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Beta-LactamInfusioninSevereSepsis(BLISS):aprospective,two-centre,open-labelledrandomised controlledtrialofcontinuousversusintermittentbeta-lactaminfusionincriticallyillpatientswithseveresepsis
Abdul-Haziz etal.IntensiveCareMed(2016)42:1535–1545
慈恵医大ICU勉強会2016.12.20.薬剤部 山本律子
抗菌薬の PK/PD
抗菌作用の種類と指標①濃度依存性:Cmax/MIC②時間依存性: TimeaboveMIC
(T>MIC:MICを超える血中薬物濃度を維持している時間)③①②の両方:AUC0-24/MIC
PK/PD:薬物動態学/薬力学
MIC:最小発育阻止濃度Cmax:ピーク濃度AUC:曲線下面積
AnnIntensiveCare.2012;2:37
β-ラクタム系抗菌薬• 細胞壁合成阻害作用
• 時間依存性の殺菌効果/効果持続性なし
• 長時間の薬剤暴露が重要⇒ T>MIC• MICの4-5倍の濃度で抗菌力は最大となる• T>MICは治療期間の 40-50%以上必要であるといわれている
• 高いピーク血中濃度により、神経学的副作用 (痙攣発作)を引き起こす可能性がある
⇒間欠的投与(intermittentbolus:IB)より持続投与(continuousinfusion:CI)の方が適しているのではないか
ContinuousInfusionofBeta-LactamAntibioticsinSevereSepsis:AMulticenterDouble-Blind,RandomizedControlledTrial(BLINGⅠstudy) Clin InfectDis.2013;56:236–244
デザイン多施設(オーストラリア、香港のICU5施設)Prospective、Double-blind、double-dummyの CIvsIBRCT・double-dummy:CI群→抗菌薬持続投与とプラセボ間欠的投与
IB群→プラセボ持続投与と抗菌薬の間欠的投与
対象重症敗血症で、PIPC/TAZ、ticarcillin-clavulanate、MEPMのいずれかを開始する18歳以上の患者60名を30名ずつCI群とIB群に振り分けた(透析患者は除外)。
Primaryoutcome 抗菌薬投与後3、4日目でのMICを超えた血中薬物濃度Secondaryoutcomes 抗菌薬中止後7-14日目での臨床的効果
Clin InfectDis.2013;56:236–244
・抗菌薬投与後3、4日目でのMICを超えた血中薬物濃度
・抗菌薬中止後7-14日目での臨床的効果
→CI群で有意に高かった
Introduction
• 近年3つのRCTにおいて、重症敗血症患者のみを対象としたβ-ラクタム系抗菌薬のCIの有用性が示されている。
Clin InfectDis. 2013;56:236–244Crit Care.2012;16:R113
JAntimicrob Chemother.2007;59:285–291
• しかし、研究対象は西洋でのものであり、多剤耐性菌や重症度の高い患者で苦しんでいる地域における CIの有用性は研究されていない。
Methods
• 重症敗血症患者を対象とした、β-ラクタム系抗菌薬のCIvsIB比較試験
• Prospective、open-labeledRCT
• マレーシアのICU 2施設:Tengku Ampuan Afzan Hospital(HTAA),KuantaUniversityMalayaMedicalCentre(UMMC),KualaLumpur
研究デザイン
対象患者と除外基準
対象患者:① 18歳以上② 48時間以内に重症敗血症が生じた③ 24時間以内にセフェピム(CFPM)、メロペネム(MEPM)、ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)のいずれかを使用すると思われる
④ 48時間以上ICUに滞在すると予想される
除外基準①透析治療(renalreplacementtherapy:RRT)を行った②肝機能障害があった(T-bil>100μmol/mL)③緩和的治療を受けていた④不適切なCVカテーテル挿入⑤亡くなると予想された
・コンピュータープログラムによりCI群とIB群にランダムに割り付けられた。
投与レジメン
CFPMIntervention arm (CI) • Day 1 :2gを30分かけて負荷投与、
続けて2gを8時間毎に投与(8時間かけて)• Day 2以降 : 2gを8時間毎に投与(8時間かけて)
Control arm (IB) • 2gを8時間毎に投与(30分かけて)
MEPMIntervention arm (CI) • Day 1 : 1gを30分かけて負荷投与、
続けて1gを8時間毎に投与(8時間かけて)• Day 2 以降 : 1gを8時間毎に投与(8時間かけて)
Control arm (IB) • 1gを8時間毎に投与(30分かけて)
PIPC/TAZInterventionarm(CI) • Day 1 : 4g/0.5gを30分かけて負荷投与、
続けて4g/0.5gを6時間毎に投与(6時間かけて)• Day 2 以降 : 4g/0.5gを6時間毎に投与(6時間かけて)
