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抗がん剤のエキスパートをめざす 薬剤師のための情報誌チーム6 NOVEMBER 2013 Vol. CONTENTS 佐伯 俊昭 先生 埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科 教授 【講 演】治療プレナリーセッション1 術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから 【講 演】検診診断プレナリーセッション5 遺伝性乳がんをめぐる諸問題 企画セミナー 2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会 【ポスター討議】 乳癌内分泌療法に伴う副作用に対する、漢方による治療経験 【ポスター討議】 術後ホルモン療法における服薬アドヒアランス向上のための 客観的評価法とその因子解析 21 回日本乳癌学会学術総会特集号 21回日本乳癌学会学術総会 会期20136 27 日(木) 29 日(土) 会場|静岡県浜松市 アクトシティ浜松ほか TeAM 「第 21 回日本乳癌学会学術総会特集号」の 発行にあたって 2013年度の日本乳癌学会学術総会は、総会直前に米国の映画女優が遺伝性乳がんを理由に 予防的乳房切除を行ったというニュースもあり、一般社会にも広く認知されたことで関係者の関心 が高い中、5,600名を超える方々が参加され、盛況のうちに幕を閉じました。 また、抄録集の電子化や、学会で発表された最新情報を乳がん患者さんと共有するための「患者セミナー」の開催、全国 44団体が制作したピンクリボンバッジの人気投票企画「P-1グランプリ」の開催など、様々な新しい取り組みが行われた学会 でもありました。 今回の「TeAM」では、薬剤師の皆様の日常業務にご活用いただける情報を意識して、いくつかのセッション・演題をピック アップさせていただきました。 「術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから」のセッションでは、St.Gallenコンセンサス会議にてパネルを務められている3名 のエキスパートから術後薬物療法に関する講演がありました。乳がん治療の最新情報としてご参考いただければと思います。 「遺伝性乳がんをめぐる諸問題」のセッションでは、今話題の内容を様々な切り口で解説されており、会場からも熱心な 発言が数多く寄せられていました。 「2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会」のセミナーでは、ガイドライン改訂のポイントについてまとめられており ますので、一読いただければと思います。 「ポスター討議」では、薬の飲み忘れの原因探索や予防策の検討、薬物療法に伴う副作用への漢方による治療経験など、 患者さんの長期にわたる薬物療法をサポートする際に役立つと思われる2演題を紹介させていただきました。 いずれも、皆様の日常業務にご活用いただける情報となることを確信しております。

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Page 1: Bayer Health Village Professionals タスオミン.jp Vol.€ŒBayer Health Village Professionals 」の乳がん治療に関する情報ウェブサイト タスオミン.jpのご紹介

タスオミン.jpでは、乳がん治療に携わる医師や薬剤師の先生方に、タスオミン®の製品情報の他、がん治療を支援する薬局の取り組みや乳癌診療ガイドラインの解説、

WEBカンファレンスの動画配信など様々なコンテンツを提供しています。

タスオミン .jp

コンテンツのご紹介■製品基本情報タスオミン®の製品特徴や基本情報、副作用などをご確認いただけます。また、添付文書やインタビューフォーム、比較表をダウンロードすることができます。

■WEBカンファレンス薬剤師の先生方向けに開催しましたWEBカンファレンスの講演動画をご視聴いただけます。

■説明動画タスオミン®の製品概要、薬物動態、作用機序、特別調査の動画をご視聴いただけます。

■TeAMがん治療を支援する薬局の取り組みや乳癌診療ガイドラインの解説、乳がんのホルモン療法で薬剤師が押さえておくべき文献をご確認いただけます。

タスオミン.jpのトップページ

WEBカンファレンスページ※

http://www.bayer-hv.jp/hv/tasuomin/index.php

こちらの薬剤師の疑問に対するご回答は、

講演動画よりご確認いただけます。ぜひ、ご視聴ください。

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「Bayer Health Village Professionals」の乳がん治療に関する情報ウェブサイト

タスオミン. jpのご紹介

ご講演内容

1.乳癌の標準治療 2013 (ご講演時間:23分08秒)

2.乳がんの治療に関する薬剤師の疑問にお答えします (ご講演時間:10分54秒)・ ホットフラッシュに対する対処方法は?・ タモキシフェンの服用中は無月経になるか?・ タモキシフェンの服用中、妊娠することは可能か?妊娠の可能時期は?・ タモキシフェンの服用中、血栓のリスクによる手術前後の休薬は必要か?・ タモキシフェンの服用による子宮体癌のリスクをどのように考えるか?・ 男性患者へ投与することはあるか?・ 大豆食品やイソフラボンを摂取することは乳がんの予防につながるか?・ アルコール飲料の摂取は乳がん再発の危険因子になるか?3.視聴者からの質問ご回答 (ご講演時間:11分27秒)

抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

6NOVEMBER

2013

Vol.

CONTENTS

佐伯 俊昭 先生 埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科 教授

【講 演】治療プレナリーセッション1術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから【講 演】検診診断プレナリーセッション5遺伝性乳がんをめぐる諸問題企画セミナー2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会【ポスター討議】乳癌内分泌療法に伴う副作用に対する、漢方による治療経験【ポスター討議】術後ホルモン療法における服薬アドヒアランス向上のための客観的評価法とその因子解析

第21回日本乳癌学会学術総会特集号

資材記号 TAS・13・0004(201311)TAS-66.0(EL/DI)

第21回日本乳癌学会学術総会|会期|2013年6月27日(木)~29日(土)|会場|静岡県浜松市 アクトシティ浜松ほか

TeAM「第21回日本乳癌学会学術総会特集号」の発行にあたって

 2013年度の日本乳癌学会学術総会は、総会直前に米国の映画女優が遺伝性乳がんを理由に予防的乳房切除を行ったというニュースもあり、一般社会にも広く認知されたことで関係者の関心が高い中、5,600名を超える方々が参加され、盛況のうちに幕を閉じました。 また、抄録集の電子化や、学会で発表された最新情報を乳がん患者さんと共有するための「患者セミナー」の開催、全国44団体が制作したピンクリボンバッジの人気投票企画「P-1グランプリ」の開催など、様々な新しい取り組みが行われた学会でもありました。 今回の「TeAM」では、薬剤師の皆様の日常業務にご活用いただける情報を意識して、いくつかのセッション・演題をピックアップさせていただきました。 「術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから」のセッションでは、St.Gallenコンセンサス会議にてパネルを務められている3名のエキスパートから術後薬物療法に関する講演がありました。乳がん治療の最新情報としてご参考いただければと思います。 「遺伝性乳がんをめぐる諸問題」のセッションでは、今話題の内容を様々な切り口で解説されており、会場からも熱心な発言が数多く寄せられていました。 「2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会」のセミナーでは、ガイドライン改訂のポイントについてまとめられておりますので、一読いただければと思います。 「ポスター討議」では、薬の飲み忘れの原因探索や予防策の検討、薬物療法に伴う副作用への漢方による治療経験など、患者さんの長期にわたる薬物療法をサポートする際に役立つと思われる2演題を紹介させていただきました。 いずれも、皆様の日常業務にご活用いただける情報となることを確信しております。

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抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

●St.Gallenコンセンサス会議では コンセンサスが作成され、提示される

 St.Gallenコンセンサス会議は、欧州における早期乳がん術後補助療法を標準化するために1980年代に開始され、2013年3月で第12回目を迎えた。 このコンセンサス会議では、乳がん治療の重要な課題についてエキスパートによるコンセンサスが作成・発表されるが、ガイドラインやリコメンデーションは作成されない。3日間の会期の最後に、各課題に関して事前に用意された質問について投票が行われ、その結果に基づいてコンセンサスが作成される。専門領域にかかわらず、全項目についてエキスパート全員が投票し、その結果は数千人の聴衆の前で発表される。最近ではエビデンスに則ってガイドラインを作成するための科学的手法が進歩しているが、本会議のコンセンサスは必ずしもエビデンスに基づくものではなく、エキスパート自身が患者をどのように診断・治療したいかに基づいて決定される。 本講演では、術後補助療法を個別化する際のバイオマーカーに関する課題について、2013年のSt.Gallenコンセンサス会議における投票結果を紹介し、バイオマーカーの臨床的有用性を確立するための取り組みについて論じる。

●乳がんサブタイプ鑑別法に関する コンセンサス

 乳がんはLuminalA、LuminalB、HER2型、基底細胞型(トリプルネガティブ※1)などのサブタイプに分類される。Luminal型は内分泌療法に反応しやすく、HER2型、基底細胞型は化学療法に反応しやすい。そのため治療法の選択にあたってはサブタイプの鑑別が重要となり、簡便かつ安価な鑑別法が開発されれば臨床における有用性は高い。 2013年のSt.Gallenコンセンサス会議では、LuminalAとBの鑑別はエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)発現だけでは不可能だとする回答が91.8%を占めたが、それらに

術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから

加えてKi-67を評価すれば可能だとする回答は72.9%と多かった。しかし、鑑別は品質保証プログラムに参画する検査機関でのみ行うとする回答が88.9%と大半を占めた。また、HER2陽性・陰性を判定する上で、HER2過剰発現の不均一性、第17番染色体ポリソミーなどについて知っておく必要があるとの認識は低かった。サブタイプによって術後補助療法で化学療法を行うか否かが決まるとの回答率は88.9%と高かった。しかし、サブタイプを決定するのに多遺伝子発現解析を行うべきだと回答したのは22.0%と低く、臨床病理学的定義を用いれば十分だと53.1%が回答した。臨床病理学的評価の後に、多遺伝子発現解析を行うかどうかという質問には、エキスパートの間でも意見が分かれた。

