c++ プログラムを対象とした複雑度メトリクス計測ツールとその評価

C++ プログラムを対象とした複雑度メトリクス計測ツールとその評価

神谷年洋高林修司楠本真二井上克郎大阪大学大学院基礎工学研究科

背景ソフトウェアの大規模化・複雑化生産性と品質の向上

↓

オブジェクト指向分析設計の適用開発ツールの投入

品質評価によるプロセス改善• ISO9000 シリーズ・ SPICE ・ CMM など– プロセスやプロダクトを計測する– 分析によって問題点を見つけだし、改善策を立

てる– 改善策を実行する

• 計測にはさまざまなメトリクスを用いる

メトリクス• メトリクスとは、ソフトウェアのさまざま

な特性を判別する客観的な数学的尺度である– プロセスメトリクス・プロダクトメトリクス

• 複雑度メトリクスはエラーの発生を予測するためのメトリクスである– MaCabe のサイクロマチック数・ Halstead の

ソフトウェアサイエンス

• オブジェクト指向設計を計測対象とする Chidamber らの複雑度メトリクス

複雑度メトリクスによるエラー予測メトリクスを用いて複雑である ( エラーを含

みやすい、保守しにくい ) モジュールを予測する

↓

複雑であると判断されたモジュールの再設計をする

レビューやテストを重点的に行う

目的• オブジェクト指向開発を対象としてプロダ

クト品質評価のためのツールを作成する• ツールの有効性を実験的に評価する

Chidamber らの複雑度メトリクス• オブジェクト指向設計を対象とする– クラス間の参照関係（ CBO,RFC ）– 派生関係（ DIT ， NOC ）– クラス内部の複雑度（ WMC,LCOM ）

• S. R. Chidamber and C. F. Kemerer: “A metrics suite for object-oriented design”, IEEE Trans. on Software Eng., Vol.20, No.6, pp.476-493(1994).

• V. R. Basili, L. C. Briand, and W. L. Melo: “A validation of object-oriented design metrics as quality indicators”, IEEE Trans. on Software Eng., Vol. 20, No. 22, pp. 751-761 (1996).

ツールが計測するメトリクスRFC 使用するメソッドの数

CBO 結合するクラスの数

DIT 継承木内での深さ

NOC 子クラスの数

WMC メソッドの数

LCOM メソッドの凝集度の欠如

NIV インスタンス変数の数

SLOC ソースコードの行数

結合

継承

クラス内の複雑さ

ツール概要• Chidamber らの複雑度メトリクスを用いた

クラスの複雑度– メトリクス計測機能– メトリクスによる複雑度評価機能

• GUI による操作• Windows 95 上で動作

ツールの入出力• 入力：– C++ ソースコード

• 出力：– クラス階層図– ソースコードのブラウズ– メトリクスによる複雑度判定

対象とする C++ サブセット• C 構文• C++ 構文– 例外処理構文– クラス / メソッド構文– テンプレート• 関数テンプレート（部分的に受理する）• クラステンプレート（部分的に受理する）

ツールの画面 ( クラス階層の表示 )

ツールの画面 ( ソースコードのブラウズ )

ツールの画面 ( メトリクスによる判定 )

ツールの構成ライブラリのソースコード新規開発のソースコード

C ++プログラム構造抽出部

構造データ

メトリクス分析部

グラフィックユーザーインターフェイス部

,メトリクスデータ統計分析データ

クラス階層

,メトリクス値統計分析ソースコード

S mart

ソースコード位置データ

メトリクスによる複雑度判定(1) クラスの分類

6 種類 : ドキュメント、ビュー、ダイアログ、フレーム、アプリケーション、その他

(2) 基準値の設定分類 / メトリクスごとに基準値 (a, σ) を用意する

( 今回は実験で収集したデータを用いた )

(3) 異常値の算定メトリクス値異常値0 ≦ m ＜ a +σ 0a +σ ≦ m ＜ a + 2σ 1a + 2σ ≦ m ＜ a + 3σ 2a + 3σ ≦ m 3

クラス分類• ドキュメント– アプリケーションのデータを保持する

• ビュー– データを表示する・ ( メニュー等 ) 操作を受け付ける

• ダイアログ– 定型入力を行う・警告を出す

• フレーム– ウィンドウの状態を管理する

• アプリケーション– アプリケーションに関する情報 ( レジストリ情報等 ) を管

理する• その他

実験概要• ある企業の新人研修• 開発するプログラムは電子メールの配送シ

ステム (3000 行程度 )– 5 つのサブシステムからなる： SMTP サーバー、

POP サーバー、 DELIVER サーバー、 SMTP クライアント、 POP クライアント

• 4～ 5名の開発者がチームで開発を行う (一人あたり 600 行程度 )

• Visual C++ 、 MFC （ Microsoft Foundation Class) を用いる

データの収集方法• プログラムのソースコード– サーバーによって 1時間毎に自動収集

• フォールトデータ– フォールト報告用ツール (Efer) によって収集• 開発作業の開始・終了時刻

– コーディング・レビュー・テスト・フォールト修正など

• 開発作業の結果– 欠陥・フォールト

メトリクスデータ• 被験者 17 人、クラス 124個、フォールト 8

4個メトリクス最小最大平均標準偏差NIV 0 14 4 2.67CBO 0 5 1.39 1.59NIM 0 22 5.73 4.86DIT 0 6 3.44 1.41NOC 0 0 0 0RFC 0 27 8.23 6.81LCOM 0 190 22.42 36.84SLOC 5 420 96.43 81.01Ec 0 17 0.57 1.93Et(分) 0 599 12.68 58.94

