1974 年，当時 25 才，電子機器のエンジニアであった Pat Boland 氏は同僚エンジニアの Pat McCluskey 氏

と共同で，オーストラリアのメルボルンに Australian Numerical Controls and Automation（ANCA）社

を設立しました．彼らには，高さ約 5 フィート，価格 4,000 豪ドルの「ミニコンピュータ」に接続することで，

既存の数値制御（NC：Numerical Controlled）工作機械を配線論理で改良するというアイデアがありました．

その成果として実現したコンピュータによる数値制御（CNC：Computerized Numerical Control）機械は，

木材，金属，セラミック，プラスチック，複合材などの切削作業に用いられる，研削・切削用の工具・金型を

対象とする柔軟性に優れたプログラム可能デバイスでした．

CNC によって機械加工処理の精度が高まった結果，無視できるほどのわずかな公差で部品を製作し，適合性を

向上することが可能になっています．年齢とともに劣化した股関節を置き換える目的で，外科的に埋め込まれる

チタン製の球関節のような部品では，高精度の適合性は将来的な運動性と快適性に大きな効果をもたらすと考え

られます．精密に機械加工された航空機部品では，摩損の度合いが小さくなるとともに，寿命が長くなることで，

安全性の向上と保守要件の緩和が実現します．そして，CNC による機械加工の精度には再現性があるので，スマート

フォンケースのように大量に製造される，消費者向けエレクトロニクス部品では，コスト削減が実現します．

執筆：DimensionsスタッフANCA 社の取り組み：工作機械の設計に伴う困難を緩和

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Dimensions：御社が業界のリーダーとしての地位を確立する要因となった独自の特長は何でしょうか．

Pat Boland 氏：当社は限定的でニッチな市場を事業領域としており，競争は激しいものです．当社と競合他社を隔てる重要な側面としては，2 つ挙げることができます．最初に，当社は業界でも革新的な企業として知られています．当社は長年にわたって，我々の業界に大きな変化をもたらした数多くの製品やプロセスを開発してきました．その開発の一例として，主要な形状特性を極めて高精度に測定する目的で当社の CNC 機械に内蔵された，特殊なレーザー測定器が挙げられます．

もう 1 つの重要な特性として，当社は極めて垂直統合度の高い企業です．このため，自社技術のいずれについても，外部のサプライヤに依存することはありません．設計から製造に至るまで，あらゆる工程に社内で対応できます．つまり，自社技術を迅速に要件に合わせることができるということです．もし社外に依存していたとしたら，このような迅速な変更は無理でしょう．たとえば，当社は機械を操作する CNC やサーボソフトウェアに沿って，機械自体を制御します．

D：現在，CNC 機械加工業界が直面している，いくつかの大きな課題とは何でしょうか．

PB：オートメーションがその一例として挙げられます．現在，当社が販売している機械の大半は，マシンテンディング作業を行う自律ロボットです．高精度を維持しながら，オートメーションで動作するということは困難なタスクです．ロボットは，部品や工具を加工機械にロード / アンロードします．指示に従い，ロボットは部品を固定具に取付けて，固定具は加工機械にロードされます．この工程では，視覚システム，レーザーマーキングデバイス，座標測定デバイスをすべて組み込んだ単一の機械が必要になります．

また，切削工具の精度要件は常に高まり続けています．どのような機械加工処理でも，最終的な機械加工の精度は切削工具の精度によって制限されます．切削工具で形状誤差が生じた場合，その影響は完成部品に現れることになります．したがって，形状を極めて高精度に測定する目的で，当社は特殊なレーザー測定器を CNC 機械の内部に搭載しました．その結果，製造工程の無人化と高度なオートメーションが実現しました．

ANCA CNC Machines 社は，CNC 研削盤，動作制御システム，製造ソリューションの開発に携わる世界トップ

レベルの民間メーカーです．世界従業員数は 1,000 人を超え，年間売上高は約 2 億 8,000 万豪ドルに達して

います．ANCA 社の CNC 切削盤は，自動車，航空宇宙，エレクトロニクス，スマートフォン，および医療産業

向けの精密な切削工具や構成部品の製造に使用されています．CNC 機械加工産業が現在直面している課題と，

その課題を ANCA CNC Machines 社がどのように解決しているかを明らかにするため，Dimensions 誌は

オーストラリアのメルボルンで Pat Boland 氏にインタビューを行いました．

「現在，当社が販売している機械の大半は，マシンテンディング作業を行う自律ロボットです．」

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D：精度の向上に対する要件を促す要因は何でしょうか．

PB：精度が向上するほど，完成品の一貫性も高まることになります．標準切削工具のメーカーは，今日製造した切削工具と，3 年前に製造した切削工具に，同じ性能を期待しています．ある工具の寿命が 500 時間，同じ設計で別の工具の寿命がわずか 100時間というような場合，お客様にとっては使いものにならないのです．お客様のシステムは製品寿命の一貫性に依存しており，製品寿命は工具の刃先のほんのわずかな寸法の違いに影響されてしまうのです．このため，当社の機械によって処理された製品の精度および表面仕上げに対する要件は厳しくなる一方です．

