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中小規模事業所の省エネ深度化に資する分析ツールの開発 (第 1 報)公共データベース活用のための DBMS 構築及びエネルギー評価 Development of the analysis tool for contribution to energy-saving at mid-sized buildings 梶井 聡 (首都大学東京) 員 金 政秀(首都大学東京) 山本 康友(首都大学東京) Satoshi KAJII* 1 Jeongsoo KIM* 1 Yasutomo YAMAMOTO* 1 * 1 Tokyo Metropolitan University はじめに 低炭素社会の実現に向けて、省エネルギー・省 CO 2 すべての事業者にとって喫緊の課題である。行政庁およ び地方自治体では、大規模事業者が先行してエネルギー 使用量の把握からはじめるべく、定期報告の義務付けを 法制化しており、さらに報告データを集計、公表するこ とによって、事業者が自身の相対的な位置付けの把握、 省エネ意識の向上を図っている。また、家庭部門での HEMS、民生業務部門の BEMS、見える化システムの導 入など、エネルギーデータ把握のすそ野が広がっている。 一方で、エネルギーデータを収集分析して効果的な省 エネルギー手法を探る研究は従来から多くあったが、比 較研究が行いやすい中規模から大規模ビルが中心であっ た。収集データ数は多くて 1 千棟前後だが、収集データ 項目の違いや公開範囲の相違のために、データの相互乗 り入れは困難である 1しかし、DECCData-bese for Energy Consumption of Commercial building 2ではこれらの問題を解決し、全国 で統一された手法によって様々な用途や規模の 1 万棟を 超えるデータ収集を平成 19 年~21 年に掛けて行った。 その後、日本最大級のデータベースとして公開している。 次に、これらのエネルギーデータベースの分析結果に 基づいて、実際の省エネルギー行動に結びつけるには、 現状では、コミッショニングに代表される専門家による 事業所ごとでの判断によるところが大きい。事業所数が 非常に多い中小規模では労力やコストに見合う効果が得 られにくいものの、空調用熱源をはじめとする設備シス テムや省エネ手法の選択肢は中小規模ではそう多くない と考えられるため、パターン化できれば専門家によらな い展開も期待できる。 例えば、下田ら 3は、法人建物調査データにより、全 ストックに対して、 5,000 ㎡未満の業務建築は棟数で95%、 延床面積で 57%を占めるため、中小規模を対象とするこ とは、大きな省エネ効果を生み出す可能性があると述べ ている。以上より、継続性があり、共通プラットフォー ムによるエネルギーデータベースの構築及び、誰でも参 照および利活用が可能な分析システムを開発することは 意義が大きいと考えられる。 本報では、中小規模事業所のエネルギーデータとして、 東京都への定期報告書データを活用し、システムの基礎 となるデータベース管理システム (DBMS:datebase management system)の構築およびエネルギー評価を行う ことを目的とする。 1.東京都地球温暖化対策報告書制度の概要 国や多くの地方自治体で導入されている報告義務のほ とんどでは、全事業所の合計原油換算エネルギー使用量 1,500kL 以上の大規模事業者が対象である。 環境省の場合は、全国に約600 万ある事業者 4のうち、 対象は約 1 5であるが、総排出量では約 5 割を占めて おり、さらにその約 8 割は製造業である。 一方で、東京都の場合、大規模事業所については 2002 年度から報告制度を導入、都内の約 69 万事業所中約 1,400 事業所に適用され、環境省に比較して数での比率は 高いが、東京都全体の排出量に対し約2 割にとどまる 6このため、東京都では、 2010 年度からエネルギー使用量 が一定以上の中小規模事業者に対しても報告を義務付け ることによって、より効果的な制度運用を図っている。 The periodic report document data to Tokyo is utilized as energy data of a minor scale, and it aims at performing the construction and energy evaluation of a database management system used as the foundation of a system. The database of Tokyo consists of energy data for every type of industry of 30,849 buildings, and enforcement energy-saving technique data. Comparison of the energy consumption rate of large-scale and a minor scale, evaluation by energy classification, etc. were performed. 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5〜7(札幌)} -201- B-24