●バイオマーカーの臨床的有用性を 検証するための取り組み

 がんの診療に用いるバイオマーカーは精度と再現性が高く、腫瘍の生物学的特性の鑑別が可能で、臨床転帰を予測しうるものでなくてはならない。この考えに基づき、我々はバイオマーカーを開発するためのプロセスとして「候補バイオマーカーの選択」、「バリデーション」、「臨床的有用性の評価」の3段階を規定した。3段階目においては、過去の臨床試験の組織サンプルが入手できれば、バイオマーカーと臨床転帰との関連性を調べることができる。組織サンプルが入手できなければ、プロスペクティブな臨床試験を実施して、バイオマーカーと臨床転帰との関連性を検討することになり、実際にTAILORx、MINDACT、RxPonderといった試験が進行中である。 腫瘍の適切なバイオマーカーが存在しないのは、治療効果のない薬剤を使用するのと同じである。しかし、適切なバイオマーカーを同定し、その臨床的有用性を確立するのは容易ではなく、手法にも改善すべき問題点は多く、新しい遺伝子シークエンシング技術の成果をどうやって臨床にトランスレートするかは大きな課題である。※1 ER、PgR、HER2とは関係せずに発症・増殖する乳がんのタイプ。ホルモン療法やHER2

療法の効果が期待できず、一般的に予後が悪い。

 原発性乳がんの治療がバイオロジーに基づく個別化治療へと向かうなか、細胞毒性抗がん剤の有用性を見直す時代にさしかかっている。細胞毒性抗がん剤のレジメンは進歩しており、その集大成としてEBCTCG(Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group)があり、最新は2012年に発表された。この中でno chemotherapyに比較してCMF※2やアンスラサイクリンを含むレジメンにしてもoverall survivalの相対リスクは0.84であった。さらにCMFとAC※3の4サイクルもほぼ同等の結果であった。またアンスラサイクリンにタキサンを加えた場合の相対リスクは0.8~0.9程度であった。これらは患者集団を選別することなく実施された研究の成果であり、いわば“One size fits all”である。エストロゲン受容体(ER)やHER2に代表される効果予測バイオマーカーが知られるようになった現在、バイオマーカーに基づく治療戦略はもはや当然となった。大規模臨床試験のレトロスペク

 今回のSt.Gallen会議のVotingで、『閉経前患者の一部はタモキシフェン(TAM)投与期間を10年に延長すべき』とした者が多数を占めたことは興味深い。TAM5年間終了後のアロマターゼ阻害薬(AI)の有用性を示したMA.17の成績からも、ホルモン療法の投与期間に対する考え方は、これまでの標準である5年間から10年間へと変わりつつある。こうしたなか、ATLAS試験の最終結果で、TAM10年間投与は5年間投与に比べ10年目以降の再発および乳がん死を有意に抑制することが示された(図)。これは、投与期間に対する考え方を方向づけるきわめて意義深い報告といえよう。また、ホルモン療法の投与期間延長を考慮するうえで、各種予測システムなども活用し、予後ならびに治療効果を的確に予測し、ホルモン療法で確実にベネフィットが得られる集団を明らかにする努力が求められる。 一方、抗HER2薬の開発が進み、化学療法未施行でも抗HER2薬を用いた術前療法、特に抗HER2薬の2剤併用で一定の病理学的完全寛解(pCR)が得られること、Luminal HER2タイプではホルモン療法の追加によりpCRの増加が見込めることが示唆されている。さらに、術後療法ではERの状況で成績に大きな差がみられないのに対し、術前療法ではER陰性で

より良好な成績が得られることもわかった。原発巣と転移巣における生物学的特性が異なる可能性を示唆する知見とも言え、今後のさらなる検討が望まれる。

講 演 治療プレナリーセッション1

●表.Subtypeにより推奨される全身治療

遺伝子から実臨床へ:トランスレーショナル研究の必要性Genome to Bedside: Lost in Translation演 者● Dr. Daniel F. Hayes (University of Michigan Comprehensive Cancer Center)

ティブ解析で、ER陽性/HER2陽性集団(LuminalA)ではACへのパクリタキセル(PTX)追加効果が小さいこと、またNSABP B20 trialではER陽性/HER2陰性集団でタモキシフェン(TAM)への化学療法追加効果などが示されており、これらは、現在推奨されているサブタイプ別の治療方針とも合致する。また、日本で開発されたテガフール・ウラシル(UFT)は、ER陽性/年齢50歳以上の患者集団でCMFと比べ若干良い無再発生存期間(RFS)がN・SAS・BC-01試験で示唆されている。 以上のように、細胞毒性抗がん剤の利用価値のある患者群が存在することを踏まえると、必要な細胞毒性抗がん剤を適切な患者に使用していくためにはバイオマーカーを賢く活用する努力が求められる。※2 CMF:シクロフォスファミド/メソトレキセート/5-FU※3 AC:アドリアマイシン/シクロフォスファミド

国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科 医長

清水 千佳子先生

化学療法における個別化治療という夢の実現にはまだ時間が必要だと思われ、バイオマーカーのvalidityがポイントになってくるだろう。「愚公、山を移す」という中国の故事のように、明確な目標、戦略をもって地道な努力を継続すれば達成できる夢かもしれない。

司 会

昭和大学医学部乳腺外科 教授昭和大学病院ブレストセンター長

中村 清吾先生

このセッションでは、St. Gallenのパネルを務められている3名の先生からお話しをいただく。Daniel F. Hayes先生はASCOの中心メンバーでもあり、米国とヨーロッパの架け橋的な存在で、日本人ドクターも数多く指導されてきた。

‘Luminal A-like’の治療 ‘Luminal B-liKe(HER2陰性)’の治療 ‘Luminal B-like(HER2陽性)’の治療 ‘HER2陽性(non luminal)’の治療 ‘Triple negative(ductal)’の治療内分泌療法が最も重要な治療であり、しばしば単独で用いられる。限定された症例では細胞毒性抗がん剤が使用される場合がある。過半数のパネリストが細胞毒性抗がん剤の相対的適応として以下の項目を承認した。Oncotype DxⓇ 再発スコア>25MammaPrintⓇ 高リスクグレード3腋窩リンパ節転移 4個以上年齢<35才を細胞毒性抗がん剤の適応とするかについては、パネリストの間で意見が二分された。

すべての症例に内分泌療法大部分の症例に細胞毒性抗がん剤を追加する

細胞性抗がん剤+抗HER2療法+内分泌療法細胞毒性抗がん剤を割愛してよいというデータは得られていない。

細胞毒性抗がん剤+抗HER2療法抗HER2療法を使用する閾値は浸潤型5mm以上または腋窩リンパ節転移陽性症例術後のtrastuzumab投与期間は1年間

細胞毒性抗がん剤最適な細胞毒性抗がん剤あるいはレジメンとして、bevacizumab、plat inum、capecitabine、gemcitabineが精力的に検討されているが、臨牀的なエビデンスとして十分なる再現性、信頼性のあるものは未だ明確にされていない。現時点ではアンソラサイクリンを含むレジメンとタキサンを含むレジメンの順次投与が標準である。

浜松オンコロジーセンターのレジメン例

閉経前 AI + LHRH agonistTAM+ LHRH agonist

閉経後 AITAM

AC→PTXACUFT

AITAM±LHRH agonist

AC→PTXAC

AITAM±LHRH agonist

trastuzumab

AC→PTXAC

trastuzumab

AC→PTX

PAM 50 MammaPrint othersOncotype Dx

原発性乳癌の治療における細胞毒性抗がん剤の有用性演 者 ● 渡辺 亨先生 (浜松オンコロジーセンター)

原発性乳癌の治療におけるホルモン療法と抗HER2療法の発展演 者 ● 戸井 雅和先生 (京都大学大学院医学研究科 外科学講座乳腺外科学)

●図.ER陽性患者(6,846名)の治療群別(A)再発率および(B)乳癌死亡率

25.1%

21.4%14.5%

13.1%

30

20

10

0

累積発現率(%)

5-9年:RR 0.90(0.79-1.02)≧10年:RR 0.75(0.62-0.90)全期間:log-rank p=0.002

0(治療)

5年(ATLASエントリー)

10年(治療終了)

15年(エントリー後10年)

15.0%

12.2%6.0%5.8%

5-9年:RR 0.97(0.79-1.18)≧10年:RR 0.71(0.58-0.88)全期間:log-rank p=0.01

継続群  対照群

0(治療)

5年(ATLASエントリー)

10年(治療終了)

15年(エントリー後10年)

O:観察値 E:予測値 V:分散

5-9年 10-14年 ≧15年継続群

対照群

発現率比、(O-E)/V

log-rank O-EおよびV

1.17%(SE 0.09)

1.21%(SE 0.09)

0.97(SE 0.10)

‒3.2/94.0

1.38%(SE 0.12)

2.01%(SE 0.15)

0.70(SE 0.10)

‒27.2/77.5

1.64%(SE 0.39)

2.29%(SE 0.47)

0.79(SE 0.27)

‒2.5/10.6

5-9年 10-14年 ≧15年2.83%(428/15,115)

3.16%(471/14,889)

0.90(SE 0.06)

‒24.8/224.7

1.96%(165/8,439)

2.66%(214/8,038)

0.74(SE 0.09)

‒29.1/94.7

2.54%(24/945)

3.03%(26/859)

0.85(SE 0.26)

‒2.1/12.5

BA

グラフ上のバーはSEを示す。再発率は%/年(イベント数/患者-経過年)とした。死亡率(全死亡率-無再発死亡率)は%/年(SE)とした。ATLAS=Adjuvant Tamoxifen: Longer Against Shorter

Davies C, et al. Lancet 2013;381:805-816.

