Bacillus cereusのアウトブレイク阻止に向けた取り組み

北茨城市立総合病院 ICT

○小松 千秋、 藤枝 毅

1.目的

当院では、２０XX年１０月に一人の患者血液

培養検体からセレウス菌が複数回検出され、

セレウス菌による血流感染症と判断し、対応した。

それにより患者発生を１名にとどめることができ、

アウトブレイクを防ぐことができた。その過程に

ついて検討し、報告する。

自然界に多く存在し、グラム陽性大桿菌で芽胞を

有する通性嫌気性菌である。芽胞は１００℃３０分の

加熱にも耐え、芽胞の形で土壌などを中心に自然

環境に多く分布している。エタノール系消毒剤にも

耐性を獲得した菌が残存し十分な除去効果は得ら

れない。

2.セレウス菌とは

セレウス菌の画像

3.事例概要(1)

患者）80歳代 女性

現病歴）

寝たきりで介護施設入所中であった。うつ病、脳梗塞などで

嚥下機能が低下し、胃瘻造設予定であった。

20XX年10月8日誤嚥性肺炎で当院内科入院となった。

入院後の経過）

入院後、抗生剤、絶食、補液などで加療開始したが、38〜

40℃台の発熱を繰り返した。感染のフォーカスが確定できず、

血液培養を繰り返し行った。

3.事例概要(2) 10月8日 38℃台前半の発熱 血培陰性(2/2）

10月14日 38℃台前半の発熱 血培陰性(2/2)

10月19日 39℃台前半の発熱 血培B.cereus(2/2)

10月28日 38℃台後半の発熱 血培グラム陽性桿菌(2/2)

（同定はしなかったが、B.cereusと推定）

11月1日 40℃の発熱 血培B.cereus(1/2)

11月5日 38℃台前半の発熱 血培陰性(2/2)

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血培 (-) (-) B.cereus グラム陽性桿菌 B.cereus (-) (-)

(2/2) (2/2) (2/2) (2/2) (1/2) (2/2) (2/2)

11/30

抗生剤 SBT/ABPC CEZ SBT/ABPC

CLDM

VCM

11/21終了

(℃)

A大学感染制御部にコンサルト 経過表 内科カンファ

感染対策委員会による介入

洗濯が終了されリネン庫より配布された清拭用タオルの培養

を行った。その結果、セレウス菌が検出された。タオルの検体

は洗濯後のタオル２cm×２cmを滅菌試験管に入れ、10cｍの

滅菌PBS(pH7.0)に浸し、よく撹拌した。これを原液とし、

65℃で30分加熱処理後PBSで希釈液を作った。それぞれ100ul

を血液寒天培地に塗布し、ふ卵器で48時間培養した。計測は

10倍で行った。

青色のタオル(陰部用）： 3×25×100＝7500cfu/mL

黄色のタオル(体幹用）： 5×25×100＝12500cfu/mL

であった。

4.環境サンプリング

5.当院の対応概要

① 清拭タオル対策

② 輸液管理

③ 標準予防策・接触感染予防策の徹底

④ A大学感染制御部へのコンサルト

5.当院の対応概要

①清拭タオル対策ー発生時までの対応

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5.当院の対応概要 ①清拭タオル対策ー発生後の対応

タオル・清拭車は使用禁止とし、清拭用としてデイスポの

お絞りタオルに変更する。

使用していたタオルはすべて焼却処分とする。

5.当院の対応概要 ②輸液カテーテル対策

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5.当院の対応概要

③標準予防策・接触予防策の徹底

手指衛生

手袋 処置時は手袋着用

エプロン 患者、環境面に接する場合は使い捨てエプ ロン着用

リネン 使用済のリネンは汚染用ビニール袋に入れ て搬出

清掃 環境表面の清掃は０．０１%次亜塩素酸ナトリ ウムを使用

5.当院の対応概要

④A大学感染制御部へのコンサルト

• 抗生剤はバンコマイシン１０ー１４日間投与に変更する。

• 遠隔感染症と眼内炎のチェックを行う。

• 血液培養の陰性化を確認する。

• 末梢静脈ライン管理の再検討。

6.対応後の経過（結果）

実施した対応により、患者は解熱し、全身状態は

改善した。１１月３０日の血液培養は陰性化した。

他の患者では１１月１日の最終検出から１ヶ月間

セレウス菌血液培養は検出されず、アウトブレイクを

防ぐことができたと考えられた。

7.結論(1) ２回目の血液培養陽性を認めた時点で、セレウス菌=

コンタミネーションと安易に考えず、血流感染症かも？と判断して取り掛かった。

１事例で終息した。

早期に様々な対応を 実施

7.結論(2) 今回の事例で、アウトブレイクを防止できたのは、発熱に対するもしかしてと感じる感染の感性の高さを意義のある方法に繋いだことだと考える

・作業環境ラウンドを実施・指導・徹底強化

・点滴業務プロセスの見直しと汚物処理後の流水での

手洗いの強化

・血液培養採取時の手技の徹底

・地域連携の利用

・汚染源対策と感染経路の遮断など日々の対策の強化

今後の課題

8.参考文献 1)原田知子，他：セレウス菌菌血症のアウトブレイクを 経験して．日赤医学61：338-34，2010

2)笹原鉄平，他：自治医科大学附属病院における血液 培養でのセレウス菌の検出と環境汚染．日本環境 感染学会誌24：398，2009 3)笹原鉄平，他：いまおさえておきたい注目の微生物10 3 セレウス菌(Bacillus cereus)-見逃していませんか？ その発熱の原因ー. Infect Control17(11)：1076-1080， 2008 4)麻生恭代，他：Bacillus cereus血流感染における輸 液製剤と環境因子の検討．日本環境感染学会誌27： 81-90，2012