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Page 1: B-24 · >&'¨1 >' ¶ ¹ ¹ î ± Ë î « q#Ý b S u bDBMS S( l g ¿ Ý î0Û o Development of the analysis tool for contribution to energy-saving at mid-sized buildings G ( Ñ *½

中小規模事業所の省エネ深度化に資する分析ツールの開発

(第 1 報)公共データベース活用のための DBMS 構築及びエネルギー評価

Development of the analysis tool for contribution to

energy-saving at mid-sized buildings

正 会 員 ○梶井 聡 (首都大学東京) 正 会 員 金 政秀(首都大学東京)

正 会 員 山本 康友(首都大学東京)

Satoshi KAJII*1 Jeongsoo KIM*

1 Yasutomo YAMAMOTO*

1

*1

Tokyo Metropolitan University

Synopsis Times New Roman 100 Words ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

はじめに

低炭素社会の実現に向けて、省エネルギー・省CO2は

すべての事業者にとって喫緊の課題である。行政庁およ

び地方自治体では、大規模事業者が先行してエネルギー

使用量の把握からはじめるべく、定期報告の義務付けを

法制化しており、さらに報告データを集計、公表するこ

とによって、事業者が自身の相対的な位置付けの把握、

省エネ意識の向上を図っている。また、家庭部門での

HEMS、民生業務部門の BEMS、見える化システムの導

入など、エネルギーデータ把握のすそ野が広がっている。

一方で、エネルギーデータを収集分析して効果的な省

エネルギー手法を探る研究は従来から多くあったが、比

較研究が行いやすい中規模から大規模ビルが中心であっ

た。収集データ数は多くて 1千棟前後だが、収集データ

項目の違いや公開範囲の相違のために、データの相互乗

り入れは困難である 1)。

しかし、DECC(Data-bese for Energy Consumption of

Commercial building)2)ではこれらの問題を解決し、全国

で統一された手法によって様々な用途や規模の 1万棟を

超えるデータ収集を平成 19 年~21 年に掛けて行った。

その後、日本最大級のデータベースとして公開している。

次に、これらのエネルギーデータベースの分析結果に

基づいて、実際の省エネルギー行動に結びつけるには、

現状では、コミッショニングに代表される専門家による

事業所ごとでの判断によるところが大きい。事業所数が

非常に多い中小規模では労力やコストに見合う効果が得

られにくいものの、空調用熱源をはじめとする設備シス

テムや省エネ手法の選択肢は中小規模ではそう多くない

と考えられるため、パターン化できれば専門家によらな

い展開も期待できる。

例えば、下田ら 3)は、法人建物調査データにより、全

ストックに対して、5,000㎡未満の業務建築は棟数で95%、

延床面積で 57%を占めるため、中小規模を対象とするこ

とは、大きな省エネ効果を生み出す可能性があると述べ

ている。以上より、継続性があり、共通プラットフォー

ムによるエネルギーデータベースの構築及び、誰でも参

照および利活用が可能な分析システムを開発することは

意義が大きいと考えられる。

本報では、中小規模事業所のエネルギーデータとして、

東京都への定期報告書データを活用し、システムの基礎

となるデータベース管理システム (DBMS:datebase

management system)の構築およびエネルギー評価を行う

ことを目的とする。

1.東京都地球温暖化対策報告書制度の概要

国や多くの地方自治体で導入されている報告義務のほ

とんどでは、全事業所の合計原油換算エネルギー使用量

で 1,500kL以上の大規模事業者が対象である。

環境省の場合は、全国に約600万ある事業者4)のうち、

対象は約 1万 5)であるが、総排出量では約 5割を占めて

おり、さらにその約 8割は製造業である。

一方で、東京都の場合、大規模事業所については 2002

年度から報告制度を導入、都内の約 69 万事業所中約

1,400事業所に適用され、環境省に比較して数での比率は

高いが、東京都全体の排出量に対し約2割にとどまる6)。

このため、東京都では、2010年度からエネルギー使用量

が一定以上の中小規模事業者に対しても報告を義務付け

ることによって、より効果的な制度運用を図っている。

The periodic report document data to Tokyo is utilized as energy data of a minor scale, and it aims at performing the

construction and energy evaluation of a database management system used as the foundation of a system. The database

of Tokyo consists of energy data for every type of industry of 30,849 buildings, and enforcement energy-saving

technique data. Comparison of the energy consumption rate of large-scale and a minor scale, evaluation by energy

classification, etc. were performed.