Controlarm(IB) • 4g/0.5gを6時間毎に投与(30分かけて)
抗菌薬の投与方法
• 抗菌薬は以下の場合まで投与された:①研究者が抗菌薬を中止すると決めた
②被験者が本研究から撤退した
③ ICU退室④ ICUにて死亡
• 他の抗菌薬の追加や本研究の対象でない薬剤の使用を含めた患者管理は、研究者が決定した。
介入方法
アウトカム
Primaryendpoint:抗菌薬中止後14日目における臨床的治癒
・評価方法:
① Resolution:感染に関するすべての項目や症状が完全に消失した② Improvement:重症度や感染に関するいくつかの項目や症状が顕著に、あるいは緩徐に減少した
③ Failure:感染に関する項目や症状の減少が不十分であった
・臨床的治癒の判断:①→“Yes”、②・③→“No”とした
アウトカム
Secondaryendpoint:①PK/PD目標値への到達度②抗菌薬投与後 28日目でのICU退室日数③抗菌薬投与後 28日目での人工呼吸器の離脱日数④抗菌薬投与後 14日目⑤30日目での生存率⑥白血球数(WCC)正常化までの時間
・①:病原菌の“surrogateMIC”に対する遊離型薬物濃度を評価“surrogateMIC”は EuropeanCommitteeonAntimicrobialSusceptibilityTesting (EUCAST)databaseから用いた。
・APACHEⅡ、SOFAscoreはICU入室後24時間以内に計算された。
• 投与開始後 day1および day3での血中遊離型薬物濃度を測定した。
• 1日総投与量の 50%量および 100%量投与時で採血した。
血中薬物測定のサンプル
サンプルサイズと統計・BLINGⅠstudy (Clin Infect Dis.2013;56:236–244)に基づき、臨床的治癒率は CI群で 75%、 IB群で 45%となると仮定、120名 (CI群:60名、IB群:60名)が必要と判断した(Power0.8、alpha0.05)。
⇒15-20%の脱落を見越して、140名 (CI群:70名、IB群:70名)とした。
解析・主に ITT(intention-to-treat)を用いた。・研究対象の抗菌薬を使用した患者→mITT(modifiedITT)・研究対象の抗菌薬を4日間以上使用した患者
→PP(per-protocol)
Results
患者選択
・2013年4月~2014年7月の期間における 220名のうち、140名が対象患者に適合し、70名ずつ CI群とIB群に振り分けられた。
←除外基準
←対象患者
SupplementaryFigure1:TheBLISSstudyCONSORTflowdiagram
←ITT解析
←PP解析
←mITT解析
SupplementaryFigure1:TheBLISSstudyCONSORTflowdiagram
患者選択
患者背景・臨床的特徴
・CFPMの投与はCI群で多く、偏りがあった。
患者背景・臨床的特徴
・CI群とIB群で、24時間での3種類の抗菌薬投与量の中央値に有意差はみられなかった。
・抗菌薬投与期間の中央値は7日間であった。
・CI群の38%、IB群の46%で複数の菌による感染がみられた。
・多く認められたグラム陰性菌:
CI群:P.aeruginosa(37%)、A.baumannii(25%)IB群:A.baumannii(31%)、Kl.pneumoniae(23%)
・全患者の 6%(9名)は、主要な感染部位に感受性のない菌をもっていた。
臨床的特徴
Primaryendpoint
・臨床的治癒率・PIPC/TAZ使用群、併用した抗菌薬がない群、呼吸器系感染症群での臨床的治癒率
⇒有意差あり (mITT解析、PP解析においても結果は類似した)
Secondaryendpoint
・WCC正常化までの日数・抗菌薬投与開始後 1日目および3日目での100%fT>MIC
(100%量投与時の血中遊離型薬物濃度がMICを超えていたか)・抗菌薬投与開始後 28日目での人工呼吸器の離脱日数
⇒有意差あり (mITT解析、PP解析においても結果は類似した)
抗菌薬投与後14日目と30日目において、CI群とIB群で生存率に有意差はみられなかった。
生存率
臨床的治癒に関する因子
Variable Allfactorsincludedinthemodel FinalmodelOddsratio(95%CI) Significanc
e(p-value)Oddsratio(95%CI) Significanc
e(p-value)FactorspredictingclinicalcureContinuousinfusiona 3.08(1.38-6.94) 0.007 3.21(1.48-6.94) 0.003Bacteremiab 0.10(0.01-0.92) 0.042 0.09(0.09-0.770) 0.028Pre-randomisation antibiotictherapyc 2.74(1.02-7.32) 0.045 2.85(1.12-7.23) 0.028APACHEIIscore(per1-pointincrease) 0.95(0.90-1.00) 0.060 0.95(0.90-0.99) 0.036Studydrugd 0.075 0.047Piperacillin/tazobactam 4.15(1.01-17.01) 0.049 4.21(1.06-16.64) 0.041Meropenem 6.04(1.28-28.47) 0.023 6.54(1.48-28.90) 0.013Cefepime 1.0 - 1.0 -
