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2食育推進施策の具体的取組

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第2部

食育推進施策の具体的取組

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第1節 子供の基本的な生活習慣の形成1 食に関する子供の基本的な生活習慣の状況子供たちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和の取れた食事、十分な休養・睡眠が大切です。しかしながら、最近の子供たちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子供にとって当たり前で必要不可欠であるといわれている基本的な生活習慣に乱れが見られます。今日の子供の基本的な生活習慣の乱れは、学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして指摘されています。文部科学省が小学校6年生と中学校3年生を対象に実施した平成30(2018)年度「全国学力・学習状況調査」(以下「学力調査」という。)によると、毎日、同じくらいの時刻に寝ている小学生の割合は41.4%、中学生の割合は35.7%にとどまっています(図表2-1-1)。

図表2-1-1 毎日、同じくらいの時刻に寝ている小・中学生の割合

35.735.7

41.441.4

38.538.5

35.535.5

19.219.2

17.317.3

6.56.5

5.75.7

0 20 40 60 80 100

中学校3年生(n=1,007,768)

小学校6年生(n=1,043,270)

している どちらかといえば、している あまりしていない 全くしていない

(%)

資料:文部科学省「全国学力・学習状況調査」(平成30(2018)年度)注:�(質問)あなたは、次のようなことをしていますか。当てはまるものを1つずつ選んでください。「毎日、同じくらいの時刻に

寝ている」�(選択肢)「している」、「どちらかといえば、している」、「あまりしていない」、「全くしていない」

子供の朝食摂取については、朝食を毎日食べる小学生の割合は84.8%、中学生の割合は79.7%となっています。一方、朝食を欠食することがある(「あまりしていない」及び「全くしていない」)小学生の割合は5.5%、中学生の割合は8.0%となっています(図表2-1-2)。

図表2-1-2 朝食を毎日食べる小・中学生の割合

0 20 40 60 80 100

中学校3年生(n=1,007,768)

小学校6年生(n=1,043,270)

している どちらかといえば、している あまりしていない 全くしていない

(%)

79.7

84.8

12.2

9.7

5.4

4.1

2.6

1.4

資料:文部科学省「全国学力・学習状況調査」(平成30(2018)年度)注:�(質問)あなたは、次のようなことをしていますか。当てはまるものを1つずつ選んでください。「朝食を毎日食べている」�(選択肢)「している」、「どちらかといえば、している」、「あまりしていない」、「全くしていない」

家庭における食育の推進第2部

第1章

第1章

家庭における食育の推進

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また、毎日朝食を食べる子供ほど、学力調査の平均正答率が高い傾向にあります(図表2-1-3)。さらに、平成30(2018)年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、毎日朝食を食べる子供ほど、体力合計点が高い傾向にあります(図表2-1-4)。

図表2-1-3 朝食摂取と学力調査の平均正答率との関係

0

20

40

60

80

100(%) (%)

国語A 国語B 算数A 算数B0

20

40

60

80

100

国語A 国語B 数学A 数学B

72.372.3

56.456.465.165.1

53.453.4

55.355.338.338.3

49.049.033.433.4

77.877.8

63.363.368.968.9

49.949.9

67.067.050.950.9 52.052.0

33.133.1

小学校6年生 中学校3年生

している どちらかといえば、している あまりしていない 全くしていない

資料:文部科学省「全国学力・学習状況調査」(平成30(2018)年度)注:(質問)あなたは、次のようなことをしていますか。当てはまるものを1つずつ選んでください。「朝食を毎日食べている」(選択肢)「している」、「どちらかといえば、している」、「あまりしていない」、「全くしていない」

図表2-1-4 朝食の摂取状況と新体力テストの体力合計点との関係

0

10

20

30

40

50

60(点) (点)

0

10

20

30

40

50

6054.6 56.251.0 52.9

42.6

51.1

39.445.7

男子 女子 男子 女子

毎日食べる 食べない日もある 食べない日が多い 食べない

小学校5年生 中学校2年生

資料:スポーツ庁「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(平成30(2018)年度)注:(質問)「朝食は毎日食べますか。(学校が休みの日も含める)」(選択肢)「毎日食べる」、「食べない日もある」、「食べない日が多い」、「食べない」