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抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

●St.Gallenコンセンサス会議では コンセンサスが作成され、提示される

 St.Gallenコンセンサス会議は、欧州における早期乳がん術後補助療法を標準化するために1980年代に開始され、2013年3月で第12回目を迎えた。 このコンセンサス会議では、乳がん治療の重要な課題についてエキスパートによるコンセンサスが作成・発表されるが、ガイドラインやリコメンデーションは作成されない。3日間の会期の最後に、各課題に関して事前に用意された質問について投票が行われ、その結果に基づいてコンセンサスが作成される。専門領域にかかわらず、全項目についてエキスパート全員が投票し、その結果は数千人の聴衆の前で発表される。最近ではエビデンスに則ってガイドラインを作成するための科学的手法が進歩しているが、本会議のコンセンサスは必ずしもエビデンスに基づくものではなく、エキスパート自身が患者をどのように診断・治療したいかに基づいて決定される。 本講演では、術後補助療法を個別化する際のバイオマーカーに関する課題について、2013年のSt.Gallenコンセンサス会議における投票結果を紹介し、バイオマーカーの臨床的有用性を確立するための取り組みについて論じる。

●乳がんサブタイプ鑑別法に関する コンセンサス

 乳がんはLuminalA、LuminalB、HER2型、基底細胞型(トリプルネガティブ※1)などのサブタイプに分類される。Luminal型は内分泌療法に反応しやすく、HER2型、基底細胞型は化学療法に反応しやすい。そのため治療法の選択にあたってはサブタイプの鑑別が重要となり、簡便かつ安価な鑑別法が開発されれば臨床における有用性は高い。 2013年のSt.Gallenコンセンサス会議では、LuminalAとBの鑑別はエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)発現だけでは不可能だとする回答が91.8%を占めたが、それらに

術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから

加えてKi-67を評価すれば可能だとする回答は72.9%と多かった。しかし、鑑別は品質保証プログラムに参画する検査機関でのみ行うとする回答が88.9%と大半を占めた。また、HER2陽性・陰性を判定する上で、HER2過剰発現の不均一性、第17番染色体ポリソミーなどについて知っておく必要があるとの認識は低かった。サブタイプによって術後補助療法で化学療法を行うか否かが決まるとの回答率は88.9%と高かった。しかし、サブタイプを決定するのに多遺伝子発現解析を行うべきだと回答したのは22.0%と低く、臨床病理学的定義を用いれば十分だと53.1%が回答した。臨床病理学的評価の後に、多遺伝子発現解析を行うかどうかという質問には、エキスパートの間でも意見が分かれた。

●バイオマーカーの臨床的有用性を 検証するための取り組み

 がんの診療に用いるバイオマーカーは精度と再現性が高く、腫瘍の生物学的特性の鑑別が可能で、臨床転帰を予測しうるものでなくてはならない。この考えに基づき、我々はバイオマーカーを開発するためのプロセスとして「候補バイオマーカーの選択」、「バリデーション」、「臨床的有用性の評価」の3段階を規定した。3段階目においては、過去の臨床試験の組織サンプルが入手できれば、バイオマーカーと臨床転帰との関連性を調べることができる。組織サンプルが入手できなければ、プロスペクティブな臨床試験を実施して、バイオマーカーと臨床転帰との関連性を検討することになり、実際にTAILORx、MINDACT、RxPonderといった試験が進行中である。 腫瘍の適切なバイオマーカーが存在しないのは、治療効果のない薬剤を使用するのと同じである。しかし、適切なバイオマーカーを同定し、その臨床的有用性を確立するのは容易ではなく、手法にも改善すべき問題点は多く、新しい遺伝子シークエンシング技術の成果をどうやって臨床にトランスレートするかは大きな課題である。※1 ER、PgR、HER2とは関係せずに発症・増殖する乳がんのタイプ。ホルモン療法やHER2

療法の効果が期待できず、一般的に予後が悪い。

 原発性乳がんの治療がバイオロジーに基づく個別化治療へと向かうなか、細胞毒性抗がん剤の有用性を見直す時代にさしかかっている。細胞毒性抗がん剤のレジメンは進歩しており、その集大成としてEBCTCG(Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group)があり、最新は2012年に発表された。この中でno chemotherapyに比較してCMF※2やアンスラサイクリンを含むレジメンにしてもoverall survivalの相対リスクは0.84であった。さらにCMFとAC※3の4サイクルもほぼ同等の結果であった。またアンスラサイクリンにタキサンを加えた場合の相対リスクは0.8~0.9程度であった。これらは患者集団を選別することなく実施された研究の成果であり、いわば“One size fits all”である。エストロゲン受容体(ER)やHER2に代表される効果予測バイオマーカーが知られるようになった現在、バイオマーカーに基づく治療戦略はもはや当然となった。大規模臨床試験のレトロスペク

 今回のSt.Gallen会議のVotingで、『閉経前患者の一部はタモキシフェン(TAM)投与期間を10年に延長すべき』とした者が多数を占めたことは興味深い。TAM5年間終了後のアロマターゼ阻害薬(AI)の有用性を示したMA.17の成績からも、ホルモン療法の投与期間に対する考え方は、これまでの標準である5年間から10年間へと変わりつつある。こうしたなか、ATLAS試験の最終結果で、TAM10年間投与は5年間投与に比べ10年目以降の再発および乳がん死を有意に抑制することが示された(図)。これは、投与期間に対する考え方を方向づけるきわめて意義深い報告といえよう。また、ホルモン療法の投与期間延長を考慮するうえで、各種予測システムなども活用し、予後ならびに治療効果を的確に予測し、ホルモン療法で確実にベネフィットが得られる集団を明らかにする努力が求められる。 一方、抗HER2薬の開発が進み、化学療法未施行でも抗HER2薬を用いた術前療法、特に抗HER2薬の2剤併用で一定の病理学的完全寛解(pCR)が得られること、Luminal HER2タイプではホルモン療法の追加によりpCRの増加が見込めることが示唆されている。さらに、術後療法ではERの状況で成績に大きな差がみられないのに対し、術前療法ではER陰性で

より良好な成績が得られることもわかった。原発巣と転移巣における生物学的特性が異なる可能性を示唆する知見とも言え、今後のさらなる検討が望まれる。

講 演 治療プレナリーセッション1

●表.Subtypeにより推奨される全身治療

遺伝子から実臨床へ:トランスレーショナル研究の必要性Genome to Bedside: Lost in Translation演 者● Dr. Daniel F. Hayes (University of Michigan Comprehensive Cancer Center)

ティブ解析で、ER陽性/HER2陽性集団(LuminalA)ではACへのパクリタキセル(PTX)追加効果が小さいこと、またNSABP B20 trialではER陽性/HER2陰性集団でタモキシフェン(TAM)への化学療法追加効果などが示されており、これらは、現在推奨されているサブタイプ別の治療方針とも合致する。また、日本で開発されたテガフール・ウラシル(UFT)は、ER陽性/年齢50歳以上の患者集団でCMFと比べ若干良い無再発生存期間(RFS)がN・SAS・BC-01試験で示唆されている。 以上のように、細胞毒性抗がん剤の利用価値のある患者群が存在することを踏まえると、必要な細胞毒性抗がん剤を適切な患者に使用していくためにはバイオマーカーを賢く活用する努力が求められる。※2 CMF:シクロフォスファミド/メトトレキサート/5-FU※3 AC:アドリアマイシン/シクロフォスファミド

国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科 医長

清水 千佳子先生

化学療法における個別化治療という夢の実現にはまだ時間が必要だと思われ、バイオマーカーのvalidityがポイントになってくるだろう。「愚公、山を移す」という中国の故事のように、明確な目標、戦略をもって地道な努力を継続すれば達成できる夢かもしれない。

司 会

昭和大学医学部乳腺外科 教授昭和大学病院ブレストセンター長

中村 清吾先生

このセッションでは、St. Gallenのパネルを務められている3名の先生からお話しをいただく。Daniel F. Hayes先生はASCOの中心メンバーでもあり、米国とヨーロッパの架け橋的な存在で、日本人ドクターも数多く指導されてきた。

‘Luminal A-like’の治療 ‘Luminal B-liKe(HER2陰性)’の治療 ‘Luminal B-like(HER2陽性)’の治療 ‘HER2陽性(non luminal)’の治療 ‘Triple negative(ductal)’の治療内分泌療法が最も重要な治療であり、しばしば単独で用いられる。限定された症例では細胞毒性抗がん剤が使用される場合がある。過半数のパネリストが細胞毒性抗がん剤の相対的適応として以下の項目を承認した。Oncotype DxⓇ 再発スコア>25MammaPrintⓇ 高リスクグレード3腋窩リンパ節転移 4個以上年齢<35才を細胞毒性抗がん剤の適応とするかについては、パネリストの間で意見が二分された。

すべての症例に内分泌療法大部分の症例に細胞毒性抗がん剤を追加する

細胞毒性抗がん剤+抗HER2療法+内分泌療法細胞毒性抗がん剤を割愛してよいというデータは得られていない。

細胞毒性抗がん剤+抗HER2療法抗HER2療法を使用する閾値は浸潤型5mm以上または腋窩リンパ節転移陽性症例術後のtrastuzumab投与期間は1年間

細胞毒性抗がん剤最適な細胞毒性抗がん剤あるいはレジメンとして、bevacizumab、plat inum、capecitabine、gemcitabineが精力的に検討されているが、臨床的なエビデンスとして十分なる再現性、信頼性のあるものは未だ明確にされていない。現時点ではアンスラサイクリンを含むレジメンとタキサンを含むレジメンの順次投与が標準である。

閉経前 AI + LHRH agonistTAM+ LHRH agonist

閉経後 AITAM

AC→PTXACUFT

AITAM±LHRH agonist

AC→PTXAC

AITAM±LHRH agonist

trastuzumab

AC→PTXAC

trastuzumab

AC→PTX

PAM 50 MammaPrint othersOncotype Dx

原発性乳癌の治療における細胞毒性抗がん剤の有用性演 者 ● 渡辺 亨先生 (浜松オンコロジーセンター)

