ansysとpsoを用いた 複合材料シェルの最適設計日東紡績 平山紀夫...
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日東紡績㈱
平山 紀夫
ネオリウム・テクノロジー㈱
山浦和隆,荒井邦晴
ANSYSとPSOを用いた複合材料シェルの最適設計
2009 Japan ANSYS Conference
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
はじめに~ 複合材料構造の設計上の課題 ~
1. 強度・剛性の強い異方性があり,FEM解析等の数値解析が不可欠である.
2. 設計変数が,製品の形状や寸法以外にも材料の仕様(積層構成;例えば材料種別,繊維配向角度や板厚等)があり,構造設計と材料設計を同時並行で進めなくてはならない.
3. また,設計変数である材料パラメータは離散値である場合が多く,数値的な取り扱いが難しい.
一般的な複合材料構造の設計手順
一般的な高分子系複合材料は,積層構造を採用している場合が多く,その構造設計は,次のような手順で行うことがほとんどである.
① 構造の形状と概略寸法を決定する.
② FEM解析により構造解析を繰り返し,構造物の剛性や座屈強度を評価しながら積層構成を決定する.そして,この時に何らかの最適化手法を適用することになる.
③ さらに,得られた積層材の応力を評価し,疲労やクリープ変形に対する検討を行い,破壊基準を満足しているか等の詳細な設計を進める.
本解析の目的
本解析事例では,②の複合材料構造をFEM解析を用いて積層構成等の決定を行う場合に,その最適化手法として,積層配向角度等を離散変数として取り扱える離散型粒子群最適化アルゴリズム(PSO :Particle Swarm Optimization)を適用する.
そして,複合材料の積層構成の最適化手法として,よく使用されている遺伝的アルゴリズム(GA :Genetic Algorithm)を適用した場合の解析結果と比較し,その優位性を評価することを目的としている.
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
PSOを用いた最適化
PSOは,J. Kennedyら によって発案された確率的多点探索による最適化手法の一つである(1).GAと同様なメタヒューリスティクス手法として,最近注目されており,一部の最適化問題では,非常に優れた収束性を持っているという研究報告もある(2) . PSOは,鳥の群れや魚の群泳など生物の行動パターンを模擬し,群に含まれる複数個の探索個体が,群で情報を共有しながら最適値を探索する手法である.PSOの基本的な処理手順を次項に示す.
(1) J.Kennedy, R.Eberhart : Particle Swarm Optimization, Proc. of IEEE InternationalConference Neural Networks Vol.Ⅳ, pp.1942-1948,1995
(2) 江本久雄,中村秀明,川村圭,宮本文穂:ナップサック問題におけるDiscrete Particle SwarmOptimization の有効性,第9 回日本知能情報ファジィ学会中国・四国支部大会論文集,2004.12.
離散化PSOを用いた最適化手順(1)
STEP1:初期探索個体群の生成
⇒探索個体群の初期位置と初期速度を一様乱数により決定する.
STEP2:評価関数値の計算
⇒各探索個体の座標位置からそれぞれの個体の評価関数値を計算する.
STEP3:各探索個体の最良位置の保存
⇒各探索個体について,これまでに移動してきた軌跡の中での最良の評価関数値を記憶する.これをpBestiと呼ぶ.ここでiはi番目の個体を示す.
STEP4:個体群全体での最良位置の保存
⇒すべての探索個体の中から最良の評価関数値(pBestiの中で一番良いもの)を記憶する.これをgBestと呼ぶ.
離散化PSOを用いた最適化手順(2)
STEP5:個体速度の計算
⇒次式によって,各探索個体の速度ベクトルを更新する.
ここで,各変数,パラメータは以下の通りである.
:探索個体の速度ベクトル, :慣性係数
:探索個体の座標位置, :[0,1]の一様乱数
:学習係数, :探索個体の番号
:繰り返し回数
)()( 22111 k
iikii
ki
ki xpBestrcxgBestrcwvv
kiv wkix
1 2,r r
1 2,c c i
k
離散化PSOを用いた最適化手順(3)
STEP6:個体位置の更新
⇒すべての探索個体に対して次式によって位置座標を更新する.
ρは[0 1]の一様乱数で,sig(vi) はシグモイド関数を表している.以上の式から,sig(vi) が閾値ρより高い場合,探索個体位置は1,そうでない場合は0となり,設計変数を2進数で表現できるようにしている.
STEP7:終了条件の判定
⇒繰り返し回数に達したか判定する.条件を満たしていないときはSTEP2からSTEP6を繰り返す.