第1章

家庭における食育の推進

第1節 ● 子供の基本的な生活習慣の形成

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2 「早寝早起き朝ごはん」国民運動の推進(1)子供の生活習慣づくりの推進子供たちの生活習慣は家庭や社会の影響を受けやすいため、文部科学省では子供から大人までの生活習慣づくりを社会全体の取組として推進しています。平成30(2018)年度は、独立行政法人国立青少年教育振興機構と連携協力し、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を促進するための「早寝早起き朝ごはん」フォーラム事業を全国4か所で実施するとともに、中学生の基本的な生活習慣の維持・定着・向上を図るため、対象生徒の基本的な生活習慣の実態把握を行い、課題を明確化し、その課題解決に向け創意工夫した取組を行う「早寝早起き朝ごはん」推進校事業を全国13か所で実施しました。(図表2-1-5、図表2-1-6)。

図表2-1-5 平成30(2018)年度「早寝早起き朝ごはん」フォーラム事業概要

No. 都道府県 委託団体 事業名1 静岡県 静岡県 早寝早起き朝ごはんフォーラムinふじのくに

2 兵庫県 「早寝早起き朝ごはん」兵庫県フォーラム実行委員会 元気ひょうご!早ね早おき朝ごはんフォーラム

3 奈良県 奈良県立教育研究所 子どもと親の生活習慣ジャンプアップ支援事業

4 島根県 島根県教育委員会「早寝早起き朝ごはん」フォーラムinしまね~睡眠から整える生活習慣 しつのよい まなびと ねむり しまねの子~

「早寝早起き朝ごはん」フォーラムinしまね�チラシ

第1章

家庭における食育の推進

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図表2-1-6 平成30(2018)年度「早寝早起き朝ごはん」推進校事業概要

No. 都道府県 委託団体 事業名1 北海道 北海道教育委員会 早寝早起き朝ごはん推進校事業2 北海道 東

ひがし川かわ町ちょう教育委員会 中学生の望ましい生活習慣定着に向けた調査研究活動

3 北海道 国立大学法人北ほっ海かい道どう教きょう育いく大学 クラウドシステムを活用した就寝・起床時間に関する

PDCAサイクルの確立と啓発資料・指導計画の作成

4 茨城県 潮いた来こ市し教育委員会 潮

いた来こ二中 みんなで取り組む食育・生活習慣改善

プロジェクト

5 茨城県 つくば市教育委員会 生活習慣の確立から始める“夢”実現プロジェクト~学力向上及び体力・競技力向上をめざした健康づくり~

6 群馬県 南なん牧もく村むら教育委員会 『早寝・早起き・朝ごはん・ノーメディア』運動

7 大阪府 大阪府教育委員会 早寝早起き朝ごはん推進校事業8 大阪府 堺

さかい市し教育委員会 睡眠教育を軸とした『家での7つのやくそく』推進事業

9 和歌山県 湯ゆ浅あさ町

ちょう 早寝早起き朝ごはん推進校事業

10 岡山県 玉たま野の市し立荘しょう内ない中学校 『早寝・早起き・朝ごはん』

~キャリア教育的視点からのアプローチ~11 香川県 三

み豊とよ市し教育委員会 にこにこ三野津っ子育成事業

12 福岡県 広ひろ川かわ町ちょう立広ひろ川かわ中学校 望ましい食習慣を自ら身に付ける生徒の育成

13 鹿児島県 霧きり島しま市し

霧きり島しま市し立横よこ川かわ中学校区「早寝早起き朝ごはん」推進事業

また、基本的な生活習慣の定着に向けた取組の一層の推進を図るため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動などの子供の生活習慣づくりに関する活動のうち、特色ある優れた実践を行い、地域全体への普及効果が高いと認められた53の活動に対して、文部科学大臣表彰を行いました。

(2)「早寝早起き朝ごはん」全国協議会との連携による運動の推進「早寝早起き朝ごはん」全国協議会は、平成18(2006)年に発足し、幅広い関係団体や企業等の参加を得て、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を文部科学省と連携して推進しています。平成30(2018)年11月現在、全国協議会の会員団体数は299で、様々な年齢期の子供や保護者に向けたガイドブックの作成・配付、全国フォーラム・総会の企画・運営等、子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる取組を展開しています。平成30(2018)年度は、幼児期から「早寝早起き朝ごはん」を始めとした規則正しい生活習慣について楽しみながら理解し、実践してもらうことを目的として、平成29(2017)年度に作成した絵本「にこにこげんきのおまじない」に続いて、シリーズ第2弾となる絵本「みんなでにっこり!あさごはん」を作成し、全国の図書館、教育委員会、幼稚園、保育所等に配布しました。また、専門家による講演やトークセッション等を通し、子供の生活リズムについての知識や理解を深めるために、毎年3月に全国フォーラムを開催しています。