原発性乳癌の治療におけるホルモン療法と抗HER2療法の発展演 者 ● 戸井 雅和先生 (京都大学大学院医学研究科 外科学講座乳腺外科学)

●図.ER陽性患者(6,846名)の治療群別(A)再発率および(B)乳癌死亡率

25.1%

21.4%14.5%

13.1%

30

20

10

0

累積発現率(%)

5-9年:RR 0.90(0.79-1.02)≧10年:RR 0.75(0.62-0.90)全期間:log-rank p=0.002

0(治療)

5年(ATLASエントリー)

10年(治療終了)

15年(エントリー後10年)

15.0%

12.2%6.0%5.8%

5-9年:RR 0.97(0.79-1.18)≧10年:RR 0.71(0.58-0.88)全期間:log-rank p=0.01

継続群  対照群

0(治療)

5年(ATLASエントリー)

10年(治療終了)

15年(エントリー後10年)

O:観察値 E:予測値 V:分散

5-9年 10-14年 ≧15年継続群

対照群

発現率比、(O-E)/V

log-rank O-EおよびV

1.17%(SE 0.09)

1.21%(SE 0.09)

0.97(SE 0.10)

‒3.2/94.0

1.38%(SE 0.12)

2.01%(SE 0.15)

0.70(SE 0.10)

‒27.2/77.5

1.64%(SE 0.39)

2.29%(SE 0.47)

0.79(SE 0.27)

‒2.5/10.6

5-9年 10-14年 ≧15年2.83%(428/15,115)

3.16%(471/14,889)

0.90(SE 0.06)

‒24.8/224.7

1.96%(165/8,439)

2.66%(214/8,038)

0.74(SE 0.09)

‒29.1/94.7

2.54%(24/945)

3.03%(26/859)

0.85(SE 0.26)

‒2.1/12.5

BA

グラフ上のバーはSEを示す。再発率は%/年(イベント数/患者-経過年)とした。死亡率(全死亡率-無再発死亡率)は%/年(SE)とした。ATLAS=Adjuvant Tamoxifen: Longer Against Shorter

Davies C, et al. Lancet 2013;381:805-816.

浜松オンコロジーセンターのレジメン例

1 2

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抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

●各がん患者のがんの遺伝性の検討は必須 (一時拾い上げ~二次詳細評価)

●遺伝性が考えられる患者に対する情報提供も必須

●遺伝子検査が有用な判断材料となる場合は、遺伝子検査の実施は 推奨事項(未発症者の無駄な検診を減らすための除外診断としても必要)

●高リスク者における検診サーベイランスは推奨事項

●高リスク者におけるリスク低減乳房切除術は選択肢(選択肢提示は必須)

●高リスク者におけるリスク低減卵巣卵管摘出術は推奨事項

 当院の遺伝子診療部では、がんの遺伝に関する遺伝カウンセリングの中で、適切な情報提供と心理社会的な支援、特に変異陽性者には生涯にわたるケアとマネジメントを行っている。また、遺伝子(遺伝学的)検査として、甲状腺髄様がんのRET遺伝子検査、マイクロサテライト不安定性検査(Lynch症候群のスクリーニング検査)、ルーチンの遺伝学的検査の追加補助診断(メチル化の診断、一部の保因者診断など)を実施している。 当部は当初、消化器領域の相談が多くHBOC患者はほとんどいなかった。しかし、年々増加して昨年は新患の約5割、2013年(5月末まで)は約6割がHBOCの相談となっている。5月末までのHBOC来談者は計325名で、このうち遺伝子検査受検者(発端者のみ)は154名(受検率47%)、うちBRCA1/2※4変異陽性者は52名(変異検出率34%)である。変異陽性者の臨床的な特徴を検討すると、NCCN2013の一次拾い上げ基準※56項目のうち該当しているのは平均1.9項目であったが、ほとんどの症例は家族歴の項目を満たしていた。

がん研有明病院におけるHBOCへの取り組み演 者 ● 新井 正美先生 (がん研究所有明病院 遺伝子診療部)

 現在、当部では遺伝カウンセラーを2名雇用して診療科外来でのニーズに随時対応できるようにしたり、乳腺科、婦人科などの医師に遺伝カウンセリングの実際を経験してもらうなどの取り組みを行っている。 また、サーベイランスを実施していたにもかかわらず、腹膜播種を伴った進行卵巣がんを発症したBRCA1変異陽性例を経験したことを契機に、予防的切除実施体制を確立して、施設内審査委員会(IRB)の承認を得た。乳癌診療ガイドライン(2013)でも、BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異者に対するリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)は総死亡率をほぼ確実に低下させるとしており、当院では臨床試験として、RRSO(登録10例中8例は既に手術を実施)を実施している。今後多くの医療機関と連携してこうしたデータを集積、発信する必要があると考える。※4 BRCA1あるいはBRCA2が遺伝子変異している場合(変異陽性)には、乳がん、卵巣がん

の発症リスクが高くなる。遺伝性乳がんの場合には、この遺伝子変異を受け継いでいる。※5 ここで言う「一次拾い上げ基準」とは、「HBOC家系である可能性を考慮すべき状況にある

人々を拾い上げる」ための基準。

 欧米では、遺伝性腫瘍が疑われる場合、本人およびその血縁者への対応は標準的医療となっている。米国の場合、遺伝カウンセリングのみならず遺伝子検査、関連腫瘍の検診サーベイランス、リスク低減手術、薬によるがん予防なども、医学的な必要性が認められる場合はほとんどが健康保険適用となる(健康保険非加入者もメディケイドやメディケアでカバーされることが多い)。これほど遺伝性腫瘍の診療が推進されている背景には、がんの二次予防によりがん死を減らす目的がある。そのため、遺伝子検査は標準的な検査として実施され、高リスク者には検診サーベイランスやリスク低減卵巣卵管摘出術などの予防策が推奨されている(表1)。米国では標準的な診療へのアクセス権の保証、つまり居住地、経済状況、人種などに関係なくすべての人が一定水準の医療を受けられることも重視されるため、NCCN※2ガイドラインに沿った対応をすることが医療に必須の体制となっているのである。 HBOC診療の流れとしては、一般腫瘍医が問診票なども利用しながら疑われる患者を拾い上げ、必要に応じて大規模病院の遺伝性腫瘍専門外来に紹介する。そこで詳細な家族歴を聴取して遺伝子検査も利用しつつ遺伝性を検討し、遺伝的リスクに応じて検診を実施している。遠隔地や熱心な施設では、専門外来がなくても遺伝子検査などを実施していることもある。

米国におけるHBOC※1の取り組みについて-診療体制を中心に-演 者 ● 田村 智英子先生 (順天堂大学医学部附属順天堂医院 遺伝相談外来/胎児クリニック東京 医療情報・遺伝カウンセリング室)

 日本においても少しでも早く遺伝性腫瘍診療が充実していくことに期待したい。遺伝カウンセリングという言葉にとらわれすぎず、一般のがん診療の一環としてがんの遺伝性を考慮していくことから始める必要があるのではないだろうか。※1 HBOC:遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer )。遺伝的な

要因(BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の病的変異)によって、乳がんおよび卵巣がんを高いリスクで発症する遺伝性腫瘍の1つ。

※2 ガイドライン策定のために、米国の複数のがんセンターにより結成された組織。

●表1.米国における遺伝性乳がん(特にHBOC)の取り扱い ~これまでの遺伝診療とはまったく異なる考え方で~

 日本乳癌学会班研究「我が国における遺伝性乳癌・卵巣癌(BRCA陽性患者)及び未発症陽性者への対策に関する研究」では、HBOCの実態を明らかにする目的でHBOCデータベースを構築した。これまでの集計対象260例において、BRCA1/2変異陽性者は80例(30.7%)であった。今回の研究では、BRCA2変異(13.1%)よりBRCA1変異(17.3%)のほうがわずかに多く、L63Xが特徴的な変異部位(10家系)であることがわかった。BRCA1変異陽性者の63.9%、BRCA2変異陽性者の11.4%がトリプルネガティブ(TNB)であった。BRCA1/2変異陽性TNBの家系分類を行うことで、背景因子からBRCA変異のリスクを推定できることも示唆された。多数例のデータを集積しシミュレーションモデルをつくる必要があろう。

日本乳癌学会班研究報告および日本HBOCコンソーシアムの活動より演 者 ● 中村 清吾先生 (昭和大学医学部 乳腺外科)

 今後は、乳がん診療従事者・患者・家族への啓発発動、HBOCデータベースからの情報発信と国際協調が重要と考えられるが、2012年10月28日、日本HBOCコンソーシアムを発足した。各学会や関連団体と連携を取りながら、HBOC家系の登録システム整備、診療ガイドライン策定のための研究への取り組み、啓発活動などを行っている。登録システムは、乳癌学会のデータベースをもとに最近、完成した。一般向けにはかんたんチェック(問診票)、カウンセリング・検 査 施 設 一 覧などをホームページ(http://hboc.jp/index.html)に公開している。また、アジアあるいは世界のコンソーシアム(ABRCA、CIMBA)との連携も図っている。2014年1月19日に第2回日本HBOCコンソーシアム学術総会が東京で開催されるので、多くの先生方のご出席を願っている。

 HBOCの歴史は1994年のBRCA1発見に始まるが、日本でBRCA遺伝子検査が可能となり実質的にHBOC診療が開始されたのは、米国より約10年も遅れた2006年のことである。2008年、日本人でのBRCA変異の詳細な報告がなされるもあまり注目されず、関心が高まったのはBRCA変異に対するPARP阻害薬の有効性が報告された2010年頃からであろう。2012年、わが国でもHBOC