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -201-

B-24

Page 2: B-24 · >&'¨1 >' ¶ ¹ ¹ î ± Ë î « q#Ý b S u bDBMS S( l g ¿ Ý î0Û o Development of the analysis tool for contribution to energy-saving at mid-sized buildings G ( Ñ *½

データベース

定義あり

冗長性 低

SQL

分析の信頼性 高

目視1,000件程度

機能100万件程度

テーブル

対応可能データ数 無限

エクセル

定義なし

冗長性 高

マクロ、フィルター

(テーブル定義なしのため)

1万件程度が可能

(エクセル)

東京都データ

不要データ

正データ

プログラム

プログラム

リレーショナルデータベース

生データテーブル

プログラム→データローダー(Windowsアプリ)

動的SQL生成

XML

抽出アプリケーション

保存

結果

データ群

SQL

データ構造枠(静的整理)

検索

条件入力

全体(約3万棟データ)

表 2 データベースの仕様比較 東京都地球温暖化対策報告書

基礎(レベル1)データベース 標準(レベル2)データベース 詳細(レベル3)データベース

約10万件 数百件/用途 数百件

所在地、延床面積、所有形態など 地域、建物用途、竣工年月 基礎(レベル1)データベースの情報 標準(レベル2)データベースの情報

延床面積、建築面積 届出値(PAL、CEC、BEEなど)

建物使用時間、冷暖房期間など 設備容量、熱源種別

省エネルギー対策など

年間燃料消費量(電力、ガスなど) 年間燃料消費量(電力、ガスなど) 基礎(レベル1)データベースの情報 標準(レベル2)データベースの情報

(上記データを、月別として提出可) 年間一次エネルギー消費量 月別燃料消費量(電力、ガスなど) 時刻別燃料消費量

年間原油換算エネルギー使用量 年間CO2排出量 月別一次エネルギー消費量 時刻別一次エネルギー消費量

年間二酸化炭素排出量 年間水消費量 月別CO2排出量 時刻別CO2排出量

年間水道・下水道使用量 月別消費先別エネルギー消費量 時刻別消費先別エネルギー消費量

地球温暖化の対策の実施状況(省エネ対策など)

DECC(Data-bese for Energy Consumption of Commercial building)

収集項目

建物属性情報

収集件数(DECCは目標値)

約3万件(平成22年度提出)

月別データあり(約1万件)

環境関連データ

1.1 報告書データの概要

データは、東京都環境局より事業所・事業者が特定さ

れないデータとして提供を受けた。本報では、平成 22

年度報告データを対象とする。実施省エネ手法データに

ついては分析対象外とした。

(1)規模‥‥同一事業者が都内に設置している事業所等

(前年度の原油換算エネルギー使用量が 30kL 以上

1,500kL未満の事業所等)の前年度の原油換算エネルギ

ー使用量の合計が年間 3,000kL以上になる場合は、義務

提出が必要。また、任意提出も可能である。

(2)項目

a 事業所属性‥‥業種(日本産業分類基準)、所有形

態、利用形態、連鎖化区分

b 建物属性‥‥延床面積

c 光熱水データ‥‥月間使用量(一部年間のみ)

d 対策の実施状況‥‥省エネメニューなど

(3)期間‥‥2009年度(2009年 4月~2010年 3月)

(4)データ数‥‥事業所数30,849、光熱水データ数109,855

(平成 22年度データ)