Causativeorganismidentifiede 0.54(0.22-1.33) 0.180 - -Durationofrandomisedtreatment(per1-day
increase)1.04(0.98-1.09) 0.208 - -
Albumin(per1g/dLincrease) 1.02(0.96-1.08) 0.597 - -Charlsoncomorbidityindex(per1-pointincrease) 0.98(0.85-1.13) 0.781 - -
Goodness-of-fitHosmer-Lemeshow test X2 =6.96,df =8 0.541 X2 =3.843,df =8 0.871aOR comparescontinuousinfusionrelativetoIBdosingofbeta-lactamantibiotics.bOR comparesbacteremia relativetoothersitesofinfections.cOR comparesthosewhoreceivedpre-randomisationantibiotictherapyrelativetothosewhodidnot.dOR comparespiperacillin/tazobactam andmeropenem relativetocefepime.eOR comparesthosewhohadatleastonecausativeorganismidentifiedrelativetothosewhodidnot
SupplementaryTable7:FactorspredictingclinicalcureintheITTpopulation
PK/PDの検討
血中薬物濃度はCI群の方が高かった
SupplementaryFigure2:Freeplasmaantibioticconcentrationtominimuminhibitoryconcentration(MIC)ratiobybeta-lactamantibioticsandtreatmentgroupsmeasuredat(a)50%ofthedosingintervalonday1(b)100%ofthedosingintervalonday1(c)50%ofthedosingintervalonday3and(d)100%ofthedosingintervalonday3
血中薬物濃度と surrogateMICの比はCI群の方が高かった
PK/PDの検討
Discussion• 本研究の特長は、“ほとんど調査されていないが、一般的に重症度の高い疾患と関連がある地域“から対象患者を選んでいる、という点である。
• CI群では、臨床的治癒患者がIB群の約3倍であった。
• 実際のMICの値は利用できなかったが、原因菌の41%は感受性の低い A.baumanniiあるいは P.aeruginosaであったために、IB群において治療域濃度への到達度が減少したのではないか、と考察する研究もある。
Int JAntimicrob.2014;Agents43:353–360
AMulticenterRandomizedTrialofContinuousversusIntermittentβ-LactamInfusioninSevereSepsis(BLINGⅡ study)
AmJRespir Crit CareMed.2015;192:1298–1305
デザイン多施設(オーストラリア、ニュージーランド、香港のICU25施設)Prospective、Double-blind、Double-dummy(生食投与との比較)のRCT
対象重症敗血症で、PIPC/TAZ、ticarcillin-clavulanate、MEPMのいずれかを開始する18歳以上の患者2630名のうち、対象患者に適合した432名(CI群:212名、IB群:220名)
Primaryoutcome 28日後のICU生存退出日数Secondaryoutcomes90日後の生存率、抗菌薬中止後14日目での臨床的治癒率、14日後の臓器不全のない生存日数、敗血症の持続日数
AmJRespir Crit CareMed.2015;192:1298–1305
CI群とIB群で、primaryandsecondaryoutcomesに有意差はみられなかった
AmJRespir Crit CareMed.2015;192:1298–1305
90日後の生存率に有意差はみられなかった
AmJRespir Crit CareMed.2015;192:1298–1305
CIの有用性を示すことができなかった原因
・RRT施行患者が26%含まれていた。
・抗菌薬投与期間が3-5日間とより短かった。
・対象患者の19%しか病原菌が判明しなかった。多く認められた菌は E.coli、Kl.pneumoniaeであり、オーストラリアではこれらの菌の耐性化は少ない。
→MICが低いのであれば、間欠的投与でも治療は十分であったと考えられる
• RRTを行っていない重症敗血症患者に対して、3種類のβ-ラクタム系抗菌薬のCIは、IBと比較して、より高い臨床的治癒率およびより良いPK/PD目標値への到達度と関連があった。
• β-ラクタム系抗菌薬のCIの有用性が生存率の向上に影響するかどうかを確立させるには、今後、大規模な多施設での前向き臨床研究が必要とされる。
Conclusion
Editorial
Continuousinfusionofβ-lactamantibioticsforallcriticallyillpatients?