わが国におけるHBOCの取り組み演 者 ● 大住 省三先生 (国立病院機構 四国がんセンター 乳腺科)

コンソーシアムが設立され、現在HBOC診療の普及とそのレベルアップが図られている。 実際のHBOC診療の流れとして当院では、入院がん患者の家族歴を聴取し、家系図を作成してリスクを評価し、遺伝性乳がんの可能性が高い患者およびそのご家族には遺伝カウンセリングを受けるよう呼びかけている。遺伝性である可能性の高い家族性

遺伝性乳がんをめぐる諸問題司 会

聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長

山内 英子先生

私たちが日常出会う乳がんの約5~10%に遺伝性乳がんが存在すると言われており、こうした患者に対しては、未発症のご家族の苦悩にも配慮する必要がある。本セッションが遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)を巡る諸問題と今後の展望について考える機会となれば幸いである。

大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科 主任部長

玉木 康博先生

遺伝性乳がんについては、単なる医学的な問題だけではなく、行政への働きかけや社会的なコンセンサスを作り上げるなど、問題が山積しているが、最初の第一歩を踏み出さない限り、ゴールに到達することはできない。本セッションがその第一歩になればと祈念する。

講 演 検診診断プレナリーセッション5

●表2.四国がんセンターで用いている家族性乳がんの診断基準

第1度近親者に発端者を含め、3人以上の乳がん患者がいる場合

第1度近親者に発端者を含め、2人以上の乳がん患者がおり、いずれかの乳がん患者が次のいずれかを満たす場合

● 40歳未満の若年者乳がん● 同時性あるいは異時性両側乳がん● 同時性あるいは異時性多臓器重複がん

第1度近親者に乳がん患者と卵巣がん患者がそれぞれ1人以上いる

患者が1人っ子あるいは同胞がすべて男性であり、かつ母親が乳がんと診断されている

40歳未満でトリプルネガティブ乳がん患者

A

B

E

C

D

乳がんの基準は、野水※3基準を少し変更したものを使用している(表2)。2000年より家族歴の聴取を始めたが、認定遺伝カウンセラーが着任した2009年以降、家族性乳がんの基準を満たす症例の比率と新規遺伝カウンセリング実施件数が急増した。2013年3月現在、BRCA遺伝子検査実施数は発端者18例、血縁者12例、陽性者はそれぞれ7例および9例となっている。 認定遺伝カウンセラーは、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類学会が共同認定する資格で、2005年に制度がスタートした。受験資格を得るには養成課程を設置した大学院(現在10校)を修了する必要がある。ただ、遺伝カウンセラーは遺伝性腫瘍だけではなくすべての遺伝性疾患を扱う。そのため、当院では遺伝カウンセラーコースの学生および遺伝カウンセラーを対象に遺伝性腫瘍診療現場の即戦力を目指し実践集中講座を開いている。興味がある方はぜひご参加いただきたい。HBOC診療を日常診療として行うには、認定遺伝カウンセラーの存在が重要で、その活用が

最も近道と考えている。※3 野水基準:野水整先生らの提唱されている家族性乳がんの臨床的診断基準。

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抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

●各がん患者のがんの遺伝性の検討は必須 (一時拾い上げ~二次詳細評価)

●遺伝性が考えられる患者に対する情報提供も必須

●遺伝子検査が有用な判断材料となる場合は、遺伝子検査の実施は 推奨事項(未発症者の無駄な検診を減らすための除外診断としても必要)

●高リスク者における検診サーベイランスは推奨事項

●高リスク者におけるリスク低減乳房切除術は選択肢(選択肢提示は必須)

●高リスク者におけるリスク低減卵巣卵管摘出術は推奨事項

 当院の遺伝子診療部では、がんの遺伝に関する遺伝カウンセリングの中で、適切な情報提供と心理社会的な支援、特に変異陽性者には生涯にわたるケアとマネジメントを行っている。また、遺伝子(遺伝学的)検査として、甲状腺髄様がんのRET遺伝子検査、マイクロサテライト不安定性検査(Lynch症候群のスクリーニング検査)、ルーチンの遺伝学的検査の追加補助診断(メチル化の診断、一部の保因者診断など)を実施している。 当部は当初、消化器領域の相談が多くHBOC患者はほとんどいなかった。しかし、年々増加して昨年は新患の約5割、2013年(5月末まで)は約6割がHBOCの相談となっている。5月末までのHBOC来談者は計325名で、このうち遺伝子検査受検者(発端者のみ)は154名(受検率47%)、うちBRCA1/2※4変異陽性者は52名(変異検出率34%)である。変異陽性者の臨床的な特徴を検討すると、NCCN2013の一次拾い上げ基準※56項目のうち該当しているのは平均1.9項目であったが、ほとんどの症例は家族歴の項目を満たしていた。

がん研有明病院におけるHBOCへの取り組み演 者 ● 新井 正美先生 (がん研究所有明病院 遺伝子診療部)

 現在、当部では遺伝カウンセラーを2名雇用して診療科外来でのニーズに随時対応できるようにしたり、乳腺科、婦人科などの医師に遺伝カウンセリングの実際を経験してもらうなどの取り組みを行っている。 また、サーベイランスを実施していたにもかかわらず、腹膜播種を伴った進行卵巣がんを発症したBRCA1変異陽性例を経験したことを契機に、予防的切除実施体制を確立して、施設内審査委員会(IRB)の承認を得た。乳癌診療ガイドライン(2013)でも、BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異者に対するリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)は総死亡率をほぼ確実に低下させるとしており、当院では臨床試験として、RRSO(登録10例中8例は既に手術を実施)を実施している。今後多くの医療機関と連携してこうしたデータを集積、発信する必要があると考える。※4 BRCA1あるいはBRCA2が遺伝子変異している場合(変異陽性)には、乳がん、卵巣がん

の発症リスクが高くなる。遺伝性乳がんの場合には、この遺伝子変異を受け継いでいる。※5 ここで言う「一次拾い上げ基準」とは、「HBOC家系である可能性を考慮すべき状況にある

人々を拾い上げる」ための基準。

 欧米では、遺伝性腫瘍が疑われる場合、本人およびその血縁者への対応は標準的医療となっている。米国の場合、遺伝カウンセリングのみならず遺伝子検査、関連腫瘍の検診サーベイランス、リスク低減手術、薬によるがん予防なども、医学的な必要性が認められる場合はほとんどが健康保険適用となる(健康保険非加入者もメディケイドやメディケアでカバーされることが多い)。これほど遺伝性腫瘍の診療が推進されている背景には、がんの二次予防によりがん死を減らす目的がある。そのため、遺伝子検査は標準的な検査として実施され、高リスク者には検診サーベイランスやリスク低減卵巣卵管摘出術などの予防策が推奨されている(表1)。米国では標準的な診療へのアクセス権の保証、つまり居住地、経済状況、人種などに関係なくすべての人が一定水準の医療を受けられることも重視されるため、NCCN※2ガイドラインに沿った対応をすることが医療に必須の体制となっているのである。 HBOC診療の流れとしては、一般腫瘍医が問診票なども利用しながら疑われる患者を拾い上げ、必要に応じて大規模病院の遺伝性腫瘍専門外来に紹介する。そこで詳細な家族歴を聴取して遺伝子検査も利用しつつ遺伝性を検討し、遺伝的リスクに応じて検診を実施している。遠隔地や熱心な施設では、専門外来がなくても遺伝子検査などを実施していることもある。

米国におけるHBOC※1の取り組みについて-診療体制を中心に-演 者 ● 田村 智英子先生 (順天堂大学医学部附属順天堂医院 遺伝相談外来/胎児クリニック東京 医療情報・遺伝カウンセリング室)

 日本においても少しでも早く遺伝性腫瘍診療が充実していくことに期待したい。遺伝カウンセリングという言葉にとらわれすぎず、一般のがん診療の一環としてがんの遺伝性を考慮していくことから始める必要があるのではないだろうか。※1 HBOC:遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer )。遺伝的な

要因(BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の病的変異)によって、乳がんおよび卵巣がんを高いリスクで発症する遺伝性腫瘍の1つ。

※2 ガイドライン策定のために、米国の複数のがんセンターにより結成された組織。

●表1.米国における遺伝性乳がん(特にHBOC)の取り扱い ~これまでの遺伝診療とはまったく異なる考え方で~

 日本乳癌学会班研究「我が国における遺伝性乳癌・卵巣癌(BRCA陽性患者)及び未発症陽性者への対策に関する研究」では、HBOCの実態を明らかにする目的でHBOCデータベースを構築した。これまでの集計対象260例において、BRCA1/2変異陽性者は80例(30.7%)であった。今回の研究では、BRCA2変異(13.1%)よりBRCA1変異(17.3%)のほうがわずかに多く、L63Xが特徴的な変異部位(10家系)であることがわかった。BRCA1変異陽性者の63.9%、BRCA2変異陽性者の11.4%がトリプルネガティブ(TNB)であった。BRCA1/2変異陽性TNBの家系分類を行うことで、背景因子からBRCA変異のリスクを推定できることも示唆された。多数例のデータを集積しシミュレーションモデルをつくる必要があろう。

日本乳癌学会班研究報告および日本HBOCコンソーシアムの活動より演 者 ● 中村 清吾先生 (昭和大学医学部 乳腺外科)

 今後は、乳がん診療従事者・患者・家族への啓発発動、HBOCデータベースからの情報発信と国際協調が重要と考えられるが、2012年10月28日、日本HBOCコンソーシアムを発足した。各学会や関連団体と連携を取りながら、HBOC家系の登録システム整備、診療ガイドライン策定のための研究への取り組み、啓発活動などを行っている。登録システムは、乳癌学会のデータベースをもとに最近、完成した。一般向けにはかんたんチェック(問診票)、カウンセリング・検 査 施 設 一 覧などをホームページ(http://hboc.jp/index.html)に公開している。また、アジアあるいは世界のコンソーシアム(ABRCA、CIMBA)との連携も図っている。2014年1月19日に第2回日本HBOCコンソーシアム学術総会が東京で開催されるので、多くの先生方のご出席を願っている。

