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小児の救急処置 高松赤十字病院 小児科 竹廣 敏史

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小児の救急処置 高松赤十字病院

小児科

竹廣 敏史

今日の内容

① 患者の評価

② 呼吸状態の評価と介入

③ 循環動態の評価と介入

④ Color code

⑤ 虐待

① 患者の評価

まずは第一印象で(できれば10秒以内)

•PAT : Pediatric Assessment Triangle

外観(見かけ) Tone:元気かぐったりか? Interactivity:周囲への反応 Consolability:なだめて落ち着くか? Look and Gaze:視線は定まるか? Speech:話し方や泣き方は?

呼吸 体位(臭い嗅ぎ体位、首振りなど) 耳で聞こえる呼吸音(喘鳴、呻吟) 呼吸努力(陥没呼吸、鼻翼呼吸など)

循環 皮膚色、口唇・爪の色、まだら皮膚模様

PATで緊急性が高いと判断された時

◎体動なし・呼吸なし・脈拍なし

⇛酸素投与を行い応援を呼びモニターつけて直ちに心肺蘇生

開始

PALS心停止時アルゴリズムに従い治療介入

◎呼吸・体動・脈拍はあるが全身状態不良 酸素投与を行い、応援を呼びモニターをつけて一次評価

心停止時アルゴリズム

反応なし

CPR(15:2) 除細動装着

VF/無脈性VT

(心拍再開の可能性があれば) 脈拍の触知

ショック1回 4J/kg

直ちに胸骨圧迫からCPR再開 15:2 で 10サイクル (2分間)

YES

NO

PALS(二次救命処置) 胸骨圧迫中断を最小にしつつ 原因検索、気道確保、呼吸補助 薬剤投与路確保、薬剤投与

心拍再開

一次評価 A:気道(Air way)

閉塞(+) 気道確保(頭部後屈、顎先挙上、下顎挙上)

必要に応じて吸引

B:呼吸(Breathing)

呼吸数・呼吸様式

エアウェイ挿入、バックマスク換気、気管内挿管

C:循環(Circulation)

脈拍数、血圧、CRT、リズムチェック

D:神経学的所見(Disability)

E:外表所見・体温(Exposure)

Awake 自発開眼があるか

Verbal 声掛けで目をあけるか

Pain 痛み刺激で目をあけるか

Un respons 刺激に対する反応なし

② 呼吸状態の評価と介入 ( Airway と Breathing )

小児における気道の特徴

後頭部が大きく突出 舌が相対的に大きい

↓ 容易に気道閉塞

乳児イラスト(気道閉塞)

気道閉塞のサインと原因

• 吸気時の喘鳴・いびき

• シーソー呼吸

• 胸骨上の陥没

• 筋緊張低下などによる舌根沈下

• 気道分泌物や嘔吐物による閉塞

• 気道の炎症性浮腫

◎気道閉塞のサイン ◎気道閉塞の原因

気道閉塞を解除するには

•姿勢をかえる タオル、円座など

•吸引する 十分な圧でなるべく太いカテ

•人工気道 経口エアウェイ・経鼻エアウエイ

乳児イラスト(気道閉塞解除)

呼吸状態の評価

• 自発呼吸してる?

• 呼吸数は?

• 呼吸様式は?

• 呼吸音は?

• モニターは?

年齢(歳) 呼吸数(/分)

0~1 30~60

1~3 20~40

3~6 20~30

6~15 15~30

成人 10~30

気管内挿管の適応とチューブの選択 • 臨床像の悪化(多呼吸・頻脈・末梢循環不全・疲労感)

• 低酸素血症(PaO2<60mmHg,チアノーゼ出現時)

• 高二酸化炭素血症

• 無呼吸

• 徐脈

• サイズ(カフなし)

ETTサイズ(mmID)=4+年齢/4 or (16+年齢)/4

• 挿入長

門歯部で サイズ☓3 cm

どうしても挿管できない、マスクバックで換気できない ⇛輪状甲状靭帯穿刺(最後の手段) 14Gの留置針にシリンジをつけ頭側から45度の角度で ゆっくり穿刺。空気げ引けるところで外筒を留置 3.5mm径の挿管チューブコネクタを接続

③ 循環動態の評価と介入 (Circulation)

心血管機能 • 心拍数

• 脈(中心・末梢)、血圧・脈圧

主要臓器機能、潅流状態 • 脳:意識レベルの変調

• 皮膚 :冷たい・暖かい・毛細血管充満時間(Capillary refilling time)

• 腎臓:尿量

循環動態の評価

小児の年齢別心拍数正常値

年齢

新生児~生後3ヶ月

生後3ヶ月~2歳

2歳~10歳

>10歳

心拍数(覚醒時)

85-205

100-190

60-140

60-100

Mean

140

130

80

75

心拍数(睡眠時)

80-160

75-160

60-90

50-90

血圧正常下限の目安 70 mmHg + ( Age in year x 2) mmHg

ショック時の血行動態

血管抵抗

血圧

心拍出量

代償性ショック 非代償性ショック

140

100

60

20

基準状態からの%

心拍

血圧低下はショックの晩期症状!!!

