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5
古典的な出力段で古典直熱3極管の能力を発揮 パラレルフィード 45シンクIrJ tワ⊥アンプ 「耶「 岩村保雄間AMURAYasuo ∴∴i子∴ 洋 間関配醍畿 �) ∴ ∴ ∴∴ ∴ � はじめに 古典的な直熱3極管のUX-45 ナス管のUX-245として 1929年に発売され 後にST管 にモデルチェンジされました 300Bや2A3の影で目立たない存 在ですが 300Dとは違って楚々 とした音の雰囲気を持っています シングル動作ではせいぜい2W と小出カにもかかわらず ST管, ナス管.いずれも直熱3極管その 60 オーディオ用の古典的な直観3極管45を使い,出 力段をパラレルフィードとした無帰還シングル アンプ 双3極管5814Aを初段,ドライブ段に 使ったCR結合の3段アンプという回路構成であ ら.出力トランスには直流電流を流さないのでプッ シュプル用のFM-12P-8kを,プレート負荷の チョークコイルにはFMC-5050H,さらに電源の 平活回路にはFMC-1014H (以上 ノグチトラン ス販売)とファインメットコアの製品を使用.こ れまでの45シングルアンプとは違って,厚みのあ る音を聴かせてくれる.最大出力は2W. ものといった いかにも良い音が しそうな姿形で 真空管アンプビ ルダーなら一度は使ってみたいと 思わせる真空管です. 45はナス管の時代,上部フィ ラメントを吊っている支えが前期 はガラス棒ですが 後期はマイカ を使ったものに変更されています さらにその後のST管では刻印と 印刷があり.それぞれ音が違うと 言われています.フィラメントは すべて釣り竿型で 2A3のよう ∴∴lrト「÷:二三二== 勘iミ\i ∴謹:ら, ㌧∴ �r� 襲類誌+---=漂\ここ 回書話題園田HSeS賀宴臆88 册 ● 俤X甁リ���ヌ冽俯リェh��X*メリ��リ���8抗�

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Page 1: aqH-i.日撮り動d パラレルフィード - TOK204...パラレルフィード45シングルパワーアンプ [表1 ] 45と5814Aの定格と動作例 [写真2]使用した真空管.左からRCA5814A,

古典的な出力段で古典直熱3極管の能力を発揮

パラレルフィード

45シンクIrJ tワ⊥アンプ「耶「 岩村保雄間AMURAYasuo

∴∴i子∴ 洋 間関配醍畿 ��) ∴ ∴ ∴∴

∴ �

はじめに

古典的な直熱3極管のUX-45

は ナス管のUX-245として

1929年に発売され 後にST管

にモデルチェンジされました

300Bや2A3の影で目立たない存

在ですが 300Dとは違って楚々

とした音の雰囲気を持っています

シングル動作ではせいぜい2W

と小出カにもかかわらず ST管,

ナス管.いずれも直熱3極管その

60

オーディオ用の古典的な直観3極管45を使い,出

力段をパラレルフィードとした無帰還シングル

アンプ 双3極管5814Aを初段,ドライブ段に

使ったCR結合の3段アンプという回路構成であ

ら.出力トランスには直流電流を流さないのでプッ

シュプル用のFM-12P-8kを,プレート負荷の

チョークコイルにはFMC-5050H,さらに電源の

平活回路にはFMC-1014H (以上 ノグチトラン

ス販売)とファインメットコアの製品を使用.こ

れまでの45シングルアンプとは違って,厚みのあ

る音を聴かせてくれる.最大出力は2W.

ものといった いかにも良い音が

しそうな姿形で 真空管アンプビ

ルダーなら一度は使ってみたいと

思わせる真空管です.

45はナス管の時代,上部フィ

ラメントを吊っている支えが前期

はガラス棒ですが 後期はマイカ

を使ったものに変更されています

さらにその後のST管では刻印と

印刷があり.それぞれ音が違うと

言われています.フィラメントは

すべて釣り竿型で 2A3のよう

∴∴lrト「÷:二三二==

勘iミ\i ∴謹:ら, ㌧∴ ��r�

襲類誌+---=漂\ここ

回書話題園田HSeS賀宴臆88 册

● 俤X甁リ����ヌ冽俯リェh��X*メリ��リ����8抗�

[写真1 ]浅野勇氏作45プッシュプル(浅野勇『魅惑の真空管アンプ』誠文堂新光社, 1972年より)

にマイカで直接支える構造のもの

はありません 近年,外観からは

とても45と比国えないほど大き

なEML45がエミッションラボか

ら登場しており,変わらぬ人気の

ほどがうかがえます.