 HBOCの歴史は1994年のBRCA1発見に始まるが、日本でBRCA遺伝子検査が可能となり実質的にHBOC診療が開始されたのは、米国より約10年も遅れた2006年のことである。2008年、日本人でのBRCA変異の詳細な報告がなされるもあまり注目されず、関心が高まったのはBRCA変異に対するPARP阻害薬の有効性が報告された2010年頃からであろう。2012年、わが国でもHBOC

わが国におけるHBOCの取り組み演 者 ● 大住 省三先生 (国立病院機構 四国がんセンター 乳腺科)

コンソーシアムが設立され、現在HBOC診療の普及とそのレベルアップが図られている。 実際のHBOC診療の流れとして当院では、入院がん患者の家族歴を聴取し、家系図を作成してリスクを評価し、遺伝性乳がんの可能性が高い患者およびそのご家族には遺伝カウンセリングを受けるよう呼びかけている。遺伝性である可能性の高い家族性

遺伝性乳がんをめぐる諸問題司 会

聖路加国際病院 乳腺外科部長・ブレストセンター長

山内 英子先生

私たちが日常出会う乳がんの約5~10%に遺伝性乳がんが存在すると言われており、こうした患者に対しては、未発症のご家族の苦悩にも配慮する必要がある。本セッションが遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)を巡る諸問題と今後の展望について考える機会となれば幸いである。

大阪府立成人病センター乳腺・内分泌外科 主任部長

玉木 康博先生

遺伝性乳がんについては、単なる医学的な問題だけではなく、行政への働きかけや社会的なコンセンサスを作り上げるなど、問題が山積しているが、最初の第一歩を踏み出さない限り、ゴールに到達することはできない。本セッションがその第一歩になればと祈念する。

講 演 検診診断プレナリーセッション5

●表2.四国がんセンターで用いている家族性乳がんの診断基準

第1度近親者に発端者を含め、3人以上の乳がん患者がいる場合

第1度近親者に発端者を含め、2人以上の乳がん患者がおり、いずれかの乳がん患者が次のいずれかを満たす場合

● 40歳未満の若年者乳がん● 同時性あるいは異時性両側乳がん● 同時性あるいは異時性多臓器重複がん

第1度近親者に乳がん患者と卵巣がん患者がそれぞれ1人以上いる

患者が1人っ子あるいは同胞がすべて男性であり、かつ母親が乳がんと診断されている

40歳未満でトリプルネガティブ乳がん患者

A

B

E

C

D

乳がんの基準は、野水基準※3を少し変更したものを使用している(表2)。2000年より家族歴の聴取を始めたが、認定遺伝カウンセラーが着任した2009年以降、家族性乳がんの基準を満たす症例の比率と新規遺伝カウンセリング実施件数が急増した。2013年3月現在、BRCA遺伝子検査実施数は発端者18例、血縁者12例、陽性者はそれぞれ7例および9例となっている。 認定遺伝カウンセラーは、日本遺伝カウンセリング学会と日本人類学会が共同認定する資格で、2005年に制度がスタートした。受験資格を得るには養成課程を設置した大学院(現在10校)を修了する必要がある。ただ、遺伝カウンセラーは遺伝性腫瘍だけではなくすべての遺伝性疾患を扱う。そのため、当院では遺伝カウンセラーコースの学生および遺伝カウンセラーを対象に遺伝性腫瘍診療現場の即戦力を目指し実践集中講座を開いている。興味がある方はぜひご参加いただきたい。HBOC診療を日常診療として行うには、認定遺伝カウンセラーの存在が重要で、その活用が

最も近道と考えている。※3 野水基準:野水整先生らの提唱されている家族性乳がんの臨床的診断基準。

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ポスター討議乳癌内分泌療法に伴う副作用に対する、漢方による治療経験

●表.対象患者147例の内訳

●図.アドヒアランスに影響する因子

TAM:タモキシフェン、LHRHa:LHRHアゴニスト、AI:アロマターゼ阻害薬

閉経前(74例)

治療法漢方使用 17例(42%)

漢方使用 16例(49%)

41例

33例

TAM

TAM+LHRHa

閉経後(73例)

治療法漢方使用 6例(40%)

漢方使用 14例(24%)

15例

58例

TAM

AI

 ホルモン受容体陽性乳がん患者における術後ホルモン療法では、薬剤服用期間が長期にわたるため、服薬アドヒアランスの低下による治療効果の減弱が懸念される。そこで、アドヒアランスを確認する手法を考案し、2012年11月~2013年1月に東京西徳洲会病院で乳がん術後ホルモン療法としてホルモン薬を処方された患者294例を対象に、本法の妥当性の検証を行うとともに、アドヒアランスに影響する因子を解析した。 アドヒアランスの確認手法は次の通りである:受診間隔に対するホルモン薬の処方日数の差を服用忘れ日数とし、対象患者のカルテ調査から、28日間あたりの平均服用忘れ日数が0~3日の症例をA群、4日以上をB群とした。次に、カルテ調査では把握できない実際の残薬状況を患者へのアンケート調査で確認し、カルテ調査の結果と比較した。 その結果、カルテ調査から算出したアドヒアランス結果とアンケートから得られた残薬状況との間に顕著な差が認められなかったことから、今回の確認手法の妥当性が示唆された。 4日以上の服薬忘れは50才未満の患者が半数を占めていた。また投与期間の長い患者に服用忘れが多い傾向がみられた

(p<0.05、図)。さらに低リスク乳がんに関連する因子(乳房温存手術など)の関与も示唆された。岩井先生は「このような背景を有する患者に対しては、服薬アドヒアランス向上を企図した効果的な薬剤師の介入が必要である」と考察した。

■40才未満 ■40ー49才 ■50ー59才 ■60ー69才 ■70才以上

0 500 1000 1500日

981±343

753±469

(mean±S.D.)

●年 齢

●ホルモン薬の投与期間

0% 20% 40% 60% 80% 100%

A群(n=272)

B群(n=22)

A群(n=272)

B群(n=22)

68(25%)

11(50%) 4(18%) 4(18%)3(14%)

69(25%) 66(24%) 56(21%)

13(5%)

年齢(mean±S.D.)A群58±12

B群54±12

p値(t検定)n.s.

p<0.05(t検定)

「病理診断」改訂のポイント 今回、病理診断が検診・診断から独立し、細胞診・針生検に関する総論が追加された。新たなCQはなく、2011年のCQ30「非浸潤性乳管癌の亜分類と乳房温存療法」が削除され、その内容は2013年のCQ12に追加された。CQ12では、局所再発予測のために乳房温存手術の断端検索がグレードAとされた。CQ11での「針生検によるホルモン受容体およびHER2の検索」の推奨グレードは前回のBから、術前薬物療法患者ではグレードA、手術先行患者ではグレードC1に変更された。CQ14では、「センチネルリンパ節の病理学的検索法」として、HE染色がグレードAで、OSNA法はその代替法となり得るとされた。免疫組織化学的方法や分子生物学的方法によってのみ検出される微細な転移巣の臨床的意義は否定的で、日常臨床での適応は小葉癌などに限定すべきとされ、グレードC2となった。

Quality Indicatorで 医療の質の評価と向上を目指す 2011年に乳癌診療ガイドライン委員会の下に医療の質指標(Quality Indicator:QI)小委員会が設置され、グレードA推奨に関連したQI15項目について、委員所属6施設(大学附属病院3施設、がんセンター2施設、乳腺専門クリニック1施設)における2011年の治療症例データの解析が行われた。全項目について各施設で集計可能で、概ね80%以上であった。2012年からはNational Clinical Database(NCD)への登録が義務化されるため、施設独自の集計とNCDからの抽出集計を比較して後者の是非が検討される予定である。その後は、希望施設を募ってQI評価の実施とフィードバックが予定されている。※1 Ki-67は乳がんの増殖マーカーで、高値であるほどがん細胞の分裂が活発であることを示す。

2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会

「薬物療法」改訂のポイント 相原先生は「薬物療法」について、今回改訂した箇所で3つのClinical Question (CQ)に焦点を当てて議論の過程と変更のポイントについて解説された。

CQ4「閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法として、タモキシフェンおよびLH-RHアゴニストは勧められるか?」

 関連エビデンスを見直した結果、「タモキシフェンとLH-RHアゴニストの併用投与」が2011年版で推奨グレードB(表)からグレードC1に変更された。これは、ZIPP trialにおいてタモキシフェン(TAM)単独療法に対する併用療法の優越性が示されず(HR0.86[95%CI 0.66-1.13])、メタアナリシスでもその優越性が証明されなかったが(再発HR0.85、p=0.20;再発後死亡HR0.84、p=0.33)、化学療法を行った40歳以下の患者群に限ると再発や死亡リスクを有意に改善する可能性が示唆されたためである。また、「治療前は閉経前であったが、TAMの5年投与を完了し、閉経が確認された場合はアロマターゼ阻害薬(AI)の追加5年間、閉経が確認されない場合はTAMの追加5年間が勧められる」(グレードC1)が新しく追記された。CQタイトルとの整合性が問題となったが、治療開始が閉経前であり、治療中に閉経した症例に対するAI投与は関心が高い内容であるため記載に至った。

