BOWLANA LINE HOUSE SURVEY 2014

スリランカ・バウラーナ村長屋調査 報告書

2014 年 3 月

調査の概要

目 的：イギリス植民地時代につくられた紅茶プランテーション農園地域内に現存す

るかつての農園労働者長屋の再生に向けて、長屋の基礎調査、地域における貧困削

減に向けた取り組みの視察、スリランカの建築・文化についての視察を行うこと。

調査員：前田 昌弘（京都大学大学院工学研究科建築学専攻）

大庭 徹 （大庭徹建築計画）

協 力：石川 直人（NPO 法人アプカス代表理事）

谷口 未利子、プリヤンタ、カピラ（NPO 法人アプカス スタッフ）

期 間：2014 年 3 月 5 日～3 月 17 日

行 程：

3 月 5 日 出国 大阪→コロンボ（シンガポール経由）

3 月 6 日 コロンボ視察（都心部の建築群、及び周辺部のスラム地域）

モラトゥワ大学訪問（建築学部教授サミタ・マナワドゥ氏）

3 月 7 日 移動 コロンボ→キャンディ県デルトタ郡バウラーナ村

NPO アプカス・バウラーナ村事業地視察

（佐賀大学経営学部教授ラトナーヤカ・ピヤダーサ氏同行）

3 月 8 日 バウラーナ地域長屋（Line House）実測調査

3 月 9 日 バウラーナ地域長屋（Line House）居住者ヒアリング調査

3 月 10 日 コロンボ視察（ジェフェリーバワ自邸 Number11 など）

文献・資料収集

3 月 11 日 前田・帰国

大庭・スリランカの遺跡・建築視察へ

（ゴール、シーギリヤ、アヌラーダプラ、ダンブッラなど）

3 月 17 日 大庭・帰国

バウラーナ村長屋調査

紅茶畑の風景（デルトタ） バウラーナ村の風景

バウラーナ村に点在する長屋 調査対象の長屋（Division5 長屋）

調査対象の長屋（Division5 長屋） 調査対象の長屋（Division5 長屋）

長屋の室内（居間） 長屋の室内（寝室）

長屋の室内（台所） 長屋の構造（鉄製のフレームによる小屋組）

長屋の構造（石造の壁）

長屋の構造（鉄製フレーム） 実測調査のようす

ヒアリング調査のようす 実測調査スケッチ

長屋の構造（露出した鉄製フレーム）

Division5 長屋実測図面

01no.data.Masahiro MAEDA + Toru OBA Architect Office Exsiting PlanLINE HOUSE IN BOWLANA title. scale. 26.Mar.141:100(A3): original wall: added wall: added wall ・C1(steel) :・C2(steel) :: altar of the Hinduism: fieldabove only original waist-high wall

・・・ ・・ 43 10045N

waterway for supply

added foundationC1

3440 3440 3440

2150405040502150

10320

12400steel frame in the upper part

600580

570

C1C1C2

C1C1C1C1C1

C1C1C1C1

C1C1C1C1C1

C1

50 80

C1water tank

0 1 3 5m

A'A'A'A'

AAAA

B'B'B'B'

BBBB

02no.data.Masahiro MAEDA + Toru OBA Architect Office Exsiting SectionLINE HOUSE IN BOWLANA title. scale. 26.Mar.141:50(A3): original wall: added wall: added wall ・C1(steel) :・B1(steel) :above only original waist-high wall

・・・ ・B2(steel) :