1.2 データの特徴

本エネルギーデータの特徴は、①信頼性が高い、②中

小規模対象のためデータ数が多い、③法制度化されてい

るため今後データ収集の持続性がある、ことである。

本分析は事業所単位であることから、ビルオーナーの

みではなくテナントとなる事業者にも有効となる。

エクセルからデータベースのテーブルデータとして整

備する上で、単位の整理・月別値と年間値の整合性など

の再調整を行うことでデータ精度を高めた。データ件数

が多くなるほど、これらを発見し、校正するのが困難に

なるが、データベースでは、正規化し入力規則を必ず定

めるために、データの精度が高い。

提供時期数の違い等により、東京都環境局より公開さ

れている報告書等と若干の相違がある。

2.データベース管理システム(DBMS)構築

2.1 DBMS7)の特徴

一般的なデータ分析では、データの抽出に表計算ソフ

トのフィルター機能により、データを選別してから入

力・集計を行う。しかし、データ件数が多くなると、①

表形式でのデータ記載のために不必要なデータの入力や

省略が生じ、冗長性が高くなる、①数値や数式の入力ミ

スの発生とその確認、修正の手間が増える、②必要なデ

ータの抽出に手間と時間がかかる、などの問題が出てく

る(表 1参照)。したがって、本報では、約 3.1万事業所

のデータを扱うため、表計算ソフトではなく、データベ

ース管理システムの構築を行った。DBMSの概念図を図

1に示す。

2.2 既存データベースとの仕様比較

既往のデータベースの中でも、代表的なものとしては

前述のDECCがある。DECCは、国土交通省の支援を受

けて、財団法人建築環境・省エネルギー機構が構築した

データベースで、全国の大学が中心になってデータ収集、

分析を行っている。最大の特徴は、分析目的に応じて基

礎(レベル 1)、標準(レベル 2)、詳細(レベル 3)の 3

段階を設定して、データ収集項目を定めていることであ

る(表 2参照 1))。これにより、それまでのデータベース

とは異なる汎用性の高いデータ整備が可能となった。

また、本データベースは、建築属性情報は少ないもの

の、DECCのレベル 2に相当する月別エネルギーデータ

が多く、また省エネ対策などの実施状況データを有する

ことが特徴となる。

表 1 データベースとエクセルの比較表

図 1 データベース管理システムの概念図

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -202-

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y = 1.6628xR² = 0.6479

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

事務所(370) y = 1.3323xR² = 0.2946

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

テナントビル(2296)

y = 3.4162xR² = 0.4419

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

情報通信(410)

y = 0.1445xR² = -1.877

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

飲食店(4763)

y = 9.354xR² = -0.028

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

コンビニ(5893)y = 2.5514xR² = 0.3632

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

百貨店(630)

y = 1.6779xR² = 0.7022

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

金融業(1251)

y = 0.4516xR² = 0.4211

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

小中高学校(1666)

テナントビル

19%

飲食店

8%

コンビニエンスストア

7%小売業

7%百貨店・スーパー

6%情報通信

4%

公共機関

4%

小中学校

3%

金融

業3%

運輸・郵便

3%

事務所

2%

高等学校

1%

文化施設

1%

ホテル1% 病院

1%その他

28%

業種別合計一次エネルギー消費量

中小規模事業

32%

大規模事業所

68%

業種別合計一次エネルギー消費量

0

1,000,000,000

2,000,000,000

3,000,000,000

4,000,000,000

5,000,000,000

6,000,000,000

7,000,000,000

8,000,000,000

9,000,000,000

10,000,000,000

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

一次エネルギー消費量

[MJ]

全データ月別平均推移公共機関

運輸・郵便

文化施設

病院

高等学校

小中学校

ホテル

小売業

百貨店・スーパー

コンビニエンスストア

飲食店

情報通信

金融業

テナントビル

事務所

y = 1.2401xR² = 0.7662

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

公共機関(2290)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

5→8月増加量

一次エネルギー消費量

[MJ]

全データ月別平均推移系列15

系列14

系列13

系列12

系列11

系列10

系列9

系列8

系列7

系列6

系列5

系列4

系列2

系列1

系列3

0

1,000,000,000

2,000,000,000

3,000,000,000

4,000,000,000

5,000,000,000

6,000,000,000

7,000,000,000

8,000,000,000

9,000,000,000

10,000,000,000

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

一次エネルギー消費量

[MJ]