絵本「みんなでにっこり!あさごはん」©やなせスタジオ

第1章

家庭における食育の推進

第1節 ● 子供の基本的な生活習慣の形成

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富ふっ津つ市し立佐

さ貫ぬき中学校は、全校生徒が57名

の小規模な学校です。アットホームな雰囲気の中、生徒はのびのびと生活を送っています。佐貫中学校では、養護教諭を中心に、生徒の健やかな成長のためには生活習慣が大事であるという認識から、「朝食でつくる!元気UP習慣」活動を実施し、生徒の生活習慣づくりに努めています。主な活動内容として、栄養教諭による「成

長期の体と食生活」や「朝食の大切さ」などの食育をテーマにした公開授業の実施、生徒、保護者、地域住民を対象とした健康教育講演会の開催や、保健体育授業で「生活習慣チェック」を実施するとともに、「睡眠チェック」に取り組んでいます。また、「朝食でつくる!元気UP強化月間」を設定し、生徒会が主体となって、アンケートの

実施や、全校集会や各学級を訪問し、朝食などをテーマとした劇を通じて生活習慣の改善を呼び掛けました。さらに、「朝食標語・朝食レシピ」コンテストを実施し、「朝食標語」の優秀賞作品は、啓発

ポスターや広報紙で紹介するとともに、「朝食レシピ」は全校生徒のレシピを「朝食レシピ集」としてまとめ、全家庭に配布しました。取組を通じて、生活習慣づくりの意識が向上し、朝食や睡眠の習慣が改善されるだけでなく、

生徒会活動の一環として活動したことにより、生徒の自治的能力の向上にもつながりました。また、地域へのポスター掲示による活動の普及や、「朝食標語・朝食レシピ」コンテストを

実施し、レシピ集を配布したことで、保護者への呼び掛けにもつながり、各家庭での朝食習慣改善のきっかけにもなりました。引き続き、学校・家庭・地域が一体となって、「朝食でつくる!元気UP習慣」活動を実施し、

生徒の生活習慣づくりの改善に努めていきたいと思います。

朝食でつくる!元気UP習慣(「早寝早起き朝ごはん」推進校事業)千葉県富

ふっ津つ

市し

立佐さ

貫ぬき

中学校

生活習慣チェックに取り組む生徒の様子

栄養教諭による公開授業の様子 朝食レシピ集

第1章

家庭における食育の推進

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3 望ましい食習慣や知識の習得(1)家庭教育支援における取組文部科学省では、家庭における食育や、食をきっかけにした生活体験の重要性を、全ての保護者に理解してもらうよう、地域における家庭教育支援の取組の中で、積極的な情報発信や保護者向けの学習機会を設けることを推進しています。また、全国の教育委員会やPTA、子育て支援団体における家庭教育に関する学習機会等での活用を促すために、家庭教育に関するヒント集として「家庭教育手帳」をホームページに掲載し、その中において「一日のスタートは朝食から。」、「一緒に食事をするって、とても大切。」などのテーマで、食育に関する内容を盛り込んでいます1。

(2)子供の肥満予防の促進厚生労働省では、子供の肥満が将来の肥満や生活習慣病に結びつきやすいとの報告があることから、「健康日本21(第二次)」において、「肥満傾向にある子供の割合の減少」について目標(小学5年生の中等度・高度肥満傾向児の割合を減少傾向にする)を設定しています。子供においても、偏った栄養摂取や不規則な食事などの食生活の乱れによる肥満や痩

そう身しん傾向

が見られることから、子供とともに、保護者や家庭が健やかな生活習慣を実現できるよう、地方公共団体においても、様々な食育活動が行われています。

1 家庭教育手帳(文部科学省):http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/main8_a1.htm

第1章

家庭における食育の推進

第1節 ● 子供の基本的な生活習慣の形成

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第2節 妊産婦や乳幼児に関する栄養指導1 妊産婦に対する栄養指導近年、20歳代及び30歳代の女性において食事の偏りや痩

