第3種郵便物認可 eヨ 伝統の鼓笛隊引き継げた · 2012-03-12 ·...

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2012年(平成24年)3 Eヨ 第3種郵便物認可 学校再建への道 残された旗を掲げ、鼓笛隊の「移杖式」で演奏する6年 生。楽器や旗を5年生に引き継いだ=6日、宮城県石巻市 ◆◆◆記事や「いま子どもたちは」へのご感想、教育に関するご投稿を募集します。edu@asahi.comまたはFAXO3・3542・4855へo h 伝統の 宮城・渡波小 津波逃れた旗 慣れ親しんだ校舎を離れても、地域 けたい。間借り授業から仮設校舎へと ちが変わり続けたこの1年、宮城県石巻 学校は、地元とのつながりを模索し続けてきた 6日、渡波小は鼓笛隊の 移杖式を開いた。仮設校舎 に隣接する稲井小学校の体 育館を借りた。6年生全員 が参加する鼓笛隊は50年以 上前から続く伝統行事だ。 代々使ってきたユニホー ムや楽器は津波で流され た。支援を受けてようやく 全員分がそろった。6年生 にとっては衣装に身を包ん で披露する最初で最後の舞 台となった。 「WATASHO」と書 かれた隊の旗だけは残っ た。校長室の金庫の上で難 を逃れた旗は色あせ、ほつ れている。隊列の先頭で旗 を掲げた納田貴央看(12)は 「重かった。大事な伝統を 引き継げてよかった」。 保護者約40人も参加し た。丹野靖識さん(34)は渡 波小の卒業生だ。「うちは 親子4代が渡波小。自分も 鼓笛隊をやったから、息子 が衣装を着て演奏する姿を どうしても見たくて。でき ることなら、渡波の校舎で 見たかった」と話す。 校舎修復方針 児童減とまる この1年、児童は減り続 けた。震災前の453人が 290人に。新入生は例年 50人前後で2クラス編成に なる予定だったが、新年度 の入学予定者は24人だ。 だが、ここへ来て児童減 に歯止めがかかり始めた。 きっかけは、市が渡波小 を元の場所に戻す方針を明 らかにしたこと。津波で1 階が浸水した校舎を修復す る。現在は約5㌔離れた仮 設校舎だが、2013年度 内を目標に戻るという。学 校には「転校先から渡波小 に戻りたい」という問い合 わせが相次いでいる。 元の渡波小に戻るのは、 保護者、地域、教職員共通 の願いだった。学校は行事 のたびに渡波で開けないか 検討したが、設備が整わず 断念せざるを得なかった。 学校側は、1階には音楽 室や会議室だけを置き、体 育館も2階から出入りでき るようにする 策を市に求める 9日には鎮魂の集 く。午後2時46分 もくとーつ ろって黙頑する。 渡波小は児童7人を亡く している。つらい記憶がよ みがえる恐れがある。被災 地の中には、特別な行事を 開かない学校もある。集い を開くのは、子どもたちの 様子が落ち着いてきたとい う実感があるからだ。 昨年5月、1〜2年と 3年以上の2校に別れて授 業を始めたころ、特に2年 生に不安定さが目立った。 授業中も教室内をうろうろ する子がいた。絵を措かせ ると、構図がゆがみ、黒っ ぼい色ばかり使う。全校そ ろって仮設校舎に移り、上 級生が目配りするようにな ると、次第に落ち着きを取 り戻し、笑顔が増えた。 まず校外学習 地元で再開へ 昨年8月からスクールカ ウンセラーが週1回常駐し ている。県もカウンセラー を派遣しているが、月にl 回で毎回同じ人とは限らな い。それでは足りないと、 学校が独自に確保した。 高橋義樹校長は「毎週金 曜日の午後に学校に行け ば、同じカウンセラーに会 えるという倍頼感が大切だ と思った」という。子ども だけでなく、保護者や教職 員が次々に相談に訪れた。 新年度からは、渡波地区 での校外学習を再開する。 昨年はできなかった学芸会 も開催する予定だ。PTA も動き出す。地域と学校の 結びつきをより強める、そ んな1年が始まる。(岩波精)

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Page 1: 第3種郵便物認可 Eヨ 伝統の鼓笛隊引き継げた · 2012-03-12 · 第3種郵便物認可 朝 eヨ 新 闇 2012年(平成24年)3月8日 学校再建への道 残された旗を掲げ、鼓笛隊の「移杖式」で演奏する6年

