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ASTM 規格のメソッド AB 酸化鉄腐食試験に関する報告書 作成者:赤松 勝也 2006 5 24

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ASTM 規格のメソッド A・B の

酸化鉄腐食試験に関する報告書

作成者:赤松 勝也

2006 年 5 月 24 日

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ASTM にもとづく酸化鉄溶液中におけるステンレス鋳鋼品の耐孔

および耐隙間腐食試験結果

I. 今回実施された項目は以下の通り:

1. ミクロ試験

2. 塩化鉄による孔食試験 (メソッド A)

3. 塩化鉄による隙間腐食試験(メソッド B)

II. 試験材および試験品

試験用サンプルは㈱ヤナギモトより提供された二層ステンレス鋼

(T.PNo6494Y)である。

試験品は各試験材より機械加工した。ミクロ試験および腐食試験は試験

品において実施した。

III. 試験手順

1. ミクロ試験

試験品は標準的な金属組成技術を想定して準備した。切断面について

は、40%水酸化ナトリウムによる電解エッチングの後、200 倍に拡大し

て調査した。

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2. 腐食試験

試験品の端面は粒度 120 で磨いた。これら試験品を清浄し、アセトン

で油脂を除去した後、水で洗浄、風乾させた。試験品は 0.001g単位

で測定した。

図 □A : 孔試験前の表面構造(30 倍)

2.1 塩化鉄による孔試験(メソッド A)

100g のFeCl3・6H2O を 900ml の水に溶解させた液(写真)を、1000ml

ビーカーに入れこの中にガラス製クレードル(写真)に乗せたステン

レス鋼試験片(写真)を漬けた。試験溶液は 50℃±1℃、浸漬時間は

72 時間とした(写真)。試験片は約 18×15×50mm でその表面を#120

まで研磨しておいた。

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試験前の表面積及び重量を測定しておき、試験後の重量の測定および

表面を肉眼観察し、腐食状況とくに孔蝕の有無を観察した。

2.2 塩化鉄による隙間試験(メソッド B)

100g の FeCl3・6H2O を 900ml の水に溶解させた液を、1000ml ビーカーに

入れこの中に 2 個のΦ12.7mm のテフロン(写真)で挟み込んだ試験片

を浸漬させ、隙間腐食性を調べた。試験溶液は 32℃±1℃、浸漬時間は

72 時間とした。試験片の表面は#120 まで研磨しておいた。

試験前の表面積及び重量を測定しておき、試験後の重量の測定およびテ

フロンとの接触部における隙間腐食性について肉眼観察をした。

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IV. 結果

1. ミクロ試験

図 1 は㈱ヤナギモトより提供された二層ステンレス鋼の微細構造であ

る。フェライト/オーステナイト微細構造を示し、不良な粒界炭化物

もしくは金属間の隙間は確認されなかった。

図 1 : 試験品の微細構造(200 倍)

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2. 腐食試験

2.1 孔試験(メソッド A)

試験前 試験後

表面積 38.619cm2 38.619cm2

重量 104.869g 104.865g

質量の損失 0.1mg/cm2

表面の状態 #120 で研磨 試験後の重量は 0.004g 減少していたが、

試験片の表面を観察した結果まったく腐食

された様子が見られず、孔蝕も観察されなかった。

図 □B は、12 時間の孔試験後の表面構造を示している(30 倍)。試験前の表面

構造(図 A)と図 B を比べたところ、腐食孔は見られなかった。

図 □B : 孔食試験後の表面構造(30 倍)

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2.2 隙間試験(メソッド B) 表面積 試験前 試験後

重量(A 片) 4.952cm2 44.764g 44.763g

重量(B 片) 5.017cm3 47.493g 47.492g

質量の損失(各片と

も) 0.2mg/cm2

表面の状態 #120 で研磨

試験後に重量は各片とも 0.001g 減少してい

たが

試験片の表面を観察した結果まったく腐食

された様子が見られず、隙間腐食も生じて

いなかった。なお A 片と B 片との金属間の

隙間

腐食も観察されなかった。

図 □C は 72 時間の隙間試験後の表面構造を示している(20 倍)。図 A と図 C

を比べたところ、決定的な相違は見られなかった。

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図 □C : 隙間腐食試験後の表面構造(20 倍)

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結論

1. 試験品は、フェライト/オーステナイト二重構造の微細構造を示した。

2. 倍率 30 倍および 20 倍の調査では、試験品には孔もしくは隙間腐食の

兆候は見られず、試験の合格基準を越えたといえる。

2006 年 5 月 24 日

関西大学

工学部先端マテリアル工学科

赤松 勝也