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第13章 学童期における予防接種
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第1節 予防接種について 予防接種は 予防接種法と実際の実施にあたっての規則等を規定している関連法令等によって規
定されている(表13-1)。
表13-1 予防接種関連法令と内容
法 令 内 容
法 律 予防接種法 法大綱対象疾病など
政 令 予防接種法施行令 接種年齢、救済内容等
省 令 予防接種法施行規則 予防接種実施規則
医師の協力、救済請求方法接種方式
通 知 次官通知局長通知課長通知
予防接種実施要領具体的な接種方法など
現在の 予防接種は 予防接種法に基づく定期接種(BCGは2006(平成18)年 予防接種法改正によ
り一類疾病 予防接種に編入された)、それ以外の制度で行われるもの、任意接種に分けられてい
る。1994(平成6)年 予防接種法改正により、 予防接種は義務接種から勧奨接種となり、原則個
別接種となっている(表13-2参照)。救済制度が成り立つ期間がなるべく長くなるように設定
され、BCG、 麻しん風しん混合ワクチンを除いた定期 予防接種が小学校入学前に接種できなか
ったときに、就学時健診等で接種を促して、入学前後に接種を終了させる目的のために、最大90
ヶ月以内となっている。接種対象年齢からはずれた場合でも医学的には任意接種として行うこと
は可能である。
第13章 学童期における 予防接種
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学校医手帳
表13-2 日本の定期/任意 予防接種スケジュール(20歳未満)
(国立感染症研究所感染症情報センター ホームページより引用)
第2節 予防接種における 学校医の役割1. 予防接種歴の把握
2002(平成14)年3月、13文科ス第495号「文部科学省スポーツ青少年局長通知で 学校保健法施
行規則の一部改正」を受けて、平成15年度より就学時健康調査票で、就学時に全員の 予防接種歴
のチェックが可能となり、未接種者に対して積極的に指導し、その後の事後処置を講ずることが
明文化された。就学時健診時に 予防接種歴をチェックし、未接種者に対して接種勧奨を行い、可
能であれば接種報告書を2月に行われる入学前準備説明に集まるときに提出をお願いし、未接種
者の把握に努めることが期待される。これは 麻しん風しんワクチン第2期の未接種者に対する接
種勧奨にとって最後の機会となるので、できるだけ取り組んでいただくことが望ましい。
2. 予防接種の必要性の周知
健康教育の一環として生徒・児童及び教職員、保護者に対して、 予防接種の目的・効果・副反
応を周知させる。具体的にはワクチンで予防できるはずのVaccine Preventable Disease(VPD)
に感染して重い障害を残す例、死亡例が日本でも決して稀ではないことを認識してもらうことが
必要。
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第13章 学童期における予防接種
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第3節 最近の定期 予防接種の変更点と対応1.日本 脳炎ワクチン
2005(平成17)年5月、中学生の第3期接種後の重症急性散在性脳脊髄炎(ADEM)例が 予防
接種健康被害認定を受けたのを受け、5月30日に積極的勧奨の差し控え、7月に第3期の廃止が
決められた。第1期・第2期は定期接種として残されたが、積極的勧奨の差し控えのため、多く
の未接種者が残された。2009(平成21)年6月省令改正が行われ、第1期の定期接種においてマ
ウス脳由来日本 脳炎ワクチンとヒト乾燥細胞培養日本 脳炎ワクチンが使用可能となった。2010
(平成22)年8月に省令で改正され、ヒト乾燥細胞培養日本 脳炎ワクチンが2期の定期接種とし
て使用可能となったと同時に、定期接種年齢(1期:生後6ヶ月から90ヶ月未満、及び2期:9
~13歳未満)にあるものは1期の未接種分を、本来の接種間隔にとらわれずに接種できるように
なった。さらに2011(平成23)年5月の政令改正で、1999(平成7)年6月1日から2007(平成
19)年4月1日までに生まれて、国の積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃したと思われる者
(特例対象者)に対しては、20歳未満までの間に定期接種が可能となった。さらに、2012(平成24)
年2月には、厚生労働省健康局長通知により日本 脳炎 予防接種の積極的な勧奨と特例対象者に対し
ての接種機会の確保の通知が出された。校医として、内科検診の機会を通して、未接種者に対し
