第4章 タイ王国 -...

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ITS に係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート 4-1 4タイ王国 4.1 国家/都市概要 4.1.1 国家概要 タイ王国(以下、タイ)は、面積 513,115km 2 であり、行政区分はバンコク都(以下、バンコク) 76 県から成り立つ。中部平野地域、東部沿岸地 域、東北部高原地域、北部及び西部山岳地域、南 部半島地域の 5 地域に区分される。中部平野地域 はチャオプラヤ川の肥沃なデルタとして有名であ り、北部山岳地域には盆地が点在し、東北部高原 地域のラオス国境をメコン川が流れる。南部半島 地域はマレー半島に位置し、タイ湾(南シナ海) とアンダマン海(インド洋)に挟まれている。 出典:United Nations 4-1 タイ位置図 (1) 人口 タイの人口は 2012 年時点で約 6,679 万人に及ぶ。経年的に増加傾向にあり、2003 年から 2012 年にかけて毎年約 20 万人ずつ増加している。 出典:World Bank 4-2 タイの人口推移 6.4 6.5 6.6 6.6 6.6 6.6 6.6 6.6 6.7 6.7 1.00 1.01 1.02 1.02 1.02 1.03 1.03 1.03 1.03 1.04 0.98 0.99 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9 7.0 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 人口伸び率 人口(千万人)

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-1

第4章 タイ王国

4.1 国家/都市概要

4.1.1 国家概要

タイ王国(以下、タイ)は、面積 513,115km2

であり、行政区分はバンコク都(以下、バンコク)

と 76 県から成り立つ。中部平野地域、東部沿岸地

域、東北部高原地域、北部及び西部山岳地域、南

部半島地域の 5 地域に区分される。中部平野地域

はチャオプラヤ川の肥沃なデルタとして有名であ

り、北部山岳地域には盆地が点在し、東北部高原

地域のラオス国境をメコン川が流れる。南部半島

地域はマレー半島に位置し、タイ湾(南シナ海)

とアンダマン海(インド洋)に挟まれている。

出典:United Nations

図 4-1 タイ位置図

(1) 人口

タイの人口は 2012 年時点で約 6,679 万人に及ぶ。経年的に増加傾向にあり、2003 年から 2012

年にかけて毎年約 20 万人ずつ増加している。

出典:World Bank

図 4-2 タイの人口推移

6.4

6.5 6.6

6.6 6.6 6.6 6.6 6.6 6.7 6.7

1.00

1.01

1.02 1.02

1.02 1.03 1.03 1.03 1.03

1.04

0.98

0.99

1.00

1.01

1.02

1.03

1.04

1.05

6.4

6.5

6.6

6.7

6.8

6.9

7.0

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

人口

伸び率

人口

(千

万人

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(2) 経済・産業

タイにおける GDP(国内総生産)は増加傾向にあり、2012 年時点で 3,656 億ドルとなっている。

2003 年以降から GDP 伸び率は減少し、2009 年ではリーマンショックにより大きく低下している。

2010 年には 7.8%と一時的に回復しているが、以降 2012 年にかけて洪水被災による影響も加わり

伸び率増減している状況である。一人当たり GDP は増加しており 2012 年には 5,473 ドルとなって

いる。

就業者の約 40%が農業、製造業は約 15%を占めている。主要貿易品目は輸出がコンピューター・

同梱品、自動車・同部品等、輸入が原油、機械器具、電子部品となっている。

出典:World Bank

図 4-3 タイの GDP 及び GDP 伸び率(左)、一人当たり GDP(右)

(3) 道路網・鉄道網

タイ国内の道路延長は 180,053km であり、主要幹線

道路(高速道路含む):51,855km、二級道路:44,000km、

その他の道路:84,198km が整備されている(世界の統

計 2012 より)。

出典:World Bank

図 4-4 タイの道路・鉄道網

142.6 161.3 176.4 207.1 247.0 272.6 263.7 318.9 345.7 365.6

7.14 6.34

4.60 5.09 5.04

2.48

-2.33

7.81

0.08

6.43

-4.00

-2.00

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

0.0

50.0

100.0

150.0

200.0

250.0

300.0

350.0

400.0

450.0

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

GDP

伸び率

GDP

(Bi

llion

US$)

2,211.9 2,478.8 2,690.0

3,143.2

3,737.7 4,118.4 3,978.9

4,802.7 5,192.1

5,473.7

0.0

1,000.0

2,000.0

3,000.0

4,000.0

5,000.0

6,000.0

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

一人

当たり

GDP

(U

S$)

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4-3

4.1.2 都市概要

(1) 地域特性

バンコクはタイの首都であり、面積 1,568.7km、人口 825 万人(2008 年)を擁する政治・経済の

中心都市であり、また、ラオスやカンボジア、ミャンマーを含むインドシナ半島の経済圏の中心

地でもある。下表に示す 50 区の行政区から構成されている。

出典:調査団

図 4-5 バンコク都

(2) 交通特性

1) 道路構造 タイにおいては行政上の管理区分により 6 つの道路規格(国道、地方道路、自治体道路、

都市間高速道路、都市内高速道路)に区分されている。車線数は規格により異なるが中心市

街地等の住居・店舗が入り組んでいる地域では 2 車線が多く、主要道路は 2~4 車線が多い。

舗装は国道ではアスファルト舗装の道路が多いものの全国的には土砂や砂利などの舗装が多

くを占める。国道及び都市間高速道路は DOH、地方道は DOR/DDR、自治体道路は BMA を

はじめとする自治体、都市内高速道路は EXAT が管轄となる。コンセッション道路は DOH

から委託された民間セクターが運営を行っている。

なお、都市内高速道路の延長は以下のとおりである。

1. Chaloem Maha Nakhon Expressway (First Stage Expressway System): 27.1km

2. Si Rat Expressway (Second Stage Expressway System): 38.4km

3. Chalong Rat Expressway (Ramindra – At Narong Expressway): 18.7km

4. Burapha Withi Expressway (Bang Na Expressway): 55km

5. Udon Ratthaya Expressway (Bang Pa-in – Pak Kret Expressway): 32km

6. Third stage expressway System, S1 section (At Narong - Bang Na): 4.7km

7. Bang Phli – Suk Sawat Expressway (South Kanchanaphisek ring road): 22.5km

8. Ramindra – Outer Ring Road Expressway: 9.5km

No. 行政区名 No. 行政区名1 プラナコーン区 26 ディンデーン区2 ドゥシット区 27 ブンクム区3 ノーンチョーク区 28 サートーン区4 バーンラック区 29 バーンスー区5 バーンケーン区 30 チャトゥチャック区6 バーンカピ区 31 バーンコーレーム区7 パトゥムワン区 32 プラウェート区8 ポーンプラープ区 33 クローントゥーイ区9 プラカノーン区 34 スワンルワン区10 ミンブリー区 35 チョームトーン区11 ラートクラバン区 36 ドーンムアン区12 ヤーンナーワー区 37 ラーチャテーウィー区13 サムパッタウォン区 38 ラートプラーオ区14 パヤータイ区 39 ワッタナー区15 トンブリー区 40 バーンケー区16 バーンコークヤイ区 41 ラックシー区17 フワイクワーン区 42 サーイマイ区18 クローンサーン区 43 カンナーヤーオ区19 タリンチャン区 44 サパーンスーン区20 バーンコークノーイ区 45 ワントーンラーン区21 バーンクンティアン区 46 クローンサームワー区22 パーシーチャルーン区 47 バーンナー区23 ノーンケーム区 48 タウィーワッタナー区24 ラートブーラナ区 49 トゥンクル区25 バーンプラット区 50 バーンボーン区

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4-4

出典:EXAT

図 4-6 都市内高速道路網

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4-5

交差点形状に関しては概ね 4 枝直角交差となっている。交差点内の導流はあまり見られず、

停止線や区分線等の舗装は剥げかけており視認性が悪いものも見受けられた。交差点規模が

大きい箇所は多く見られないが、都内は一方通行の道路が多く、右折、左折ができる交差点

が限られており、右左折車渋滞が生じている。歩道は整備されているものの、一部では幅員

が狭く、歩行者が路側に出て通行する状況も見られる。

出典:調査団

図 4-7 バンコク都内の交差点形状・舗装状況

2) 交通量

バンコクにおける自動車の登録台数は、2012 年までに約 750 万台(オートバイ、トゥクトゥ

ク等含む)となっている。乗用車が約半数の 58%を占めるが、オートバイも 39%と高いシェ

アを持っている。

出典:DOLT

図 4-8 タイ 車両登録台数 全体の経年推移、2012 年の割合

0

5

10

15

20

25

30

35

台数

mill

ion Bangkok Regional Whole Kingdom

58.4%

38.6%

2.5% 0.5%

Car Motorcycle Truck Bus

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4-6

渋滞は慢性的に生じており、特に朝夕ピーク時には通勤等における交通集中により状況が

悪化している。

出典:調査団

図 4-9 バンコク都の渋滞状況

3) 公共交通特性 都内公共交通機関はバス、タクシー、鉄道、BRT、MRT、水上交通がある。バスは BMTA

が約 7,000 台(ジョイントカンパニー含む)を保有しバンコク及び周辺 5 市にて運営してい

る。タクシーはバンコク都内で約 100,000 台が走行している。

車両はバンコク都内で約 900 万台登録(バイク含む)されており、自転車が約 280 万台走

行している。また、レンタサイクルやトゥクトゥク、バイクタクシー等多様な種類の交通手

段が存在する。

出典:調査団

図 4-10 バンコク都内 公共交通機関

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4-7

4) 駐車状況 都内に大規模な駐車場は少ないが、大型ショッピングセンターやビル、店舗では駐車場を

保有している。一部では路側等での路上駐車が見られるが、主要幹線での路上駐車はあまり

多くない。

出典:調査団

図 4-11 駐車状況

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4-8

4.2 国家及び都市レベルにおけるITS関連施策概要

4.2.1 関連するステークホルダー

ITS に関連するステークホルダーは下表のとおりであり、各機関に対しインタビューを実施し

た。各機関名及び役割概要を示す。国家及び都市レベルにおける行政機関の役割においては計画策定

や管理が多くを占める。

表 4-1 インタビュー機関一覧

No 機関名 機関 役割概要

1 Toyota Tsusho Electronics Thailand (TTET)

民間企業 日系企業。バンコクにおいてスマートフォン

アプリによる渋滞情報提供を実施

2 Bangkok Metropolitan Authority (BMA)

都市 バンコク都内の交通管理、公共交通管

理、交通政策の策定等

3 Expressway Authority of Thailand (EXAT)

国営企業 都市内高速道路の運営、維持、管理

4 Chulalongkorn University 大学

-(タイの ITS 事情に詳しい Prof. Sorawit 氏からタイの ITS に関する概況についてインタ

ビューを行った)

5 National Electronics and Computer Technology Center (NECTEC)

国 研究所ごとに割り当てられた基本技術

の解析

6 National Broadcasting and Telecommunications Commission (NBTC)

放送・通信にかかる監視

(周波数に係るマスタープランの策定、周

波数割当、ライセンス付与等)

7 BMA CCTV Center 都市 BMA が所有する CCTV の監視

8 Royal Thai Police 都市

交通管理、道路交通事故の削減、セキュ

リティ 9 Bangkok Mass Transit Authority

(BMTA) 国営企業

バンコク都におけるバスの運営

10 Department of Highway (DOH) 国

タイ国における道路ネットワーク開発、道路

インフラの維持・監視 11 The Office of Transport and Traffic

Policy and planning (OTP) 国

タイ国における交通関係に係る政策(計画)

立案、標準化を行い、パイロットプロジェクト

の推進 出典:調査団

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(1) Toyota Tsusho Electronics Thailand (TTET) 出席者:Dr. Itti Rittaporn, General Manager, Content・EV Development

1) ITS に関する取組

総務省のプロジェクトにて 700 台のタクシーに GPS を設置し、プローブデータの収集・解

析、有効性の検証を行った(2010 年 1 月~3月。協働でプロジェクトを行った住友電工はCCTV

の設置を実施しており、画像データを活用した信号制御について検討している。)。このプロ

ジェクト結果を活用し、T-SQUAREを 2012年 7月より開始している。バンコク都内のタクシー

10,000 台に GPS を設置(自社投資)し、プローブデータによる渋滞情報を提供している。カ

バー範囲はバンコク都及び周辺 6 県であり、タクシーの他にトラック 250 台にも GPS を設置

している。 ※TOYOTA では 12 年 2 月、スマート G-Book を発売(バンコクでも利用可能、ナビに渋滞情報を提供する

ものとしては初、これまでは FM)また、13 年 8 月から東南アジアでは初の VICS/RTIC 方式による FM

放送配信を開始。

2) T-SQUARE について

T-SQUARE は GPRS の通信方式で 3~5 秒間隔でデータを取得し、このデータから 5 分間隔

で渋滞状況の配信を行っている。Google と異なり、細街路の旅行速度まで把握可能(タクシー

が通る部分のみ)である。450 のタクシーオーナーと協力して実施している。配車システム

も提供しており、タクシーの位置、速度のほか、遠隔でエンジンストップすることも可能(GPS

の機能とは別に提供)である。タクシーの無線センターはバンコク都内に 12 箇所ある。

T-SQUARE の DL 数は 37 万であり、DL のみは 14 日間無料、以後、1 週間:10 バーツ、1

カ月:30 バーツ、6 か月、1 年:240 バーツで提供している。決済は iOS の場合はクレジット

カード、Android の場合は携帯料金決済に抱き合わせて徴収される(SIM があれば決済可能。

現地通信会社 3 社と提携(AIS、DTAC、True))。※G-Book は年間 32USD(約 1,000 バーツ)

