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B25 ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲初期における鉛直渦管形成の解析 Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial Stage of Cumulonimbus Cloud Causing Guerrilla-Heavy Rainfall 中北英一・○佐藤悠人・山口弘誠 Eiichi NAKAKITA, Hiroto SATO, Kosei YAMAGUCHI In Japan, the frequency of Guerrilla-heavy rainfall is increasing, so it is quite important to predict the risk of heavy rainfall even within a few minutes. Nakakita et al. discovered the large vertical vorticity inside the baby cell aloft is useful to predict the Guerrilla-heavy rainfall, and also discovered the baby cells have vortex tubes which are similar to ones inside the initial cumulonimbus clouds of supercells. From this results, we considered that the vortex tubes inside the baby cells support fluid dynamics. This paper shows that the strongest updraft exists between positive vorticity and negative vorticity inside one sample cell using high Z DR column (106 words). 1.研究背景と目的 2008 年神戸市都賀川で豪雨による突然の出水 により 5 名の方がなくなるという悲惨な事故が起 こった.この事故は極めて小さな時空間スケール を持つ局地的豪雨によりもたらされた.このよう な人命に関わる局地的豪雨は特にゲリラ豪雨と 表現される.河川付近にいる人々をゲリラ豪雨か ら安全に避難させるため,わずか数分でも早いゲ リラ豪雨の予測技術の確立,高精度化がより一層 急務であると言える. 中北ら 1) はゲリラ豪雨に発達するタマゴ内部に 高い渦度が見られることを発見し,渦度がゲリラ 豪雨の危険性予測に極めて有効な指標であるこ とを示した.しかし,なぜ高い渦度を持つ積乱雲 が発達するかというメカニズムについては未だ に明らかでない点が多く,メカニズムの解明が重 要である.従って本研究ではタマゴ発生・発達時 におけるメカニズム解明のために積乱雲初期の ふるまいを詳細に解析し,新たな知見を得ること を目的とした. 2.タマゴ内部の渦管構造 スーパーセルに発達する積乱雲に関する研究 (例えば Cotton 2) )では発達過程初期の渦管構造 が図 1 のように説明されている.図 1 に示すスー パーセル発達過程初期の渦管構造は流体力学の 理論から導かれており,本研究では必ずしもスー パーセルに発達するとは限らない積乱雲にも同 様に見られるのではないかと考え,渦度の分布構 造に着目し解析を行った.中北ら 3) はゲリラ豪雨 のタマゴが渦管構造を持っていることを発見し, これはスーパーセル発達過程初期に見られる渦 管構造と一致していることを示した.これより, スーパーセル初期の渦管の発達を表現する流体 力学の理論を用いて上昇流の位置を推定できる と考えた.本研究では観測された Z DR を用いて上 昇流の位置を推定し,理論から導かれる上昇流の 位置と一致するか検証を行った. 1 (a)水平風の鉛直シアーにより水平方向に軸 を持つ渦管が形成される.(b)上昇流があると水 平渦管が持ち上げられて上昇流の両脇に正負の 渦度を持ったペア―の鉛直渦管が形成される. 本研究では渦度の分布構造を詳細に解析する 必要があるため,中北ら 3) の手法と同様に国土交 通省によって運用されている近畿圏の X バンド MP レーダーによって得られたドップラー風速から 疑似渦度を算出し,PPI スキャンデータを平面に 投影し可視化を行った.反射強度, Z DR についても 同様に可視化を行った.解析に用いた図の一例を 図 2 に示す. ab正の渦度 負の渦度 上昇流

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Page 1: Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial ...Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial Stage of Cumulonimbus Cloud Causing Guerrilla-Heavy Rainfall

B25

ゲリラ豪雨をもたらす積乱雲初期における鉛直渦管形成の解析

Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial Stage of Cumulonimbus Cloud Causing Guerrilla-Heavy Rainfall

中北英一・○佐藤悠人・山口弘誠

Eiichi NAKAKITA, ○Hiroto SATO, Kosei YAMAGUCHI

In Japan, the frequency of Guerrilla-heavy rainfall is increasing, so it is quite important to predict the risk of

heavy rainfall even within a few minutes. Nakakita et al. discovered the large vertical vorticity inside the baby cell aloft is useful to predict the Guerrilla-heavy rainfall, and also discovered the baby cells have vortex tubes which

are similar to ones inside the initial cumulonimbus clouds of supercells. From this results, we considered that the vortex tubes inside the baby cells support fluid dynamics. This paper shows that the strongest updraft exists

between positive vorticity and negative vorticity inside one sample cell using high ZDR column (106 words).

1.研究背景と目的

2008 年神戸市都賀川で豪雨による突然の出水

により 5名の方がなくなるという悲惨な事故が起

こった.この事故は極めて小さな時空間スケール

を持つ局地的豪雨によりもたらされた.このよう

な人命に関わる局地的豪雨は特にゲリラ豪雨と

表現される.河川付近にいる人々をゲリラ豪雨か

ら安全に避難させるため,わずか数分でも早いゲ

リラ豪雨の予測技術の確立,高精度化がより一層

急務であると言える.

中北ら 1)はゲリラ豪雨に発達するタマゴ内部に

高い渦度が見られることを発見し,渦度がゲリラ

豪雨の危険性予測に極めて有効な指標であるこ

とを示した.しかし,なぜ高い渦度を持つ積乱雲

が発達するかというメカニズムについては未だ

に明らかでない点が多く,メカニズムの解明が重

要である.従って本研究ではタマゴ発生・発達時

におけるメカニズム解明のために積乱雲初期の

ふるまいを詳細に解析し,新たな知見を得ること

を目的とした.