全データ月別平均推移公共機関

運輸・郵便

文化施設

病院

高等学校

小中学校

ホテル

小売業

百貨店・スーパー

コンビニエンスストア

飲食店

情報通信

金融業

テナントビル

事務所

用途 [m2] 件数 一次E CO2 件数 一次E CO2 件数 一次E

事務所 3,869 370 1,821 78 145 2,369 98 356 2,121

テナントビル 5,366 2,296 1,927 78 307 2,527 106 - -

金融業 1,875 1,251 1,769 71 - - - - -

情報通信 3,335 410 4,044 159 - - - - -

飲食店 226 4,763 9,624 408 - - - 28 15,589

コンビニエンスストア 142 5,893 10,934 430 - - - 1,056 13,804

百貨店・スーパー 2,994 630 4,115 164 164 3,403 142 180 6,586

小売業 1,169 1,962 3,739 150 - - - - -

ホテル 4,240 125 2,198 98 45 3,107 138 179 2,820

小中学校 6,218 1,458 465 21 - - - 691 371

高等学校 14,666 208 449 19 - - - 38 472

病院 6,742 43 2,705 122 77 3,219 145 226 2,745

文化施設 2,695 260 1,695 70 19 2,610 111 85 1,585

運輸郵便 1,899 1,293 1,514 61 - - - - -

公共機関 1,537 2,290 1,379 58 - - - 260 1,224

※文化施設:映画館、劇場、興行場、図書館、博物館、美術館 ※一次EはMJ/m2年、CO2はkg/m2年

※公共機関:行政機関、都道府県機関、市町村機関

平均

延床面積

東京都

中小規模(本件) 大規模

DECC

(関東)

3.分析結果

3.1 全体の割合

東京都の分析 8)で使用された 13分類に、比較的件数の

多い分類として金融業と小売業を新たに追加し、計 15

分類とした。本データベースの総計で約 126[PJ/年]であ

った。図 2に、業種別の一次エネルギー消費量の割合を

示す。飲食店、コンビニエンスストアは、件数が多く総

一次エネルギー消費量も非常に多い。なお、業種は自己

申告による日本産業分類を用いており、例えばテナント

ビルは「賃事務所業」であり、事務所や飲食店、小売店

などが含まれる。

3.2 大規模と中小規模の比較

それぞれの業種別で原単位を算出し、東京都の大規模

事業所が対象となる「地球温暖化対策計画書制度」デー

タおよびDECC(関東データ)と比較した(表 3参照)。

百貨店・スーパーのみ、中小規模の方が大規模よりCO2

排出量原単位が大きいため、さらなる省エネの余地が見

込まれる。また、小中、高等学校は一次エネルギーの原

単位が小さく、ZEB化の可能性が比較的高いと考えられ

る。図 3より、中小規模の割合が 32%であったが、都内

の中小事業所は約 69万あり、本報はその内、約 3万が対

象であるため、実際はさらに割合は高いと予想される。

3.3 延床面積と一次エネルギー消費量

図 4に、主な業種における、延床面積と一次エネルギ

ー消費量のグラフを示す。相関係数が低いものも多く、

さらなる分析には、エネルギー消費量に係わる設備機器

の熱源種別などの場合分けが必要であると考えられる。

同業種の中でも、一次エネルギー消費量の極端に多いも

のもあり、省エネ余地があると考えられる。

3.4 月別変動

月別一次エネルギー消費量の変化と変動分の割合を図

5に示す。ピーク月は 8月で次に 2月、8月の内訳でテナ

ントビル 27.4%に次いで飲食店 11.4%の割合が高い。ま

た、変動分の 5月と 8月の差の内、最も割合が大きいの

は、テナントビルで 28.8%、次いで公共機関の 12.4%で

あった。ピークを抑えるには、テナントビルや公共機関

の変動分を抑える必要がある。

学校(小中高)[N=1,666]

y=0.4516x R^2=0.4211

50

40

30

20

10

0

コンビニ[N=5,893]

y=9.354x

R^2=-0.028

百貨店[N=630]

y=2.5514x

R^2=0.3632

情報通信[N=410]

y=3.4162x R^2=0.4419

飲食店[N=4,763]

y=0.1445x R^2=-1.877

事務所[N=370]

y=1.6628x

R^2=0.6479

テナントビル[N=2,296]

y=1.3323x R^2=0.2946

50

40

30

20

10

0

50

40

30

20

10

0 50

40

30

20

10

0

50

40

30

20

10

0

50

40

30

20

10

0

50

40

30

20

10

0 一次エネルギー消費量

[TJ]

