫緊の課題と いえ る。 我が国に目を移すと , エネル

ギー資源の 9 割以上を海外から輸入 し てい ると いう エネ

ルギー資源の問題 , 大都市化によ る ヒ ー ト アイ ラ ン ド現

象, c 0 2排出によ る地球温暖化の対策等の問題を抱えて

いる。 また, 2011年の東北地方太平洋沖地震では, 甚大

な被害が発生し , 福島第一原子力発電所での事故は国民

に大き なイ ンパク ト を与え た。 皮肉なこ と に, こ の事故

が我が国のエネルギー問題への関心を高める契機と なり , 全国各地に メ ガソ ー ラ ー が建設 さ れる な ど再生可能エ ネ

ルギーが注目 さ れる こ と と な っ た。 こ のよ う に , 我が国

のエネルギーや環境の問題に対す る動向は転換期 を迎え

ており , 未来を担う 子 ども達へのエネルギーや環境に関

する教育は, その重要性がさ らに増すこ とが予想 さ れる。

2017年に公示された新しい中学校学習指導要領の技術 ・

家庭科の技術分野では, エネルギー変換の技術の内容に

つい て , 「 こ れから の社会の発展 と エ ネルギー変換の技

術の在り方を考え る活動などを通し て, 次の事項を身に

付け るこ と ができ るよ う 指導する。 生活や社会, 環境と

の関わり を踏まえ て, 技術の概念を理解するこ と。 技術

を評価 し , 適切な選択 と管理 ・ 運用の在り 方や, 新たな

発想に基づ く 改良と応用について考え るこ と。」 と明記

し てい る ' )。 また, こ の内容について新 しい中学校学習

指導要領解説の技術 ・ 家庭編では, 「社会の発展のため

のエネルギー変換の技術の在り 方や将来展望を考え る活

動な どを通し て, 生活や社会に果たす役割や影響に基づ

いてエネ ルギー変換の技術の概念を理解させると と も に, よ り よい生活や持続可能な社会の構築に向け て, エネル

ギー変換の技術 を評価し , 適切に選択, 管理 ・ 運用 し た

り , 新たな発想に基づいて改良, 応用 し たり する力 を育

成す る こ と を ねら い と し てい る。」 2) と 解説 し てい る。

こ れは, 岐路に立つ我が国のエネ ルギーや環境の問題を

主体的に考え , 自 らの生活の中で様々な行動を決定 し て

* 兵庫教育大学大学院教科教育実践開発専攻生活 ・ 健康 ・ 情報系教育コース, 教育実践高度化専攻授業実践開発コース 教授 平成29年10月25 日受理

* * 神戸市立科学技術高等学校 * * * 兵庫教育大学大学院 (専門職学位課程) 教育実践高度化専攻授業実践開発コ ース

* * * * 熊本県八代市立第六中学校 * * * * * 埼玉大学教育学部

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森 山 潤 池田垣 稔 黒 田 昌 克 萩 嶺 直 孝 山 本 利 - い く ためには , いわゆる 「技術 リ テ ラ シー」 の育成が求

めら れてい る こ と を意味 し てい る。

「 技 術 リ テ ラ シ ー」 は , International Technology Education Association (2011年に International Technology and Engineering Educators Association に改名。 以下 , ITEA/ITEEA) によ って 「技術を理解し , 活用 し , 管理す