CH=2060AーA' SectionAーA' SectionAーA' SectionAーA' Section

BーB' SectionBーB' SectionBーB' SectionBーB' Section2150 4050 570580 124000 1 3 5m

C1 C1 C1 C1 C1

B1 B2

4050 21501700150

4475300

B1 B2B1B2

43 10045 50 8038 48

Division5 長屋居住者ヒアリング

◇調査の概要

・日時：2014 年 3 月 9日

・調査員：前田、大庭

・協力：谷口、カピラ、プリヤンタ

・内容：長屋居住者の家族構成、職業、居住歴など

◇部屋番号 1

a：Narayauasawi 現在は無職。

b：Senliuauna 現在は無職。主婦。

c：Wasantakuwali 現在はサウジアラビアに出稼ぎに行っており、家政婦をしている。

d：Yogaraj クルネーガラでパン屋。

e：Nagajothi バウラーナで松の木関連の仕事や牛の世話などをしている。

祖父がインドからバウラーナのこことは違う場所に移住してきた。

そこから今の長屋に移った。父親はここで生まれた。70 年ほどここ

に住んでいる。現在、屋根が壊れて雨漏りがするので父親のみここに

住んでいる。母親は Nagajothi と一緒にバウラーナの別の場所に住

んでいる。

f：Itiyanandan コロンボで唐辛子を粉にする仕事をしている。

g：Yogeshori バウラーナで松の木関連の仕事や牛の世話などをしている。

h：Sorguna 以前はコロンボでパン屋をしていたが現在は刑務所にいる。

i：Vijesundara ヌワラエリヤでスリーウィーラーの運転手をしている。

j：Rakisuda 現在は無職。主婦。

◇部屋番号 2,4,6

a：Palaniweni コロンボでスペアパーツの会社に勤めていた。足が悪くなり引退した。

自分も父もこの長屋で生まれた。祖父の代にここに移住してきた。

b：Parawai 以前はバウラーナの紅茶農園で働いていた。

c：Indrani バウラーナの林業センター（Pinus Center）に勤めている。

d：Nadaraj バウラーナで日雇い労働者をしている。野菜の栽培・販売もしている。

この長屋で生まれた。父と母は紅茶農園で働いていた。妻もここで生まれた。

e：Nyugadishwaran コロンボでレストランに勤めている。

f：Rushanthi コロンボの美容室（Beauty Saron）に勤めている。

g：Winya 学生

h：Kishanth 学生

i：Abishanth 学生

j：Selvarag コロンボで車やバイクのスペアパーツを販売する店で働いている。家族は

同じ長屋に住んでいて、月に一度だけ帰ってくる。曾祖父（もともとスリラ

ンカに住んでいた）の代からここに住み始めた。７０年ほど住んでいる。祖

父はここで生まれた。

k：Sawandaratani 現在は無職。

l：Darmarag コロンボで車やバイクのスペアパーツを販売する店で働いている

（Serwaraji と同じ）。家族全員コロンボの借家に住んでいる。

m：Wasantakumali

n：Yogarag 以前はコロンボのスペアパーツの会社に勤めていたが、現在はバウラーナに

戻り、日雇い労働者として働いている。バウラーナの別の住宅に住んでいる。

妻は中東に出稼ぎに行っている。

o：Babani 現在は無職。

◇Nadrag の話：Bowlana の紅茶農園の歴史について

1954 年

それまで Tea Authority が農園を所有・管理していたが、MISO というムスリム系の民間

企業に売却された。MISO はさらに農園を 2 つに分割してそれぞれ個人の経営者に売却

した。もともとバウラーナの紅茶農園は 5 つのディビジョンに分かれており、ここは 5 デ

ィビジョン。農園の総面積は 1143 エーカーであった。この長屋はキャンディ・ラインと

いう愛称で呼ばれていた。人通りが多く、市場が出るなどしてキャンディの街中のように

賑わっていたため。

1958 年

現在、集会所が建つ場所にあった紅茶加工工場が住民の手によって焼かれる。労働者が保