金融業[N=1,251]

y=1.6779x R^2=0.7022

50

40

30

20

10

0

0 10,000 20,000 30,000 5,000 15,000 25,000

50

40

30

20

10

0 0 10,000 20,000 30,000

5,000 15,000 25,000

公共機関[N=2,290]

y=1.2401x R^2=0.7662

延床面積[m2]

図 2 業種別の総一次エネルギー消費量

表 3 主業種の原単位の比較

図 3 中小と大規模の総CO2排出量の比較 図 5 業種毎の月別一次エネルギー消費量

図 4 延床面積と一次エネルギー消費量

中小規模事業所

[N=30,849]

509万 t-CO2

大規模事業所 [N=675]

1,078万 t-CO2

68%

32%

10

9

8

7

6

5

4

3

2

1

0

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3月

一次エネルギー消費量

[PJ]

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

0 変動分

y = 2.153xR² = 0.8063

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

エネルギー消費量

[GJ]

ホテル(125)

50

40

30

20

10

0

ホテル[N=125]

y=2.153x R^2=0.8063

[%]

変動分

8月-5月

※テナントビルなどで

は、入居テナント自身に

報告義務がある場合、重

複して集計される

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -203-

Page 4: B-24 · >&'¨1 >' ¶ ¹ ¹ î ± Ë î « q#Ý b S u bDBMS S( l g ¿ Ý î0Û o Development of the analysis tool for contribution to energy-saving at mid-sized buildings G ( Ñ *½

23,98310,4219,1538,6595,6484,9494,2614,1623,7827,7972,6171,3801,1931,178

804

0 0 0 1 1 1 1

病院

ホテル

文化施設

高等学校

事務所

運輸・郵便

金融業

小中学校

公共機関

情報通信

百貨店・…

小売業

コンビニエン…

飲食店

テナント…

全データ月別平均推移電気比率

ガス比率

その他比率

近似曲線 相関係数 原単位

y年間使用量[m3]、x延床面積[m2] R^2 [m3/m2]文化施設 y=1.1638x 0.66 1.09金融業 y=0.8537x 0.59 0.89ホテル y=3.5523x 0.58 3.95事務所 y=0.98x 0.56 0.90運輸郵便 y=0.624x 0.54 0.60小売業 y=1.4046x 0.46 1.26情報通信 y=0.5634x 0.39 0.49百貨店・スーパー y=1.3626x 0.29 1.58公共機関 y=1.4638x 0.24 1.34テナントビル y=0.9178x 0.21 0.99高等学校 y=0.498x 0.18 0.49小中学校 y=1.2128x 0.02 1.25飲食店 y=6.1423x -0.20 8.76コンビニエンスストア y=2.7641x -0.33 2.94病院 y=1.21x -0.48 2.44

0

10

20

30

40

50

60

70

80

0

20

40

60

80

100

120

140

160

≦0

.05

0.0

5-0

.1

0.1

-0.1

5

0.1

5-0

.2

0.2

-0.2

5

0.2

5-0

.3

0.3

-0.3

5

0.3

5-0

.4

0.4

-0.4

5

0.4

5-0

.5

0.5

-0.5

5

0.5

5-0

.6

0.6

-0.6

5

0.6

5-0

.7

0.7

-0.7

5

0.7

5-0

.8

0.8

-0.8

5

0.8

5-0

.9

0.9

-0.9

5

0.9

5-1

エネルギー消費原単位

[MJ/㎡

]

電化比率とエネルギー消費原単位

0

1

2

3

4

5

6

7

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

原単位標準偏差

[MJ]

面積標準偏差指数[-]

