第2章 自転車利用の現状と課題 - nerima ·...

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4 第2章 自転車利用の現状と課題 1 自転車利用の現状 (1) 自転車利用に関する国などの動向 これまで、全国で自転車駐車環境整備についての取組みが進められてきまし た。近年は、新たに自転車走行環境に関する取組みが試行されています。一方、 自転車に関係する交通事故が多発していることを受け、道路交通法が改正され ました。自転車駐車環境については、全国の駅周辺の自転車駐車可能台数は約 432 万 1 千台であり、各自治体の努力により、年々整備が進んでいます。加え て、放置自転車の撤去にも取組んできたことから、放置自転車台数は約 24 万 3千台と年々減少する傾向にあります(内閣府:「平成 21 年度 駅周辺におけ る放置自転車等の実態調査について」より)。しかし、東京都は駅周辺の自転 車乗入台数が 670,795 台あり、そのうち放置自転車は全国一多い 51,623 台と なっており、依然として自転車駐車環境への継続的な取組みが必要です。 また、自転車走行環境については、国土交通省や警察庁が全国の 98 地区を モデル地区として指定し、自転車走行環境を整備し、社会実験を行っています。 そうした取組みの中で、新たな課題も明らかになりつつあります。 (2) 区内の公共交通の現状と自転車利用状況 区内公共交通は、区の東西を結ぶ「鉄道」と区の南北を結ぶ「バス」が運行 されています。 鉄道は、西武池袋線・西武豊島線・西武新宿線・西武有楽町線・東武東上線・ 東京メトロ有楽町線・東京メトロ副都心線・都営大江戸線が運行されており、 区内および隣接区市に 22 の駅があります。それらの駅を1日約 112 万人(平成 21 年度調査)が利用しています。 また、バスは、西武・国際興業・関東・京王電鉄・都営の5社が、区内に約 100 系統を運行しています。 これらの駅周辺には、1 日に約3万8千台の自転車が乗り入れており、その うち約3万6千台が自転車駐車場等を利用しています。

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第2章 自転車利用の現状と課題

1 自転車利用の現状

(1) 自転車利用に関する国などの動向

これまで、全国で自転車駐車環境整備についての取組みが進められてきまし

た。近年は、新たに自転車走行環境に関する取組みが試行されています。一方、

自転車に関係する交通事故が多発していることを受け、道路交通法が改正され

ました。自転車駐車環境については、全国の駅周辺の自転車駐車可能台数は約

432 万 1 千台であり、各自治体の努力により、年々整備が進んでいます。加え

て、放置自転車の撤去にも取組んできたことから、放置自転車台数は約 24 万

3千台と年々減少する傾向にあります(内閣府:「平成 21 年度 駅周辺におけ

る放置自転車等の実態調査について」より)。しかし、東京都は駅周辺の自転

車乗入台数が 670,795 台あり、そのうち放置自転車は全国一多い 51,623 台と

なっており、依然として自転車駐車環境への継続的な取組みが必要です。

また、自転車走行環境については、国土交通省や警察庁が全国の 98 地区を

モデル地区として指定し、自転車走行環境を整備し、社会実験を行っています。

そうした取組みの中で、新たな課題も明らかになりつつあります。

(2) 区内の公共交通の現状と自転車利用状況

区内公共交通は、区の東西を結ぶ「鉄道」と区の南北を結ぶ「バス」が運行

されています。

鉄道は、西武池袋線・西武豊島線・西武新宿線・西武有楽町線・東武東上線・

東京メトロ有楽町線・東京メトロ副都心線・都営大江戸線が運行されており、

区内および隣接区市に 22 の駅があります。それらの駅を1日約 112 万人(平成

21 年度調査)が利用しています。

また、バスは、西武・国際興業・関東・京王電鉄・都営の5社が、区内に約

100 系統を運行しています。

これらの駅周辺には、1 日に約3万8千台の自転車が乗り入れており、その

うち約3万6千台が自転車駐車場等を利用しています。

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(3) 自転車利用に関するアンケート調査結果

アンケート調査概要は、「図表 2-1 調査概要」に示すとおりです。

図表 2-1 調査概要

ア 自転車の利用状況

自転車利用者の約 80%は日常の移動手段として自転車を利用しており、その

使用頻度も 90%以上が週4日以上利用しています。利用目的は 80%以上が通

勤・通学ですが、その利用時間は 90%以上の自転車利用者が 15 分以下の短時

間であり、距離に換算すると約3km以内の利用となっています。自転車の利

用状況に関するアンケート結果を図表 2-2-1 から図表 2-2-4 に示します。

図表 2-2-1 自転車の利用状況に関するアンケート結果(1)