分析：クラス分類とメトリクスCDocument派生クラス

( 19)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

CView派生クラス( 17)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

CFrameWnd派生クラス( 17サンプル数）

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

CDialog派生クラス( 15)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

CWinApp派生クラス( 17)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

その他のクラス( 39)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

分類 CDocument の特徴ドキュメントクラスは「デー

タの保持する」役目を持つ

• NIV が大きい。インスタンス変数が多い

• CBO が小さい。あまり他のクラスの変数を参照していない

• WMC が大きい。他のクラスにデータを操作するためのメソッドを提供している

CDocument派生クラス( 19)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

分類 CView の特徴CView はデータを表示し、

UI を受け持つ

• CBO が大きい。他のクラスの変数を参照している

• WMC が大きい。他のクラスにメソッドを提供している

• LCOM が大きい。互いに関連のない雑多な機能を凝集している

CView派生クラス( 17)サンプル数

0

1

2

3 cbo

rfc

wmc

lcom dit

niv

sloc

分析：異常値とエラーCMsgSock CCCRRRWWWLLLNiNiNiSSS 1 1.25CPopsDoc CRRWLLLNiS 6 168.03CSetDlg RWNiSCPopsView CRRLCRegistDlg WCPopsAppCMainFrame RCMsgCListenSock

CSmtpSDoc RWLLNiNiS 3 135.35CSmtpSView RWLLNiSCSmtpSApp CCRRSCMainFrame RCMsgCMailRoundMessageSockCMailListDlg

CSmtpCView RWLLSCSmtpCDoc RLNiNiS 1 7.72CSmtpCAppCMainFrame RCMailProvDlgMessageSockCMsg

CPopCView CRWLSCPopCDoc CRLNiS 1 9.27CLogDlg CRWLCMainFrame RLCMsg NiCPopCAppMessageSock

CUserCtl CCCRRRWWLLLSSS 2 82.55CSMTPclientViewCRWLLNiSSCAdressDlg CCRRRWSSCSMTPclientDocCRLNiSS 1 0.1CSMTPclientAppCMAILENV LCUserDlg NiCMainFrame RCSMTPSocketCMsg

CMailFile CCCRRWWLS 1 77.9CIndex CRRWNiSCPopServerDoc CCRRS 1 0.1CPopServerAppCPassword R 1 41.4CConfig R 1 8.3CAboutDlgCPopServerViewCMessageSock 1 0.3CMainFrameCSmtpCApp SCSmtpCDoc CRL 2 38.55CMainFrame RCMsgCSMTPSocketCSmtpCViewCPopCView CCRRRWLLLSSS 7 43.27CPopCDoc CRNiSCMainFrame RLCPopCAppCMySock NiCLogonDlgCKankyouDlg

CPopSDoc CCCRRRWLLNiSSS 2 255.43MessageSock CRWSCPopSAppListenSockCPopSViewCMainFrameCMsg

CMainFrame CSS 3 599.73CDeliverAppMail NiUserCDeliverViewCDeliverDoc

CMsg CRWSSS 3 0.62CMsgSocket Ni 1 0.68CPOPServerAppCListenSocketCPOPServerDocCMainFrameCPOPServerView

CPopCDoc RLS 1 0.27CPopCAppCMsgCDialogboxCPopCViewMessageSockCMainFrame

CMainFrame CCRRRWWLLLNiNiNiSSS 17 58.25CMsg WNiCDeliverAppCDeliverSocketMail NiCDeliverDocUserCDeliverView 7 40.63

CMilDlg CRWLSCMsg WNiCSmtpCView LNi 1 86.12CSmtpCDoc RL 1 20.43CSmtpCAppCSmtpSocketCMainFrameCAddressbookDlg

CSplashWnd CCRRRWWLLNiSCSmtpCApp CCRRLLSSSCSmtpCView CRNiS 1 0.43CKankyo LCMainFrame CRCSmtpCDoc L 5 68.63CSmtpCSockCMsg

CMainFrame CRRWLS 1 0.23CEntry RRWS 8 42.53CDeliverAppCDeliverViewCDeliverDoc

CPopCView CRRWLLNiNiSS 3 1.1CPopCApp RLLSSCLogonDlg LCEnvDlg LCMainFrame RCMsgCPopCDoc 1 0.38CMySocket

まとめ• Chidamber らのメトリクス• プロダクト評価ツール– ソースコードからメトリクスを計算する

• ツールの評価実験– クラス分類によってメトリクスの分布に差があ

る– メトリクスによる複雑度判定

課題• 多くのプロジェクトに対して、ツールの有

効性を評価する• Chidamber らのメトリクス以外のメトリク

スを計測できるようにする• 上流工程の CASE ツールのデータを扱える

ようにする– Rational Rose

– Visual Modeler

C++ ソース分析ツールの比較• ツールの出力から Chidamber らのメトリク

スを算出可能か解析器 DIT NOC WMC LCOM RFC CBO 備考C++仕様書工房 V1.0L10

○ ○ ○ ○ ○ ○ テンプレートクラスに関しては参照関係の解析は行われない。

C++ doctorver. 2.0

○ ○ ○ × × ×

Hotdoc forVC++ 5.0 β

○ ○ ○ × × × 関数とメソッドを異なった方法で分析する。ただし、評価

βしたのは版なので、製品版では異なるかもしれない。

RationalRose

Rational Roseで設計し、生成したC++ソースのみ解析する。

c++ プログラムを対象とした 複雑度メトリクス計測ツールと その評価

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