2.タマゴ内部の渦管構造

スーパーセルに発達する積乱雲に関する研究

(例えば Cotton2))では発達過程初期の渦管構造

が図 1のように説明されている.図 1に示すスー

パーセル発達過程初期の渦管構造は流体力学の

理論から導かれており,本研究では必ずしもスー

パーセルに発達するとは限らない積乱雲にも同

様に見られるのではないかと考え,渦度の分布構

造に着目し解析を行った.中北ら 3)はゲリラ豪雨

のタマゴが渦管構造を持っていることを発見し,

これはスーパーセル発達過程初期に見られる渦

管構造と一致していることを示した.これより,

スーパーセル初期の渦管の発達を表現する流体

力学の理論を用いて上昇流の位置を推定できる

と考えた.本研究では観測された ZDR を用いて上

昇流の位置を推定し,理論から導かれる上昇流の

位置と一致するか検証を行った.

図 1 (a)水平風の鉛直シアーにより水平方向に軸

を持つ渦管が形成される.(b)上昇流があると水

平渦管が持ち上げられて上昇流の両脇に正負の

渦度を持ったペア―の鉛直渦管が形成される.

本研究では渦度の分布構造を詳細に解析する

必要があるため,中北ら 3)の手法と同様に国土交

通省によって運用されている近畿圏のXバンドMP

レーダーによって得られたドップラー風速から

疑似渦度を算出し,PPI スキャンデータを平面に

投影し可視化を行った.反射強度,ZDRについても

同様に可視化を行った.解析に用いた図の一例を

図 2に示す.

(a) (b)

正の渦度

負の渦度

上昇流

Page 2: Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial ...Analysis of Vertical Vortex Tubes Formulation at the Initial Stage of Cumulonimbus Cloud Causing Guerrilla-Heavy Rainfall

3.ZDRを用

融解層よ

流の存在を

おり,本研

の部分に着

いての解析

例では上空

水平渦が形

の渦度方程

って立ち上

側(この事例

に負の渦度

い上昇流の

がわかる.

の渦度,w

おり,この事

d

d

この事例の

うになって

図3 本事例

ZDR d を表し

図 2 解析に

用いた上昇流

より高い領域

を示唆してい

研究では融解

着目し解析を

析結果を示す

空ほど西風が

形成されてい

程式(a)からこ

上げられると

例では南側)

度を持った鉛

の両脇で正負

ξ は x 軸方

は z 軸方向

事例では右辺

d w

d t x

の渦度の観測

ていた.ペア

例の17:36-1

している.c,

に用いた図の

流の推定

域でのHigh ZD

いるというこ

解層以上で ZD行った.図

す.ドップラー

強く,図 3

ると考えられ

この水平渦管

図 3 b のよ

)に正の渦度

鉛直渦管が形成

負の渦度が確

方向の渦度,

の速度(上昇

辺は第 2項以

w

y

値に着目す

アーの鉛直渦

7:40におけ

d に High

一例

ZDR Columnは上

ことがわかっ

DRが 2 [dB]以

3 に 1 事例に

ー風速から本

aに示すよ

れる.鉛直方

管が上昇流に

うに上昇流の

度,左側(北側

成され,最も

確認されるこ

η は y 軸方

昇流)を表し

以外は 0であ

w

z

ると図 3 c の

渦管が観測さ

る田口レー

ZDR Column が

上昇

って

以上

につ

本事

うな

方向

によ

の右

側)

も強

こと

方向

して

ある.

( )a

のよ

され,

南側

これ

一致

渦管

とい

った

流の

って

で確

この

たと

より

がわ

され

渦度

た.

参考

1)

ドッ

危険

(水

2)

C.

pre

3)

ゲリ

積乱

究所

ダーからの観

が見られた部

側で正の渦度

れは先ほど述

致していた.

管の形成され

いう結果を得

た.上述した

の両脇で正負

ている.この

確認できるか

の事例の ZDRところ,Hig

り本事例に上

わかり,Hig

れる上昇流の

度が対応して

考文献

中北英一,

ップラー風速

険性予知に

水工学), 6

Cotton, Wil

: Storm and

ess, pp.358

中北英一,

リラ豪雨危険

乱雲生成時の

所年報,第 5

観測図.左か

部分を点線で

度,北側で負

述べた上昇流

これにより

れる位置が流

得た.次に上

たように,鉛

負の渦度が形

のような上昇

か ZDRを用い

を示す.融解

h ZDR Column

上昇流が存在

h ZDR Column

の位置を比較

ていると考

西脇隆太,

速を用いたゲ

関する研究

9.4, pp.325

lliam R., Ge

cloud dynam

-363, 2010.

佐藤悠人,

険性予知手法

の渦管構造の

58 号 B,pp.

からドップラ

で表現してい

負の渦度が確

流と渦度の

りゲリラ豪雨

流体力学の

上昇流の位置

鉛直渦度方程

形成される

昇流がゲリラ

いて検証した

解層以上の Z

n が確認され

在している

nの位置と理

較したところ

られるとい

山邊洋之,

ゲリラ豪雨

究,土木学会

5-330, 2013

eorge Bryan

mics, Vol.99

.

西脇隆太,

法の高精度

の解析,京都

221-231,

ー風速 a, b

いる.

確認できた.

位置関係と

雨事例の鉛直

理論に従う

置の検証を行

程式から上昇

ことがわか

ラ豪雨の事例

.図 3 d に

ZDRに注目し

れた.これに

ということ

理論から推定

ろ,上昇流と

う結果を得

山口弘誠:

のタマゴの

会論文集 B1

3.

, and Susan

9, Academic

山口弘誠:

化に向けた

都大学防災研

2015.

b ,渦度 c,

n

c

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