【普段よく利用する移動手段】

0.4 

0.3 

0.2 

0.4 

0.5 

2.7 

3.6 

4.4 

11.2 

28.4 

79.4 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

原付(50cc未満)

バイク(50cc以上)

タクシー

レンタサイクル

公共バス

自動車

徒歩

鉄道

自転車

(%)

配 布 日:平成 21 年 10 月 14 日~16 日

配 布 数:14,620 部

配 布 場 所:区内・隣接区市の 21 駅(上井草駅を除く)周辺の

自転車駐車場、ねりまタウンサイクルおよび道路

配 布 方 法:自転車への貼り付け、手渡し

回 収 方 法:郵送回収、現地回収

回収数・率:2,855 票・19.5%

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図表 2-2-2 自転車の利用状況に関するアンケート結果(2)

【自転車利用頻度】

0.8 

0.4 

1.7 

7.0 

23.5 

66.8 

0 20 40 60 80 100

無回答

自転車はほとんど

利用しない

1ヶ月に1~3日程度

利用する

週に1~3日程度

利用する

週に4,5日程度

利用する

ほぼ毎日

利用する

(%)

図表 2-2-3 自転車の利用状況に関するアンケート結果(3)

【自転車の利用目的】

0.9 

1.6 

3.0 

2.2 

1.5 

1.2 

13.0 

2.1 

10.0 

73.1 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

趣味・健康づくり

遊び(遊戯・

娯楽施設への移動)

通院

子どもの保育園

などへの送迎

買い物

業務

(配達・営業等)

通学

通勤

(%)

買物

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図表 2-2-4 自転車の利用状況に関するアンケート結果(4)

【自転車の利用時間】

1.5 

1.1 

0.7 

0.7 

5.7 

54.8 

36.8 

0 20 40 60 80 100

無回答

60分以上

60分程度

45分程度

30分程度

15分程度

5分程度

(%)

イ 自転車の駐車状況

自転車利用者の 90%以上が自転車駐車場に自転車を停めていますが、5%程

度の自転車利用者は歩道上などに停めています。また、歩道上などに自転車を

停めていた自転車利用者の 80%以上が通勤や買物のために自転車を利用して

います。自転車の駐車状況に関するアンケート結果を図表 2-3-1、図表 2-3-2

に示します。

図表 2-3-1 自転車の駐車状況に関するアンケート結果(1)

【自転車の駐車場所】

1.6 

2.1 

4.8 

3.6 

23.8 

6.8 

77.9 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

駐車場以外

(歩道上など)

施設は利用しないが、

スーパーや銀行などの

駐車場に停める

スーパーや銀行など

利用する施設の駐車場

民営の

自転車駐車場

区営の

自転車駐車場

(%)

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図表 2-3-2 自転車の駐車状況に関するアンケート結果(2)

【歩道上に停めていた人の利用目的】

1.6 

4.0 

7.7 

5.9 

4.9 

2.1 

4.2 

4.0 

39.7 

44.4 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

趣味・健康づくり

遊び(遊戯・

娯楽施設への移動)

通院

子どもの保育園

などへの送迎

業務

(配達・営業等)

通学

買物

通勤

(%)

ウ ねりまタウンサイクル(レンタサイクル)の利用状況

ねりまタウンサイクルを利用したことのない自転車利用者は 80%以上いま

すが、そのうち約 60%の方は、ねりまタウンサイクルを利用したいと回答して

おり、潜在的な利用欲求度が高くなっています。

ねりまタウンサイクルに関するアンケート結果を図表 2-4-1、図表 2-4-2 に

示します。

図表 2-4-1 ねりまタウンサイクルの利用状況に関するアンケート結果(1)

【タウンサイクルの利用状況】

1.8 

28.8 

12.6 

40.7 

3.9 

3.8 

8.5 

0 20 40 60 80 100

無回答

まったく知らない

聞いたことが

ある程度

知っているが

利用したことはない

定期利用または

一時利用したことがある

一時利用している

定期利用している

(%)