る能力」 3) と 定義 さ れて い る 。 我 が国 に お い て は ,

ITEA/ITEEA の 「技術リ テラ シー」 の提唱を受けて, 日

本産業技術教育学会は技術教育で育成する資質 ・ 能力 を

「技術 と 社会と の関わり につい て理解 し , ものづ く り を

通し て, 技術に関する知識や技能を活用 し , 技術的課題

を適切に解決する能力, およ び技術 を公正に評価 ・ 活用

する能力」 4) と 定義 し た。 その上で , 「技術 リ テ ラ シー」

の形成を 「技術イ ノ ベーシ ョ ン」 と 「技術 ガバナ ンス」

の力の育成によ っ て達成す る視点 を提唱 し てい る 5)。 こ

こ でい う 「技術イ ノ ベーシ ョ ン」 は, 「科学の発見や技

術の発明によ る新たな知的 ・ 文化的価値を創造するこ と , それらの知識を発展 さ せて, 経済的 ・ 社会的 ・ 公共的価

値の創造に結びつけ る革新」 と定義 さ れてい る 4)。 また, 「技術 ガバナ ンス」 は, 「立場の違いや利害関係を有する

人たちがお互いに協働 し , 問題解決のための討議に主体

的に参画 し , 意思決定に関与す る システ ム」 4) と 定義 さ

れてい る。 し たがっ て , 「技術 リ テ ラ シー」 の観点から

エネルギーの変換 ・ 活用に関す る教育 を推進す る ために

は, ①エネルギー変換の技術の仕組みを理解し , それら

を改良, 応用 , 創造す る力 と , それら を発展 させて, 経

済的 ・ 社会的 ・ 公共的価値の創造に結びつけ る革新 を生

み出そう と する態度を育成するこ と , ②エネルギー変換

の技術の管理運用に関わっ て , 異な る多様な立場の違い

を踏まえつつ他者と協働 し , 持続可能社会の構築と いう

観点から社会的な議論に参画 し , 主体的に意思決定を行

う 力 を育成するこ と が重要と 考え ら れる。

一般に, 教科教育の教授 ・ 学習過程においては, 目標

と する資質 ・ 能力 に対す る学習者の学習準備性 ( レデイ

ネ ス) を踏まえ るこ と が重要であ る。 特に, エネルギー

という 概念は, 複数の教科で取り扱われており , 学習内

容には自然認識から社会認識に至 るまで , 様々な要素が

含ま れてい る。 ま た, 家庭生活で生徒は, 日常的に 「省

エネ」 や 「太陽エネルギー」 な どエネルギーと いう 言葉

に関連 し た多様な表現に触れてい る。 そのため, 生徒は, エネルギーという 言葉に対 して極めて多様で幅広いイ メ ー

ジを有 し てい るのではないかと考え ら れる。 エネ ルギー

や環境の問題を主体的に考え , 自らの生活の中で様々な

行動を意志決定してい く 人材の育成を 「技術リ テラ シー」

の形成によ っ て成 し得よ う と し た と き , そ も そ も中学生

や高校生 (以下, 中高生) が 「エネルギー」 と いう 言葉

に対 し て どのよ う なイ メ ー ジを持 っ てい るのか把握す る

こ と は学習者のレデイネス を理解する上で重要であ る。

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こ こ でい う イ メ ージと は, 「あ る対象に対す る記憶 ・ 知

識 ・ 感情 ・ 印象等 を結合 し て 『思い だ さ れる表象 (re- called representation) 』 であ り , 知覚 ・ 意味 ・ 思考の構

成要素 と な る心像を意味 し てい る。 ま た, イ メ ージは, 思考や態度の形成, 行動 を触発す る要因 と し て捉え ら れ

てい る 6)。 し たがっ て , エネ ルギーに対 し て生徒が どの

よ う なイ メ ー ジを形成 し てい るかは , エ ネ ルギーや環境

の問題に対する生徒の思考や態度, 行動を左右する要因

と し て重要な役割 を果たすのではないかと考え ら れる。

エ ネ ルギ ーに対 す る児 童生徒 の意識 に つい て佐島

(1995) は, 「『資源 ・ エネルギー ・ 環境』 に対する児童 ・

生徒のイ メ ージの形式が, 日常生活におけ る経験や体験

と深 く 関わっ てい るこ と は明 らかである。 しかし , 学年

が進んで も 『資源 ・ エネルギー ・ 環境』 に対す る児童 ・

生徒のイ メ ージは, あま り 広がっ てい ない。 小学校の低

学年から高学年にかけ ては次第にイ メ ージが豊かにな っ

てき てい るこ と が読みと れるが, それ以降は中学校まで

ほと ん ど展開は認めら れない。 逆に高等学校にな る と む

し ろイ メ ージが乏 し く な っ てい るのであ る。 こ れな どは,

学校教育における 『資源 ・ エネルギー ・ 環境』 に発展的 ・

系統的な取り 扱いの欠如 を端的にあらわし てい ると共に, 中学校から高等学校にかけてその扱い関する問題点を示

し てい るよ う であ る。」 と 指摘 し てい る 7)。 ま た , 大学

生 と 中 学 生 の エ ネ ル ギ ー利 用 意 識 に つ い て岳 野 ら

(2016) は, 自由記述式の調査で得 ら れた回答 をテキス

ト マイ ニ ン グによ っ て分析 し た 8)。 その結果 , 「大学生

と中学生のエネルギー利用意識について分析す ると大学

生の方が, 抽出語の分析や意識構造の分析では, よ り 複

雑な文章や構造で表現 し てい るこ と が明 らかと な っ た。

しかし , 中学生は, エネルギーを教科の目標の一つであ

る生活に結びつけ ており , 技術科の成果が示 さ れてい る

こ と も指摘できた。」 と述べている。 また, 「大学生全体, 中学生全体, 性別によ っ て意識構造が異な る」 こ と も示

唆 している。 一方, 福山 (2008) は, 愛媛県下の中学生

に対 し , エネルギーと聞いて連想す る言葉について, 地

域をエネルギーに関連する施設の有無で分けたと き , 差

異があ るか どう かについ て調査 を行 っ てい る 9)。 その結

果, エネルギーに関連する施設の有無に関わらず “電気”