3) ITS 概況

現在タイにある ITS 関連データの状況は以下のとおりである。

CCTV:BMA が保有し、150 交差点に設置しているが、そのうち 50 交差点程度しか稼働し

ていない。(バンコクの交差点は約 400 あり、そのうち重要交差点は 40 箇所)。警察

も保有しているが数は不明である。

タクシープローブ(TTET):10,000 台。政府のデータも活用して T-SQUARE にて渋滞情報

を提供。

※Honda は Honda Link を 2013 年 6 月に開始。バンコクでスマホナビ+渋滞情報を提供。

-Google:Mobile GPS(グーグルマップ)を無料提供。

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4-10

4) その他

・ タクシーは組合がいくつかあるが所有者は個人(規模の大小はある)となり、組合によ

りタクシーの配車システムの有無がある。無線センターは保有している(タクシーは無

線交信できないと運営できないことが義務化されている))。近年、タクシー・顧客間で

の直接的なやり取りができるようになってきた。

・ ITS に係る機材については、GPS は中国メーカーのものがほとんどを占める(GPS は

100USD 程で購入可能であるが、中国の Beidou GPS は機器を無料提供している)。

・ カーナビはバンコクのタクシーにはまだ設置されていない。

・ デジタル地図は TomTom、Navteq、ESRI/CGI など。ローカルのデジタル地図は世界標準

とは異なる場合が多いので利用されにくい。

・ ビッグデータの処理についても検討していく必要があると考えている。

・ ETC の普及はまだ進んでいない。

・ MOT がマイクロバスに対して RFID を使った実験(スピード違反、事故等の把握を目的)

をしているが効果は高くない模様であり、GPS の方が良いとの意見がある。 ※GPS ならば常に位置情報等を確認できるが、RFID では受信機を通過しないと位置情報等は入手でき

ないため。

※なお、ITS に係る計画等の営業情報と関連すると想定される部分については非掲載としている

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4-11

(2) Bangkok Metropolitan Authority (BMA) 出席者:Mr. Nikom Porntharakcharoen, Deputy Director General, Traffic and Transportation Department

Mr. Tripob Khantayaportn, Director, Traffic System Development Division 1) 組織構造

BMA 下の Traffic and Transportation Department であり、バンコク都内の交通管理を行ってい

る。CCTV や信号管理、ID 登録などは本部署が管理している。BTS、BRT、水上交通につい

ても同様(運営は企業)である。ITS に関しては Traffic System Development Division が担当

となる。

出典:BMA

図 4-12 BMA 組織構造図

2) 役割

1. 交通制御に係る効果的な政策の策定

2. よりシームレスかつ効果的な公共交通システムの確保

3. 便利、迅速、有益かつ無公害な交通システムを実現するための対策立案。

4. 陸上・水上交通を推進するために必要な設備の開発

5. 管理能力の強化

6. 交通分野の実務の推進

7. 計画及び公共への普及のための交通情報システムの開発

Traffic and Transportation Department

Secretarial Division

Policy and Planning Division

Traffic Engineering

Office

Traffic System Development

Division

Transportation Division

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4-12

3) 既存 ITS 施設

信号及び CCTV の設置、メンテナンスは BMA が実施しており、警察は運用を行っている。

信号管制は無くマニュアルにて操作している(警察が交通状況に応じてサイクルパターンを

設定)。交通量に応じた信号システムを導入したいと考えている。信号、CCTV の標準は策定

済みである(レターを提出したものの提供されなかった)。機器のスペックは独自で決定して

いる(要求する技術の観点から仕様は毎年は異なる)。

OTP もコントロールセンターを保有しているが規模は小さい。また、BMA とは情報共有

はしていない。

a. BMA 管理

CCTV:約 150 交差点(交差点監視用):高い位置に設置されズーム・旋回が可能。

約 2,000 機(セキュリティ用):画像監視のみであり、交通量観測はできない。 ※T-SQUARE で情報提供しているカメラ画像は BMA の CCTV のもの。

信号:約 400 交差点、スタンドアローンだが、現場の警察官が現示調整。

VMS:40 機(うち 4 機は高速入口付近に設置され、高速の渋滞情報を提供。情報ソースは

ラジオ放送及びユーザーからの情報によっており、EXAT からは提供されていない。

36 機は一般道の渋滞状況を提供している)。NECTEC のセンターに VMS データが送

信され、CCTV の情報を基にデータをマニュアルで入力している。

CCTV コントロールセンター:警察に CCTV 画像情報を提供している。CCTV はセンター

から遠隔操作が可能となっている。

b. 警察管理

CCTV:機数は不明。赤信号違反検知カメラを保有している。予算が無いため稼働できてい

ない機器もある。

CCTV コントロールセンター:BMA、警察の双方とも相手のカメラをコントロールできる。

4) 通信状況

CCTV からセンター:光回線(BMA で設置)

VMS からセンター:銅線

5) 関連計画

2010~2020 年に向けての公共交通将来戦略を作成済み。

6) その他

・ FM ラジオ周波数:FM91.5(警察)、FM99.5(警察及び King Foundation)、FM100.0(民

間)

・ BMALIVETRAFFIC というリアルタイムの CCTV 画像提供の無料のスマホアプリ有り。

・ 高速料金:一般車両 50THB、バス 75THB、トラック 110THB

・ EASY PASS は 500THB チャージで 200THB を切ると警告。

・ BMA、iTIC、True で MOU を結んでおり、交通情報提供に係る研究・支援を行っている。

(BMA→データ提供、iTIC→システム開発、True→通信)

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4-13

(3) Expressway Authority of Thailand (EXAT) 出席者:Dr. Sakda Panwai, Director, Expressway System Engineering R&D Division

1) 組織構造

出典:EXAT

図 4-13 EXAT 組織構造図

2) 役割

延長計 207.9km であり、外環状線の一部(Bang Phil-Suk Sawat Expressway)および都市内高

速を管理している(その他の高速(Motor way)は DOH が管理)。うち一部はコンセッション

により Bangkok Expressway Co. Ltd. (BECL)社が BTO 形式のコンセッショネアとして運営

している。

Governor

Assistant Govern

Deputy Governor for Low&Land Acquisition

Office of the Governor

Deputy Governor for Technical Affairs

Deputy Governor for Administration

General Affairs and Conference Division

Public Relations Division Information DivisionBussiness Development and Marketing Division

Deputy Governor for Construction and Maintenance

Deputy Governor for Operation

General Administration Department

Treasury and Accounting Department

Policy and Planning Department

Information Technology Department

Land Acquisition Department

Legal Department Expressway Construction Department

Maintenance Department

Traffic Control Department

Toll Collection Department

Operation Planning Division

Supply Service Division

Personnel Division

- Recruitment Section- Registration Section- General Welfare Section- Fringe Benefit Section- Employee Relationship Section- Occupation safety and Healthy Environment Section

Personnel and Working System

Development Division

- Personnel Development Section- Working System Development Section

- ProcurementSection- Supply Section

Budget Division

Finance Division

- Finsnce Section- Loan Section- Disbursement Audit Section1- Disbursement Audit Section2

Accounting Division

- Consolidate Accounting Section- Cost Accounting Section

- Operating Budget Analysis Section- Capital Budget Analysis Section- Budget Monitoring and Evaluation Section

Revenue Audit Division

- Revenue Audit Section1- Revenue Audit Section2- Revenue Audit Section3

Corporate Governance and Organization Value Management Division

- Corporate Governance Section-Organization Value Management Section

Planning and Project Analysis Division

- Planning Section- Engineering Analysis Section- Environmental Analysis Section- Economic and Financial Analysis Section

Evaluation Division

- Evaluation Section- Statistics Section

- General Service Section- Conference Co-ordination Section- Conference Document Section

Computer Application System Division

- Computer Application System Section1- Computer Application System Section2- Database Development Section

Computer Operation Division

- Computer Control and Maintenance Section- Computer Network Section

Land Acquisition Division

- Survey Section- Appraisal Section- Verification Section- Property Acquisition Section- Appeal and Grievance Section- Land Acquisition Data Management- Service Section

Property Development and Right of Way

Maintenance Division1

- Property Planning Section1- Property Management Section1- Revenue Collection Section1- Right of Way Maintenance Section1- Right of Way Maintenance Section2- Right of Way Maintenance Section3

Property Development and Right of Way

Maintenance Division2

- Property Planning Section2- Property Management Section2- Revenue Collection Section2- Right of Way Maintenance Section4- Right of Way Maintenance Section5- Right of Way Maintenance Section6

Litigation Division

- Administration Litigation Section- Civil Litigation Section- Arbitration Section

Legal Affairs Division

- Contract Section- Disciplinary Section- Legal Affairs Section

Expressway Engineering Division1

- Expressway Engineering Section1- Expressway Engineering Section2- Expressway Engineering Section3- Administration Section1

Expressway Engineering Division2

- Expressway Engineering Section4- Expressway Engineering Section5- Expressway Engineering Section6- Administration Section2

General Construction Division

- Engineering Section- Architectural Section- Construction Section- Adminidtration Section3

ExpresswayMaintenance Division

- Expressway Maintenance Planning Section- Expressway Inspection and Maintenance Section1- Expressway Inspection and Maintenance Section2- Bridge Maintenance Section

Building and General Property Maintenance

Division

Equipment Maintenance Division

- Planning and Equipment Maintenance Section- Toll Collection Equipment Section1- Toll Collection Equipment Section2Traffic Control Equipment Section- Electronic Toll Collection Engineering Section- Manage and Develop E-Business Database Section

- Building Maintenance Section1- Building Maintenance Section2- General Property Maintenance and Gardening Section

Electrical Mechanical Work and Vehicles

Division

- Expressway Lighting Maintenance Section- Building and Toll Plaza Electrical System Section- Mechanical and Vehicles Section

Traffic Managenent Division

-Traffic Management Section1-Traffic Management Section2-Traffic Management Section3

Rescue and Traffic Communication

Division

- Rescue Section1- Rescue Section2- Rescue Section3- Traffic Communication Section

Toll Collection Division1

- Din Daeng Toll Collection Section- Bang Na Toll Collection Section- Dao Kanong Toll Collection Section- Sukhumvit62 Toll Collection Section

Toll Collection Division2

- Pracha Chuen Toll Collection Section- Ratchadaphisek Toll Collection Section- Yommarat Toll Collection Section- Hua Lamphong Toll Collection Section- Surawong Toll Collection Section- Sathon Toll Collection Section- Asok Toll Collection Section- Sri Nagarindra Toll Collection Section- Bang Pa-in Toll Collection Section

Toll Collection Division3

- Bang Na Km.6 Toll Collection Section- Bang Phli Toll Collection Section- Chon Buri Toll Collection Section- Bang Khun Thian Toll Collection Section- Bang Mueang Toll Collection Section- Thepharak Toll Collection Section

E-Business Service Division

- Cleaning Account Center Management Section- ETC and E-Business Management Section- E-Business Customer Communication Section- E-Business Service Development Section

- Toll Collection Planning Section- Safety and Traffic Planning Section

- Public Relation Section- Mass Relations Section- Public Relations Media Section- Corporate Social Responsibility Section

- Expressway Information Service Section- Library and Reference Section- Information Analysis and Dissemination Section

- Bussiness Development Section- Marketing Section- Customer Relationship Section- Market Research section

Expressway System Engineering Research and

Development Division

- Transport System Research and Development Section- Testing, Quality Control, Standard Development Section- Research and Development Administration Section

Expert(Management)

Expert(Engineering)

Expert(Finance)

Expert(Law)

Audit Office

Audit Division1 Audit Division2

- Audit Section1- Audit Section2- Audit Section3

- Audit Section4- Audit Section5- Audit Section6

Risk Management and Internal Control Division

- Risk Management Development Section- Risk Management Evaluation Section- Core System Internal Control Section- Support System Internal Control Section

- Suksawat Toll Collection Section- Ram Inthra Toll Collection Section- Pracha Uthit Toll Collrction Section- At Narong Toll Collection Section

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-14

3) 既存 ITS 施設

自社内に ITS Center を保有(2012 年 9 月 27 日オープン)しており、システムは Semi Auto

及び Auto(新規開通の外環状線南の部分(Bang Phil-Suk Sawat Expressway))である。

CCTV:293 機。2 つのタイプがあり、画像監視のみ及びモーションピクチャ(うち約 20

台。車種 3 タイプ(小型車、中型車、大型車)、交通量、速度、車両密度を計測)

が設置されている。Auto 部では CCTV が 2km ごとに設置されており、画像及びモー

ションピクチャによる監視を実施している。事故も自動で検知し、事象が生じた

際はレスキューに通知するとともに警察にもトランシーバーで連絡を行う。CCTV

映像は 3 日間保存している。

VMS:60 機。2 種類あり、高速料金所前に設置しているもの(16 機)と、交通規則、所要

時間情報等の基本情報を掲載しているもの(44 機)がある。前者は、文字情報はセ

ンターにて入力でき、渋滞状況(緑:通常、黄:速度低下、赤:混雑)及び所要時

間を提供している。後者は、文字情報は 6 つのコントロールセンターにてマニュア

ルで入力している。

速度感知機(マイクロウェーブ):車両速度の監視しているが、多くが未稼働である。

上記情報については現在のところ他機関及び公共には提供していないが、今後、他機関と

の情報共有を図りたいと考えているとのことであった。渋滞情報についてはスマートフォン

アプリで提供している(簡易図形のみ)。コールセンターは 1543。料金所は 122 箇所保有し

ている。

4) 通信状況

CCTV:光回線及びマイクロウェーブ

VMS :光回線

速度感知機:光回線

ITS Center と Control Center とは ADSL 回線で接続されている。

5) 機材調達

ITS 関連機器はすべて自社で調達している。

ITS センターシステムは LAROKABANG(ラッカバン)大学との共同で開発した。

外観の ITS 関連機器は Lox Lay Corporation、Suntex、Vision one(タイの企業。System Indicator)

が供給した。

CCTV や VMS はタイ国内で入手可能だが、輸入されているものもあるとのことである。

6) ITS 関連計画

将来的には ITS 機器を増加したいと考えているが、技術力の向上等により価格が安くなっ

てからと考えているとのことであった。

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-15

7) データの収集

交通量については料金所で観測している(外観の一部では CCTV イメージプロセッシング

及びマイクロウェーブでも観測している)。料金所の情報から OD を観測している。

8) その他

・ 以前は 6 つのコントロールセンターで監視しており連絡体制等が煩雑であったが、現在

は ITS センターですべて管理している。6 つのセンターにて収集された情報は ITS Center

に収集されるが、ITS Center はデータ収集、モニタリングをするのみであり、直接セン

サー等をコントロールできない。

・ ETC(5.8GHz Passive, TC278)については所管が違うため詳細は不明。利用率は 35%程度

ではないかとのことである。

・ iPAD や iPhone でも CCTV 画像が見られる(Governor & NECTEC Governor)。

・ 路側に設置されている可変速度表示は NECTEC が管理している。規制速度ではなく、望

ましい走行速度を表示している。

・ OBU は 1,000 バーツで販売されている。Easy Pass のトップアップはコンビニ、料金所の

ATM で可能。

・ ITS Standard はない。

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-16

(4) Chulalongkorn University 出席者:Prof. Sorawit Narupiti, Head of Civil Engineering Deparrtment