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図表 2-4-2 ねりまタウンサイクルの利用状況に関するアンケート結果(2)

【タウンサイクルの利用欲求度】

4.1 

37.4 

45.3 

13.4 

0 20 40 60 80 100

無回答

利用するつもりはない

機会があれば利用したい

ぜひ利用したい

(%)

エ 自転車の安全利用状況

自転車に関する事故経験について、加害者・被害者的立場に関係なく「自転

車同士の接触・衝突事故」が最も多く約 65%となっており、自転車走行時に危

ないと感じたのは、約 75%の自転車利用者が「脇道から飛び出してきた歩行

者・自転車・自動車とぶつかりそうになったとき」となっています。

また、自転車利用のルールについて、自転車利用者の約 80%が「自転車は車

道走行が原則である」ことを認識しており、自転車利用のルール・マナーを向

上させるには、「交通安全教室」、「撤去活動の強化」、「ルール・マナーの周知

活動」がそれぞれ約 30%の方が有効であると感じています。

自転車の安全利用状況に関するアンケート結果を図表 2-5-1 から図表 2-5-4

に示します。

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図表 2-5-1 自転車の安全利用状況に関するアンケート結果(1)

【自転車に関する事故経験の有無(複数回答)】

2.8 

12.2 

44.6 

31.4 

21.2 

13.6 

12.8 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

他の自転車に、接触、

衝突されたことがある

自動車に接触、

衝突されたことがある

他の自転車に、接触、

衝突したことがある

自動車に接触、

衝突したことがある

歩行者に接触、

衝突したことがある

(%)

図表 2-5-2 自転車の安全利用状況に関するアンケート結果(2)

【自転車走行時に危ないと感じたとき(複数回答)】

1.6 

5.4 

2.8 

13.2 

16.9 

31.9 

40.5 

48.9 

74.4 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

「危ない!」と感じたことはない

車道で、路上駐車している自動車に

ぶつかりそうになったとき

歩道で、障害物(電柱・バス停・看板)と

ぶつかりそうになったとき

歩道で、歩行者と

ぶつかりそうになったとき

車道で、自動車と

接触しそうになったとき

歩道で、他の自転車と

ぶつかりそうになったとき

脇道から飛び出してきた歩行者・自転車・

自動車とぶつかりそうになったとき

(%)

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図表 2-5-3 自転車の安全利用状況に関するアンケート結果(3)

【交通ルールを知っているか、守っているか】

1.4 

5.4 

0.5 

33.8 

45.5 

14.7 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

自転車をあまり利用

していないが、知っている

知っているが、関係なく

歩道を自由に走行している

知っている、

ルールも守っている

知らない

(%)

図表 2-5-4 自転車の安全利用状況に関するアンケート結果(4)

【交通ルール・マナーを向上させるために(複数回答)】

6.1 

17.0 

22.6 

15.1 

28.4 

29.8 

31.2 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

自転車の運転免許制度を

取り入れる

自転車誘導員を増やす

駅前などでマナー指導や

パンフレットを配布する

撤去活動を

もっと強化する

地域や学校で

交通安全教室を開催する

(%)

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オ 自転車走行環境

自転車走行時の走行位置は、自転車利用者の半数は歩道を走行しており、そ

の理由として、約 75%の自転車利用者は「車道は危険なため」となっています。

また、自転車走行環境のあり方に対する意識では、歩行者として道路を利用

している場合、60%以上の方が「自転車は車道を走行すべき」と考えており、

自動車運転者として道路を利用している場合、70%以上の方が「自転車は歩道

を走行すべき」と考えています。自転車利用者として道路を利用している場合

は、約 40%の方が「自転車は車道を走行すべき」と考え、50%以上の方が「自

転車は歩道を走行すべき」と考えています。自転車走行環境に関するアンケー

ト結果を図表 2-6-1 から図表 2-6-3 に示します。

図表 2-6-1 自転車走行環境に関するアンケート結果(1)

【自転車走行位置】

0.6 

28.8 

23.4 

48.1 

0 20 40 60 80 100

無回答

歩道、車道の

両方を走る

どちらかと言えば

車道を走る

どちらかと言えば

歩道を走る

(%)

図表 2-6-2 自転車走行環境に関するアンケート結果(2)