D：工作機械の操作担当者に求められるスキルは年月とともに変化していますか．

PB：そうですね．前世代の手動切削工具の時代よりも高いコンピュータスキルが求められています．手動工具でほとんど信じられないほどの加工精度を示す熟練オペレータを目にしてきましたが，このようなスキルは現在では必要とされていません．それでも，オペレータはプロセスの最適化によって，劇的な変化をもたらすことができます．オペレータは現在，機械のセットアップのエキスパートであることが求められています．具体的には，すべての砥石車を所定の位置に配置すると同時に，砥石車を研削に最適な状況に設定するというような役割です．

D：工作機械が抱えるいくつかのエンジニアリングの課題に対処するため，御社はシミュレーションを採用していますか．

「精度が向上するほど，完成品の一貫性も高まることになります．」

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PB：当社にとって，シミュレーションは重要なエンジニアリングツールです．当社の設計エンジニアリングチー

ムは，摩擦，変形，剛性などの調査研究や，振動の周波数モーダル解析といった用途に，ANSYS Mechanical を使用して

います．このような CNC 機械の物理特性のシミュレーションが可能になることで，実機のプロトタイプを製作して試験

する場合と比較して，大幅な時間とコストの節約が実現します．潜在的な問題をコンピュータ上で検出して，製作に着手す

る前の段階で，検出した問題を確実に修正できます．この結果，さらに短時間かつ魅力的な価格でお客様に製品を提供すること

が容易になります．

ご く 最 近， 当 社 の 製 造 エ ン ジ ニ ア は 設 計 チ ー ム か ら 学 ん で，Mechanical を用いて，製造プロセスで使っている固定具，治具，昇

降装置，その他の実用工具をシミュレーションするようになりました．ANSYS のソリューションを使用する以外にも，当社は実際の機

械操作の下流シミュレーション用に独自ソフトウェアも開発しました．

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D：CNC 機械加工事業の将来はどのような見通しでしょうか．

PB：ほとんどの市場で良いトレンドを確認していますが，中国と韓国は例外です．この両国では，当社の機械の多くがスマートフォンのサプライチェーンで使用されています．しかし，過去 5 年間，両国では信じられないほど大規模な投資の波があり，CNC 機械には過剰な在庫が存在しているのが現状です．当該地域からの新規受注がないことで，当社の事業も部分的に影響を受けています．ただし，切削工具が世界中で使用されているということは，当社が持つ強みです．それに加えて，木工業，家具製造業，金属切削業，採鉱業などから，医療分野における精密切削工具の応用事例である脳外科手術に至るまで，切削工具は産業全般で幅広く使用されています．このように他セクターで CNCマシンへの需要が増すことで，スマートフォンセクターの縮小を補えるはずです．

D：つまり，ユーザーが何かを製造している限り，御社の製品のような CNC 機械が必要とされるわけですね．

PB：そのとおりです．人々が椅子に座り，ナイフやフォークを使い，電気自動車や自動運転車といった車種を問わず，自動車に乗る限り，切削工具に対するニーズが存在することになります．

重要なポイントは，信頼性に優れた製品を提供し続けることです．1970 年代，当社がこの事業を始めた時点では，開発サイクルに対するユーザーの許容度は大きかったのです．今日では，製品の設計が短時間で行われ，製造番号 1から最後に至るまで，製品がすぐに使える状態であることが期待されています．設計品質は極めて重要な動因であるので，当社は設計検証用のシミュレーションを必要としています．シミュレーションが果たす貴重な役割，すなわち，実際に実機のプロトタイプを製作する前に製品のパフォーマンスを評価できるということは，決定的な意味を持つのです．

ANCA CNC MACHINES社の概要2017年度の収益：2億8,000万豪ドル

従業員数：1,000本社所在地：オーストラリア，メルボルン

ANCA CNC Machines社は， ANSYS Elite Channel Partner

（エリートチャネルパートナー）の LEAP Australia Pty Ltd社に よるサポートを受けています

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