1) バンコクにおける ITS の概況

バンコクでは以下の組織が CC(Control Center)を保有している。

BMA:CCTV CC、信号(以前の信号システムは SCOOT)、バンコク都内 50 区 Traffic Police:CCTV CC(Red Light(Signal Jumping)) EXAT:ITS Center OTP:ITS Data Center ※CCTV(Speed Detection、Traffic Monitoring) DOH:CC ※Data Collection ONLY DOLT:CC ※Empty Truck Control Transport Co.,Ltd:GPS Monitoring Center(現在は 1st フェーズでありセンターのみ保有。い

くつかのバスは GPS を設置している) NECTEC:CC

・ バンコク都内では約 10,000 機の CCTV が設置されている。基本的にはセキュリティのた

めに活用されている。BMA と交通警察は交通違反の罰金による収入をシェアしており、

その収入を CCTV の導入等に充てている。

・ OTP は ITS Data Center に道路計画への活用を目的に他機関の持つ交通関連情報を収集し

ているが、現在は活動が止まっている状況とのことである。

・ iTIC は BMA 及び交通警察から CCTV 映像と渋滞情報を、EXAT からは渋滞情報を収集

しており、これらデータを基に旅行速度情報(渋滞マップ)の提供を WEB で行ってい

る。渋滞程度の色合いは EXAT のものと合わせている。また事故のデータも DOH(ORR)

から収集している。現在、T-SQUARE とは情報は共有されていない。

・ 現在、タクシーは 100,000 台ほどあるが、そのうち 2~30,000 台は GPS が設置されてい

るのではないかとのことである。

・ Ministry of Land Transport が RFID のプロジェクトを行っている。また、トラックの GPS

データを保有している。

・ BMTA は新しく導入されたバス(3,800 台)の GPS データを保有している。BMTA は静

的ではあるがバスの位置情報を把握している。

・ BRT も GPS がある(運行管理)。

・ ITS Master Plan は OTP により策定されている。

・ MOT は渋滞の解消を目的に ITS の活用を検討しており、ATC の導入による解決を検討し

ている。また、National Highway 304 で ITS のパイロットプロジェクトが行われており、

センサー、速度感知機、交通量観測機を設置している。

・ 未だ ITS Architecture がなく、今後策定することが必要と考えている。また、ITS に係る

技術に対しての民間企業の参加による競争も必要と考えているとのことであった。

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4-17

(5) National Electronics and Computer Technology Center (NECTEC) 出席者:Dr. Passakon Prathombutr, National Science and Technology Development Agency (NSTDA),

Director of Service Research & Innovation Program Cluster & Program Management Division Mr. Raksit Thitipatanapong, NECTEC, Engineer of Intelligent Transport Systems Laboratory Information Communication and Computing Research

1) 組織構造

Ministry of Science and Technology、NSTDA の下に位置する法定行政機関である。

予算は、政府からとアプリの共同研究者、ライセンス・パテントフィーからである(日本

の独立行政法人のようなもの)。

出典:NECTEC

図 4-14 NECTEC 組織構造図

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4-18

ITS Thailand はタイの ITS 関連組織団体であり、法人会員と個人会員から組織されており、

NECTEC は個人会員として加入している。iTIC は財団法人であり、NECTEC の Director が iTIC

の Vice Chairman を務めている(iTIC の事務局は Dr. Passakon のオフィス)。NECTEC と iTIC

は情報を共有し物理的には繋がっているが別組織となる。当機関は研究所ごとに割り当てら

れた基本技術の解析を行っており、MOT から示されている 6 つのビジョンに則って活動して

いる。交通関連データを収集しており、iTIC とも共有している。交通情報提供・取得のため

の予算も割り当てられている(ITS Thailand は ITS 調査に予算を利用)。BMA、DOH とはプ

ロジェクトベースで関係しているものの、ITS Thailand のメンバーには入っていない。

2) 役割

NECTEC は交通関連の情報を基に"Traffy と TVIS というアプリを開発している(API ベー

ス)。Traffy では、BMA から送信された CCTV、VMS、イベント情報を一覧で確認できる。

TVIS では、同じく CCTV、道路情報に関するツイッターメッセージ(送信者:ラジオ放送局、

Bangkok Flood Control Center)、BMA の雨量レーダ情報、路線毎の交通情報(音声による提供)

が閲覧できるようになっている。

これらの技術はオープンソースとして広く共有されている。基本的にはこれら情報の分析

やそれに基づく予測を行っており、アプリ開発は主ではなく、あくまでも公的機関としてア

ルゴリズムを作ることにより、プラットフォームの整備を行う。

3) ITS 既存施設

NECTEC:TraffyなるNECTECの情報提供アプリを提供している。BMAから送信されたCCTV、

タクシー・トラックの GPS データや個人、ラジオ放送局(投稿者名:fm91trafficpro

等)、Bangkok Flood Control Center(投稿者名:BKK_BEST)からの情報提供(SNS

等)を基に CCTV 映像や文字情報(交通渋滞、事故等)の提供を行っている(地

図情報は無し)。また、Twitter、Facebook の文字情報を分析し、渋滞に関わる情報

の入手を研究・計画も行っている。

TVIS:NECTEC の渋滞情報提供アプリ。Traffy で得られる情報を地図上で表示したもの。。

Traffy 等の他のアプリを活用して現在位置からの距離、渋滞情報を提供している。渋

滞マップはBMAの情報を元にして作成されたもので iTICで表示されているものを活

用。Twitter や Facebook からのメッセージ情報も活用している。

iTIC:iTIC ホームページ(http://www.iticfoundation.org/home)において、CCTV、トラック

やバス、タクシーの GPS や個人(契約者の携帯の位置情報や通報)から収集した情

報(Human Sensor)により、CCTV 画像、位置情報や SNS メッセージによる情報提供

(交通渋滞、事故等)を行っている。イベント情報(事故等)は DOH の WEB に提

供されている情報や首都圏警察からの情報を活用している(首都圏警察のセンターに

iTIC 職員が常駐し情報を入手)。TVIS の情報も活用。高速道路については DOH 提供

の情報のみであるが、EXAT については将来的には NECTEC と情報を共有することを

考えているとのことである。

CCTV COP:交通警察、AIT(Asian Institute of Technology)との協働により、警察に似せた

人形に CCTV を設置し、車両通行禁止エリア(ゼブラゾーン)の侵入監視を

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-19

行っている。観測された違反車両のナンバープレートをDOLTの持つ車両デー

タベースと照合し、違反者に対して罰金通知を送付する。なお、CCTV は画像

のみを記録しており、ナンバープレートはマニュアルで記録している。終日

稼動している。

・ バンコクでは 10,000 台以上の CCTV が設置されているが、多くはセキュリティのための

ものである。

・ DOH はタイ全体をカバーするコントロールセンターを保有しているが、基本的にはデー

タ収集のみに利用している。NECTEC とはインターネットでつながっている。

・ BMA は気象レーダーを保有している。

・ T-SQUARE のデータは商用利用されている理由からシェアされていない(T-SQUARE で

提供されているカメラの画像は iTICに利用料を支払って取得しているとのことである。)

4) その他

・ 交通関連アプリの DL 数は ITS Thailand のホームページに関連資料を提供している。

・ JAXA との協働研究により、“みちびき”を利用したプローブデータの精度の評価を行っ

ている。結果は非常に良いものであるが、“みちびき”からのデータを受け取る受信機の

価格が高い(2,000USD)ことが課題である。

・ NECTEC は Multi-GNS Asia (MGA)Project に参画し、“みちびき”に加え GPS と GLONASS

からの情報を加えることによって位置検知精度を向上させる研究を進めている。

・ 研究テーマとして、現在の安全(トライバーの行動)から、次は公共交通、ビッグデー

タを考えている。

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4-20

(6) National Broadcasting and Telecommunications Commission (NBTC) 出席者:Dr. Artprecha Rugsachart, Telecommunication Standard Division Telecommunication Standard

and Technology Bureau, Dr. Nattawut Ard-parce, Director of Division, Spectrum Engineering Division

1) 組織構造

Post and Telegraph Department が前身であるが 2011 年に NBTC として再編された。放送・通

信にかかる監視機関として政府直下の組織に位置付けられ 11 の委員より成り立つ。

-音楽放送サービス

-テレビ放送サービス

-通信サービス(2 委員)

-法律(2 委員)

-放送・通信サービスの規制に係る経済便益(2 委員)

-放送サービスに係る消費者保護、人権及び自由促進

-通信サービスの規制に係る便益

-放送・通信サービスの規制に係る教育、文化、社会

管理者は MICT (Ministry of Communication and Telecommunication)、事務局は ONBTC、運営

は TOT/CAT 及び権利を持つ企業が行っている。

2) 役割

-周波数に係るマスタープランの策定

-音楽放送、テレビ放送、ラジオ、通信サービスに係る周波数の割り当て

-音楽放送、テレビ放送、通信サービスに係る特徴及びカテゴリの指示

-音楽、テレビ、通信サービス、ラジオ通信サービスに係る無線周波数及び無線通信機器の

利用の許可と規制、及びライセンス付与の規準、手続き、条件、ライセンス料の決定

-同種・異種業態での干渉を生じさせない為の無線周波数の効果的利用の為の規準の決定

-質、効果性、タイムライン、信頼性、公正性を持つサービスを利用者に認めるための音楽、

テレビ、通信サービスの運営の許可と規制、及びライセンス付与の基準、手続き、条件、

ライセンス料の決定

3) 周波数割当

ITS 占用に割り当てられた周波数はないが、以下が関連する周波数帯である(詳細は次頁

図を参照)。

a. ETC(5.8 GHz band for Easy pass)

ETC(Easy pass)が使用許可を得ている。周波数は RFID Passive 5.470~5.850GHz。

b. IC card for BTS(Rabbit Card)(Type A, Type B or Type C)

不明。Toll Gate は 900~925MHz である。電力が弱いので許可は必要ない。

c. IC card for MRT (Type A, Type B or Type C)

不明。電力が弱いので許可は必要ない。

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-21

d. Specific frequency allocated to road operator or transportation operator 詳細は提供されたリスト参照(Radar Equipment 及び Vehicle Radar Equipment)。

出典:NBTC

図 4-15 自動車用無線周波数利用に関連するタイの規定-1

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4-22

出典:NBTC

図 4-16 自動車用無線周波数利用に関連するタイの規定-2

4) 手続き

商用目的での利用については当局から使用許可を取り、また設置等に係る許可を受けた上

で回線の設置が可能となる。

道路については、商用目的ではないため、当該機関に直接設置するための許可は必要ない。

地デジについては 3 キャリアがパイロットで実施中であり、年末にオークション(開札)

が行われ企業が決定される。来年には導入されるのではないかとのことであった。なお、地

デジは欧州方式(DVBG-2)を採用している。

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4-23

(7) BMA CCTV Center 出席者:Mr. Kowit, Mr.Waiyawut

1) センター施設について

BMA にて設置されている CCTV の状態を監視している(24 時間 365 日)。監視は納入業者

が行っており、7 つの企業(AMR ASIA, CONIC, SAMART, Secom, Multi, GENIUS, UTLE:す

べてタイの企業)が当センターに常駐している(納入時の契約で定められている。)。システ

ムは各企業により異なるが、互換性を持つ統合可能なシステムで納入されている。常駐の目

的は緊急時エラーやメンテナンスの為であり、交通状況の監視は行われていない。CCTV は

可搬型及び固定型(交通監視用、設置高さ 4m)と固定旋回型(セキュリティ用,設置高さ 12m)

があり、地区ごとに約 200 台ある。さらに 10,000 台追加する予定である。なお、CCTV 画像

は 15 日間保存されている。

当センターは BMA のメインセンターであり、各カメラの情報は下図に示すとおり光ケー

ブルまたはメタルケーブルで Sub center に集約され、Sub center から District Office(50District)

へ収集された後、メインセンターに転送されている。District Office は警察署にも提供してい

る。Sub center からメインセンターまではすべて光回線で接続されている。(一部 CCTV の通

信回線は無線を使用している)

2) その他

・ 常駐者は GENIUS が多い(GENIUS の親会社は FORTH)。

・ 当センターとは別に VMS センターがある。VMS はバンコクに 40 機あり、GENIUS が

CCTV 情報を基に渋滞マップを作成し提示している。BMA は VMS のテキストメッセー

ジだけを作成している。GENIUS が運用を行っており、データとレポートを BMA に提

出している。

・ iTIC は当センターにサーバーを提供しており、その代わりとして 100 台の CCTV のデー

タを受け取っている。

・ CCTV 機器は台湾、韓国、欧州、日本からの輸入品である。信号はタイ企業(FORTH)、

VMS もタイ企業(GENIUS)である。

・ 光ケーブルはタイにて製造されている。

Main Center

District Office

CCTV CCTV CCTV

District Office

CCTV

Traffic Police

・・・

・・・

Sub-Center Sub-Center ・・・

:光ケーブル

:光/メタルケーブル

100 台の映像を警察と共有

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4-24

(8) Royal Thai Police 出席者:Pol.Maj.Gen.Jirasunt Keawsangake, Commander

Pol.Col.Wanchai Yoosaeng, Deputy Commander Pol.Col.Pipat Bunpetch, Superintendent General Staff Sub-Division, Traffic Police Division, Pol.Col.Thanatit Wongwairuk, Superintendent Sub-Division 4, Traffic Police Division Pol.Lt.Col. Dr. Panupong Panudulkitti, Inspector Sub-Division 4, Traffic Police Division

1) 組織構造

当組織は Royal Thai Police の下部組織である首都圏交通警察局の交通警察部に当たる。

出典:Royal Thai Police

図 4-17 Royal Thai Police 組織構造図

2) 役割

バンコク都における、交通問題解決、道路交通事故の削減、人民の保護、利便性・安全性・

親和性のある環境の促進、他のセクター(民間、公共、コミュニティ等)とのコラボレーショ

ンの探究をビジョンとして掲げており、以下がミッションとなる。

■ミッション

・王族の保護

・人民主体に基づく保護

・便利で安全な交通サービスレベルの向上

・大気汚染の管理を加えた交通事故削減

・法律に基づく正義の実行

Police General (Ranking)Commissioner-General (Title)