【歩道を走る理由】

12.1 

9.5 

4.4 

7.8 

11.0 

75.2 

0 20 40 60 80 100

無回答

その他

お店等に

入りやすいため

自転車は歩道を

走るものと思っているため

歩道は

走りやすいため

車道は

危険なため

(%)

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図表 2-6-3 自転車走行環境に関するアンケート結果(3)

【自転車走行環境のあり方に対する意識】 ■アンケート質問内容

将来、自転車が走りやすい道路を整備するとしたら、どのような道路が、いろい

ろな人にとって利用しやすいと思いますか。2つの整備イメージについて、

①歩行者として歩いているとき

②自転車を利用しているとき

③自動車を運転しているとき

を想像して、それぞれの立場で利用しやすいと思う整備イメージを選んでくださ

い。

歩道 車道

自動車

自転車

歩行者

車道の端の部分を色分けするなどして、自転車が走る部分を示す方法

歩道 車道

自動車

自転車

歩行者

歩道に自転車が走る部分を色分けするなどして、歩行者が歩く部分と自転車が走る部分を分ける方法

12.3

40.4

67.0

72.1

55.5

27.2

15.6

4.1

5.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

③自動車を運転しているとき

②自転車を利用しているとき

①歩行者として歩いているとき

自転車が車道を走る整備 自転車が歩道を走る整備 無回答

(%)