ところが これまで筆者が試み

にCR結合やトランス結合で45

シングルアンプを製作したところ.

その結果はどうも満足いくもので

はありませんでした.知人の間で

もあまり良い評価が聞こえてきま

せん 特にシングルアンプは,音

が軽すぎて物足りないのです. 45

そのものがダメなのかというとそ

ういうわけではなく,以前言曳野

勇氏が製作した45プッシュプル

アンプ(写真1)を聴いたときに

は,クリアなのに厚みがある音に

聴き惚れた覚えがあります.

従来の回路でも音質改善にまだ

工夫の余地はあるのでしょうが

ここでは従来型のシングルアン

プから離れて,考え方によっては

先祖返りともなるパラレルフィー

MJ

a

q

H

-

i

.

d

VACUUMTUBE

Page 2: aqH-i.日撮り動d パラレルフィード - TOK204...パラレルフィード45シングルパワーアンプ [表1 ] 45と5814Aの定格と動作例 [写真2]使用した真空管.左からRCA5814A,

パラレルフィード45シングルパワーアンプ

[表1 ] 45と5814Aの定格と動作例

[写真2]使用した真空管.左からRCA5814A, RCA

45,万二ンカム345

ドを試みたところ,かなり良い結

果が得られたので 各部回路定数

に手を入れたうえで発表すること

にしました なお,このパラレ

ルフィード45シングルアンプは,

2016年2月のMJオーディオフェ

スティバルで聴いていただきまし

た.

ファインメットのコアは 繊細

な音質という長所がある反面,飽

和磁束密度が若干償いという短所

を持っています.したがって,シ

ングルアンプ用出力トランスでは

大型のコアを使わなければなりま

61

フィラメント電圧匂〔∨〕

フィラメント電流方〔A〕

プレート電圧Ep 〔∨〕

プレート損失Pp 〔W〕

プレート電流/p 〔mA〕

Clノット抵抗 固定バイアス,e 〔kO〕

iE^177jl rg lkOlヒーターカソード問電圧Ehk 〔∨〕

動作例Al級シングル

増幅率Hプレート抵抗,p 〔Q〕

相互コングクタンスgm 〔mA/V〕

プレート電圧Ep 〔∨〕

無信号時プレート電流/p 〔mA〕

クリ・y r・-5EEe lVJ

負荷抵抗PL 〔kn〕

最大出力(歪牽5%) P。 〔W〕

せん 残念ながら小型のものを

使ったのでは長所を発揮すること

ができないのです.プッシュプル

用では,直流電流を流さないので

上述の短所を気にしなくてもよく,

小型の出力トランスでも長所を発

揮することができます.本機は出

力トランスに直流電流を流さない

パラレルフィードなので 出力ト

ランスとプレート負荷チョークに

ファインメットのコアのものを使

うことにしました.

45と581dAの定格を表1にま

とめました

(me Cunnlngham Radio Tube ManuaIより)

i 一一 冓 I 亦� �� ��i ��「 亦� ����Ef 凾� 2-5V.

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5kOの負荷線と本

態の動作点(°),表1の典型的な動作点(回)を書き込んだ45のプレート特

性.

回 路

45のプレート特性は 図1に

示すように各カーブが等間隔で並

び,見るからに直線性が擾れてい

るように思えます 表1の典型的

な動作点を少し変更して,プレー

ト電圧265V (32mA)として図中

に5kQの負荷直線を引くと.バ

イアス電圧は-55Vとなります.

実際に手持ちの真空管で検証した

結果では,バイアス電圧は-48V

が代表的な値だったので以後の議

論ではこの値を使っています.

シングルアンプの最適な負荷抵

抗の大きさはプレート抵抗t・pの

およそ3倍と言われており, 45

の場合はt・pが1610Qのため4.8k

Qとなります.典型的な回路で

5kQが使われるのは この理由

からです ただ パラレルフィー

ドの回路での出力管の負荷は プ

レートチョーク負荷と出力トラン

スカ並列となるので 最適な負荷

とするには,出力トランスの1次

インピーダンスをどれぐらいにす

るのかを検討し直す必要がありま

す.