Police Lieutenant GeneralCommissioner

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4-25

3) 既存 ITS 施設

当組織の Sub-division 4 が交通管制(Traffic control and Command Center) を担当している。

CCTV:80 交差点。設置・維持管理は BMA が行い、警察は運用を行う。

Red Light カメラ:30 交差点に設置されており、設置・維持管理及び運用とも警察が行う。

信号無視の自動検知システムであり、スペイン製である。ナンバープ

レートを登録(マニュアルで入力)し、登録者に対して罰金の書状を

送付する。OCR は導入していない(タイ文字は複雑で読めない)。Land

Transport がナンバープレートデータベースを持っている。取締件数は

導入当初は 10,000 件/day・location であったが、現在では認知されてい

るため 100 件/day・location となっている。

VMS:80 機。当センターでテキスト入力され、交通情報、イベント情報、キャンペーン

(ヘルメットの着用、シートベルト着用 等)を提示している。CCTV や現地警

察官の目視により渋滞状況が VMS に反映される。

信号:800 交差点のうち 400 交差点に信号機が設置されている。信号サイクルがプリセッ

トされており、センターとは繋がっていない。交通状況に応じて警察官が手動で

サイクルフェーズを変更する。

管制センター:1988 年に設立され、CCTV、Red Light カメラの画像を監視している。セ

ンターからは CCTV の操作が可能であるが、Red Light カメラの画角は固

定されており操作できない。

4) 機材調達

タイ企業から独自に調達している。

5) 交通規制

リバーシブルレーンは BMA が管理し、警察は提案のみ行っている。

6) ITS 関連計画

CCTV 等の機器とセンターとは将来的には光回線で接続したいと考えている。

東京の警視庁のセンターを見学したことが有り、将来はそのように改良したいとのことで

あった。

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4-26

7) 交通関連データ

Area: 1,568 km2. Road Length: 4,149 km. Expressway (Toll Road): 212 km. Percentage of road surface: 6.0 % Population (Registered): 6.0 Million Vehicles (Only Car and Motorcycle): ~ 9,000,000 Units Traffic officers: ~ 5,000 officers

BKK Average Travel Speed (KPH)

2010 2011 2012

19.6 19.8 19.9

24.0 24.1 24.0

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4-27

(9) Bangkok Mass Transit Authority (BMTA) 出席者:P Mr. Wisit Wongsaroj, Assistant Director

Mr. Komson Chotpadit 1) 組織構造・役割

100%の政府保有の国営バス運営機関であり、国営バスのオペレーションを行っている。民

間 40 社が BMTA から運行ライセンスを得てサービスしている。運営エリアはバンコク都+周

辺 5 都市であり 108 ルートを運行している。BMTA 関連会社を除きバンコク都内でバスを運

営している会社はいない。バス保有台数は BMTA:3,500 台、民間:3,500 台であり、料金は

現金支払いのみである。

2) ITS 関連計画

新しく導入されるバス 4,000 台に GPS を取り付け、運行管理を行う予定とのことである。

GPS によりバスの発車・到着時刻の確認、スピード違反等を監視する予定であるが、これら

情報を監視する GPS センターは本社とは別の場所にあるとのことであった。

現在 80 台のバス(空調付き、2 ルート。No.76(40 台)及び No.140(40 台)系統)で実験

が行われている。来年、新しいバス 3,100 台が導入され、残り 900 台は随時導入される。そ

の際は、8 つのバスセンターそれぞれに GPS センターを導入する予定とのことである。新し

いバスが導入されるに当たり、既存のバスはどうなるか(廃棄もしくは継続利用等)は決まっ

ていない。

なお、E-ticket システム(共通チケット)が導入される予定である。

3) GPS センター

システムは Mappoint 社の qEZView を使用している。Mappoint(タイの企業)は地図会社で

ありシステムも含めて納入している。

GPS により位置情報、速度のほか、エンジン起動有無、扉の開閉状況(前側と後ろ側)が

把握可能となっている。通信は GPRS を用いている。

PC のスペックが低いためシステムの動作が遅い(OS は Windows VISTA)ことや、バス接

近情報を掲示するバス停での表示板の調子が悪く、現在表示されていないことが課題である。

なお、RFID による入出管理のパイロットプロジェクトも実施していた。

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4-28

(10) Department of Highway (DOH) 出席者:Dr. Songrit Chayanan, Head of Traffic Data Collection Group, Bureau of Highway Safety

1) 組織構造

MOT の下部組織である。

出典:DOH

図 4-18 DOH 組織構造図

2) 役割

1. 運輸の改善及び物流の促進を図るための道路ネットワークの開発

2. ASEAN 経済地域と接合するための道路ネットワーク開発

3. 効率的な運輸のための道路インフラの維持及び監視

4. 道路安全のための道路インフラの維持及び監視

5. 技術、サービス、社会、環境の劇的な変化に対応するための組織の近代化

タイ全国の国道(主にバンコク以外)6,000km の整備・維持管理を行っている。当組織は

主に国道における交通・事故データの収集を行っている。

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4-29

3) 既存 ITS 施設

CCTV:約 100 機。タイの企業(LTP)が設置。画像は 30 日間記録している。通信設備が整っ

ていないことが課題となっている。

マイクロ波レーダ:交通量、車種、速度、ギャップ、占有率等を計測している。

CCTV 及びマイクロ波レーダは 91 station(131unit)で管理されている。

CCTV 画像は ADSL で伝送され WEB で公開されている。マイクロ波レーダについても WEB

やアプリにて提供されている。

維持・管理を行う事務所が現地にあるが、CCTV との接続は無く、交通状況は DOH 本部

(Bureau of Highway Safety)が公開している WEB で確認している。

現在 iTIC とはデータの共有はしていないが、事故(特にタクシーが多い)のデータは共有

しようとしている。Royal Police とは原則無関係だが、Highway Police とは予算を共有してい

る。

Motorway CCTV モニタリングルーム:CCTV 画像を収集・監視している。ここからはそれら

の CCTV は見ることができない。新空港近くのラッ

カバンにメインセンターがある。

Motorway 担当部はサーバーを保有し、光回線で接続している。また Motorway 担当部では

CCTVのほか、VMSも保有している。またMotorway No.7及びNo.9にセンターがあり、CCTV、

VMS とは光回線で接続されている。現在 ETC は採用されていないが、ETC(Easypass)が来

年導入予定であり、ゲートを建設中である。

4) ITS 関連計画

将来的には一つの場所で CCTV 画像の収集・管理を行うことを考えている。

現在 NH304 で事故検知に係るパイロットプロジェクトを実施しており、VMS、CCTV 等の

機器を導入・監視している。※NH304 では日に 10,000 台の交通量がある。この CCTV 画像は

当室でも見ることができ、事故の際は SMS が送られてくる。

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4-30

(11) The Office of Transport and Traffic Policy and planning (OTP) 出席者:Mr. Parinya Tanadtang, Head of Group of Innovation Application for Planning

Mr. Pisit Pomthong, Computer Technical Officer, Transport and Traffic Information Center 1) 組織構造

MOT の下部組織である。

出典:OTP

図 4-19 OTP 組織構造図

2) 役割

タイ国における交通関係に係る政策(計画)立案、インターフェースの標準化を行い、パ

イロットプロジェクトを推進し、その結果を運用者に展開している。

1. 政策、対策、標準への提言及び道路交通計画の策定

2. 交通に係る調査、研究、技術開発及びイノベーション

3. 交通システムに係る安全及び環境の促進

4. 交通に係るデータ、情報、知識管理の構築、開発、頒布

5. 政策、対策、計画の実現に向けた活動

6. 組織・人的リソース管理の開発

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4-31

3) 既存 ITS 施設

これまでにセンターを構築し、CCTV の導入や渋滞情報提供を行ってきたが、現在はこの

活動を休止しており、ITS 関連の計画に関する活動に集中している。渋滞情報提供について

は WEB のみで実施している(リアルタイム情報。CCTV 画像データは OTP 以外のものも含

まれる)。なお、計画立案を担当している為、調達においては関与していない。

ITS Data Center:交通関連のデータを各関係機関より収集している。

4) ITS 関連計画

2012 年に ITS マスタープランを策定しており、ITS に関する標準の策定、タイにおける ITS

アーキテクチャも作成済み。2012~2017の 5年間で約 7,450 million Bahts(OTPのみではなく、

関係機関に分配される)の投資を考えているが、上位機関(財務省等)からの承認はまだ下

りていないとのことであった。6 つの戦略を基に ATMS、IMERS、AVCS、ETC、ATIS のシス

テム構築を目指している(うち、ETC および ATIS は実施済み)。(詳細は 4.2.2 関連計画を参

照)

また、交通関係の共通チケットの導入、クリアリングハウス設立を検討しており、現在(2013

年 12 月)取り進めているところであり、プロジェクトは以下のとおりである。

1. Program Management Service: PMS

韓国システムで LG System によるオープンシステム。6 か月の試行を 2 週間前に終えて

いる。 2. Central Clearing House: CCH

バス、鉄道、船、有料道路に適用。2014 年 2 月、国際入札にかけて 2~3 年で建設する

予定とのことである。

BMTA ではバス GPS プロジェクトを進めており、新しく導入されるバス 4,000 台に GPS を

設置し位置情報等の収集を行う予定(民間のバス(BMTA が認可する)にも 4,000 台分の GPS

を取りつける)とのことであった。※現状は 80 台のバスに GPS が取り付けられている。

5) 交通関連データ

バンコクの 1 日のトリップ数は以下のとおり。

‐ 合計 1.8 mil. trip/day

‐ バス:7.3 mil. trip/day

‐ マストラ:BTS 0.5 mil. trip/day、MRTA 0.2 mil. trip/day、ARL 0.04 mil. trip/day、

車 10 mil. trip/day

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4-32

4.2.2 関連計画

(1) 経済開発計画/国家開発計画

1) 「第 11 次国家経済社会開発計画」 1961 年以来、5 か年毎の開発計画として策定を行っている。2011 年 10 月の第 11 次計画で

は、「平等で、公正で、変化への免疫機能をもつ、幸福な共存社会」をビジョンに掲げ、「6

つの戦略」として以下のとおり開発の重点分野を設定している。

a.公正な社会推進のための戦略

b.生涯学習社会促進に資する人的資源開発のための戦略

c.均衡ある食料及びエネルギー安全戦略

d.知識基盤型経済及び実行可能な環境の創造のための戦略

e.経済及び安全保障の強化に関する地域内協力の戦略

f.天然資源の管理及び持続可能な環境への戦略

(2) 高速道路網計画・国家道路網計画

1) 「Transport and Trafic Development Master Plan」(2011) 2011 年から 202 年までの交通/公共交通システムの開発方針を定義しており、以下 6 つの目

標を掲げている。

1. タイへの接続ハブの創出

2. 効果的な公共交通システム、良質なサービスとアクセス性の提供

3. 移動と交通の安全性の改善・向上

4. 環境に親和する交通及びエネルギー保全の促進

5. アクセス性の改善及び公共交通利用の増加

6. 移動及び交通におけるモビリティの増進

これら目標ごとに戦略、結果、インパクトを提示している。

出典:Transport and Trafic Development Master Plan

図 4-20 戦略のエッセンス

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4-33

出典:Transport and Trafic Development Master Plan

図 4-21 戦略と目標の結びつき

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4-34

2) 「Investment of Transport Infrastrucure Dvelopment Plan during 2013-2020」 ASEAN 経済地域設立に対処するためのインフラの競争性、即時性の増加を目的に 3 つの戦

略が立てられている。1 つは貨物輸送のモーダルシフトの促進であり、国の輸送コストの低

減及び道路交通から水上交通や鉄道へのモーダルシフトに注意を促すことによる持続可能な

交通をうたっている。2 つ目はインフラと交通施設の接続性の開発であり、製品の再配置可

能性及びタイの経済成長を促すことを目的としている。3 つ目は交通システムのモビリティ

改善及び開発であり、移動の選択肢の増加及び生命の質及び安全の増進を目標としている。

この中では、水上交通の利用、トラックターミナルの開発、都市交通システムの開発として

地下鉄の開発や高速ネットワークやフライオーバーの整備等を示している。

(3) 交通関連計画

1) 「Mass Rapid Transit Master Plan」(M-MAP) バンコク都市圏にサービスを提供する都市鉄道輸送ネットワーク開発計画である。この計画は

2010年 2月に当時の首相アピシットを委員長とする国土交通の運営委員会によって承認された。

この中では、2 つの通勤鉄道路線、空港鉄道、5 つの高速輸送路線で構成される主要な 8 路線及

び 4 つのフィーダー路線を指定している。総路線延長は 508 キロであり 20 年(2010-29)の開発

期間を設けている。

出典:Ministry of Transport

図 4-22 M-MAP

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4-35

(4) 情報通信計画(情報通信計画など)

1) 「IT2020」 政府は、2002 年に、2001 年から 2010 年の国家情報技術政策の枠組みである「IT2010」を

策定、同年 9 月に議会は 2002 年から 2006 年の期間を対象とする「国家 ICT マスタープラン

(National ICT Master Plan)」を策定した(その後、2008 年まで延長)。2009 年 8 月には、2009

年から 2013 年の期間を対象とする「第 2 期タイ ICT マスタープラン(Second Thailand ICT

Master Plan)」を閣議決定した。2010 年 11 月には、「国家ブロードバンド政策(National

Broadband Policy)」を閣議決定し、ブロードバンドの人口普及率を 2015 年までに 80%、2020

年までに 95%とする目標を定めた。また、次の 10 年の ICT 政策の枠組みを定める「ICT2020」

が 2011 年 3 月に閣議で承認された。同政策枠組では以下の目標が掲げられた。

・ユニバーサル・ブロードバンド・アクセスの実現(国家ブロードバンド計画の目標と同じ

数値目標を掲げている)。

・知識経済化に対応する人材育成(人口の 75%が情報リテラシーを身につけ、ICT 専門家を

人口 3%の割合まで高める)。

・ICT 産業を GDP の 18%を占めるまでに成長させる。

・国際的なタイの ICT レディネス・ランキングの順位をトップレベルに向上させる。

・新たなインターネット・ベースの雇用を創出し、恵まれない層の生活の質の向上を図る。

・環境に配慮しつつ ICTの利活用を進め、人口の50%が ICTの重要性を認識するようにする。

(総務省世界情報通信事情より)