新記:CQ16「ER陽性HER2陰性Ki-67低値の乳癌に対して、周術期の化学療法を勧められるか?」

 「ER陽性PgR陽性HER2陰性Ki-67※1低値の乳癌に対しても、再発リスクが高い患者には化学療法が勧められる」(グレードB)が追記された。2011年のSt.Gallenコンセンサス会議で、ER陽性HER2陰性Ki-67低値のLuminalA型乳がんは予後良好のためホルモン単独療法でよいとされた。しかし化学療法を省略できる強いエビデンスはないため、委員会では、特に再発リスクが高い場合の化学療法は勧めるべきとの考えで全会一致した。さらに、過剰に化学療法を控える風潮がある中、有用性もあることを示す必要があるとも考えられ、投票の結果、ほぼ全会一致でグレードはBと決定された。

CQ19-a「HER2陰性転移・再発乳癌に対して化学療法は勧められるか?一次化学療法」

 委員会小班では当初、ABC1(Advanced Breast Cancer First Consensus Conference)コンセンサスガイドラインの審議結果を参考に、カペシタビン投与の推奨が提案されたが、エビデンスが少なく、全体会議でも標準治療とTS-1の比較試験であるSELECT-BC試験の結果を待つべきとの意見が挙がり、最終的には推奨文ではなく、オプションとして本文に記載する方針となった。

企 画 セ ミ ナ ー

薬物療法小委員会副委員長 相原 智彦先生 (相原病院 乳腺科)病理小委員会委員長 堀井 理絵先生 (がん研究会有明病院 病理部)QI小委員会委員長 穂積 康夫先生 (自治医科大学 乳腺科)

薬物療法

病理診断

医療の質

■ 演 者 ■

●表.乳癌診療ガイドラインの推奨グレード

 閉経前の乳がん患者では、術後内分泌療法により急激に体内エストロゲン量を下げるため、閉経後患者より激しい更年期症状が副作用として現れることが多い。ホルモン補充療法は禁忌であるため、漢方治療の果たす役割は大きく、その治療効果について検討した。 2010年4月~2012年12月に施行された乳がん手術施行854例中、ホルモン感受性例で内分泌療法が施行された554例のうち副作用出現および漢方治療必要性の有無を確認し、外来で追跡できた147例を対象とした(表)。 副作用は、閉経前患者の85%にみられ、ホットフラッシュ・発汗、頭痛・めまいが主で症状は多彩であった。閉経後患者では45%に症状がみられたが、軽症例が多く、症状も単一であった。 漢方による治療の結果、閉経前乳がんに対し79%(26例)に改善がみられた。そのうちTAMのみの治療例では有効率が88%であったのに対し、TAM+LHRHa例では69%と症状の強い症例が多く、治療困難な例が多くみられた。閉経後乳がんに対しては90%(18例)に症状の改善がみられた。なお治療には、

閉経前患者の場合、加味逍遥散、桂枝茯芩丸、当帰芍薬散を

主体として、個々に応じた選択が必要であった。閉経後患者の場合は、AI副作用による関節痛には薏苡仁湯や防巳黄耆湯が、倦怠感・うつ症状には補中益気湯が効果的であった。 住吉先生は、「乳がん内分泌療法による副作用は客観性に乏しいことが多く、積極的に細かな問診を行わなければその症状を見逃してしまいかねない。個々の訴えを重視し、証に合わせた漢方治療を選択することは、乳がん内分泌療法による副作用軽減に有効であると考えられる」と締めくくった。

住吉 一浩先生 大阪ブレストクリニック住吉 一浩1)、 廣瀬 富貴子1)、 石井 由紀1)、 大江 麻子1)、 井口 千景1)、 山本 仁1)、 後山 尚久2)、 芝 英一1)1)大阪ブレストクリニック、 2)大阪医科大学 健康クリニック

演 者

ポスター討議

岩井 大先生 東京西徳洲会病院 薬剤部岩井 大1)、 竹田 奈保子2,3)、 水野 嘉朗3)、 井上 裕子2)、 瀬戸 裕4)、 佐藤 一彦3)1)東京西徳洲会病院 薬剤部、 2)井上レディースクリニック、 3)東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター、 4)瀬戸病院

演 者

術後ホルモン療法における服薬アドヒアランス向上のための客観的評価法とその因子解析

日本乳癌学会編. 科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン①治療編 2011年版, 金原出版.

乳癌診療ガイドラインの推奨グレード

十分な科学的根拠があり、積極的に実践するよう推奨する

科学的根拠があり、実践するよう推奨する

十分な科学的根拠はないが、細心の注意のもと行うことを考慮してもよい

科学的根拠は十分とはいえず、実践することは基本的に勧められない

患者に不利益が及ぶ可能性があるという科学的根拠があるので、実施しないよう推奨する

A

B

D

C1

C2

A:是非やりましょう/B:原則やりましょうC1:ニュートラル 現場の判断で行ってもよい/C2:原則やめましょうD:やらない

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抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

ポスター討議乳癌内分泌療法に伴う副作用に対する、漢方による治療経験

●表.対象患者147例の内訳

●図.アドヒアランスに影響する因子

TAM:タモキシフェン、LHRHa:LHRHアゴニスト、AI:アロマターゼ阻害薬

閉経前(74例)

治療法漢方使用 17例(42%)

漢方使用 16例(49%)

41例

33例

TAM

TAM+LHRHa

閉経後(73例)

治療法漢方使用 6例(40%)

漢方使用 14例(24%)

15例

58例

TAM

AI

 ホルモン受容体陽性乳がん患者における術後ホルモン療法では、薬剤服用期間が長期にわたるため、服薬アドヒアランスの低下による治療効果の減弱が懸念される。そこで、アドヒアランスを確認する手法を考案し、2012年11月~2013年1月に東京西徳洲会病院で乳がん術後ホルモン療法としてホルモン薬を処方された患者294例を対象に、本法の妥当性の検証を行うとともに、アドヒアランスに影響する因子を解析した。 アドヒアランスの確認手法は次の通りである:受診間隔に対するホルモン薬の処方日数の差を服用忘れ日数とし、対象患者のカルテ調査から、28日間あたりの平均服用忘れ日数が0~3日の症例をA群、4日以上をB群とした。次に、カルテ調査では把握できない実際の残薬状況を患者へのアンケート調査で確認し、カルテ調査の結果と比較した。 その結果、カルテ調査から算出したアドヒアランス結果とアンケートから得られた残薬状況との間に顕著な差が認められなかったことから、今回の確認手法の妥当性が示唆された。 4日以上の服薬忘れは50才未満の患者が半数を占めていた。また投与期間の長い患者に服用忘れが多い傾向がみられた

(p<0.05、図)。さらに低リスク乳がんに関連する因子(乳房温存手術など)の関与も示唆された。岩井先生は「このような背景を有する患者に対しては、服薬アドヒアランス向上を企図した効果的な薬剤師の介入が必要である」と考察した。

■40才未満 ■40ー49才 ■50ー59才 ■60ー69才 ■70才以上

0 500 1000 1500日

981±343

753±469

(mean±S.D.)

●年 齢

●ホルモン薬の投与期間

0% 20% 40% 60% 80% 100%

A群(n=272)

B群(n=22)

A群(n=272)

B群(n=22)

68(25%)

11(50%) 4(18%) 4(18%)3(14%)

69(25%) 66(24%) 56(21%)

13(5%)

年齢(mean±S.D.)A群58±12

B群54±12

p値(t検定)n.s.

p<0.05(t検定)

「病理診断」改訂のポイント 今回、病理診断が検診・診断から独立し、細胞診・針生検に関する総論が追加された。新たなCQはなく、2011年のCQ30「非浸潤性乳管癌の亜分類と乳房温存療法」が削除され、その内容は2013年のCQ12に追加された。CQ12では、局所再発予測のために乳房温存手術の断端検索がグレードAとされた。CQ11での「針生検によるホルモン受容体およびHER2の検索」の推奨グレードは前回のBから、術前薬物療法患者ではグレードA、手術先行患者ではグレードC1に変更された。CQ14では、「センチネルリンパ節の病理学的検索法」として、HE染色がグレードAで、OSNA法はその代替法となり得るとされた。免疫組織化学的方法や分子生物学的方法によってのみ検出される微細な転移巣の臨床的意義は否定的で、日常臨床での適応は小葉癌などに限定すべきとされ、グレードC2となった。

Quality Indicatorで 医療の質の評価と向上を目指す 2011年に乳癌診療ガイドライン委員会の下に医療の質指標(Quality Indicator:QI)小委員会が設置され、グレードA推奨に関連したQI15項目について、委員所属6施設(大学附属病院3施設、がんセンター2施設、乳腺専門クリニック1施設)における2011年の治療症例データの解析が行われた。全項目について各施設で集計可能で、概ね80%以上であった。2012年からはNational Clinical Database(NCD)への登録が義務化されるため、施設独自の集計とNCDからの抽出集計を比較して後者の是非が検討される予定である。その後は、希望施設を募ってQI評価の実施とフィードバックが予定されている。※1 Ki-67は乳がんの増殖マーカーで、高値であるほどがん細胞の分裂が活発であることを示す。

2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会

「薬物療法」改訂のポイント 相原先生は「薬物療法」について、今回改訂した箇所で3つのClinical Question (CQ)に焦点を当てて議論の過程と変更のポイントについて解説された。

CQ4「閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する術後内分泌療法として、タモキシフェンおよびLH-RHアゴニストは勧められるか?」

 関連エビデンスを見直した結果、「タモキシフェンとLH-RHアゴニストの併用投与」が2011年版で推奨グレードB(表)からグレードC1に変更された。これは、ZIPP trialにおいてタモキシフェン(TAM)単独療法に対する併用療法の優越性が示されず(HR0.86[95%CI 0.66-1.13])、メタアナリシスでもその優越性が証明されなかったが(再発HR0.85、p=0.20;再発後死亡HR0.84、p=0.33)、化学療法を行った40歳以下の患者群に限ると再発や死亡リスクを有意に改善する可能性が示唆されたためである。また、「治療前は閉経前であったが、TAMの5年投与を完了し、閉経が確認された場合はアロマターゼ阻害薬(AI)の追加5年間、閉経が確認されない場合はTAMの追加5年間が勧められる」(グレードC1)が新しく追記された。CQタイトルとの整合性が問題となったが、治療開始が閉経前であり、治療中に閉経した症例に対するAI投与は関心が高い内容であるため記載に至った。