ここでは 試作後に1次イン

eI〇・

sam.wJIIJN章二〃ニーllJ〃m〇mm_

圏臨圏謡

Page 3: aqH-i.日撮り動d パラレルフィード - TOK204...パラレルフィード45シングルパワーアンプ [表1 ] 45と5814Aの定格と動作例 [写真2]使用した真空管.左からRCA5814A,

パラレルフィード45シングルパワーアンプ

l /2 5814A 1 /2 5814A           45

91V                159V                   313V

2'Of鵜F7.6鵠32黒苦茶 14g

a ��>3-3-6V 劍�h�cコ縉b�ミミ10003線 -OJ c\ 剪�まき言三吉"~ G27m70XE

霊詰諦摘韓罵蔦AIWIWB.0, &LL 48V

l 凪��「x��隶ネ�ヲト�ウ�b�< 栃耳璽ィ�「��33%b�

≡ 嚢�ヌメ�U-

÷ 倆��ケ?�+��子、rn +B2184V33kO3W+Bl318V+B

、喜/釜4B-20MA 他CHへ_ご他CHへ十三他CHへ 0.1品 ruCu

20kn

5814AX26.3V250V_D-345VFMC-lOl4H 二∴∴.∴ AClOOVswスI(-クキラーD:SCS100AG 他CHへ > ⊂〕 し。 寸 LL コ一 〇 ⊂)

[図5]パラレルフィード45シングルアンプの回路図(片チャンネルは省略)

わりません これで ハムバラン

サーはコンパクトになり,調整も

しやすくなりました

低域部の周波数特性にパラレ

ルフィードの直流カット用コン

デンサーCpIが影響することは直

感的に理解できます・実際にCpt

を4, 10. 20〟Fと変化させて3-

300Hzの周波数特性を調べると,

図4からわかるように出力トラン

スのインタクタンスとCpfによる

共振で5- 10Hzにピークが生じ

ているようです.直感とは逆に.

Cpfを大きくすると低域は下がっ

ているので これだけ見るとCpf

は41lFが良さそうに思えますが

最終的にはヒアリングにより判断

して, Cpfは10LLFとしました

電圧増幅段は.双3極管5814A

のCR結合2段増幅です.カップ

リングコンデンサーは どちら

201 6/5

かというと嫌われもののようです

が 筆者は難点があるとしたら使

い方やコンデンサーの選択の問題

と考えています. 45のドライブ

では B電圧が高くないにもかか

わらずバイアス電圧が高いという

事情があり,直結2段結合では余

裕を持ったドライブ電圧が得られ

ないため. CR結合の2段増幅と

しています.ドライブ段のプレー

ト電圧を高く取り,また出力段

によって初段,ドライブ段の電

源が撮られることを阻止するた

めに,デカップリング回路には

30H/20mAのチョークコイルを

投入しています.

回路図を図5に示します.

使用部品

45は貴重な古典管ですが 意

外と容易に入手することができま

す.ただし,ST管に限ってもマー

キングには刻印とプリントがあ

り,またメーカーによって上部マ

イカの形が違うため.同じ外観の

ものの入手は手こずるかもしれま

せん.とくにナス管は希少なので

ペアを揃えるのはさすがに困難で

す.本機では 以前から持ってい

たST管のRCA45,ナス管のカ

ニンガム345を使っています(写

真2).

初段.ドライブ段の5814Aば

GEの5スター(高信頼管)と比較

試聴した結果. RCA製の黒プレー

トのものを使っています.ここ

は5814Aに限らず12AU7Aでも

かまわないので 取り替えてみて,

気に入ったものを使ってください

45用の4ピンUXソケットは,

抜き差しが楽な割に接触が良好な

アンフェノールのモールドのもの

63

Page 4: aqH-i.日撮り動d パラレルフィード - TOK204...パラレルフィード45シングルパワーアンプ [表1 ] 45と5814Aの定格と動作例 [写真2]使用した真空管.左からRCA5814A,

パラレルフィード45シングルパワーアンプ

10

≡;

fOlヨ]

001

臆閣 剪� ��

001       01       1

入力電圧〔V〕

[図9]入出力特性(80出力, 1kHz)

蘭画10     100      1k

圧阪数〔Hz〕

[図111ダンピングファクター特性

5%)が得られるので これで十

分と考えるべきでしょう.残留ハ

ムは 入力ボリュームを絞りきっ

た状態で0.65mVでした.極小と

は言えませんが これなら実際の

使用には十分です.