整備イメージ①【自転車が車道を走る】 整備イメージ②【自転車が歩道を走る】

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2 全国自転車問題自治体連絡協議会の活動

昭和 40 年代から始まった駅周辺の放置自転車は、平成3年頃に全国で 80 万台

を推移しており、大量の放置自転車が交通の妨げとなっているばかりでなく、交

通事故を誘発したり、救急・消防活動の妨げとなるなど、社会問題化していまし

た。放置自転車問題については、法整備や財源が十分でなかったため、自治体が

単独で解決するのは極めて難しい状況でした。

そこで、平成4年2月に全国の 172 の自治体が結束し、「全国自転車問題自治体

連絡協議会」(以下「全自連」といいます。)を発足させ、自転車法の改正等、制

度の見直しを積極的に国へ働きかけてきました。その結果、平成6年に自転車法

が改正され、鉄道事業者は自転車駐車場の設置に積極的に協力しなければならな

いことや自転車を違法に駅前広場などに放置し撤去された場合、撤去・保管・売

却などに要した費用をその原因者たる当該自転車の利用者に負担させることがで

きることが明記されるなど、一定の成果をあげることができました。

しかし、改正自転車法による鉄道事業者の自転車駐車場整備が努力規定である

ため、市区町村が駅周辺に自転車駐車場を整備する場合、鉄道事業者から用地提

供等の協力を得られない事例が多くありました。全自連は、駅周辺に放置してい

る自転車利用者の大半が鉄道利用者であり、駅は自転車の大量の駐車需要を生じ

させる施設であると認識しています。そこで、自転車法により大量の駐車需要を

生じさせる百貨店、スーパーマーケット等大規模商業施設に対して自転車駐車場

の設置を義務付けていますので、鉄道駅に対しても同様の自転車駐車場の設置を

義務付けすべきとの考えから、国に対してさらなる自転車法の改正を要望してい

ます。

近年、地球温暖化に伴う環境問題等への関心が高まり、環境にやさしく、手軽

に健康を増進できる乗り物としての自転車の利活用が注目されています。しかし、

これまでの道路整備が自動車を優先に進められてきたため、道路は自転車にとっ

て利用しやすい状況になく、自転車走行環境等の整備が課題となってきています。

そこで、全自連では平成 21 年度における国への要望に「市区町村が行う自転車の

走行環境の整備を含む自転車利用環境の整備に対して国による支援策とともに、

市区町村が自転車の走行環境の整備に柔軟に取り組める環境の創出」を新たな要

望として追加しています。

平成 22 年8月、全自連会長(練馬区長)と副会長(武蔵野市長)が、国土交通

大臣に自治体の自転車対策の現状と課題や自転車駐車場整備への鉄道事業者の協

力実態を説明するとともに、鉄道事業者に対する自転車駐車場の付置義務化や市

区町村が自転車走行環境の整備に柔軟に取り組める環境の創出に関する要望書を

手渡しました。

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【左から国土交通副大臣、全自連会長、全自連副会長】

3 自転車対策のこれまでの取組みと課題

(1) 自転車駐車場の整備

ア 自転車駐車場の整備

自転車駐車場の整備台数は、平成 11 年度末の 75 箇所 34,063 台から平成 22

年5月までに 80 箇所 42,551 台へと 8,488 台を増設し、区全域では平成 22 年

度の整備目標台数(40,230 台)を超える台数を整備しています。

その結果、区全体の午前の放置自転車は平成 11 年の 10,285 台から平成 22

年には 2,369 台と大幅に減少しています。しかし、駅別の自転車駐車場整備台

数でみると自転車乗入台数に対して不足する駅がありますので、追加整備が必

要です。

また、区全体の平成 22 年の午後の放置台数は 4,821 台となっており、午前

の放置台数の約2倍となっており、午後の放置自転車による交通障害が問題と

なっています。これまで、通勤・通学を中心とする午前からの自転車利用者を

想定した自転車駐車場の整備をしてきましたが、今後、午後からの駅利用者や

買物客等を考慮した自転車駐車場を整備する必要があります。

また、アンケート調査によると買物客等の短時間利用者は自転車駐車場を利

用しないで、道路上に放置している傾向がありますので、買物客等の短時間利

用に配慮した利用料金制度が求められています。

鉄道駅別の自転車駐車場整備状況を図表 3-1 に示します。

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図表 3-1 鉄道駅別の自転車駐車場整備状況(22 駅)

1,197

540

1,077

2,533

1,026998

3,8494,382

2,496

0

2,134

1,237

661

2,797

2,195

885

452

3,609

6,621

2,496

0

2,256

1,110730

1,7902,120

760

1,280

4,390

6,320

3,050

90

2,320

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

江古田駅

桜台駅

練馬駅

中村橋駅

富士見台駅

練馬高野台駅

石神井公園駅

大泉学園駅

保谷駅

上井草駅

上石神井駅

平成11年度末

平成22年5月

平成22年度整備目標

(台)

1,807

231

711

1,207

4,741

998

231110

402 300

3,093

2,245

231

849

1,667

5,561

998

231 186402

1,004

4,857

2,420

840 800

2,560

3,630

1,370

90 180 390640

3,350

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

武蔵関駅

東武練馬駅

小竹向原駅

氷川台駅

平和台駅

地下鉄赤塚駅

新桜台駅

新江古田駅

豊島園駅

練馬春日町駅

光が丘駅

平成11年度末

平成22年5月

平成22年度整備目標

(台)

〔平成 21 年 3 月以前〕 〔平成 21 年 4 月以後〕

【 放 置 自 転 車 の 解 消 】

(光が丘駅周辺)

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イ 自転車駐車場・ねりまタウンサイクルの管理

自転車駐車場・ねりまタウンサイクルの管理は、平成 17 年度までは(財)

練馬区都市整備公社へ委託していました。

平成 18 年度からは(財)練馬区都市整備公社を指定管理者に指定し、管理

を行っています。指定管理者制度の導入により、管理運営費の削減、自転車駐

車場等の利用率の向上を実現するとともに、収益の一部を区に納付することと

し、自転車施策の財源を確保しています。

ウ 自転車駐車場設置の付置義務

大型商業施設や銀行、遊技場等、多数の来客がある施設を新築・増設する場

合には、その施設規模に応じた自転車駐車場の整備を「練馬区自転車の適正利

用に関する条例」により義務付けています。付置義務制度を施行した平成元年

から平成 22 年までに延べ 92 施設、8,417 台を整備しています。

平成 18 年度には、「練馬区まちづくり条例」の施行に合わせて、これまで対

象施設でなかった飲食店や映画館などを新たに加えるとともに、施設を付置義

務対象の用途に変更する場合にも適用することとしました。

しかし、付置義務に基づき設置された自転車駐車場であっても集客力の高い

施設では収容しきれない場合や、付置義務対象外の施設でも集客力の高い飲食

店や小売店舗、多数の学生が集まる学習塾等があり、放置自転車問題を引き起

こしています。

付置義務の対象

・百貨店、スーパーマーケットその他の小売店舗、飲食店(400 ㎡を超えるもの)

・銀行(500m2を超えるもの)