と いう 回答が一番多 く 見 ら れたが, それと同時にエネル

ギーに関連す る施設がある地域では “原子力” , “発電” ,

“風力” な どの発電に関連す る回答が多いのに対 し , エ

ネ ルギーに関連す る施設がない地域では “光” , “熱” ,“運動エネルギー” な どの理科教育で学ぶ内容を答え る

生徒の割合が多い と いう 差異があっ たこ と を報告 し てい

る。

こ れらの先行研究では, 小学生から大学生までの様々

な対象に 「資源 ・ エネ ルギー ・ 環境」 に対す るイ メ ージ

の検討は さ れてい る ものの, 調査票におい て質問項目や

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エネルギーの変換 ・利用に関する中高生のイ メ ージの構造と環境生活意識への影響

選択肢が限定的であ るため, 本来, 生徒の有する多様な

エネルギーに対するイ メ ージの実態 を把握す るこ と がで

き ていなかっ たり , 実際の生徒の生活行動 と の関連性が

明 ら かに さ れていなかっ たり す る点に, さ ら な る研究の

余地があ る。

そこ で本研究では, 中高生のエネルギーや環境の問題

に対す るイ メ ージや具体的な生活行動や興味 ・ 関心に関

する調査を実施し , 生徒のイ メ ージを因子分析を用いて

構造的に把握するこ と で, エネルギーの変換 ・ 利用に関

す る中高生のイ メ ージが環境保全に関す る生活意識に与

え る影響についての基礎的資料 を得 るこ と と し た。

2 . 研究の方法

2.1 予備調査

予備調査では, 生徒のエネルギーに対す るイ メ ージを

探索的に把握し , 本調査で用いる質問項目を作成した。

(1) 対象 兵庫県下の普通科高校 1 年生188名, 機械科

2 年生39名, 工業技術科3 年生49名, 計276名。

(2) 質問項目 「エネルギー」 を刺激語とする予備調査

と し, 『最近, 資源や環境の問題と して, 「エネルギー」

のこ と が Tv や新聞な どでよ く 話題にな っ ています。

あなたはこ の 「エネルギー」 と いう 言葉から連想す

る言葉を自由にでき るだけたく さ ん書いて く ださい。』

と質問し , 自由記述で回答させた。

(3) 手続き 調査は、 各高校のホームルームの時間 を利

用 し て実施し た。 調査後, 得ら れた連想語を, 教師経験

10年以上の工業科教員 4名で, 65語を選定し, エネルギー ・

環境問題のイ メ ージ構造を把握する質問項目を作成した。

作成した調査票を図 1 に示す。

2.2 本調査

本調査では, 予備調査で作成し た質問項目を用いて, 生徒のエネルギーに対するイ メ ージの構造を因子分析的

に把握すると共に, エネルギーに対する具体的な生活行

動や興味 ・ 関心と の関連性を検討 し た。

(1) 対象 兵庫県 ・ 大阪府内の中学生182名 ( 3 年生,男子91名, 女子91名) , 高校生355名 (普通科2 年生,男子79名, 女子100名, 工業科 (機械) 2 年生, 男

子174名, 女子 2 名) , 合計537名。

(2) 質問項目 予備調査で作成 し た質問項目 (図 1 ) ,及び 「エネルギーに対する具体的な生活行動や興味 ・

関心」 に関する質問項目 (図 2 ) を用いた。

(3) 手続き 本調査では, まず, 生徒のエネルギーに対

するイ メ ージの構造を把握する質問項目を 5 件法で ( 5 : と て も , 4 : やや, 3 : ふつう , 2 : あまり , 1 : ま っ

たく ) で, エネルギーに対する具体的な生活行動や興味 ・

関心を把握する質問項目を 4 件法 ( 4 : と ても~ , 3 : すこ し~ , 2 : あまり ~ , 1 : まったく ~ ) で回答させ

た。 実施後, まずイ メ ージ構造を把握する項目について,

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質問項日の弁別力 を確認するために GP 分析 を行っ た。