出力0.5Wでの周波数特性を図

10に示します.帯域幅(-ldB)

は20Hz-30kHzなので 無帰

還アンプとしてはそこそこ広帯域

です.パラレルフィードでは出

力トランスやプレートチョークと

巻線が増えるので 周波数特性に

ピークが現れるのではと心配して

いたのですか 70kHzのところ

にldBにも満たない.小さなピー

クらしきものが見られるだけで済

201 6/5

10k    100k

10      100      1k

周波数〔H!)

[図10]周波数特性(OdB=0.5W)

001       01        10

出力〔W〕

[図121歪率特性(100H乙lkH乙10kHz)

んでいます.

ダンピングファクター(DF)を

ON-OFF法により測定しました

(図11). DFの大きさは50Hz-

15kHzの中城で2.45と適度な大

きさが確保できています,

100Hz lkHz lOkHzの歪率

は典型的な無帰還アンプの傾向

です(図12).ここでIkHzと10

kHzの測定では 残留ハムを除

去する400Hzローカットフィル

ターを使っています. 45の出力

特性(図1 )からわかる45の優れ

た直線性を反映して.無帰還アン

プにもかかわらずlkHz lOkHz

の歪率は0.01Wでは0.1%以下と

低くなっています.

69

(C) 10kHz

[図13] 80純抵抗負荷における方

形波応答波形(2V/div )

.

2

 

4

 

-

6

 

8

 

0

〔mP〕Yへ去Kn

Page 5: aqH-i.日撮り動d パラレルフィード - TOK204...パラレルフィード45シングルパワーアンプ [表1 ] 45と5814Aの定格と動作例 [写真2]使用した真空管.左からRCA5814A,

1--I

l」

(b) 022uF

[図14]容宜性負荷における10kHz

方形波応答波形(2V/diV )

方形波応答波形

抵抗負荷8Qのときの100Hz.

lkHz lOkHzの方形波応答波形

を図13に示します. 10kHzの波

形では小さなリンキングが現れて

います.このリンキングの周期か

ら,出力トランスとアンプの測定

範囲外,図10ではわからなかっ

た120kHz付近にピークが存在す

ることが推測できます

念のため無負荷と0.221lFのみ

の容量負荷で10kHz矩形波の

応答波形を観測しました(図14)

0.22〝Fのみの場合でも、)ンキン

グが見られるものの.すぐに収束

嘆も\\駿繁姿,._. ・ノ �ィ,(�����b�� 坪�����h������ゥ�や�

鶉 �� ヽ.

∴十. ��

[写真12] ST管の45を挿したときの外観

罷高 唸�h�����づ」「イネ�2�J市来\\ 随喜溺 ・1 ∴ \-,3-\ �$「�∴∴∴-∴∴∴∴

∴∴∴.∴ ∴∴ ��

[写真13]ナス管の245(345)を挿したときの外観

70

するのでまったく問題はありませ

ん.

試聴とまとめ

試聴にはロン・カーターの『The

world of RON CARTE則(TOq-

68089).モザイク弦楽四重奏団の

『ベートーベン弦楽四重奏作品

18ト長調』 (E8902)を使いまし

た ロン・カーターのベースがぶ

んぶん鳴っているのか これまで

の45アンプとはちょっと違うな

と感じさせてくれます.そのいっ

ほうで 弦楽四重奏曲はピリオド

楽器による演奏らしく,ヴァイオ

リン,ヴィオラ,チェロの柔らか

な響きが溶け合って,心地よく音

楽を聴くことができました

これまでどうも物足りなさが

残った45シングルアンプの新し

い可能隆を見つけ出したような気

持ちになっています.パラレル

フィードは.出力トランスの不十

分な常陸を補う古典的な回路でし

たが 現在では出力トランスの特

性向上によってその役割はほとん

ど終えています.それに代わって,

出力管の隠れていた能力を引き出

すことカ新たな役割となり,本機

でそのことが実現されたと感じて

います.

試聴は CDプレーヤー:マラ

ンツSAll-S2,自作ラインアン

プ(本誌2015年2月号),スピー

カー:アルテック604-8Hのウー

ファー+アルテック802D/811B

ホーン+コーラルH-100 (ネット

ワークは自作),サブスピーカー:

アコースティックラボ"ボレロ"

で行っています.

MJ