・遊技場(300m2を超えるもの)

・映画館、劇場、ボーリング場(900m2を超えるもの)

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(2) ねりまタウンサイクル(レンタサイクル)

ねりまタウンサイクル(レンタサイクル)は駅(駅周辺に設置されたレンタ

サイクル施設)と自宅(通勤・通学先)とをつなぐ交通として貸自転車を利用

する仕組みです。ねりまタウンサイクルの管理は、平成 18 年度に指定管理者

制度を導入し、利用促進を図ったことにより平成 17 年度の利用率は 84%でし

たが、平成 21 年度には 103%に向上しています。しかし、施設ごとにみると利

用率の低い施設もあり、全体の収支は赤字となっています。さらに、施設の老

朽化も進んでいることから、施設の再編も含めた大幅な見直しが必要です。

近年、各地で社会実験が行われているコミュニティサイクルシステムは、こ

のレンタサイクルを発展させ、利用者がレンタサイクル施設間を自由に利用と

乗り捨てができるように、複数施設の相互利用(ネットワーク化)を図ること

により自転車の高度利用を実現することができる仕組みです。

区ではコミュニティサイクルシステムの導入について検討しましたが、コミ

ュニティサイクル利用者数の見込みとコミュニティサイクル管理システムの

開発など初期投資や運営費用を検証した結果、費用対効果において現在のレン

タサイクルを利用したコミュニティサイクルシステムの実現は困難と判断し

ています。

(3) 放置自転車対策

ア 自転車の放置禁止区域の指定・見直し

区内および隣接区市の21駅周辺で自転車の放置禁止区域付5)を指定していま

す。平成 12 年から平成 22 年までに、自転車の放置禁止区域を 17 駅で延べ 27

回の見直し(拡大)をしています。

イ 放置自転車の撤去

指定管理者制度の導入に合わせ、放置自転車対策業務(放置自転車の撤去・

保管・返還・自転車の誘導業務)を一括して指定管理者に業務委託することに

より、区内の自転車対策を一体的・総合的に行うこととしました。平成 18 年

【ねりまタウンサイクル

(レンタサイクル)】

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度から撤去回数を大幅に増やすなど、放置自転車対策を強化しています。

その結果、午前の放置自転車台数は、平成 12 年5月の 9,530 台 から平成 22

年5月の 2,369 台に減少しています。なお、平成 21 年度には、2,124 回撤去を

行い、30,756 台を撤去しています。

しかし、午後になると放置自転車が増加し、午前の放置自転車台数の約2倍

となっています。午後の放置自転車の撤去は現在8駅で実施していますが、午

後の撤去を拡大していく必要があります。(図表 3-2、図表 3-3 参照)。

また、土・日曜の放置自転車の撤去を平成 20 年度から開始しており、平成

22 年度では 15 駅で実施しています。

なお、放置自転車の撤去業務(移送・保管・返還を含む。)や自転車誘導業務

など放置自転車対策費として年間約4億9千万円(平成 21 年度決算額)とい

う多額な経費を支出しています。放置自転車1台当たりの撤去・移送・保管に

要する費用は 9,646 円です。区では、放置自転車対策費の財源を確保するため、

撤去自転車の返還時に自転車利用者から撤去手数料を負担いただくとともに、

自転車利用者が受け取りに来ない撤去自転車の売却処分や国の補助金を活用

するなど約1億2千万円(平成 21 年度決算額)の財源を確保しています。

図表 3-2 駅周辺の自転車利用台数の推移

9530 8884 8474 7274 7337 7119 6076 4971 4096 2550 2369

31486 30797 31110 32936 34119 34944

35067

35429

35731

37693 36116

23.2 22.4 

21.4 

18.1 17.7 

16.9 

14.8 

12.3 

10.3 

6.3  6.2 

0

5

10

15

20

25

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

H12年 H13年 H14年 H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年 H22年

(台)

駐車場利用総台数(台) 路上放置総台数(台) 放置率(%)

(%)

注) 台数には、自転車のほか原動機付自転車を含む

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図表 3-3 午前と午後における放置自転車台数の推移

4,971

8,074

4,096

6,129

2,550

5,225

2,369

4,821

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後

平成19年5月 平成20年5月 平成21年5月 平成22年5月

(台)