1 1
1
11
( ) 1
0
1( )
1 exp
k ki i
ki
ki k
i
if sig v then x
eles x
sig vv
ρ
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
配向角度のコーディング本最適化問題では,設計変数としての積層配向角度に,θ= 0°,±15°,±30°,±45°,±60°,±75°,90°を用いた.設計変数は積層数の半数で設定し,実際の積層配向角度の配列は設計変数を線対称に2つ並べたものとする.また,離散化PSOを本最適化問題に適用するためには,設計変数である積層配向角度を2進数にコーディングする必要がある.2進数コードと積層配向角度の対応を下図に示す.
0°111
90°110
±75°101
±60°100
±45°011
±30°010
±15°001
0°000
Degree AngleBinary Number
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
解析条件とFEMモデル
解析モデルは,1(m2)の平板とし一方向の1(MPa)の圧縮荷重を作用させた.また,積層数が12枚で各層の積層厚みh=0.125[mm]は全て等しいと仮定した.
解析モデルと解析条件を下図に示す.
1(m)
1(m
) P=1(MPa)
材料物性値
積層材を構成する1層の材料はカーボン繊維/エポキシ樹脂の一方向材と仮定し,下記の材料物性値を使用した.今回は,材料は1種類に固定し12層の積層配向角度のみを設計変数とし,θ=0°,±15°,±30°,±45°,±70°,90°の12種類から選択することとした.
0.014ν31
0.422ν23
0.244ν12
3.01G13 (GPa)
3.17G23 (GPa)
4.0G12 (GPa)
7.87E3 (GPa)
7.87E2 (GPa)
154.8E1 (GPa)
カーボン繊維/エポキシ樹脂の一方向強化複合材料
エポキシ樹脂
炭素繊維
10m
9m
最適化計算の条件
評価関数となるFEMの計算にはANSYS ver.12.0を使用し,最適化演算にはMATLAB R2009aを使用した.また,離散化PSOのアルゴリズムはmファイルで作成し,GAによる最適化計算には,MATLABのGenetic Algorithm and Direct Search Toolboxを使用した.離散化PSOとGAの最適化計算条件をそれぞれ下表に示す.
2.0c2
2.0c1
0.9w
5Particles
150Iteration
2 Point Crossing-overCrossing-overMethod
Roulette RuleSelection Method forParent Population
2Elite Population
5Population Size
150Generations
離散化PSOの計算条件 GAの計算条件
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
解析結果本最適化問題は座屈荷重の最大化問題となるので,最適化アルゴリズムを適用するため,座屈荷重に-1を乗じて評価関数値とし,最小化問題に置き換えて計算している.離散化PSOとGAの計算結果の一例を下表に示す.
5.26845.609010
5.40726.13149
5.08176.13148
5.43206.04207
6.08396.13146
5.37986.0425
5.82236.13144
4.42006.13143
4.99576.13142
5.48706.02411
GADiscrete PSOInitial value setting
0 50 100 150-6.2
-6
-5.8
-5.6
-5.4
-5.2
-5
-4.8
-4.6
-4.4
-4.2
Generation
Fitn
essvalue
解析結果の収束状況 (GA)
積層配向角度 = [0 45 -45 90 30 0 0 30 90 -45 45 0]座屈荷重計算値 = 4.9957
20 40 60 80 100 120 140-6.2
-6
-5.8
-5.6
-5.4
-5.2
-5
-4.8
-4.6
-4.4
-4.2
Iteration
FValue
解析結果の収束状況 (PSO)
積層配向角度 = [45 -45 45 -45 0 90 90 0 -45 45 -45 45]座屈荷重計算値 = 6.1314
最適な配向角度での平板積層材の座屈モード
θ=(45,-45,45,-45,0,90)sym
解析結果の考察
乱数発生器の設定により探索個体の初期値を変更し,シミュレーションした結果,初期値を変更しても離散化PSOの収束性はGAに比較して優位性があり,最適解を求める割合も高いことがわかった.
また,離散化PSOとGAの最適化計算の収束性についても,離散化PSOはGAと比較して初期の収束性が極めてよく,より良い最適解が得られていることが明らかである.
1. はじめに
2. FEMと離散化PSOを用いた最適化手法 離散化PSOのアルゴリズム
配向角度のコーディング
3. 解析例と離散化PSOとGAの比較 解析条件と解析モデル
解析結果と考察
4. まとめ
発表内容
まとめ
離散化PSOとFEMの組み合わせにより,積層配向角度を設計変数とした複合材料積層シェル構造の座屈荷重の最適化問題の計算が可能である.
離散化PSOとGAの計算結果比較から,離散化PSOはGAよりも収束性に優れており,様々な初期値に対しても比較的高い割合で最適解を得ることが可能である.
本解析事例では,積層配向角度を設計変数とした複合材料積層シェル構造の座屈解析をFEMにより行い,その算出した座屈荷重を最大化する最適化問題を離散化PSOにより解く方法を提案した,そして,GAによる同様な最適化計算結果と比較を行い,以下の結論が得られた.