2) 「電波管理・通信・放送基本計画」 NBTC は、2012 年 4 月、「電波管理・通信・放送基本計画」を施行した。同計画は、周波

数管理、通信分野、放送分野における基本計画を定めたもので、それぞれ、ビジョン、ミッ

ション、目標、戦略等が盛り込まれている。各計画の概要は以下のとおりである。

①「2012 年周波数管理基本計画」

国民に対して最高の利益を生み出すように周波数管理を行うこととして、自由で公正

な競争を考慮し、公共の利益に関する多様な事業にあまねく周波数利用を分散させるとの

ビジョンに基づいて、次の六つの目標を掲げている。

・国際周波数管理に関する協力メカニズムを用意する。

・周波数の割当て・調整のために周波数の返還に関する原則規定と時期を定める。

・国の安全保障面での周波数管理の原則とメカニズムを用意する。

・公共災害の防止・緩和や緊急事態・災害対応のための周波数割当てとその使用の原則

を定める。

・地上デジタル放送の変更計画を用意する。

・民間セクターに対する周波数割当てやコミュニティ・サービスを行う非営利活動向け

に各エリアでの周波数帯全体の 20%以上を使用できるようにする。

②「2012 年電気通信事業基本計画」

同計画は、公示から 5 年間の期間に適用されるもので、電気通信事業の開発に注力す

ることや、情報技術へのアクセスの格差是正、国の競争力強化等を図るとしている。また、

同計画で掲げられた六つの目標は以下のとおりである。

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4-36

・国民が、良質な通信サービスをあまねく適切かつ公平な価格で利用可能にする。教育、

保健衛生、文化、国家安全保障等の公共分野における国民の利益最大化を考慮する。

・既存事業者と新規参入事業者間を含めた事業者間の自由で公正な競争を促進する。

・通信資源の効率的使用の促進、平時と緊急・災害時等の両方のニーズに十分対応可能

なものとする。

・音声サービスとブロードバンド・サービスの固定通信サービスへのアクセス機会を拡

大する。

・消費者の権利意識と知識向上を図り、消費者保護制度のメカニズムの開発を行う。

・国際レベルでの国の競争力を強化する。

③「2012 年ラジオ・テレビ放送事業基本計画」

通信分野と同様に公示から 5 年間の期間に適用される計画であり、通信資源の透明か

つ公平な配分や、公共の利益のための自由で公正な競争の促進を掲げている。また、民主

主義社会の基礎の構築に向け、消費者保護、通信に関する権利と自由、多様かつ質の伴っ

たデータ・情報に平等かつ適切にアクセスできるようにしていくとしている。同基本計画

で掲げられている目標は次の五つである。

・公正かつ効率的な周波数の使用認可とラジオ・テレビ放送事業の許可から国民が利益

を受ける。

・消費者がラジオ・テレビ放送サービスを利用できるようになり、かつ、権利が保護さ

れる。

・あらゆる階層の国民が多様なデータ・情報に平等にアクセスする権利と自由を持つよ

うになる。また、公共の利益のためのラジオ・テレビ放送事業向けに周波数が使用で

きるようになる。

・ラジオ・テレビ放送事業の認可された事業者が質の向上を図り、倫理基準を持つよう

になる。

・ラジオ・テレビ放送事業の近代化と採算性の向上を進める。

(総務省世界情報通信事情より)

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4-37

(5) ITS関連計画

3) 「Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017」 2012 年 6 月に策定されており、ITS を用いたインフラの効率性及び安全性の強化、公共交

通及び物流サービスの改善を目的として、1)旅行時間減少による道路インフラの効率性の増

進、2)公共交通利用の促進、3)道路安全性の強化、4)商用車の運行とサービスの効率性の

改善を目標としている。この中で 2012 年から 2017 年の 5 カ年計画の戦略として、以下の 6

つの戦略が掲げられている。これら戦略ごとに目標及びプロジェクトを設定している。

1. Traffic Management and Operation Services

2. Public Transport Services

3. Incident Management and Emergency Response Services

4. Logistics Management and Operation Services

5. Transport related Electronics Payment Services

6. Traveler Information Services

これらの戦略を達成するために 7,450 million Baht が計上されている。

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-23 ITS マスタープラン戦略

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4-38

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-24 ITS マスタープラン戦略詳細(戦略 1 及び 2)

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4-39

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-25 ITS マスタープラン戦略詳細(戦略 3 及び 4)

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4-40

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-26 ITS マスタープラン戦略詳細(戦略 5 及び 6)

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4-41

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-27 ITS マスタープラン戦略(戦略 6 続き)

出典:Intelligent Transportation System (ITS) Mater Plan 2012 - 2017

図 4-28 ITS 戦略にかかるコスト

4.2.3 ITSアーキテクチャと標準化領域

OTP との会談においては ITS の標準とアーキテクチャは作成済みとのことだったが、関連

資料については提供されなかった。

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4-42

4.2.4 既存ITS関連施設

バンコクにおける既存 ITS 関連施設における全体システム構成図及び個別のシステム構成

図を以下に示す。信号は設置・管理においては BMA、運用は交通警察が行っている。CCTV につい

ては BMA、交通警察、EXAT がそれぞれ管理・運用を行っている。

出典:調査団

図 4-29 バンコク既存 ITS 施設 全体システム構成図

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4-43

出典:調査団

図 4-30 バンコク既存 ITS 施設 個別システム構成図(BMA)

出典:調査団

図 4-31 バンコク既存 ITS 施設 個別システム構成図(DOH)

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4-44

出典:調査団

図 4-32 バンコク既存 ITS 施設 個別システム構成図(EXAT)

(1) 収集系設備

1) CCTV バンコク都内の交差点監視用として 230 交差点(BMA:150 交差点、交通警察:80 交差点)、

セキュリティ用で 2,000 機が設置されている。BMA 及び交通警察のモニタリングセンターか

ら映像から確認している。設置及びメンテナンスは BMA が実施、運用は交通警察が行って

いる。また国道では DOH が約 100 機保有しており、画像を 30 日間記録しているほか、マイ

クロ波レーダーにより交通量、車種、速度、ギャップ、占有率等を計測している。交通警察

は Red Light カメラを 30 交差点に設置しており、維持管理及び運用とも警察が行っている。

スペイン製であり信号無視の自動検知をしており、ナンバープレートを登録(マニュアルで

入力)し、登録者に対して罰金の書状を送付する。

出典:調査団

図 4-33 CCTV

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4-45

2) 高速道路(CCTV、速度感知器、ETC) (ア) CCTV

293 機が設置されている。2 つのタイプがあり、画像監視のみ及びモーションピクチャ(う

ち約 20 台。車種 3 タイプ(小型車、中型車、大型車)、交通量、速度、車両密度を計測)が

設置されている。Auto 部では CCTV が 2km ごとに設置されており、画像及びモーションピ

クチャによる監視を実施している。事故も自動で検知し、事象が生じた際はレスキューに通

知するとともに警察にもトランシーバーで連絡を行う。CCTV 映像は 3 日間保存される。

(イ) 速度感知器

車両速度の監視を行っているが、多くが未稼働である。

(ウ) ETC(EasyPass)

バンコク首都高速道路の一部で導入されており、高速道路の料金収受のために利用されて

いる。方式は 5.8GHz Passive、TC278 形式である。

出典:調査団

図 4-34 バンコク都市内高速道路の ITS 関連施設・機器

(2) 提供系設備

1) 信号 約 400 交差点(すべてスタンドアローン)に設置されている。設置・管理は BMA、運用は

交通警察が行っている。信号サイクルがプリセットされているが、交通状況に応じて警察官

が手動でフェーズを変更する。

出典:調査団

図 4-35 バンコク都内の信号

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4-46

2) VMS BMA:40 機を保有しており、うち 4 機は高速入口付近に設置され、高速の渋滞情報を提供

している。情報ソースはラジオ放送及びユーザーからの情報であり、EXAT からは提供され

ていない。36 機は一般道の渋滞状況を提供している。NECTEC のセンターに VMS データが

送信され、CCTV の情報を基にデータをマニュアルで入力している。

交通警察:80 機を保有しており、警察の管制センターでテキスト入力を行っている。交通

情報、イベント情報、キャンペーン(ヘルメットの着用、シートベルト着用 等)を提示し

ている。CCTV や現地警察官の目視により渋滞状況が VMS に反映される。

高速道路:60 機を保有し、高速料金所前に設置しているもの(16 機)と、交通規則、所要

時間情報等の基本情報を掲載しているもの(44 機)の 2 種類がある。前者は、文字情報はセ

ンターにて入力でき、渋滞状況(緑:通常、黄:速度低下、赤:混雑)及び所要時間を提供

している。後者は、文字情報は 6 つのコントロールセンターにてマニュアルで入力している。

このほか、Motorway 上にも VMS が設置されている。

出典:調査団

図 4-36 VMS

3) カーナビ カーナビは市販されているものの、あまり普及はされておらず、タクシーにもまだ設置さ

れていない。

出典:調査団

図 4-37 カーナビ

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4-47

4) スマートフォンアプリ、WEB 交通状況に係る渋滞情報提供のためのスマートフォンアプリが複数の機関・企業(BMA、

NECTEC、TTET 等)により公開されている。

また、iTIC という財団法人がホームページ(http://www.iticfoundation.org/home)上で CCTV、

トラックやバス、タクシーの GPS や個人(携帯や通報)から収集した情報(Human Sensor)

により、CCTV 画像、位置情報や SNS メッセージによる情報提供(交通渋滞、事故等)を行っ

ている。イベント情報(事故等)は DOH の WEB に提供されている情報や首都圏警察からの

情報を活用している(首都圏警察のセンターに iTIC 職員が常駐し情報を入手)。TVIS の情報

も活用。高速道路については EXAT 提供の情報のみであるが、将来的には NECTEC と情報を

共有する体制を考えている。

出典:調査団

図 4-38 スマートフォンアプリ、WEB 情報提供

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4-48

(3) センター側設備

バンコク都にはCCTVコントロールセンター(BMA、Traffic Police、OTP、DOH)、VMSコントロール

センター(BMA、Traffic Police(CCTV センターと同一))、バスオペレーションセンター(バス運営会

社)、タクシーオペレーションセンター(各企業)等の ITS 施設が導入されている。高速道路では

EXAT が ITS センター(CCTV、VMS のコントロール)を運営している。 1) BMA

バンコク都内の約 150 交差点に CCTV(交差点監視用)、約 2000 機(セキュリティ用)が

敷設されており、CCTV コントロールセンターにて画像を監視している。画像監視のみであ

り交通量観測できる機器は無い。コントロールセンターでは CCTV 納入業者が維持・保守・

管理目的で常駐しており、交通管制としての機能は果たされていない状況と考えられる。画

像情報は警察と一部共有している。CCTV 画像は各地区のサブセンターにデータが送信され、

そのデータを本センター及び警察に送信している。回線は光回線を用いている。

VMS コントロールセンターでは CCTV の画像を基に渋滞状況マップを情報板に掲載して

いる。VMS 機器は都内に 40 機あり、うち 4 機は都市高速料金所付近に設置されている。

出典:調査団

図 4-39 BMA CCTV コントロールセンター

2) 交通警察 都内の CCTV(80 交差点)及び Red Light カメラ(30 交差点、信号無視車両観測機)、VMS

(80 機)の監視、運用、操作を行っている。CCTV は交通量の観測は出来ず画像のみの監視

であるが、Red Light カメラは違反車両を自動で検知する(違反車両のナンバープレート等の

情報はマニュアル入力)。

警察は信号(都内 400 交差点)の運用も行っており、CCTV 画像や現地交通状況を基に信

号現示を現場にてマニュアルで調整する。

出典:調査団

図 4-40 交通警察 CCTV コントロールセンター

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4-49

3) EXAT 都市内高速道路の交通監視・管理及び情報提供を目的に高速道路に設置されている CCTV、

VMS、速度感知機のモニタリングを行っている。CCTV の一部は交通量も観測でき、これら

情報を基に高速道路の渋滞マップを VMS やスマートフォンアプリ等で提供している。

出典:調査団

図 4-41 EXAT ITS センター

4) その他 ‐ DOH は主に Motorway や都市間国道において交通状況監視を行っている。主にデータ収集

がメインでありコントロールセンターとしての機能は限られている。現在NH304にてCCTV監視

のパイロットプロジェクトを実施中。 ‐ OTP は道路計画の立案の基礎データ収集を目的に、ITS Data Center にて他機関が持つ交

通関連情報の収集を行っているが、現在活動は止まっている状況である。 ‐ DoLT はトラック車両の位置情報を GPS により監視している。 ‐ NECTECは交通関連の情報を基にTraffyと TVIS というアプリを開発(APIベース)し、オープ

ンソースとして広く共有している。基本的には交通関連情報の分析やそれに基づく予測を行っ

ており、アプリ開発は主目的ではなく、あくまでもプラットフォームの整備を行っている。iTIC と

の情報共有も行っている。 ‐ バスオペレーションセンターは都市間バスの民間企業(Transport Co.,Ltd)が運営しているが、

2013 年 12 月現在は 1st フェーズでありセンターのみがある状況である。いくつかのバスには

GPS が設置されている。 ‐ タクシーはタクシー組合にてオペレーションセンターが運営されており、無線によるドライバー

との交信、配車を行っている。

出典:調査団

図 4-42 DOH 内のモニタリングシステム(左)、BMTA GPS センター(中・右)

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-50

4.2.5 ITS関連施設の発注方式

(1) 発注方式

競争入札方式

(2) 契約形態及び受発注者の役割整理

管理は BMA 等の所管の機関が担当しており、運営は契約者となる民間企業が取り行う。CCTV

については民間会社が維持補修も行っている。

4.3 他ドナーの動向

韓国が共通カードのシステム(LG Sytem)を構築し、プレ実験を行っている。

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4-51

4.4 ITS整備に関する方向性提案

4.4.1 課題の整理

(1) 地域課題

人口・経済ともに成長を続けているが、都市のスプロール化に対応するための交通シス

テム構築が課題

地域特有の気候により季節により頻繁に冠水するポイント・区間が存在する。

(2) 交通課題

慢性的に渋滞が発生しており、特に朝・夕ピーク時に渋滞が悪化

BRT、MRT、BTS 等の公共交通が存在するものの絶対量は不足しており、渋滞は慢性

的に発生

交差点形状、信号現示、一方通行や右折専用レーンなどが問題となり渋滞が発生

(3) 既存 ITS 施設における課題

市内 ITS についてはマスタープランやアーキテクチャ等は策定済みであるが、実効性は

確認されていない

管制センターやスマートフォンアプリ等は充実しているものの、システムとして統合さ

れておらず、様々なデータが混在している

市内交通管制では CCTV 画像の渋滞状況から VMS に渋滞状況を反映しているが、観測

機等による数値データを基にしたものは少ない(プローブ情報は一部組織で活用)