ウ 撤去手数料の見直し

撤去手数料は、撤去・保管にかかる費用や自転車駐車場の利用料ならびに近

隣区の撤去手数料を勘案して、平成 17 年 10 月に見直しを行い、自転車の撤去

手数料を 2,500 円から 4,000 円に、原動機付自転車の撤去料を 3,500 円から

7,000 円にしました。

エ 自転車の誘導員の配置

駅周辺における自転車の放置を未然に防止するため、自転車誘導員を配置し、

路上に自転車を放置しようとしている方に誘導・案内を行い、自転車駐車場の

利用を促進しています。自転車誘導員は平成 12 年度に 17 駅で一日当たり延べ

69 人の配置でしたが、平成 22 年度では 21 駅で 127 人を配置して、誘導・案内

を強化しています。

しかし、自転車利用者の中には、自転車誘導員の誘導・案内に対して無視ま

たは反発し、自転車を放置する場合もあり、さらに自転車誘導員のコミュニケ

ーション能力など技術の向上を図る必要があります。

【自転車誘導・案内状況】

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(4) 自転車の安全利用対策

ア 交通安全教育

教育委員会や老人クラブ・警察などと連携し、自転車の交通事故を防止する

ため、自転車利用のルールやマナーの周

知と向上を図っています。

平成 21 年度には、①交通安全教室・

自転車点検(小学生対象:16 校、1,500

名)、②自転車運転免許制度(小学生対

象:51 校、4,734 名)、③スタントマン

の事故再現による交通安全教室(中学生

対象:7校、3,028 名)、④高齢者交通

安全講習会(高齢者対象:1回、90 名)

を開催しています。

イ 広報活動

区報やパンフレット・ポスターなどにより、自転車の安全利用について広報

活動を行っています。

ウ 子ども用ヘルメット購入助成事業

子ども用ヘルメット購入助成事業として、区内在住の1歳児(の保護者)を対

象に、SG マーク(安全基準に適合した製品に付けるマーク)付きヘルメットで、

区の指定する協力店で購入した者に対し、ヘルメット1個当たり 2,000 円を補

助しており、平成 21 年度には 1,389 件の助成を実施しています。

エ 3人乗り(幼児2人同乗用)自転車レンタル事業

3人乗り自転車の普及促進と適正な乗車方法の啓発を図るために、平成 21

年度から3人乗り自転車レンタル事業を開始しました。3人乗り自転車は幼児

2人が 1 歳から6歳未満の利用に限定され、価格も高いため、子育て世帯には

経済的負担となっています。そこで、購入するよりも安く利用できるレンタル

による3人乗り自転車の普及を図っています。

なお、3人乗り自転車のレンタル事業は、ねりまタウンサイクルを運営管理

している(財)練馬区都市整備公社と協働して行っています。また、利用者に

は自転車交通安全講習会に参加していただくことにより自転車利用ルールと

マナーの啓発を行っています。平成21年度では、185台をレンタルしています。

【交通安全教室(スタントマンの

事故再現による交通安全教室)】

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(5) 自転車走行環境の整備

環境意識の高まりの中で、自転車は環境負荷の少ない乗り物として注目され

ています。また、健康増進や観光振興にも活用できる乗り物でもあります。こ

うした自転車利用意識の高まりの中で、安全で快適に利用できる自転車走行環

境の整備が求められています。

区では、平成 12 年に策定した自転車利用総合計画において、自転車走行環

境の整備を掲げ、自転車走行空間創出のために路上荷捌き路外転換実験を行っ

てきました。平成 20 年度からは、自転車走行環境整備の課題や今後の方向性

等について検討してきました。

また、区内の都道では特例都道第 443 号(光が丘大通り)に約 300m、特例

都道第 439 号(千川通り)に約 1,000mの自転車歩行者道付6)が整備され、自転

車走行空間としてカラー舗装されています。しかし、自転車走行空間に自転車

が放置されていたり、歩行者の安全を無視した走行があるなど、利用のルール

が十分浸透しておらず、活用方法などに課題が残されています。

今後は、整備後の利用状況や社会実験で得られた課題を踏まえて、自転車走

行空間の整備を図っていくとともに、利用ルールについて周知を徹底するなど、

ソフト的な対策付7)も重要となっています。

【特例都道第 439 号(千川通り)の北側

歩道に整備された自転車走行空間】