ま た , 内的整合性 を Cronbach の α係数 を用い てそ れぞ

れを確認 し た。 次に, 主因子法およ びプロ マ ッ ク ス回転

を用いた因子分析 を行い , 生徒が内的に形成 し てい るエ

ネ ルギーに対す るイ メ ージの構造 を抽出 し た。 その後, 各因子に該当する質問項目の因子負荷量に基づいて, 校

種 ・ 学科間での各因子の傾向を検討 した。 次に, エネル

ギーに対す るイ メ ージの構造と , 具体的な生活行動や興

味 ・ 関心と の関連性を , 重回帰分析によ っ て検討 し た。

3 . 結果及び考察

3.1 工ネルキ ーに対する イ メ ージの構造分析

本調査の結果, 全被験者537名に対 し , 白紙又は一部

の項目に空白が含ま れてい る な ど欠損がある データ を削

除し たと こ ろ , 有効回答は中学生154名, 普通科高校生

175名, 工業科高校生159名, 計488名, 有効回答率90.9 % であ っ た。

次に, エネルギーに対す る連想語65項日 につい て GP 分析を行った結果, すべての項目に尺度の弁別性が確認

さ れた。 ま た , α= 0.928と なり , 尺度の内的整合性が

確認 さ れた。

そこ で , すべての項目を用いた因子分析を行 っ たと こ

ろ , 最終解と し て 5 因子が抽出さ れた (表 1 ) 。

まず, 第 1 因子では, 「太陽光」 , 「水力」 , 「風力」 , 「電力」 な どの項日が含ま れた。 こ れらは, 自然界から

エネ ルギーを変換 ・ 生成す る仕組みに対す るイ メ ー ジと

解釈 さ れるこ と から 「エネルギーの変換と 生成」 因子と

命名 した。 第 2 因子では, 「環境」 , 「資源」 , 「地球」 , 「自然」 な どの項目が含ま れた。 こ れら は, 人間によ る

エネルギー利用の一方で , 保全 し なけ ればな ら ない対象

と し ての地球環境へのイ メ ージであると 解釈でき るこ と

から , 「エネルギー環境保全」 因子と命名 し た。 第 3 因子では, 「損失」 , 「事故」 , 「格差」 な どの項目が含まれ

た。 こ れらは, エネルギーの利用に際し , 生 じ てい る課

題や危険性に対す るイ メ ージであ ると 解釈でき るこ と か

ら , 「エネルギー利用上の課題」 因子と命名した。

第 4 因子では, 「飛行機」 , 「電車」 , 「船」 な どの項目

が含まれた。 こ れらは, 生活の中でのエネルギー活用の

具体的なイ メ ー ジであ る と 解釈で き るこ と から , 「エネ

ルギーの活用」 因子と命名した。 第 5 因子では, 「燃料」 , 「天然ガス」 , 「石油」 な どの項目が含まれた。 こ れらは, エネルギーを作り 出す源と な る資源に対す るイ メ ージで

あ る と 解釈で き るこ と から , 「エ ネルギー資源」 因子 と

命名した。 以下, こ れらの因子を総称 して, 「エネルギー

に関す るイ メ ージ構成因子群」 と す る。

3.2 イ メ ージの構造における校種 ・ 学科間の差異

エネルギーに関するイ メ ージ構成因子群の因子別平均

値 を表 2 に示す。 その結果, 全体では, 「エ ネルギーの

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森 山 潤 池田垣 稔 黒 田 昌 克 萩 嶺 直 孝 山 本 利 - エネル ギーに関す るア ンケー ト

学校 _年 (性別 ) 男 ・ 女 ( 0 印 を付けて く だ さい )番 氏名

こ のア ンケー ト は、 み んのエ ノレ ーに対 0 イ - ン (/ ) 調 で 。 研 目 のた めの もので 、

記載の個人情報は第三者に知 られ るこ とはあり ません。 自分の思っ た とお り記入 して く だ さい。

設問 1 あなたは、 エ ネル ギー とい う言葉 を聞い て、 どの よ う な言葉 を連想 し ますか ?次の項日について、 5段階で回答 して く だ さい。

1 太陽光

2 水力

3 二酸化炭素

4 電気

5 波力

6 エ ン ジン

7 損失

8 電力

9 磁力

10 エ コ ロ ジー

11 バイ オ燃料

12 燃料電池

13 水素

14 人 間

15 軽 油

ル不・

、ガ

ー「'

(

(

使

67

89

01

23

45

67

89

01

23

11

11

22

22

22

22

22

33

33

とても やや ふつ う あまり まったく

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

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5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

34 船

35 風力

36 馬力 ・ パ ワー

37 効率

38 速度

39 排気ガ ス

40 飛行機

41 乾電池

42 石油

43 電化製品

44 待機電力

45 ハ イ ブ リ ッ ド カ ー

46 リ サ イ ク ル

47 石炭

48 節約

49 循環

50 省エネル ギー

51 自然

52 地球

53 資源

54 環境

55 地球温暖化

56 火力

57 地震

58 原子力

59 有限

60 カ ロ リ ー

61 食べ物

62 地熱

63 格差

64 ガ ソ リ ン

65 体力

とても やや ふつ う あまり まったく

3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

5 4 3 2 1

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5 4 3 2 1

図 1 工ネ ルキーに対するイ メ ージの構造を把握する質問項目

変換と 生成」 因子, 「エネルギー資源」 因子の水準が高 次に, エネルギーに関するイ メ ージ構成因子群の校種 ・

く , 「エネルギー利用上の課題」 因子の水準が低かった。 学校間の差異について, 一元配置分散分析を行 った (表

82

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設問 あなたの、 エネルギーに対す る興味 ・ 関心 を