高速道路においては ITS センター、CCTV、感知機、VMS 等が導入されているが、モー

ションピクチャは設置数が少なく、今後の追加導入が必要

現在、交通関連機関に係る共通 IC カードについて導入が検討されている(ただし韓国

のシステムで 6 か月の試行が完了)

(4) 組織構造上の課題

施設維持のための財源確保が課題

今後高速道路管理者と都市内道路管理者の情報交換やシステム導入後のシステム統合

化が課題

(5) 技術レベルから導かれる課題

交通制御を行う機関の技術力不足により、信号制御システムが正常に稼働していない

日本の民間企業ベースでの技術開発及び提供機会の増加

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

4-52

4.4.2 今後導入すべきITSメニューの整理

(1) ITS 導入の優先度及び効果

バンコク都においては、現況の交通状況をリアルタイムに把握するための収集系設備が少なく、

またそれを処理するセンター側機能も不足している。提供系施設である情報板はあるものの、デー

タに基づいた渋滞情報ではなく正確性に欠ける。特に渋滞・事故の悪化が懸念されるているが、

バンコク都内、特に主要幹線では慢性的に渋滞が生じており、とりわけ交通流の整流化に資する

ITS メニューの早期の導入が望ましい。現況課題を踏まえ、日本の ITS アーキテクチャにおける開

発分野を参考に、下表にタイ国における各 ITS 開発分野のプライオリティ及びインパクトを想定・

整理した結果を示す。不足してはいるものの基盤のある CCTV、信号、VMS に関連する整備が最

も優先度が高くかつ効果も大きいと想定される。

表 4-2 ITS 導入の優先度及び効果

開発分野 優先度 効果 備考

ナビゲーションシステムの高度化 中 中 民間企業が開発・提供

自動料金収受システム - 高 ETC 導入済(高速道路)

安全運転の支援 中 中 事故削減に効果的であるが、高い技術力が必要

交通管理の最適化 高 大 渋滞・事故の監視・管理において効果的

道路管理の効率化 高 大 渋滞・事故の監視・管理において効果的

公共交通の支援 高 大 主要な交通手段の一つであり、円滑な交通管理に

資する。IC カード導入も効果的

商用車の効率化 中 小~中 タクシー・トラックプローブ利用による渋滞情報提供

歩行者等の支援 低 小 安全な移動の確保に効果的

緊急車両の運行支援 中 中 緊急時の移動・搬送に資するが、ある程度の技術

力、システムが必要

その他 中 小 スマートフォンアプリ等の開発

出典:調査団

(2) ITS 導入時期の検討

上記表及び当該国の技術レベルを踏まえ、想定される短・中・長期における各システム導入時期

を検討・整理した。バンコク都では渋滞・事故が増加している状況であることから、渋滞改善・

交通事故削減のための ITS 機器及びシステムを優先的に整備することが望ましいと考えられる。

また、バス交通が主要な交通手段の一つである当該地域においては、公共交通を支援するシステ

ムの導入が高い効果を挙げることが想定される。

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4-53

表 4-3 ITS メニューの導入時期、想定されるインパクト

出典:調査団

導入可能時期(想定)

システム名称 インパクト

渋滞状況把握システム、交通量常時観測システム等の基本的収集機器

(導入準備中)都市圏の渋滞改善及び交通状況把握

CCTVモニタリングシステム (導入済みであるが不十分)渋滞規模、事故発生時の状況把握、対応の迅速化

信号最適化システム 交通流の最適化による渋滞交差点及び周辺路線の渋滞改善

事故統計データベースシステム 事故発生状況、事故類型の把握及び対策検討の基礎資料としての活用

交通事故検知システム 迅速な事故車両・ユーザーの救助

交通違反取締システム(速度超過、信号無視等) 違反車両特定の迅速・省力化

路側機器、台帳DB 基本データの収集、データベース化カーナビゲーションシステム、スマートフォン、WEBシステム、デジタルサイネージ等の情報端末

(カーナビは民間企業が開発)情報入手手段の拡大による情報提供サービスの向上

カーナビ、WEB等による経路誘導、情報提供 渋滞、規制等の情報を事前に提供することで、交通流を最適化

ICカードを用いたキャッシュレス乗り継ぎシステム ユーザーの利便性向上、券売所等での待ち時間削減(サービス向上)

駐車場調査DB駐車場利用規模の把握により、どのエリアで利用が多いか等から駐車場の増設・整備の検討資料として活用

駐車場満空情報提供システム 駐車場所への案内、違法駐車の削減、駐車場を探す交通の削減(交通の削減)

災害情報収集・共有・提供システム災害時の道路等の詳細情報の提供・収集による緊急時における移動・対応(道路管理者)状況の共有

道路情報板やラジオ等による渋滞情報、経路情報などの情報提供システム

経路誘導による交通転換の促進による渋滞改善

規制情報提供システム(情報板、ラジオ、カーナビ等による) 各種センサーからの情報と併せて通行可能な経路を情報提供し、交通の停滞を回避各種センサーによるモニタリングシステム(気象計(雨量、路温)等)

気象情報により通行止め等の情報を道路ユーザーに提供することで経路誘導情報等のユーザーサービスを実施

機関間の情報統合化 情報統合による基礎データ、管理等の情報の共有の効率化、適正化

軸重計等による過積載検知システム 過積載車による道路への損傷を回避、維持管理費の削減

テレマティクス、3G等の情報通信網の拡大 道路ユーザーへの情報提供手段の拡大

運行管理、運行状況提供システム(バス)(現在パイロットプロジェクトを実施中)管理の効率化、ユーザーへの運行状況の情報提供によるサービス向上

公共車両優先信号システム 公共交通への運行阻害の軽減、発着時刻の定時性確保等の利便性向上

維持管理業務効率化システム等 道路、ITS施設等の維持管理を支援、経費節減

目的地情報提供のための各種DB 情報提供システムと併せて道路ユーザーのニーズに合わせた情報提供の実施

歩行者支援システム(障害者、高齢者等) 障害者、高齢者の移動の安全性・利便性向上

高齢者等の位置情報提供 事故の減少、ユーザーの安全性向上

歩行者優先信号システム 歩行者通行を優先による事故の減少、人の流れの整流化

違法駐車取り締まりシステム 違法車両が減少することにより、駐車車両による交通阻害を軽減

道路・構造物台帳DB データベース化による道路維持・補修の効率化

業務支援システム等 業務効率化、経費削減

他機関道路情報提供 情報の統合による道路情報の共有

公共交通乗継検索システム ユーザーの利便性向上

車両通行申請許可の電子化システム 料金所の人件費削減、許可待ちの車両滞留の減少による渋滞改善

デマンドバスシステム 高齢者等の移動手段確保、支援による交通サービスの向上

駐車場自動支払いシステム 支払い待ち滞留、人件費の削減

観光支援システム(観光情報提供等) 観光施設、宿泊施設等の情報提供サービスの利便性向上

他公共交通機関情報連携システム 乗り継ぎ利便性向上、他の交通手段選択の情報提供により移動効率を向上

貨物管理システム 貨物車の荷物、配達場所等から適切な経路への誘導、管理の効率化

ERP 車両の流入規制による交通の転換促進、渋滞改善、事故の減少

車両単独もしくは車車間、路車間通信による交通制御システム 他の車両からの情報提供・収集による移動の円滑化

車両の自動運転システム ユーザーの利便性向上

車両制御システム(路車間通信、車車間通信による) ユーザーの安全性向上

ETC料金支払いの簡易化によるサービス向上、料金所の人件費削減、許可待ちの車両滞留の減少による渋滞改善

リバーシブルレーンシステム 交通状況に合わせた道路利用による交通処理の最適化

短期

中期

長期

導入済み

プライオリティ 高: 中: 低:

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4-54

(3) 日本企業の動向

下表にタイにおける日系企業のうち、ITS に関わる事業(ITS、通信、付帯施設等)を行ってい

る企業をリストアップした。

下表の企業においては通信機器・設備関連の事業を行っている企業が多く、ITS 関連においては

主にソフト系の事業が展開されており、ITS 関連機器や信号用の電柱などの付帯施設に対しては関

連企業が少ない。国内企業インタビュー結果からは、日本国内において ITS 関連事業を行ってい

るメーカー等は、ベトナムと同様 ITS 関連機器・システムを中心にアジアへの展開を強化してい

くとの要望はあるものの、現地での実績は無い、もしくは少ないことから、JICA の無償など比較

的日本企業が有利なプロジェクトにより実績を作り、将来的な展開を図るとのことであった。一

方で本調査でも把握したように豊田通商エレクトロニクスタイランドでは既に ITS 事業(タクシー

プローブによる渋滞情報提供等)を行っていることや、過去に現地での調査実績のある一部メー

カーでは企業においては独自にマーケティングを行っており、これらコネクションを通じて展開

強化を図ることとしている。

表 4-4 タイ国における ITS 関連企業

出典:盤谷日本人商工会議所

会社名 事業内容

FUJIKURA ELECTRONICS (THAILAND) LTD. 通信設備等

HITACHI ASIA (THAILAND) CO., LTD. 通信設備、鉄道系システム

MEIDEN ELECTRIC (THAILAND) LTD. 配電盤、電気設備

MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES-MAHAJAK �AIRCONDITIONERS CO., LTD. ERP、ITS関連製品

NIPPO MECHATRONICS (THAILAND) CO., LTD. RFID、精密機器等

PANASONIC INDUSTRIAL DEVICES SALES (THAILAND)CO., LTD. カーナビ、ITS関連製品等

SATO AUTO-ID (THAILAND) CO., LTD. RFID、プリンタ関連

SHIMOHIRA ELECTRIC (THAILAND) CO., LTD. 制御盤、電灯、照明等

COMMUTURE ASIA PACIFIC REPRESENTATIVE OFFICE ICT、クラウド、通信設備等

MOBILE INNOVATION CO., LTD. 物流系GPS

NEC CORPORATION (THAILAND) LTD. 通信ネットワーク、システム開発

NTT DATA (THAILAND) CO., LTD. システム開発、物流系GPS

THAI EXEO CORPORATION LIMITED 通信設備、通信土木工事等

THAI FURUKAWA UNICOMM ENGINEERING CO.,LTD. 通信工事

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4-55

(4) 導入すべき ITS メニュー案

上述したように、バンコク都内には信号、CCTV、VMS は充実しており、交通管制センター、

CCTV コントロールセンターのほか、スマートフォンアプリで渋滞情報や公共交通情報提供等がな

されている。スマートフォンアプリでは、豊田通商現地企業がプローブ情報提供に参画しており、

民間企業の参入も行われている。

上記の他、都内の交通状況が慢性的な渋滞状況にあるのは、交通集中のほか、一方通行や右折専

用車線が限られることなどが一因となり、交通流動がスムーズに行われていないことが要因と考

えられる。

現在の ITS システムにおいては、数値的なデータに基づくものが限られており、実態に基づく交

通管理がなされていないことが挙げられ、また、ITS システムも各機関で別個に導入され情報の統

合化が試みられているが、不十分であることが考えられる。短期的には信号管制システム等の導

入のほか、既存のシステム統合を図り、中長期的には現行のシステムの拡充、先端技術の導入を

行うことが考えられる。

表 4-5 ITS メニュー(案)

時期 ITS メニュー

短期 (1~5 年)

・信号管制システムの導入 ・現況の ITS 関連システムの統合 ・管制システムに係る人材教育 ・IC カードシステム ・駐車場情報 ・交通規制情報 ・災害対策支援(情報収集、共有、提供システム)

中期 (5~10 年)

・公共交通情報・高速道路情報の既存システムへの統合 ・ビッグデータ活用 ・交通安全情報 ・目的地情報等の各種情報システム・データベースの構築

長期 (10 年~)

・ERP、EV の導入

出典:調査団

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4-56

4.4.3 技術支援、財政支援の方向性

上記までに整理した結果を踏まえると技術支援・および財政支援の方向性については以下の

方向性が考えられる。

ITS の支援においては、基本的な機器の他、センター等も導入済みであることを踏まえると、

日本の ITS支援の方向性としては今後の当国における ITSの導入に対する教育や技術開発を目的とし

た共同研究を主とするものが相応しいと考えられる。共同研究においては各システムのほか、スマー

トフォンアプリ等における民間参入機会の促進を図ることや、交通情報に係るビッグデータの取り扱

いなど、日本企業への支援としても有益であり、当国における実績、日本 ITS 技術のアピールとなる。

なお、既存の管制センターの更新・拡張の際に日本企業の参入・進出の可能性はある。

中長期的には、現存で統合化されていない情報のセンター統合に係る技術支援や、各種情報

のデータベース構築に係る民間参入、準天頂衛星の利用等の先端技術活用が考えられる。

表 4-6 技術支援、財政支援の方向性(案)

No 支援の種類 目的

1 技術支援:

共同研究の実施

・ITS 関連システム開発に係る共同研究の実施及び資金協力、

情報提供

2 技術支援:ITS 高度化利用に係

る検討・支援

・中・長期 ITS メニューに対する民間参入促進、技術支援の実施

出典:調査団

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4-57

出典:調査団

図 4-43 タイ(バンコク)ITS 導入概念図

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5-1

第5章 カンボジア共和国

5.1 調査目的

カンボジア共和国(以下、カンボジア)のプノンペン都(以下、プノンペン)における ITS

状況については前回調査にて実施している。プノンペンでは JICA 調査にて都市交通マスタープラン

が実施され、その短期対策として交通管制の導入が提案されている。また Department of Public Works

and Transport 及び Phnom Penh Capital Hall からプノンペン都内における交通管制(信号機 100 か所、

CCTV、交通管制センター)導入の支援要請書が JICA に提出された。上記を受け、本調査において

はプノンペンにおける現在の交通及び ITS 状況について追加調査・確認するとともに、交通管制に対

する各関連機関のニーズ、現在の取り組み状況について確認を行った。調査結果を踏まえ、交通管制

導入に向けた課題を抽出し、導入時における対応事項について提案を行う。

5.2 交通管制に係る要請書の概要

カンボジアから「The Project for the Introduction of Area Traffic Control System in Phnom Penh