険の権利を主張するために工場の一部を焼いて抗議する計画であったが、誤って燃え広

がり、工場全体が消失してしまった。

1978 年

所有権が再び政府のものになる。

1980 年

紅茶農園が閉鎖される。その後、政府がターメリックの栽培を産業化しようとして、

NASTA Project という事業を始めるが上手くいかなかった。

1990 年代後半

政府が松の植林を始めた。1980 年代に水路の整備を行い（長屋の裏の水路自体はイギリ

ス時代の建設当初からあった）、生活用水や農業用水の確保が改善された。しかし、松の

植林が始まってからそちらに水がとられ、不足している。1980 年頃にはバウラーナに長

屋が 17 棟あったが、現在は 13 棟である。1980 年代に野菜を栽培しようとする住民を、

バウラーナ一帯を松林にする計画を持っていた政府が追い出そうとした？

◇住民？の話：長屋のメンテナンスについて

・以前、どこかの NGO がこの地域で活動しており、その際に野菜の種を配布した。その種

で、長屋の周辺で畑を始めた。野菜を売って少しずつ貯めたお金で、15 年ほど前に長屋の

屋根を葺き替えた。

・長屋の各部屋は当初、壁で仕切られているだけで天井がなかった。雨漏りやホコリを防ぐ

ために、10 年ほど前に内部の天井を自分たちでつくった。

◇部屋番号 3

a：S.Arumugam コロンボでスペアパーツの会社に勤めている。この長屋で生まれ、

父と母はバウラーナの紅茶農園で働いていた。妻もこの長屋で生

まれ育った。

b：P.Thanalechchami バウラーナで野菜をつくって売っている。

c：Danusha コロンボで美容室（Beauty Center）に勤めている。

d：Manoranjani バウラーナで郵便局に勤めている。

e：Dushita 学生

◇部屋番号 5

a：Manikkam 現在は仕事を引退して野菜の栽培を行っている。以前はコロンボの小

売店（Retail Shop）で働き、その後、同じくコロンボで料理人をしていた。

バウラーナに戻ってきてからは林業センター（Pinus Center）で監督

（Superviser）を務めていた。この長屋で生まれ育った。祖父の代にイン

ドから移り住んできた。

b：P.Lechami 若い時は紅茶農園で働いていた。現在は主婦である。

c：M.Shiverkumar コロンボで小売店（Retail Shop）で働いている。

d：Pushupa コロンボで政府関係の仕事をしている。ヌワラエリヤの Daraoya 出

身である。

e：M.Manjula ヌワラエリアの Radalla にある紅茶農園で働いている。

f：M.Mala ヌワラエリアの Radalla に住んでいる（主婦）。

g：M.Sureshkumar コロンボでスペア・パーツの会社で勤めている。今月結婚する予定。

◇Manikkam の話（地域について）

・二人の息子は現在、コロンボに住んでいるが、バウラーナ村に戻ってくることも考えてい

る。そのため、部屋を用意している。しかし、戻ってきても野菜栽培や日雇い労働などの仕

事しかないため、息子たちはあまり乗り気ではないらしい。

・紅茶農園での日々の仕事は午前 8時から午後 4 時まで。賃金は一日 500Rs.ほどであった。

雨や旱魃があると仕事ができないので収入が減る。若い世代は紅茶農園の仕事はきついし

収入が少ないので好まない。出稼ぎやガーメント工場に行く。

・紅茶農園での一日の仕事

8 時 作業開始。茶葉の摘み取り。

10 時 休憩。ティーブレイク（約 30 分）

12 時 休憩。昼食（1 時間～1 時間半）

16 時 作業終了。

・紅茶農園での労働について、現在は一月の労働日数は 24 日以内という決まりができた。

それ以上働いた場合はインセンティブとして賃金が 600Rs/日となる。ノルマ以上の茶葉を

摘んだ場合はボーナスがでる。

・紅茶農園は以前は労働環境が劣悪であったが、 近はずいぶん改善されたので、このあた

りでも紅茶栽培が再開できればよいと思う。政府から紅茶栽培に対して補助金も出ている

が、長屋の居住者は土地を所有していないので、自分たちでは紅茶の栽培を始められないと

いう問題がある。

（以上）

長屋居住者との記念撮影