あなたは、 最近、新聞や T V で話題になつてい① るエネルギー ・ 環境問題に興味 ・ 関心があり ま

すか。

あなたは、 学校の様々な教科で取り組んでい る② エネルギーに関す る学習に、 興味 ・ 関心はあり

ますか。

次の4段階で答えて く だ さい。

と て も興味がある すこ し興味がある あま り 興味がない まっ た く 興味がない

4 3 2 1

と て も興味があ る すこ し興味があ る あま り 興味がない まっ た く 興味がない

4 3 2 1

l l l l

あなたは、 機会があれば、 地域で行われて るエ④ コロ ジ一活動 ( リ サイ クル活動や環境保全活動

等) に参加 し よ う と 思いますか。

と て も思 う すこ し思 う あま り思わない まっ た く 思わない

4 3 2 1

エネルギーの変換 ・利用に関する中高生のイ メ ージの構造と環境生活意識への影響

あ な た は 日 頃 の 生 活 の 中 で 省 エ ネ ル ギ ー や 節 と て も 心がけてい る す こ し 心がけてい る あま り 心がけていない まっ た く 心がけてない

③電 を心がけていますか。 4 3 2 1

あな たは、 買い物 をす る と き 、 環境 にや さ し い いつ も と き どき あま り ま っ た く

⑤エ コ商品 を、 買 う よ う に していますか。 4 3 2 1

図 2 工ネルキーに対する具体的な生活行動や興味 ・ 関心を把握する質問項目

3 ) 。 その結果, 「エネルギー環境保全」 因子 (F(2,485) = 1.01, ns) , 「エネルギーの活用」 因子 (F(2,485)= 0.25, ns) では, 校種 ・ 学科間の主効果は有意ではなかっ た。 し か

し , 「エネルギー利用上の課題」 因子 (F(2,485)= 3.38, p< 0.05) , 「エネルギー資源」 因子 (F'(2,485)= 7.52 p<0.01) , 「エ ネルギー変換 と 生成」 因子 (F(2,485) = 7.99, p<0.01) の 3 因子では, 校種 ・ 学科間の主効果が有意であっ た。