そう身しん(低体重)など健康上の問題が

指摘されており、妊娠期・授乳期においても、母子の健康の確保のために適切な食習慣の確立を図ることが極めて重要な課題となっています。特に、妊娠期の適切な体重増加量については、出生体重との関連が示唆されること等から、妊娠中の体重増加量が一律に抑制されることのないよう、肥満や痩

そう身しんといった妊婦個々の体格に配慮した対応が求められています。

このため、厚生労働省では、妊娠期・授乳期における望ましい食生活の実現に向け、何をどれだけ食べたら良いかが分かりやすく伝わるよう食事の望ましい組合せや量を示した「妊産婦のための食事バランスガイド」や、妊婦個々の体格に応じて適切な体重増加量が確保されるよう妊娠中の推奨体重増加量を盛り込んだ「妊産婦のための食生活指針1」を、妊産婦に対する健康診査や各種教室等において活用するなどの普及啓発を図っています。

1 平成18(2006)年2月に「健やか親子21」推進検討会が作成

第1章

家庭における食育の推進

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妊産婦の食育の取組コラム厚生労働省では、妊産婦の望ましい食生活の実現に向け、何をどれだけ食べたら良いかが分

かりやすく伝わるよう食事の望ましい組合せや量を示した「妊産婦のための食事バランスガイド」や「妊産婦のための食生活指針」を作成し、普及啓発を図っています。妊娠、出産を経験する者が多い世代でもある若い女性を中心に、食事の偏りや低体重(やせ)

の者の割合が増加するなど、健康上の問題が指摘されています。さらに、社会環境としては、女性(30~54歳)の家事時間は過去10年間で大幅に減少しており、女性の就業率の増加等に伴い、女性が食事を作るために費やせる時間は少なくなっていると考えられます。妊娠期や授乳期は食生活を見直す契機となりやすいこと、また、親となる若い世代が食に関する知識を身につけ、実践し、次世代につなげていくことが重要であることから、妊産婦やその配偶者・親を通じた食育を一層進めることが必要です。そこで、平成30(2018)年度は、「健やか親子21(第2次)」の普及啓発の一環として、

「妊産婦の食育」を重点テーマとして、特設ホームページを設け、妊産婦に必要な食生活に関する情報の充実を図りました。また、妊娠を契機に、女性が家族と共に、これまでの食生活を見直すことができれば、家庭

における食生活の向上につながることが期待されることから、妊産婦の食生活の実態を調査し、その結果を踏まえて、食生活を見直すためのツールとして、レシピ「妊娠中・産後のママのための食事BOOK」等を作成し、周知啓発を行いました。

「健やか親子21(第2次)」のホームページ

便利!手間いらず!

カンタン!

厚生労働省 平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業

ママのための食事BOOK

妊娠中・産後の

「ママのための食事BOOK」リーフレット

「働く女性のためのヘルスケアブック」リーフレット

第1章

家庭における食育の推進

第2節 ● 妊産婦や乳幼児に関する栄養指導

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2 乳幼児の発達段階に応じた栄養指導の充実授乳期・離乳期は子供の健康にとって極めて重要な時期であり、親子双方にとって、慣れない授乳、慣れない離乳食を体験する過程を支援することが重要です。このため、厚生労働省では、産科施設、小児科施設、保健所・市町村保健センターなどの機関の保健医療従事者に適切な支援に関する基本的事項を共有することにより、授乳や離乳について適切な支援が推進されるよう「授乳・離乳の支援ガイド1」による普及啓発を進めています。同ガイドは、科学的知見の集積、育児環境や就業状況の変化、母子保健施策の充実等、授乳や離乳を取り巻く社会環境等の変化を踏まえ、これまでよりも育児支援の視点を重視するとともに、食物アレルギー予防に関する支援の充実等、内容の見直しを平成31(2019)年3月に行いました。また、厚生労働省では、授乳・離乳の支援、乳幼児の食生活改善のための基礎資料として、全国の乳幼児の栄養方法や食事の状況などの実態を把握するため、昭和60(1985)年から10年ごとに「乳幼児栄養調査」を実施しています。直近の調査は、平成27(2015)年に実施し、平成28(2016)年に結果の概要を公表しました。今回の調査結果からは、母乳栄養の割合が増加したことや、経済的な暮らし向きによって子供の食物摂取の状態に差があること等が明らかになりました。地域においては、市町村保健センターを中心に管理栄養士・栄養士等による乳幼児を対象とした栄養指導が実施されており、健康診査や各種教室等における保健・栄養指導を通じて、出産から離乳食の開始時期以降に至るまでの一貫した支援が図られるような取組を行っています。平成29(2017)年度に保健所及び市区町村で栄養指導を受けた乳幼児は2,972,079人2