2012年(平成24年)3月8日闇新Eヨ朝第3種郵便物認可

学校再建への道残された旗を掲げ、鼓笛隊の「移杖式」で演奏する6年生。楽器や旗を5年生に引き継いだ=6日、宮城県石巻市

◆◆◆記事や「いま子どもたちは」へのご感想、教育に関するご投稿を募集します。edu@asahi.comまたはFAXO3・3542・4855へo

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伝統の鼓笛隊引き継げた

宮城・渡波小

津波逃れた旗「垂かった」

慣れ親しんだ校舎を離れても、地域の核であり続

けたい。間借り授業から仮設校舎へと、学びのかた

ちが変わり続けたこの1年、宮城県石巻市の渡波小

学校は、地元とのつながりを模索し続けてきた。

6日、渡波小は鼓笛隊の

移杖式を開いた。仮設校舎

に隣接する稲井小学校の体

育館を借りた。6年生全員

が参加する鼓笛隊は50年以

上前から続く伝統行事だ。

代々使ってきたユニホー

ムや楽器は津波で流され

た。支援を受けてようやく

全員分がそろった。6年生

にとっては衣装に身を包ん

で披露する最初で最後の舞

台となった。

「WATASHO」と書

かれた隊の旗だけは残っ

た。校長室の金庫の上で難

を逃れた旗は色あせ、ほつ

れている。隊列の先頭で旗

を掲げた納田貴央看(12)は

「重かった。大事な伝統を

引き継げてよかった」。

保護者約40人も参加し

た。丹野靖識さん(34)は渡

波小の卒業生だ。「うちは

親子4代が渡波小。自分も

鼓笛隊をやったから、息子

が衣装を着て演奏する姿を

どうしても見たくて。でき

ることなら、渡波の校舎で

見たかった」と話す。

校舎修復方針

児童減とまる

この1年、児童は減り続

けた。震災前の453人が

290人に。新入生は例年

50人前後で2クラス編成に

なる予定だったが、新年度

の入学予定者は24人だ。

だが、ここへ来て児童減

に歯止めがかかり始めた。

きっかけは、市が渡波小

を元の場所に戻す方針を明

らかにしたこと。津波で1

階が浸水した校舎を修復す

る。現在は約5㌔離れた仮

設校舎だが、2013年度

内を目標に戻るという。学

校には「転校先から渡波小

に戻りたい」という問い合

わせが相次いでいる。

元の渡波小に戻るのは、

保護者、地域、教職員共通

の願いだった。学校は行事

のたびに渡波で開けないか

検討したが、設備が整わず

断念せざるを得なかった。

学校側は、1階には音楽

室や会議室だけを置き、体

育館も2階から出入りでき

るようにするなどの安全対

策を市に求める予定だ。

9日には鎮魂の集いを開

く。午後2時46分、全校そ

もくとーつ

ろって黙頑する。

渡波小は児童7人を亡く

している。つらい記憶がよ

みがえる恐れがある。被災

地の中には、特別な行事を

開かない学校もある。集い

を開くのは、子どもたちの

様子が落ち着いてきたとい

う実感があるからだ。

昨年5月、1~2年と

3年以上の2校に別れて授

業を始めたころ、特に2年

生に不安定さが目立った。

授業中も教室内をうろうろ

する子がいた。絵を措かせ

ると、構図がゆがみ、黒っ

ぼい色ばかり使う。全校そ

ろって仮設校舎に移り、上

級生が目配りするようにな

ると、次第に落ち着きを取

り戻し、笑顔が増えた。

まず校外学習

地元で再開へ

昨年8月からスクールカ

ウンセラーが週1回常駐し

ている。県もカウンセラー

を派遣しているが、月にl

回で毎回同じ人とは限らな

い。それでは足りないと、

学校が独自に確保した。

高橋義樹校長は「毎週金

曜日の午後に学校に行け

ば、同じカウンセラーに会

えるという倍頼感が大切だ

と思った」という。子ども

だけでなく、保護者や教職

員が次々に相談に訪れた。

新年度からは、渡波地区

での校外学習を再開する。

昨年はできなかった学芸会

も開催する予定だ。PTA

も動き出す。地域と学校の

結びつきをより強める、そ

んな1年が始まる。(岩波精)