Capital City in the Kingdom of Cambodia」として交通管制に係る無償援助の要請書が JICA に提出され

た。提出元の機関は Department of Public Works and Transport of Phnom Penh Capital City(DPWT/PPCC)

である。この要請書の概要は以下のとおりである。

(1) 背景

近年の経済成長に伴う交通量の急増によりプノンペンの交通状況は悪化しているとし、(1)無規律

な交通及び不十分な取り締まり、(2)不適切な交通管理施設(信号、駐車場等)、(3)公共交通の不足

を主要な問題としている。 (2) プロジェクトの目的

全体目標として、(1)効果的な道路交通システムの構築、(2)交通事故の削減、(3)生活環境の要求

レベルの維持、プロジェクトプログラムとして、(1)a.信号や情報板、CCTV、交通標識、交差点改良、b.モードインターチェンジの開発、c.より良い訓練による交通管理の改善、d.ドライバー・歩行者のマ

ナー向上、を通じた円滑で安全の獲得、(2)交通・公共交通マネジメントに係る開発法及び規制の研

究及び支援、(3)より効果的で安全な交通信号の提供による交通渋滞及び交通事故の削減、(4)プノ

ンペンの交通をより良く管理することが挙げられている。 (3) 主な内容

Traffic Signal System Improvement として約 1300万ドルのコストを提示しており、交通管制センター

施設、センター機器、信号制御システム、CCTV システム等が含まれる。プノンペンにおける既存の

69 信号機(交差点)はスタンドアロンタイプであることから、エリアでの交通状況を加味した信号制御と

することとし、このプロジェクトの中で交通管制センター及び信号 100 交差点、交通量観測機器 400機、CCTV30 機を整備する内容となっている。また、訓練に係る費用やシステム構築の費用も計上さ

れている。

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5-2

5.3 交通管制に関連するステークホルダー

交通管制に関連するステークホルダーは下表のとおりであり、各機関に対し主に交通管制に関

連する内容についてインタビューを実施した。各機関名及び各機関の役割概要を示す。以下に示すス

テークホルダーの他、Phnom Penh Capital Hall(PPCH)が関連組織であるが、調査期間内でのインタ

ビューに応じてもらえなかった。

表 5-1 インタビュー機関一覧

No 機関名 役割概要

1 Telecom Cambodia (TC) カンボジア国内における通信関係のオペレーター

2 Department of Public Works and

Transport (DPWT)

部内の事務管理及び人事育成計画の作成、輸送手段、バ

スターミナル、建設工事の管理、交通インフラの維持管

理、国道及び県道上の公衆衛生の維持管理、市または県

における公共事業及び運輸関連計画の策定

3 Ministry of Interior (MOI), Radio

Communication Department

道路上の交通管理、河川上の交通管理、公共治安の維持

4 National Information Communications

Technology Development Authority

(NiDA)

政府関係の通信ネットワークの運営・維持管理

5 Municipal Traffic Police 安全、交通管理のほか、CCTV 監視により交通事故や違

反を発見し、現場に連絡

出典:調査団

以下より各ステークホルダーのインタビュー結果を示す。

(1) Telecom Cambodia (TC) 出席者:Mr.KEM VIKRA, Director General、

Mr.Muth Monyrath, Deputy Director of Transmission Mr. Tim Channarith, OSP Manager

1) 組織及び役割

2006 年に通信省(Ministry of Posts and Telecommunications of Cambodia)より分離した 100%

政府所有の組織であり、カンボジアの通信関係オペレーターである。インターネット、固定

回線、国際ゲートウェイ、光回線等、携帯電話以外のすべての通信に関わっている。

市内の通信網は 1998 年に日本の無償資金協力により整備(コントラクターは日商岩井、住

友電工)されたものであり、同整備では配線はすべて地中化されている。2012 年に市内の交

換局である BAN TEAY SREI 交換局、BAYON 交換局、ANGKOR 交換局間の幹線ネットワー

ク増強のため、TC の予算で架空光ケーブルの整備を行った。架空とした理由は容易に敷設が

可能であるからとのことであった。

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5-3

2) Conceptual Diagram

TC の光リース回線により信号を接続する場合の概念図は次のとおり。交換局及び DLC(分

岐盤)の位置を確認したところ、センターでコントロールする信号は概ね既設交換局または

DLC から約 1.5km 以内に位置している。

3) その他

メタル回線のプライスリストは WEB 上に公開(http://tc.wht-solutions.com/)している。通

信回線に何か問題が生じた場合は当組織で修復する。

光回線については当組織のほかには民間事業者が保有している。光専用線の回線使用料に

ついては、月額で使用量により異なるため、詳細な使用状況が分からないと厳密な価格は決

められない。光回線の延長については当組織が行う。プノンペン市内の光回線の延長につい

ては、200~500m 程度の距離であれば可能であるが 5km 以上となると厳しい。2km 程度なら

折半もしくは交渉によりコストを負担することになる。

現在 JICA プロジェクトで光回線の敷設を実施している。

信 号 制 御

信 号 制 御

・・同様

DLC

DWPT コントロールセンター

BAYON

BAN TEAY SREI ANGKORB

:TC 既設光幹線ネットワーク :TC 施工新設光ケーブル(距離によっては加入者の費用負担の可能性あり)

DLC:Digital Line Circuit(分岐盤)

【凡例】

交換局

交換局 交換局

DLC DLC DLC DLC DLC DLC

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5-4

(2) Department of Public Works and Transport (DPWT) 出席者:Mr.Sam Piseth, Director

Mr.Chou Kimtry, Deputy Director Mr. Phuong Chamoroeun, Chief of Public Lighting Division Mr. Moeung Sophan, MPWT

1) 信号に関する当組織の役割

信号の計画(承認はプノンペン都長)、設計(承認はプノンペン都)、契約、工事(民間発

注と直営の 2 ケース)、運用、維持管理を行っている。予算はプノンペン都の支援を受けてい

る。

信号の操作についてはDPWTが行っているが、渋滞の時は警察が信号をシャットダウンし、

手信号にて交通操作を行っている。インタビュー時においては、信号はいくつかのパターン

がプリセットされており、朝夕の渋滞時には信号サイクルパターンを変更しているとのこと

であったが、庁舎が移転してからは、庁舎と各信号交差点との距離が遠いためパターン変更

はしていないとのことであった(現地調査にて担当者よりヒアリング。また、朝・昼・夜で

信号サイクルは変更なし(現地現示調査にて確認))。なお、信号機の標準はなく、現在色々

なタイプの信号が入っているが、日本の無償で日本の信号が入ってきてもかまわないとの発

言があった。

コントローラは信号交差点に設置されており、PC とコントローラを接続して現示サイクル

を調整する。なお、プノンペンでは計画停電が行われており、各地区で順番に 2 時間の停電

がある。その間、警察は手信号にて交通を捌いているが、夕方 5 時以降になると警官が帰っ

てしまい、交通処理が放置されている状況も生じている。

2) ITS 関連施設・計画

信号機は 69 機あり、中国、台湾、タイ、ベトナム、日本製が設置されておりコントローラ

もそれぞれ異なる。来年、新たに信号機を 8 機導入予定。市内中心部から本庁舎までは NiDA

による政府専用ネットワーク用光回線が通っている。

JICA に信号 100 機、センターの設置を要請している。センターは DPWT の建物内にする

か、他の場所にするかは未定であり、JICA による基本設計プロジェクトでの決定による。

本インタビューにおいては、センターの場所はまだ決まっていないが、センターは DPWT

建物内が良いのではないかと思っているとの発言があった。DPWT 内の候補地としては、

Public Lighting Division の建物一階の一室(9m×9m 程度,天井高さ 3m 程度)を予定している

とのことであった。

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5-5

(3) Ministry of Interior (MOI), Radio Communication Department 出席者:Major Gen. Oum Phen

Brig. Gen. Neang Tinroht Mr. Un Piseth, Chief of Telephone of CCTV Office Mr. Ouk Samzeth, Vice Director of Department

1) 役割

MOI はセキュリティに関わる計画、規制を行っており、都交通警察の上位機関である。交

通監視、取り締まりは都交通警察が担っている。

MOI の CCTV は Radio Communication Department が担当している。同 Department は General

Direction of National Police の下部組織となる。

2) ITS 関連施設・計画

CCTV30機を監視しており、20機はベトナム警察からの寄付、10機は国内民間企業のもの。

前者 20 機は川沿いを中心にセキュリティのために設置したパイロットプロジェクトであ

り、後者は Beeline 及び EZECOM からの提供である。24 時間監視しているが、夜間は見えに

くいことが課題。

CCTVコントロールセンター(General Commissariat of National Policeの敷地内)を保有してお

り、CCTV 映像を監視している。CCTV(ベトナムからの寄付)とセンターとは中継局を介し

てマイクロウェーブ回線にて接続されている。民間企業提供の CCTV は光回線で接続されて

いる。

MOI ではセキュリティを目的に観光地、ホテル、道路等に約 300 機の CCTV を付けたい意

向がある(民間企業からの提案を基に検討。上位機関からの承認は取り付けていない)。なお、

将来的には 5,000~10,000 機の CCTV を取り付けたいこと、JICA の支援を期待しているとの

発言があった。

なお、2 年前に中国及び韓国企業が信号に関する調査を行っており、韓国からは交通管制

センターの提案があった模様。

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5-6

(4) National Information Communications Technology Development Authority (NiDA) 出席者:Mr.Vat Chun, Secretary General

Mr.Neang Mao, Official Mr. Chea Manit, DSG

1) 役割

2006 年に MOPT に統合された政府直轄の組織であり、政府関係の通信ネットワークの運

営・維持管理や ICT 教育等を行っている(主に e-government の推進)。政府機関間の通信に係

る機器等は当組織所有であり、各政府機関は同通信回線により E-government を運用している。

2) 通信回線状況

すべての政府機関の通信は光回線で接続されており、PPCH とも接続されている。DPWT

(新施設)とも光回線で接続されている。また周辺都市とも接続されている(プノンペン含

む 10 Province)。使用目的は公的なサービスに限定されており、営利目的は禁止されている。

政府機関間の通信費用は無料である。光回線の多くは架空配線で、一部は地中埋設配線であ

る。Telecommunication Center は政府組織に設置されている。

本インタビューにおいては、NiDA の回線は商用目的には利用できないが、信号 100 機の

通信回線として利用することは問題なく、Telecom Cambodia から回線を無料提供してもらう

ことも可能と考えられるが、各信号から NiDA のネットワークへのアプローチにあたっては、

NiDA のネットワークから光回線を延長する必要がある。端末接続回線は JICA が回線を敷く

費用を負担するのであれば、容易に決定するのではないかとのことであった。

(5) Manicipal Traffic Police 出席者:Lt. Col. Chev Hak

Mr. Sem Kunthea

1) 役割

MOI 及び PPCH の下部組織として Commissariat of Municipal Police があり、Traffic Police は

Commissariat of Municipal Police の下部組織となる。組織的には MOI の下部組織にあたるが予

算は PPCH が持つ。

ITS 関連の役割は無いが、CCTV モニタリングルームを保有しており EZECOM の CCTV 映

像をモニタリングしている。

渋滞時において、通常は現場警察官が DPWT に連絡しコントロールボックスの解錠を依頼

するが、カギがかけられていないコントローラは、連絡することなくスイッチを切った後、

警察官の手信号にて交通を捌いているとのことであった。

46 か所の信号交差点において、1交差点ごとに 2 人の警察官が駐在しており、交通状況の

把握、交通違反車の取り締まり、セキュリティ、病院への情報提供、事故の報告、歩行者の

道案内、信号機の故障の連絡を行っている。停電時における信号交差点の交通処理のほか、

VIP の通行の際の交通管理(優先通行)も行っている。信号が設置されていない 56 交差点に

も交通警察が常駐しており、パトロールカーでの巡回もしている。

信号無視等をする道路ユーザーが見られるが、交通ルールを知らない者もいることから、

ホーミンチャンネル(TV 番組)で交通に関する教育放送を行っている。

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

5-7

2) ITS 関連施設・計画

自己保有の ITS 関連機器は無い。現在交通管制センター導入の提案を PPCH、MOI に行っ

ているが承認は下りていないとのことであった。通信回線は NiDA のデータ伝送用光回線が

コントロールルームまで来ている。

ITS 施設は CCTV モニタリングルームを保有している。交通管制導入については DPWT に

コントロールセンターができたとしても、当機関から距離が離れすぎているため人員の派遣

は考えていないとのことであった(当機関にコントロールセンターがあるのがよいとのこと)。

また、違反検知に関する機器・システムも導入したいとの意見があった。

3) その他

2 年前に韓国企業の専門家が信号機の既存調査を行っており交通管制センターをオリン

ピックスタジアム付近に建設することが提案された。これに関するプレゼンも警察で行われ

ている(どの道路に信号をつけた方がよいか等)。中国からは問い合わせがあったのみである。

車輌のナンバープレートのデータベースは DPWT にあるが、DPWT と MOI 間でデータ共

有しており、警察は MOI に確認し、違反者の情報を確認・照合している。

5.4 プノンペンにおける交通・ITS関連状況

5.4.1 交通状況

(1) 交通量

市街地内の道路網は放射状道路と環状道

路から構成されている。舗装状況は一般的に

劣悪であり、特に区画道路は極めて悪い。

Rousian 通り及び Monivong 通り、これらを結

ぶ環状道路が主要な道路であり、交通が集中

している。交通量は日 30,000 台(オートバイ

除く)が走行しており、オートバイも増加傾

向にある(登録台数 100 万台(インタビュー

により確認)。交通量のピークは朝(7 時~8

時)、昼(11 時~12 時)、夕(17 時~18 時)

であり、特に夕方の Rousian 通り及び

Monivong 通りで著しい渋滞が生じている。

交差点形状の他、ピーク時の交通集中に対応

した信号現示となっておらず、信号現示の不

適が原因と考えられる。

また、信号無視やオートバイによる歩道走

行も見られ交通ルールが守られていない状

況も見られる。 出典:プノンペン市都市交通計画調査(JICA)