て接種を勧奨することが望まれる。なお、具体的な接種方法に関しては厚生労働省の日本 脳炎ワク
チンに関するQ&A(http://mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/dl/nouen_qa.pdf)
を参照されたい。
2. 麻しん風しんワクチンについて
2006(平成18)年4月より 麻しん風しん混合(MR)ワクチンが導入された。さらに、2006(平
成18)年6月の政省令の改正を受けて、平成24年国内麻疹排除に向けて、1歳児における1期及
び小学校入学前1年間の第2期の2回接種法が導入され、接種率を上げるために、他の定期 予防
接種と異なり、接種年齢枠を狭めた。特に、就学時健診における 予防接種歴の把握が重要とな
り、MR第2期の未接種者に対する積極的な勧奨を校医として学校側に働きかけ及び事後処置の
結果を学校側に求めるような努力が期待される。2007(平成19)年の中学生、高校生、大学生を
中心とした 麻しん流行を受けて、2008(平成20)年4月1日より5年間の時限処置として、第3
期:中学1年生に相当する年齢の者、第4期:高校3年生に相当する年齢の者に該当する者に対
して、2回目の 麻しん風しんの定期接種を行うようになった。時限処置により、 麻しんの報告数
が2008(平成20)年11,012件から2011(平成23)年434件と著しく減少したため、時限措置を延長
することで得られる効果が限定的と予想されるため、2012(平成24)年度をもって終了方針とな
った。さらに、母子保健法第十二条第一項第二号に規定する健康診査及び 学校保健安全法第十三
条第一項に規定する児童生徒等の 健康診断及び第十五条第一項に規定する職員の 健康診断等の機
会を利用して学校の児童生徒及び職員の罹患歴及び 予防接種歴の確認並びに未罹患であり、 麻し
んの 予防接種を必要回数接種していないものに対する 予防接種を推奨し、学校の管理者に対して
推奨を依頼する( 予防接種法に基づかない 予防接種の推奨)ことが望まれる(2012(平成24)年
9月13日厚生科学審議会感染症分科会感染症部会の 麻しんに関する小委員会報告、http://www.
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学校医手帳
mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008f2q.html)。
第4節 子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業 平成22年度より開始され、24年度まで継続されおり、近い将来定期化される見通しである。事
業の対象は子宮頸がん予防ワクチン・ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチンであり、“ワクチ
ン接種緊急促進事業実施要領”を遵守することになっている。接種対象者は、対象年齢の範囲で、
各市町村がそれぞれ接種年齢を設定した者となる。
子宮頸がん予防ワクチン ワクチン接種により、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を防ぐとともに、子宮頸がん
検診によって前がん病変を早期発見することにより、子宮頸がんを予防することができるた
めに導入された。現在、国内ではHPV16型、18型のウイルス様粒子を含んだ2価ワクチン
(サーバリックス)と尖圭コンジローマや再発性呼吸器乳頭腫の原因となる6型、11型も加
えられた4価ワクチン(ガーダシル)がある。いずれも初回性交渉前に接種することが推奨
されており、現行では小学校6年から高校1年生に相当する年齢が対象年齢となっている。
また、3回の接種は同じワクチンを接種することが必要となっている。
このワクチン接種後の血管迷走神経反射による失神が起こることがあるため、接種後の移
動は保護者または医療従事者が付き添い、接種後30分は背もたれのある椅子に座らせて観察
することが必要である。
日本のワクチンはここ数年で急速に接種可能なワクチンが増え、世界標準となっており、表
13-2で示されている任意接種のワクチンの大部分を定期化するように提言された(2012(平成
24)年5月23日厚生科学審議会感染症分科会 予防接種部会、http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/
2r9852000002b6ro.html)。
【参考文献】
1)木村三生夫,平山宗宏,堺 春美, 予防接種の手びき(第13版),近代出版,2011
2) 予防接種ガイドライン等検討委員会, 予防接種ガイドライン2012年度版, 予防接種リサー
チセンター,2012
3)国立感染症研究所ホームページ http://www.nih.go.jp/nid/ja/from-idsc.html