新記:CQ16「ER陽性HER2陰性Ki-67低値の乳癌に対して、周術期の化学療法を勧められるか?」

 「ER陽性PgR陽性HER2陰性Ki-67※1低値の乳癌に対しても、再発リスクが高い患者には化学療法が勧められる」(グレードB)が追記された。2011年のSt.Gallenコンセンサス会議で、ER陽性HER2陰性Ki-67低値のLuminalA型乳がんは予後良好のためホルモン単独療法でよいとされた。しかし化学療法を省略できる強いエビデンスはないため、委員会では、特に再発リスクが高い場合の化学療法は勧めるべきとの考えで全会一致した。さらに、過剰に化学療法を控える風潮がある中、有用性もあることを示す必要があるとも考えられ、投票の結果、ほぼ全会一致でグレードはBと決定された。

CQ19-a「HER2陰性転移・再発乳癌に対して化学療法は勧められるか?一次化学療法」

 委員会小班では当初、ABC1(Advanced Breast Cancer First Consensus Conference)コンセンサスガイドラインの審議結果を参考に、カペシタビン投与の推奨が提案されたが、エビデンスが少なく、全体会議でも標準治療とTS-1の比較試験であるSELECT-BC試験の結果を待つべきとの意見が挙がり、最終的には推奨文ではなく、オプションとして本文に記載する方針となった。

企 画 セ ミ ナ ー

薬物療法小委員会副委員長 相原 智彦先生 (相原病院 乳腺科)病理小委員会委員長 堀井 理絵先生 (がん研究会有明病院 病理部)QI小委員会委員長 穂積 康夫先生 (自治医科大学 乳腺科)

薬物療法

病理診断

医療の質

■ 演 者 ■

●表.乳癌診療ガイドラインの推奨グレード

 閉経前の乳がん患者では、術後内分泌療法により急激に体内エストロゲン量を下げるため、閉経後患者より激しい更年期症状が副作用として現れることが多い。ホルモン補充療法は禁忌であるため、漢方治療の果たす役割は大きく、その治療効果について検討した。 2010年4月~2012年12月に施行された乳がん手術施行854例中、ホルモン感受性例で内分泌療法が施行された554例のうち副作用出現および漢方治療必要性の有無を確認し、外来で追跡できた147例を対象とした(表)。 副作用は、閉経前患者の85%にみられ、ホットフラッシュ・発汗、頭痛・めまいが主で症状は多彩であった。閉経後患者では45%に症状がみられたが、軽症例が多く、症状も単一であった。 漢方による治療の結果、閉経前乳がんに対し79%(26例)に改善がみられた。そのうちTAMのみの治療例では有効率が88%であったのに対し、TAM+LHRHa例では69%と症状の強い症例が多く、治療困難な例が多くみられた。閉経後乳がんに対しては90%(18例)に症状の改善がみられた。なお治療には、

閉経前患者の場合、加味逍遥散、桂枝茯芩丸、当帰芍薬散を

主体として、個々に応じた選択が必要であった。閉経後患者の場合は、AI副作用による関節痛には薏苡仁湯や防巳黄耆湯が、倦怠感・うつ症状には補中益気湯が効果的であった。 住吉先生は、「乳がん内分泌療法による副作用は客観性に乏しいことが多く、積極的に細かな問診を行わなければその症状を見逃してしまいかねない。個々の訴えを重視し、証に合わせた漢方治療を選択することは、乳がん内分泌療法による副作用軽減に有効であると考えられる」と締めくくった。

住吉 一浩先生 大阪ブレストクリニック住吉 一浩1)、 廣瀬 富貴子1)、 石井 由紀1)、 大江 麻子1)、 井口 千景1)、 山本 仁1)、 後山 尚久2)、 芝 英一1)1)大阪ブレストクリニック、 2)大阪医科大学 健康クリニック

演 者

ポスター討議

岩井 大先生 東京西徳洲会病院 薬剤部岩井 大1)、 竹田 奈保子2,3)、 水野 嘉朗3)、 井上 裕子2)、 瀬戸 裕4)、 佐藤 一彦3)1)東京西徳洲会病院 薬剤部、 2)井上レディースクリニック、 3)東京西徳洲会病院 乳腺腫瘍センター、 4)瀬戸病院

演 者

術後ホルモン療法における服薬アドヒアランス向上のための客観的評価法とその因子解析

日本乳癌学会編. 科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン①治療編 2011年版, 金原出版.

乳癌診療ガイドラインの推奨グレード

十分な科学的根拠があり、積極的に実践するよう推奨する

科学的根拠があり、実践するよう推奨する

十分な科学的根拠はないが、細心の注意のもと行うことを考慮してもよい

科学的根拠は十分とはいえず、実践することは基本的に勧められない

患者に不利益が及ぶ可能性があるという科学的根拠があるので、実施しないよう推奨する

A

B

D

C1

C2

A:是非やりましょう/B:原則やりましょうC1:ニュートラル 現場の判断で行ってもよい/C2:原則やめましょうD:やらない

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タスオミン.jpでは、乳がん治療に携わる医師や薬剤師の先生方に、タスオミン®の製品情報の他、がん治療を支援する薬局の取り組みや乳癌診療ガイドラインの解説、

WEBカンファレンスの動画配信など様々なコンテンツを提供しています。

タスオミン .jp

コンテンツのご紹介■製品基本情報タスオミン®の製品特徴や基本情報、副作用などをご確認いただけます。また、添付文書やインタビューフォーム、比較表をダウンロードすることができます。

■WEBカンファレンス薬剤師の先生方向けに開催しましたWEBカンファレンスの講演動画をご視聴いただけます。

■説明動画タスオミン®の製品概要、薬物動態、作用機序、特別調査の動画をご視聴いただけます。

■TeAMがん治療を支援する薬局の取り組みや乳癌診療ガイドラインの解説、乳がんのホルモン療法で薬剤師が押さえておくべき文献をご確認いただけます。

タスオミン.jpのトップページ

WEBカンファレンスページ※

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こちらの薬剤師の疑問に対するご回答は、

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ご講演内容

1.乳癌の標準治療 2013 (ご講演時間:23分08秒)

2.乳がんの治療に関する薬剤師の疑問にお答えします (ご講演時間:10分54秒)・ ホットフラッシュに対する対処方法は?・ タモキシフェンの服用中は無月経になるか?・ タモキシフェンの服用中、妊娠することは可能か?妊娠の可能時期は?・ タモキシフェンの服用中、血栓のリスクによる手術前後の休薬は必要か?・ タモキシフェンの服用による子宮体癌のリスクをどのように考えるか?・ 男性患者へ投与することはあるか?・ 大豆食品やイソフラボンを摂取することは乳がんの予防につながるか?・ アルコール飲料の摂取は乳がん再発の危険因子になるか?3.視聴者からの質問ご回答 (ご講演時間:11分27秒)

抗がん剤のエキスパートをめざす薬剤師のための情報誌│チーム│

6NOVEMBER

2013

Vol.

CONTENTS

佐伯 俊昭 先生 埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科 教授

【講 演】治療プレナリーセッション1術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから【講 演】検診診断プレナリーセッション5遺伝性乳がんをめぐる諸問題企画セミナー2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会【ポスター討議】乳癌内分泌療法に伴う副作用に対する、漢方による治療経験【ポスター討議】術後ホルモン療法における服薬アドヒアランス向上のための客観的評価法とその因子解析

第21回日本乳癌学会学術総会特集号

資材記号 TAS・13・0004(201311)TAS-66.0(EL/DI)

第21回日本乳癌学会学術総会|会期|2013年6月27日(木)~29日(土)|会場|静岡県浜松市 アクトシティ浜松ほか

TeAM「第21回日本乳癌学会学術総会特集号」の発行にあたって

 2013年度の日本乳癌学会学術総会は、総会直前に米国の映画女優が遺伝性乳がんを理由に予防的乳房切除を行ったというニュースもあり、一般社会にも広く認知されたことで関係者の関心が高い中、5,600名を超える方々が参加され、盛況のうちに幕を閉じました。 また、抄録集の電子化や、学会で発表された最新情報を乳がん患者さんと共有するための「患者セミナー」の開催、全国44団体が制作したピンクリボンバッジの人気投票企画「P-1グランプリ」の開催など、様々な新しい取り組みが行われた学会でもありました。 今回の「TeAM」では、薬剤師の皆様の日常業務にご活用いただける情報を意識して、いくつかのセッション・演題をピックアップさせていただきました。 「術後薬物療法:St.Gallenコンセンサスから」のセッションでは、St.Gallenコンセンサス会議にてパネルを務められている3名のエキスパートから術後薬物療法に関する講演がありました。乳がん治療の最新情報としてご参考いただければと思います。 「遺伝性乳がんをめぐる諸問題」のセッションでは、今話題の内容を様々な切り口で解説されており、会場からも熱心な発言が数多く寄せられていました。 「2013年版乳癌診療ガイドラインに関する公聴会」のセミナーでは、ガイドライン改訂のポイントについてまとめられておりますので、一読いただければと思います。 ポスター討議では、薬の飲み忘れの原因探索や予防策の検討、薬物療法に伴う副作用への漢方による治療経験など、患者さんの長期にわたる薬物療法をサポートする際に役立つと思われる2演題を紹介させていただきました。 いずれも、皆様の日常業務にご活用いただける情報となることを確信しております。