LSD 法によ る多重比較の結果, 「エネルギー利用上の

課題」 因子と 「エネルギー資源」 因子では工業科高校生

の平均値が中学生よ り , 「エネルギーの変換と 生成」 因

子では普通科高校生の平均値が中学生よ り それぞれ高 く

な っ た。

以上の結果から , 中高生は, エネルギーと いう 言葉に

対 し て, 「エネルギー資源」 や 「エネルギー変換と生成」

と いう イ メ ージを強 く 有 し てい るこ と が示 さ れた。 また, 高校生 (普通科 ・ 工業科) は, 中学生に比べて, よ り 具

体的 なエネ ルギーに対す るイ メ ー ジを持 っ てい るのでは

ないかと考え ら れる。

3.3 イ メ ージの構造と 具体的な生活行動や興味 ・ 関心

と の関連性

エネルギーに対するイ メ ージ構造因子と , エネ ルギー ・

環境問題に対する具体的な生活行動と 興味 ・ 関心と の関

連性について検討 し た。 具体的な生活行動と 興味 ・ 関心

を基準変数, エネ ルギーに関す るイ メ ー ジ構成因子群 を

説明変数と し , 重回帰分析を行 っ た結果, 低いながら も

有意な重相関係数 R= 0.292~ 0.481が得られた (表 4 ) 。

そこ で , 有意な標準偏回帰係数をパス係数と するパス

ダイ ア グラ ムを作成 し た。 中学生のパス ダイ ア グラ ムを

図 3 に示す。 その結果, 中学生では, 「エネルギー環境

保全」 因子が 「エネルギー環境問題への興味 ・ 関心」 と

83

「エ コロ ジー活動への参加」 , 「エ コ商品の購入行動」 に

影響 し てい た。 こ のこ と から , 中学生の場合には, 「環

境 を大切に し なけ ればな ら ない」 と いう 意識が興味 ・ 関

心や具体的な行動の生起に重要な役割 を果た し てい るこ

と が示唆 さ れた。

次に, 普通科高校生のパス ダイ アグラ ムを図 4 に示す。

その結果, 普通科高校生は, 「エネルギーの変換と生成」

因子が 「エネルギー学習への興味 ・ 関心」 に, 「エネル

ギー利用上の課題」 因子が 「省エネルギー行動」 と 「エ

コ商品の購入行動」 に, 「エネルギー資源」 因子が 「エ

ネルギー環境問題への興味 ・ 関心」 にそれぞれ影響 し て

いた。 中学生に比べると普通科高校生では, 「エネルギー

利用上の課題」 に対する意識が 「省エネルギー行動」 や

「エ コ商品の購入行動」 な どの行動 を促すな ど, よ り 具

体的なイ メ ージと 生活行動や興味 ・ 関心と の因果関係が

形成 さ れてい るのではないかと 考え ら れる。

工業科高校生のパス ダイ ア グラ ムを図 5 に示す。 その

結果, 工業科高校生は, 「エネルギーの変換と 生成」 因

子が 「エネルギー環境問題への興味関心」 と 「エネルギー

学習への興味関心」 に, 「エネルギー利用上の課題」 因

子が 「省エネルギー行動」 にそれぞれ影響 し ていた。 し

かし , 普通科高校生に見ら れた 「エ コ商品の購入行動」

への影響力は認め ら れな か っ た。 ま た , 「エ ネ ルギー環

境問題への興味 ・ 関心」 に対する影響力は, 普通科では, 「エネ ルギー資源」 から の因果であ っ た も のが, 「エネ ル

ギーの変換と生成」 因子からの因果へと変わっ ていた。

こ のこ と から , 普通科高校生が資源の枯渇への危惧から

エネルギー環境問題を捉えていたのに対 し , 工業科高校

生は, 自然界からエネルギーを取り 出す技術の仕組みか

ら , エネルギー環境問題 を捉え てい るではないかと考え

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森 山 潤 池田垣 稔 黒 田 昌 克 萩 嶺 直 孝 山 本 利 -表 1 工ネ ルキーに対 するイ メ ージの因子構造

て炭

捨化

機 車製池

陽力カカカ力電子

力境源球然球約サ失故差素渇い酸率コ環行車

動化電料然油ソ油炭イ

太水風電火磁発原熱波環資地自地節り損事格水枯使二効工循飛電船自電乾燃天石ガ軽石バ

因子間 関 12

34

5

FF

FF

F

Fl F2 F3 F4 F5

0. 710 0. 679 0. 677 0. 616 0. 549 0. 529 0. 522 0. 494 0. 489 0. 411

0. 025 - 0. 054 0. 124 0. 021 0. 229 0. 049 0. 081 0. 056 0. 135 -0. 202

0. 034 - 0. 036 - 0. 164 0. 144 - 0. 024 - 0. 135 - 0. 100 0. 113 - 0. 069 - 0. 096 - 0. 081 0. 143 - 0. 184 0. 042 0. 104 0. 136 0. 139 0. 087 - 0. 048 0. 140 0. 033 - 0. 163 - 0. 025 0. 261 0. 132 0. 104 0. 107 0. 257 0. 201 - 0. 035 0. 126 - 0. 086 - 0. 089 0. 034 0. 046 0. 042 0. 010 0. 118 - 0. 011 0. 048 0. 042 0. 062 0. 108 0. 112 0. 023 0. 329 - 0. 071 0. 009 0. 393 - 0. 038 0. 080

0. 135 0. 115 0. 083 0. 027 -0. 010 -0. 050 - 0. 137

0. 789 0. 742 0. 681 0. 634 0. 610 0. 536 0. 495

-0. 009 - 0. 045 0. 129 0. 026

- 0. 090 0. 144 0. 273 - 0. 112 0. 032 0. 085

-0. 104 0. 253 - 0. 016 0. 231 0. 004 0. 172 0. 161 0. 195 0. 060 0. 359

0. 622 0. 515 0. 477 0. 474 0. 469 0. 451 0. 416 0. 414 0. 414 0. 409

0. 063 - 0. 021 0. 305 0. 087 0. 108 - 0. 007 - 0. 094 0. 196 0. 036 0. 116 0. 162 - 0. 031 0. 085 - 0. 162 0. 036 0. 190 - 0. 152 0. 064 - 0. 059 0. 076

-0. 004 0. 045 0. 021 0. 093 0. 074 0. 123 0. 044 - 0. 019 0. 152 - 0. 006 0. 089 0. 004 0. 159 0. 081 0. 026 0. 130 - 0. 067 - 0. 112 0. 131 0. 011 - 0. 029 0. 136 0. 039 0. 078 -0. 080 0. 130 - 0. 109 -0. 162 0. 155 - 0. 110 -0. 028 - 0. 129 0. 098 0. 045 0. 182 0. 129 0. 324 - 0. 135 0. 264

0. 752 0. 724 0. 685 0. 574 0. 572 0. 518

0. 010 0. 002

- 0. 021 0. 159 0. 005 0. 258

0. 003 - 0. 120 0. 140 0. 220 0. 186 0. 032

- 0. 094

0. 670 0. 623 0. 615 0. 597 0. 592 0. 508 0. 411

0. 243 0. 098 0. 299 0. 568

0. 254 --0. 379 0. 283 --0. 325 0. 235 0. 342

因子名

「エネルギーの変換 と生成」 因子

「エネルギー環境保全」 因子

「エネルギー利用上の課題」 因子

「エネルギーの活用」 因子

「エネルギー資源」 因子

表 2 イ メ ージ構成因子の因子別平均値

平S. D 平S. D 平S. D

S. D 平S. D

工n=154 n=175 n=159 n=488 3. 70 3. 99 3. 80 3. 84 0. 71 0. 68 0. 67 0. 69 3. 23 3. 37 3. 27 3. 29 0. 92 1. 01 0. 92 0. 95 2. 42 2. 35 2. 54 2. 43 0. 75 0. 64 0. 70 0. 70 3. 28 3. 33 3. 26 3. 29 0. 95 0. 94 0. 84 0. 91 3. 32 3. 48 3. 68 3. 49 0. 77 0. 86 0. 78 0. 82