ショック時の初期対応

まずはA、Bの評価、問題があれば介入、モニター装着して

輸液路確保

末梢静脈(90秒以内or2トライまで)

とれなければ 骨髄針

(骨髄路の取り方)

脛骨結節の2横指下、内側脛骨全面を穿刺

急に抵抗がなくなって骨髄内に入った感覚があれば内筒を抜く

骨髄が吸引されるか確認、その後生食注入して漏れ腫脹がないか確認

その他の輸液路(中心静脈、末梢静脈カットダウン)

急速輸液

ショック時の輸液

• うっ血性心不全徴候がないとき

(15分以内に) 等張晶質液20ml/kg

脈拍触知改善orうっ血所見認めるまで

(最大60ml/kg)

*大量出血の時

Hb<10g/dlならMAP10~20ml/kg

• うっ血心不全徴候(肝腫大、湿性ラ音、ギャロップなど)があるとき

(20分程度で) 等張晶質液5~10ml/kg

蘇生時に最低限必要なスタッフの数は?

• 呼吸管理をする人 (Dr or Ns)

• 心臓マッサージをする人 (Dr or Ns)

• 薬物投与・除細動を実施する人 (Dr or Ns)

• 記録・評価をする人 (Ns)

• 薬物や医療器具を用意する人 (Ns)

*5人以上が理想だが、最低でも3人は必要。

*蘇生時の方針を決めるリーダーが必要。

CPR モニター装着 リズムチェック

薬剤ルート確保 アドレナリン0.01mg/kg IVorIO

CPR (2分間)

CPR (2分間)

リズムチェック

リズムチェック アドレナリン0.01mg/kg IVorIO

*途中で挿管した場合は 胸骨圧迫と独立して1分間に 10回程度呼吸補助

並行して原因検索 (血液検査、画像検査など)

蘇生の流れ

④ Color code

Color code ① 身長で色分け

② そこから年齢・体重を推定

③ 各色毎に蘇生に必要な医療器具のサイズや薬剤投与量を記載

搬入前の情報(年齢や体重)などから必要物品をあらかじめ準備 あるいは全く患者情報が乏しくても搬入された時に実際に コードを患者に当てて身長から体重を推定し物品を準備できる

⑤ 虐待

虐待の定義

2000年に制定された「児童虐待の防止等に関する法律」の中で保護者が18歳未満の子どもに対し以下の4つの行為をすることを虐待と低木々している

「身体的虐待」

「性的虐待」

「保護の怠惰・拒否(ネグレクト)」

「心理的虐待」

どこで虐待を疑う??

(受付)

・保険証がない ・住所不定 ・ドクターショッピング

(待合室)

・周囲とトラブル ・子どもを放置、たたく、怒鳴る

・子どもが重症でもあまり動揺していない

(診察室)

・母子手帳の記載がない ・説明が食い違う

・受診までに時間がかかっている ・再診を拒む

・必要以上にお薬を欲しがる

虐待を疑う受傷部位と受傷形態

事故に多い受傷部位 虐待に多い受傷部位

虐待に特徴的な傷跡

虐待の傷は見えにくいところ、新旧混在!!

ベルト 噛み傷

コード 棒

(道具による傷跡)

(火傷の跡)

たばこ 電熱器

アイロン ヘアアイロン

その他虐待に特徴的とされる所見 歩行開始前の乳児の急性硬膜下血腫・溺水

眼科所見

*身体的虐待の半数以上に何らかの眼合併症

(網膜剥離、眼底出血など)

骨折

*虐待に特徴的な骨折(骨幹端骨折、長管骨のらせん状骨折、鉛管骨折)

*虐待を疑う症例では2歳以下では全例に全身の骨折有無確認

性器や肛門の裂傷や出血

発育障害

虐待に対する初期対応

生命に関わる傷害、重大なネグレクトで衰弱が激しい、性的虐待が明らか、乳幼児、頭部外傷

「入院適応」

虐待が疑われた場合は速やかに児童相談所や市町村の窓口に

通報することが義務付けられている

個人の判断ではなく、虐待対応チームとして対応し、医療機関とし

て通告する耐性が望ましい

高松赤十字には

虐待対策委員会があります(院内の児童虐待対応フローチャートより一部抜粋)

被害児童の発見・認知

発見・認知者

担当医師 看護師長 (当直看護師長)

小児科部長・診療科長 (責任医師)

医療社会事業課 ◎虐待対策委員会委員長

香川県子ども女性相談センター

高松北警察署

報告 指示

通告

通報

連絡

報告

児童虐待診断チェックリスト

虐待事例発生報告書

を用いて報告

参考文献 • 日本小児救急医学会・公益社団法人日本小児科学会 (2013年) 小児救急医療の理論と実践

編集室なるにあ

• 宮坂勝之 (編)(2008年) 日本版PALSスタディガイド 小児二次救命処置の基礎と実践

エルゼビア・ジャパン

• 志馬伸朗 橋本悟 問田千晶 (編)(2012年) 小児ICUマニュアル 改訂第6版

永井書店

• American Heart Association (2011年) BLSヘルスケアプロバイダー AHAガイドライン2010準拠

シナジー

• 益子邦洋 (編)(2008年) 実践 小児外傷初療学 初期対応と緊急処置

永井書店

ご静聴ありがとうございました