FabioS.Taccone etal.IntensiveCareMed(2016)42:1604–1606
全ての重症敗血症患者に対して、
β-ラクタム系抗菌薬はCIで行われるべきか
今までの試験
• PIPC/TAZorMEPMのCIは、30日目においてより高い生存率を示したが、これは呼吸器系の感染症患者群だけでの結果であった。
JAntimicrob Chemother.2016;71:196–207
• VAP患者において、セフタジジムのCIはIBと比較して、肺への十分な濃度到達時間がより短かく、より予測しやすい薬物動態を示した。
Antimicrob AgentsChemother.2015;59:1905–1909
• P.aeruginosaによる院内肺炎に関する研究において、APACHEⅡscoreが17を超える患者でのみ、PIPC/TAZのCIが14日目での死亡率を減少させた。
Clin InfectDis.2007;44:357–363
LimitationsintheBLISSstudy
• Open-labelの臨床試験であった。
• 培養された菌の実際のMIC値を評価しなかった。
• “治療困難な“病原菌の割合が高く、薬剤感受性の異なる菌の多い国では注目されない可能性がある。
• 薬物濃度については血中のみのデータであり、脳、腹膜、骨など薬剤の浸透が不十分な感染部位において
は評価されていない。呼吸器感染症患者が大部分を
占めているが、他の感染部位については触れられていない。
• 治癒した群としなかった群で、100%T>MIC患者の割合に差がなかった。
• 治癒した群ではAPACHEⅡscoreがより低く、MEPMの使用が多かった。⇒患者の重症度や抗菌薬のスペクトラムおよび殺菌活性のばらつきが結果に影響している可能性がある。
• 耐性菌の存在や hyperinfectionについてのデータがない。
LimitationsintheBLISSstudy
臨床的アプローチ
・重症感染症・腎機能が正常である・呼吸器系の感染症・感受性の低い病原菌が疑われる時
β-ラクタム系抗菌薬のCIが有用かもしれない
私見
• 投与中止時、破棄となる量のコストが増大する可能性がある。
• 溶解後の安定性によっては抗菌薬活性が低下するため、医療スタッフの手間が増える可能性がある。
[β-ラクタム系抗菌薬の溶解後の力価 (室温条件下)]抗菌薬 PIPC/TAZ 4.5g MEPM0.5g CFPM1g溶解後の時間 24時間後 3時間後 24時間後 8時間後 24時間後5%Glu100mL 99.8%/100.4% 91.5% 59.5% 98.9% 96.2%NS100mL 98.6%/99.0% 99.2% 92.4% 99.4% 96.5%
PIPC/TAZ:ゾシン®、MEPM:メロペン®、CFPM:マキシピーム® インタビューフォーム参照
私見
・当院でも、アンチバイオグラムによっては
β-ラクタム系抗菌薬の持続投与が有効な場合があるかもしれない。
・感受性の低い菌が出現しないよう、抗菌薬の
不必要な長期投与や手指衛生には注意しなくては
ならない。