84

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エネルギーの変換 ・利用に関する中高生のイ メ ージの構造と環境生活意識への影響

表 3 工ネルキーに対するイ メ ージ構成因子における校種 ・ 学科間の差異

「エネルギーの変換と生成」 因子 F (2,485)=7.99 ** 高普(3.99) > 高工(3.80) = 中3 (3.70) **

「エネルギー環境保全」 因子 F (2,485)=1.01 ns 高普(3.37) = 高工(3.27) = 中3(3.23) ns

「エネルギー利用上の課題」 因子 F (2,485)=3.38 * 高工(2.54) > 高普(2.35) = 中3 (2.42) *

「エネルギーの活用」 因子 F (2,485)=0. 25 ns 高普(3. 33) = 中3(3. 28) = 高工(3. 26) ns

r I ネルキー資源」 因子 F (2,485)=7.52 ** 常無 1 事333 )

8)*

※中3 : 中学3年生, 高普 : 高校普通科2年生、 高工 : 高校工業科2年生

* p<0.05 , ** p<0. 01

表 4 工ネルキーに対するイ メ ージ構成因子が生活行動や興味 ・ 関心に及ぽす影響

エネル エネル エ 不、ル エ :不・ル エネル基準変数 の変換と生 環境保全」 因 利用上の課 の活用」 因子 資源」 因子

重相関係数 判定

エネルギー環境問題への興味 ・ 関心

エネルギー学習への興味 ・ 関心

省エネルギー行動

エ コ ロ ジー活動への参加

エ コ商品の購入行動

0

1

0

1

0

0

0

0

0

0

*

*

*

*

*

7

4

1

5

8

0

0

0

0

0

7

4

9

1

3

0

0

0

0

0

6

0

5

2

2

1

1

1

0

1

1

8

0

3

9

2

0

2

1

0

4

3

3

3

3

0

0

0

0

0

一一

一一

一一

一一

一一

R

R

R

R

R

F(5, 148) =8. 89 ** F(5, 148)=5.21 ** F(5, 148)=4. 19 ** F(5, 148)=4. 17 ** F(5, 148)=4.72 **

n=154, *p<0. 05, **p<0. 01

エ ;:、ル エ不ル エ ;:不ル エ不ル エ ;:、ル

基準変数 の変換と生 環境保全」 因 利用上の課 の活用」 因子 資源」 因子重相関係数 判定

エネルギー環境問題への興味 ・ 関心

エネルギー学習への興味 ・ 関心

省エネルギー行動

エ コロ ジー活動への参加

エ コ商品の購入行動

*0

1

1

0

0

0

0

0

0

0

4

0

5

3

4

0

0

0

0

0

*

*

0

0

0

0

0

3

9

4

8

3

0

0

1

0

1

*0

2

7

7

3

2

1

0

0

1

2

5

8

9

6

1

8

4

4

6

0

0

0

0

0

一一

一一

一一

一一

一一

R

R

R

R

R

F(5, 169) =3. 66 ** F(5, 169) =2. 99 * F(5, 169) =2. 22

F(5, 169) =2. 23

F(5, 169)=2. 56 * n=175, *p<0. 05, **p<0. 01

工工不ル エネル エ 、ル エ :不・ル エ不ル

基準変数 の変換と生 環境保全」 因 利用上の課 の活用」 因子 資源」 因子重相関係数 判定

エネルギー環境問題への興味 ・ 関心

エネルギー学習への興味 ・ 関心

省エネルギー行動

エ コ ロ ジー活動への参加

エ コ商品の購入行動

*

*3

2

9

3

0

2

2

0

0

1

0

0

0

0

0

7

2

4

0

0

4

0

1.

. 0

2

. 0

0

. .

0

0

0

*

0

0

0

0

0

2

1

5

3

0

0

1

0

0

0

1

5

2

4

6

0

0

0

0

0

一一

一一

一一

一一

一一

R

R

R

R

R

F(5, 153)=4. 30 ** F(5, 153) =3. 60 ** F(5, 153)=2. 84 * F(5, 153) =2. 90 * F(5, 153) =3. 15 **

n=159, *p<0. 05, **p<0. 01

85

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森 山 潤 池田垣 稔 黒 田 昌 克 萩 嶺 直 孝 山 本 利 -

図 3 工ネルキーに対するイ メ ージと生活行動や興味 ・ 関心と の関連性 ( 中学 3 年生)

図 4 工ネルキーに対するイ メ ージと生活行動や興味 ・ 関心と の関連性 (普通科高校 2 年生)

図 5 工ネルキーに対するイ メ ージと生活行動や興味 ・ 関心と の関連性 (工業科高校 2 年生)