延床面積と年間エネルギー消費量

3.5 年間上水使用量

相関係数が高い文化施設の延床面積と年間上水使用量

の関係を図 6に示す。飲食店が、延床面積当たりの年間

上水使用量の原単位が 8.76m3/m

2と一番高かった。

3.6 電気・ガスの比率

図 7に、電気とガス使用量及びその他の一次エネルギ

ー消費量比率を示す。全ての用途で、電気の割合が 65%

を越えている。コンビニエンスストアは 99.9%電気であ

る。小中学校のガス比率が高い。図 8 に、小中学校の 5

月分の一次エネルギー消費量をベースと捉え、夏季分

(5-10月)から 5月分を差し引いた変動分のみで、電気・

ガス比率毎の、エネルギー量を示す。比較的、電気の比

率が下がる程、一次エネルギー消費量原単位が増加する

傾向が伺えることから、ガスの用途による違いなど使用

実態も考慮した分析が必要と考えられる。

3.7 省エネ技術の波及効果

図 9に、ポートフォリオ分析を示す。各軸は用途別分

布の標準偏差を平均値で割り戻し、ばらつき指数とした。

一次エネルギー消費量と延床面積の偏差が共に小さい、

中学校、高等学校、コンビニエンスストアなどは、効果

的な省エネ技術が確認されれば、同じ用途内に広く適用

出来ることになるため、波及効果が高いと言える。

4.まとめ、今後の予定

中小規模事業所を対象とし、平成 22 年度提出された

東京都「地球温暖化対策報告書」データを活用するため

のデータベース管理システム(DBMS)の構築およびエ

ネルギー分析を行った。今後は、対策メニューの分析お

よび平成 23年度データの分析を行う予定である。

謝 辞

東京都環境局より、地球温暖化対策報告書のデータ提供など

貴重な研究機会を頂いた。ここに、謝意を示す。

本研究は、東京都リーディングプロジェクトの「環境負荷低

減に資する都市建築ストック活用型社会の構築技術」の一環と

して行ったものである。

参 考 文 献

1)(財)建築環境・省エネルギー機構: IBEC No.168 Vol.29-3、2008.9

2)日本サステナブル建築協会:非住宅建築物の環境関連データ

ベース、http://www.jsbc.or.jp/decc/index.html

3)空衛学会近畿支部シンポジウム「中小規模建物を対象とし

たエネルギーマネジメント」2011.9

4)総務省統計局:明日への統計 2011

5)環境省:平成21年度温室効果ガス排出量の集計結果

6)東京都:地球温暖化対策報告書作成ハンドブック、2011.3

7) 増永良文:リレーショナルデータベース入門、サイエンス社

8)東京都:地球温暖化対策セミナーテキスト、2012.3

注 意

※「3.4月別変動」で、月別データがない場合は、当該年間デ

ータと他の同一業種のデータより、月別データ合計と年間デ

ータ合計を一致させるように補正した。

表 4 業種毎の近似曲線他

図 9 ポートフォリオ分析

図 8 小中学校の変動分における電気・ガス比率(夏季分)

図 7 業種毎の電気・ガス消費量比率

0 20 40 60 80 100

電気 ガス その他

テナントビル

飲食店

コンビニエンスストア 小売業

百貨店

情報通信

公共機関

小中学校

金融業

運輸・郵便

事務所

高等学校

文化施設

ホテル

病院

[TJ/年]

0 10,000 20,000 30,000 5,000 15,000 25,000 35,000[m

2]

図 6 延床面積と年間上水使用量

y = 1.1638xR² = 0.6591

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000

水消費量

[m3]

延床面積と水消費量

70

60

50

40

30

20

10

0

年間上水使用量

[×10

3m

3]

文化施設[N=260]

160

140

120

100

80

60

40

20

0 変動分の一次エネルギー消費量原単位

(5%毎の平均値)

一次エネルギー 件数

80

70

60

50

40

30

20

10

0

件数

[MJ/年m2]

≦5

5-1

0

10-1

5

15-2

0

20-2

5

25-3

0

30-3

5

35-4

0

40-4

5

45-5

0

50-5

5

55-6

0

60-6

5

65-7

0

70-7

5

75-0

80

80-8

5

85-9

0

90-9

5

95-1

00

一次エネルギー消費量に占める電気の割合[%] ※100%はオール電力

一次エネルギー消費原単位の

ばらつき指数

病院

ホテル 文化施設 公共機関

運輸・郵便

小中学校

コンビニ

高等学校 テナントビル

飲食店 情報通信

小売業

金融業

事務所

延床面積のばらつき指数

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

7

6

5

4

3

2

1

0 百貨店・スーパ ー

空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集{2012.9.5 〜 7(札幌)} -204-