図 5-1 市街地部の既存道路網

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5-8

出典:調査団

図 5-2 プノンペンの交通状況

(2) 道路・信号状況

プノンペンの道路状況においては、車線区分や停止線、一部では横断歩道もあるが、区分線は経

年劣化等により剥げかけている状況である。また排水設備は不十分であり、雨量が多い場合は路面

に水たまりが生じる状況も見られる。車道には左折専用車線もあるが、直進車線と混用されている

状況である。歩道は舗装が悪く、自動車やオートバイの駐車・駐輪により通行が阻害されている。

交差点形状は概ね 4 枝直角交差となっているが、交差点面積は比較的大きく、交差点内の導流もな

い。

信号については、様々な国の製品があることから縦型や横型のものや、カウントダウン式のあ

る・なし等が統一されておらず、電線により信号灯器が隠れている状況も見られる。昨年と比較す

ると更新されている信号機も見られ、横型のカウントダウン式の信号が増えていると思われるが、

信号が故障している交差点もある。

出典:調査団

図 5-3 プノンペンの道路・信号状況

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5-9

なお、プノンペンにおける既存の信号機は下図に示すとおり 69 箇所の交差点にあり、Area Traffic

Control (ATC) signal として信号無償事業でアップグレードすることが要請されている。

この中では、DPWT により設置されている者もあるが、中国製の信号機が 39 機と半数以上を占

めている状況であり、このほか、日本、ベトナム、ドイツ(SIEMENS)等の信号機が設置されて

いる。信号は主要幹線(Monivong、Rousian、市内環状道路等)を中心に連続で設置されている。

出典:DPWT

図 5-4 信号機設置個所

表 5-2 既存信号の生産国一覧

出典:DPWT

CHINA DPWT JAPAN SIEMENS TAIWAN THAILAND VIETNAM 総計1999 3 32000 5 1 62002 6 1 72004 3 32005 1 1 22006 2 1 3 2 82007 1 1 2 3 2 92008 2 1 2 52009 11 112010 1 12011 7 72012 7 7総計 39 2 4 5 3 3 13 69

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5-10

5.4.2 ITS状況

プノンペンにおける既存 ITS 関連施設における全体システム構成図を以下に示す。収集・提

供系設備については昨年度調査結果と同様である。信号については DPWT が管理しており、CCTV

は MOI 及び EZECOM が管理している。

出典:ITS に係る情報収集・確認調査(フェーズⅠ)

図 5-5 プノンペン ITS システム構成図

1) 収集系設備

CCTV:MOI が保有する 20 機と民間(EZECOM)の保有する 10 機

2) 提供系設備

信号:信号の計画、設計、運用、維持管理は DPWT

3) センター設備

CCTV モニタリングルーム:

MOI…セキュリティ用、EZECOM からのデータ受信用(写真 左・中)

Municipal Traffic Police…セキュリティ用(写真 右)

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5-11

4) 通信回線

Telecom Cambodia及びNiDAが通信関連機関となる。両組織とも光回線を保有しているが、

それぞれの組織の役割により対応は異なる。

通信オペレーターである Telecom Cambodia では、CCTV を光回線で接続する場合は、機数

やデータ使用量に応じて費用が伴う他、既存のネットワークの延長を伴う場合は、ネットワー

クから機器までの距離に応じて費用の負担が生じる場合がある。

出典:Telecom Cambodia

図 5-6 Telecom Cambodia 通信回線ネットワークプラン

政府機関の通信ネットワークの運営・維持管理を行っている NiDA では、信号とセンター

を接続する通信回線について、NiDA としては NiDA の光回線の利用は問題無いと判断してい

る。ただし、各信号設置場所における NiDA 回線の分岐可否については別途詳細検討が必要

であるとのことであった。

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5-12

出典:NiDA

図 5-7 NiDA 通信回線ネットワーク(プノンペン)

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5-13

出典:NiDA

図 5-8 NiDA 通信ネットワーク

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5-14

5.5 交通管制導入に関する提言

5.5.1 プノンペンにおける交通管制の有効性

現地調査結果においては、プノンペンでは自動車・オートバイの増加により交通状況は年々

悪化しており、それに伴い交通事故も増加している状況である(Municipal Traffic Police とのインタ

ビューでは 5 人/日の事故死者数となっているとのこと)。下表に示す前回調査も含めて把握したプノ

ンペンにおける課題は現在も当てはまるものであり、交通ルールや信号制御の取り扱いなど解決すべ

き問題は増加している。

このような状況の中、抜本的な交通状況の改善の為には都市内の道路整備も重要であるが、

インフラ整備は時間とコストがかかることや、現在の交通網を考慮すると大規模工事は更なる渋滞の

悪化や整備に必要な土地の確保が難しいと考えられる。プノンペンでは主要路線にとりわけ朝・昼・

夕ピークでの交通渋滞が発生しているが、交通状況に応じた信号制御が行われていないことが一因と

考えられ、信号の系統制御の導入により各時間帯の交通量に応じた最適な信号現示を行うことで交通

流の改善が期待できる。信号が連坦している現状も考慮し、主要道路だけでなく周辺のエリア一体と

なった交通管制による交通制御の他、データの収集をすることにより今後の交通課題解決のための

バックデータも確保することが可能であり、交通管制の導入はプノンペンにおける交通状況改善に大

きい効果をもたらすことが期待できる。

表 5-3 プノンペンにおける地域交通・ITS 等の課題

項目 課題

地域 ・人口・経済ともに成長を続けており、持続的発展を継続するための交通システム構

築が必要

・地域特有の気候により季節により頻繁に冠水するポイント・区間が存在

交通 ・朝・夕ピーク時に渋滞が発生し、ピーク時間の対策が課題

・市街地内の路上駐車の増加、信号無視・歩道走行等の交通ルール違反

・市内バスが無いなど都市内公共交通が不足

・信号交差点形状、信号現示、右左折レーンの整備などが問題となり渋滞が発生

既存 ITS 施設 ・マスタープラン等が存在しないため計画に沿った整備がされていない

・道路交通状況の基本的状況把握のためのシステムがない

・機器に関する国内統一規格が存在しない

・不適切な信号制御

組織構造 ・CCTV モニタリングルームは交通警察にて保安の確保ために設置、信号は DPWT が

設置・制御・維持管理まで行うため、今後役割の明確化、共有および統合化が課題

・施設維持のための財源確保が課題

アーキテクチャ

比較分析

・道路管理効率化・交通管理最適化に関するシステム拡充・統合化検討

・その他未着手部分における導入計画の策定

・収集系、処理系、提供系機器の充実

技術レベル ・交通制御を行う機関の技術力不足により、信号システムが正常に稼働していない。

・制御を行うための技術が蓄積されていない。

出典:調査団

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5-15

5.5.2 交通管制導入に向けた調査・検討

上記までの結果を踏まえ、プノンペンに交通管制を導入するに当たって、主に交通管制全体

に関わる事項及び機器、システム、回線、教育にかかる項目に対する調査、検討等が必要となる。

出典:調査団

図 5-9 交通管制導入に向けた調査・検討事項

交通管制全体に関わる事項

その他( 等は関連項目) 凡例 機:機器、シ:システム、回:回線、教:教育

また、信号無視や車線を守らない道路ユーザーへの対処(ループコイル型の観測機でなく画像観測を利用

する等)も必要である。

管制センターは小規模のものを想定している模様であるが、実際の導入においては他国の例を参考に当初より

もスペック高なものを要請してくる可能性も考慮する必要がある。

調達品のそれぞれについて、どこの国から持ってくるか検討する必要がある。

停電が多いことを考慮する必要がある(例えば、停電時においてもある程度は稼働するような機器とするなど)。

管制センターの場所の決定については関連機関と十分に協議する必要がある。場合によっては、スムースに行

かない可能性もある。

管制センター、信号の維持管理費用については自国で確保する必要があることをカンボジアサイドに十分理解し

てもらってから供与の決定をする必要がある。

プノンペンでは様々な国の信号機が設置されていることから、それに応じてコントローラも異なる。そのため、

これら様々な信号機に対応した信号システムの導入、もしくは統一仕様の信号導入(新規設置等)の検討

が必要となる。

カンボジアに信号機の標準はないが、設計の際は日本の標準を導入することの了解を得る必要がある(カウ

ントダウン方式がプノンペンで標準的であるが日本ではカウントダウン方式は扱われていない)。

交通管制システムを継続的に活用できるよう、現地技術者に対するトレーニングの実施が不可欠である。

現地技術者の技術レベルを適切に把握し、必要な技術供与(マニュアル作成、実地訓練、研修等)を図る

必要がある。

信号、CCTV カメラからセンターまでの通信の手段として、光ファイバーが適当だと思われるが、NiDA 保有の

官光ファイバーが有力ではないかと思われる。実際の設計の際には、どこにどのような通信容量の光ファイ

バーが既に敷設されているか調査し、付加的に必要な敷設長を NiDA 以外の民間による施設も含めて検討

する必要がある。

VMS の運用について、何の情報を、誰がどのようなプロセスで表示内容を決定するのか、情報の優先順位

等を検討する必要がある。

交通管制による信号制御においては適切な交通量の把握が必要となる。そのため、正確な交通量がカウン

トできる観測機器が必要となる。特にオートバイが増加傾向にあることから、オートバイのカウントをどのように

するかの対応を決めることが重要となる。

※オートバイの観測については、正確な交通量の観測は世界的にも開発段階であり、信号制御に対してオートバイ交通量をどの程度考慮するかを決定する必要がある。

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5-16

(1) 交通管制全体に関わる事項

1) 管制センターの位置・規模

管制センターは DPWT に候補地が設けられているものの、未定の状況である。また、部屋

は大きくなく大画面モニタの設置や PC 設置はできないことが想定される。そのため、現地

CP 等と交通管制への要求機能を十分に把握するとともに、要望によってはその規模に応じた

センター設置場所の検討・提案を行う必要がある。

2) 維持管理費用のローカル負担の確認

交通管制センターの運営費として、人件費、維持管理費、回線費等が必要になる。ITS の

効果を持続するためにはこれら費用は継続的に負担しなければならない。このことについて、

ステークホルダーとの協議などで十分に周知させる必要がある。

3) 各機器の調達

現地では様々な国の信号が設置されているが、新たに信号制御を行っていくためにはコン

トローラ、システム等を統一する必要があり、すべての信号を交換する必要がある。

・信号灯器(メンテナンス、耐久性を踏まえ LED に変更、もしくは既存を流用)

・信号コントローラは輸入

・CCTV、VMS は他国(日本、タイ、中国等)から輸入

などについて、現地財政事情、要求技術(必要な機能を絞れば安価に調達できる可能性も

ある)を踏まえた調達方法の検討が必要となる。

4) 停電への対応

現地では計画停電が行われていることから、この間の電気を確保する必要がある。補助電

源の導入、非常用発電機の設置等が考えられるが、費用、メンテナンスの状況に応じた対応

策を検討する必要がある。

(例えば、日本では東日本大震災の経験をふまえ、リチウムイオン電池の利用等の停電・

災害対応を進めており、日本の技術も活用できる。)

出典:滋賀県

図 5-10 停電・災害に強い信号事例(日本)

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5-17

(2) 機器、システム、回線、教育にかかわる事項

1) VMS の運用

VMS の運用については、何の情報を、誰が、どのようなプロセスで表示内容を決定するの

か、情報の優先順位等を検討する必要がある。交通ルール周知のツールとしても適用可能で

ある。

2) 信号機の標準

今後の信号設置に向けて、これまでのようにバラバラな国の信号機が設置され統一性が欠

けることのない様に、信号の標準を決定する必要がある。その際、現地ではカウントダウン

式(日本では導入されていない)であることも踏まえ、どのような形式にするのかも併せて

決定する必要がある。

3) 現地の交通特性にあった交通量把握手段の決定

信号制御システムは交通量に応じて適切な信号サイクルを調整する。現地交通事情を見る

とオートバイが多く、また増加傾向であることも踏まえるとオートバイの交通をどのように

把握するかを決める必要がある。

そのため、どのレベルでの計測を行うか(概ねの量を計測する程度(オートバイ交通を群

としてとらえて計測)にとどめるのか、具体な数値を計測するか)、計測にはどのような機器

を用いるか、を検討・決定する必要がある。 (オートバイを 1 台ずつ計測するシステム・機器(モーションピクチャ、感知器等)は現状ない

が、ベトナムの企業でオートバイを観測する画像感知システムの開発を行っている。)

4) 通信手段となる光ファイバーの敷設方法

信号、CCTV カメラからセンターまでの通信の手段として、交通状況をリアルタイムで把

握するには光ファイバーが適当であるが、導入費や維持費に課題が生じる。NiDA 保有の官

光ファイバーであれば、維持費などが軽減でき有力ではないかと思われる。実際の設計の際

には、どこにどのような通信容量の光ファイバーが既に敷設されているか調査し、付加的に

必要な敷設長を NiDA 以外の民間による施設も含めて調査・検討する必要がある。

また、光ファイバーを使用することにより、CCTV による車両の画像検知がリアルタイム

で管制センターへ送信できるようになる。 そのため、オートバイなど測定の難しい交通量に

対してはセンター内で補助的に目視確認し、センターにて現示を微調整することも可能にな

る。

5) 交通ルールの徹底

逆走や信号無視は信号制御システムに影響与えるとともに、交通状況にも影響を及ぼす。

ITS の効果を最大限発揮するためにも、安全ルールに対する教育、周知が必要であり、この

普及促進も信号管制事業と併せて行うことが効果的である。

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ITSに係る情報収集・確認調査(フェーズⅡ) ファイナルレポート

5-18

6) 現地技術者のトレーニング

交通管制システムを継続的に活用できるよう、現地技術者に対するトレーニングの実施が

不可欠である。現地技術者の技術レベルを適切に把握し、無償供与の中に技術供与(マニュ

アル作成、実地訓練、研修等)を組み込むべきである。

7) その他

中央制御方式による信号を中心とした交通管制プロジェクトは、我が国の援助では海外の

実績がなく、本邦技術の適用可能性、現地の地域・交通事情の把握、運営にかかる課題等に

ついて入念に検討する必要がある。そのため、計画策定に当たっては上記に対処できるよう

余裕を持った工程計画が必要と思われる。

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5-19

出典:NiDA 提供資料に調査団加筆

図 5-11 要請書における信号設置位置及び NiDA 通信ネットワーク

凡例

:Existing signal: 69 :ATC signal (existing): 69 :ATC signal (new): 37

※回線が通っている箇所はオレ

ンジで塗りつぶし ( 、 、 ) :26 箇所 :19 箇所