です。さらに、児童福祉施設においては、適切な栄養管理方法や食事提供における留意点、食を通した自立支援など食育の推進についてまとめた「児童福祉施設における食事の提供ガイド3」を参考に、子供の健やかな発育・発達を支援する観点も踏まえ、食事提供を充実させています。なお、厚生労働省では、毎年、ブロック別児童福祉施設給食関係者研修を開催し、子供の食を通じた健康づくりの推進に関する情報共有を行うとともに、地方公共団体から推薦された児童福祉施設等の給食関係者が取組事例等を発表するなど質の向上にも努めています。平成30(2018)年度は、宇

う都つのみや宮市

し、長野県、和歌山県、大

おお分いた市しの4ブロックで開催し、約1,000名が

参加しました。また、平成27(2015)年4月から、21世紀の母子保健における課題解決に向け、関係者、関係機関・団体が一体となって推進する国民運動計画の第2次計画である「健やか親子21(第2次)」を開始しました。「すべての子どもが健やかに育つ社会」を目指し、学校など関係機関のほか、食品産業や子育て支援に関連する民間企業等とも新たに連携、協働し、子供だけでなく、親への支援や親子を取り巻く温かな環境の形成等を通し、幅広い対象者に向けた「健やか親子21(第2次)」の普及啓発に取り組んでいます。平成30(2018)年度は、「健やか親子21(第2次)」の普及啓発の一環として、「妊産婦の食育」を重点テーマとして、ホームページの充実を図るとともに、妊産婦の食生活の実態を調査し、その結果を活用したリーフレットを作成し、周知啓発を行いました(コラム:妊産婦の食育の取組 参照)。さらに、平成27(2015)年度から、「健やか親子21(第2次)」のスタートに合わせ、「健康寿命をのばそう!

1 平成19(2007)年3月に「授乳・離乳の支援ガイド策定に関する研究会」が作成2 厚生労働省「平成29(2017)年度地域保健・健康増進事業報告」3 平成22(2010)年3月に「児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理に関する研究会」が作成

第1章

家庭における食育の推進

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アワード」に母子保健分野を加え、食育を含む母子の健康増進を目的とする優れた取組を行う企業・団体・地方公共団体を表彰する制度を創設しました。平成30(2018)年度は、応募のあった56件のうち12の企業・団体・地方公共団体が表彰されました。

「妊産婦の食育」ポスター

第1章

家庭における食育の推進

第2節 ● 妊産婦や乳幼児に関する栄養指導

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第3節 子供や若者とその保護者に対する食育推進平成30(2018)年11月の「子供・若者育成支援強調月間」(内閣府、関係省庁、地方公共団体、その他関係諸団体が実施主体)では、その実施要綱中、取り組むべき課題の重点事項の一つとして、「生活習慣の見直しと家庭への支援」が掲げられ、食育の推進、生活時間の改善等により、子供の生活習慣の見直しに取り組むこととされるなど、国民運動の一環として食育の推進が図られています。また、政府は、「第4次男女共同参画基本計画」(平成27(2015)年12月25日閣議決定)の第1分野「男性中心型労働慣行等の変革と女性の活躍」の章において、具体的な取組として、「男性が家事・育児等を自らのことと捉え、主体的に参画する動きを広めるため、男性を対象とした啓発手法の開発・実施、食育の推進、男性のロールモデルによる活躍事例の発信、キャンペーンや顕彰を通じ、国民全体の気運の醸成を図る。」ことを決定しました。内閣府では、平成28(2016)年に、若年世代の夫婦・カップルを主な対象とした、家族の役割シェアについて具体的にイメージしながら実践するためのコミュニケーションツールとして、夫婦が本音で話せる魔法のシート「○○家作戦会議」を作成し、男女共同参画局のホームページ上で公開しています。