86

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ら れる。

エネルギーの変換 ・利用に関する中高生のイ メ ージの構造と環境生活意識への影響

4 . まと めと今後の課題

以上, 本研究では, エネルギーの変換 ・ 利用に関する

中高生のイ メ ージの構造 を明 ら かに し , そのイ メ ージが

環境意識に与え る影響について検討するこ と を試みた。

その結果, 本調査の条件下で, 以下のこ とが明らかになっ

た。

1 ) エネルギーに対す るイ メ ージの構造と し て , 「エネ

ルギーの変換と 生成」 因子, 「エネルギー環境保全」

因子, 「エネルギー利用上の課題」 因子, 「エネルギー

の活用」 因子, 「エネルギー資源」 因子の 5 因子が抽

出 さ れた。

2 ) 中高生は, 全体と し て, エネルギーと いう 言葉に対

し て, 「エネルギーの変換と生成」 因子や 「エネルギー

資源」 因子のイ メ ージが強 く , 「エネルギー利用上の

課題」 因子のイ メ ージが弱い傾向が認めら れた。

3 ) エネルギーに対するイ メ ージを, 校種 ・ 学科間で比

較 し た と こ ろ , 「エ ネ ルギー利用上の課題」 因子 と

「エネルギー資源」 因子で , 工業科高校生が中学生よ

り 高かっ た。 また, 「エネルギー変換と生成」 因子で, 普通科高校生が中学生よ り 高かっ た。 このこ と から ,高校生は中学生に比べて, エネルギーと いう 言葉に対

し て, よ り 具体的なイ メ ージを形成 し てい るこ と が示

さ れた。

4 ) エネルギーに対す るイ メ ー ジと エネ ルギー ・ 環境問

題に対する生活行動や興味 ・ 関心と の関連性を検討 し

たと こ ろ , 中学生では 「エネルギー環境保全」 因子の

イ メ ージがエネルギー環境問題に関す る興味 ・ 関心や

具体的な行動の生起に重要な役割 を果た し ているこ と

が示唆 さ れた。 また, 普通科高校生では, 「エネルギー

利用上の課題」 因子や 「エネルギー資源」 因子な どの

イ メ ージと生活行動や興味 ・ 関心と の因果関係が形成

さ れているこ と が示唆さ れた。 一方, 工業科高校生で

は , 「エネ ルギーの変換 と 生成」 因子のイ メ ー ジがエ

ネルギー環境問題への興味関心や意識に影響しており ,普通高校生と比べてエネルギー変換に関する技術の仕

組みから , エネルギー環境問題 を捉え てい るではない

かと考え ら れた。

こ れらのこ と から , 中高生では, 具体的な生活行動や

興味 ・ 関心 を喚起す るエネ ルギーに対す るイ メ ージに差

異が生 じ ており , それぞれの因果関係 を生かし た学習指

導方法の設定が重要である と示 さ れた。

今後は, 本研究で得ら れた知見に基づき , 生徒のエネ

ルギーに関す るイ メ ージの形成状況の違い を考慮 し た学

習指導方法や教材 ・ 教具開発の工夫を実践的に進めてい

く 必要があろ う 。 その上で , 生徒の既有するイ メ ージが

学習指導によ っ て どのよ う に変容 し てい く かについ てよ

87

り 詳細な検討が必要と考え ら れる。 こ れら については今

後の課題と する。

文献

1 ) 文部科学省: 中学校学習指導要領, http://www.mext.go jp/component/a_menu/education/micro_detail/_ icsFiles/afieldfile/2017/06/21/1384661_5.pdf ( 最終ア ク セ

ス : 2017年10月)2 ) 文部科学省 : 中学校学習指導要領解説 技術 ・ 家庭

編 , http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/ micro detail/ icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1387018 9. pdf (最終アクセス : 2017年10月)

3 ) 国際技術教育学会 (ITEA) 著 : 国際競争力 を高め

るアメ リ カの教育戦略~ 技術教育からの改革~ , 2002.教育開発研究所

4 ) 日本産業技術教育学会: 21 世紀の技術教育 (改訂) ,2012, http://wwwJste jp/main/data/21te-n.pdf (最終アク

セス2017年10月)5 ) 日本産業技術教育学会: 新 しい価値と未来を創造す

る技術教育の理解 と 推進, 2013, http://www jste.jp/ main/data/1eaflet.pdf (最終アクセス2017. 4)

6 ) 大川信明 : 新 ・ 教育心理学辞典, 金子書房, 1988. 7 ) 佐島群已代表 : 初等 ・ 中等教育におけ る資源 ・ エネ

ルギー環境教育の教材開発の研究 , 第一報告書 ,1995.

8 ) 岳野公人 ・ 湯地敏史 ・ 山本利一 : 大学生と中学生の

エネルギー利用意識の実態, 日本産業技術教育学会技

術教育分科会 技術科教育の研究, 第21巻, pp 61-67, 2016.

9 ) 福山隆雄 : 愛媛県下における中学生のエネルギーに

対す る知識と 関心についての基礎調査,愛媛大学教育

学部紀要, 第55巻, pp.145-151, 2008