「夫婦が本音で話せる魔法のシート「○○家作戦会議」」サイト

また、平成30(2018)年6月12日開催の「すべての女性が輝く社会づくり本部」において、「女性活躍加速のための重点方針2018」が決定され、前年の同重点方針2017に引き続き、男性の暮らし方・意識の変革として、男性の家事・育児等への参画について国民全体の気運醸成を図ることとされました。内閣府男女共同参画局では、同重点方針2017を踏まえ、平成29(2017)年度に、子育て世代の男性の家事・育児等の中で、料理への参画促進を目的とした「“おとう飯

はん”始めよう」キャンペーンを開始し、平成

30(2018)年度も引き続き実施しました。「”おとう飯”始めよう」キャンペーンロゴマーク

第1章

家庭における食育の推進

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さらに、平成30(2018)年8月からは、本キャンペーンの取組として、“おとう飯”大使である石

いし橋ばし尊たか久ひさ氏が「おとう飯」の

趣旨に沿って、都道府県の地元特産品を食材に使った料理メニューレシピを紹介する「日本全国のおとう飯」を実施しています。こうした取組を通じて、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が推進されるとともに、男性が家事や育児に参画し、家族が食卓を囲んで共に食事をとりながらコミュニケーションを図る共食の推進につながることが期待されます。

“おとう飯”の心得

“おとう飯”の普及啓発(第13回食育推進全国大会inおおいた)

第1章

家庭における食育の推進

第3節 ● 子供や若者とその保護者に対する食育推進

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少年院における食育の取組コラム少年院は、家庭裁判所の決定により保護処分として送致された非行のある少年(おおむね

12歳から20歳まで)を主に収容する法務省所管の施設です。少年院では、在院者に対し、その特性に応じた適切な矯正教育とその他の健全な育成に資する処遇を行うことにより、改善更生と円滑な社会復帰を図っています。平成25(2013)年8月、

全国の少年院で、入院前の食生活の状況や少年院における食育指導の受止め等に関するアンケート調査を実施しました。調査結果を見ると、入院前に朝食を「ほとんど食べなかった」と答えた者が4割を超えているほか、夕食を「ほとんど毎日食べていた」と答えた者が全体の4分の3に満たないなど、入院前の食生活の乱れが深刻であったことがうかがえます。少年院に入院してくる少年

たちは、様々な課題を抱えており、生活リズムの乱れもその一つです。少年院では、毎日3食、決まった時刻に、栄養バランスがとれていることはもちろん、地域性や、季節に応じたメニューの食事を提供するなど、規則正しく、潤いのある生活を通じて、教育を受ける基盤を培い、出院後の安定した生活につながる習慣を身に付けさせています。また、教育の一環として、各施設の特色をいかした食育にも取り組んでいます。例えば、

「食」について様々な観点から学ぶ体系的な食育講座のほか、「食」を介在する行事(収穫感謝祭、もちつき大会など)、保護者を少年院に招いての食事会等を実施しています。上記アンケート調査では、多くの少年が、食生活に関して少年院で学んだこととして、「食

事や睡眠などを規則正しいリズムで行うことの大切さ」、「食は生産者や多くの人々の苦労や努力で支えられていること」、「食事の際のマナー(挨拶、はしの持ち方など)」、「一日三食(朝・昼・夕)食べることの大切さ」を挙げていました。少年院の教育を通じて、少年たちは「食」に関する知識を身に付け、「食」の大切さへの気付きを深めていることがうかがえます。今後も、少年たちの再犯・再非行の防止のため、食育の充実に努めていきます。

図表1 朝食・夕食を食べる頻度(1週間当たり)

73.4

29.8

13.0

12.7

8.7

15.1

4.9

42.4

0 20 40 60 80 100

夕食

朝食

ほとんど毎日食べていた 1週間に 4~ 5日食べていた1週間に 2~ 3日食べていた ほとんど食べなかった

(%)(n=1,600)

資料:法務省「食に関するアンケート調査」(平成25(2013)年)

図表2 朝食・夕食を家族と食べる頻度(1週間当たり)

0 20 40 60 80 100

夕食

朝食

(%)

22.0

13.0

12.7

8.6

16.8

14.8

10.7

8.1

37.7

55.5

ほとんど毎日食べていた 1週間に 4~ 5日食べていた1週間に 2~ 3日食べていた 1週間に 1日程度食べていたほとんど食べなかった

(n=1,600)

資料:法務省「食に関するアンケート調査」(平成25(2013)年)

少年院における親子交流会(飯ごう炊さん)の様子(提供:法務省矯正局)

第1章

家庭における食育の推進