第4章 耐震設計における設計条件...第4章 耐震設計における設計条件 65...

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第4章 耐震設計における設計条件 65 第4章 耐震設計における設計条件 4.1 設計条件の設定 構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考 慮する荷重は、計算法に応じて適切に設定する。 [解 説] 耐震性能の照査は、各施設の設計基準や設計指針の内容に準拠し、地震動の作用を適切に考慮 した耐震計算法により行う。耐震設計法は、「第 5 章 耐震設計手法」に示す。 考慮する荷重の表現形式は、慣性力が支配的となる地上構造物に適用する震度法や、地盤挙動 に支配される地中構造物に適用する応答変位法などの計算法により異なり、次に示す規定に基づ いて適切に設定するものとする。 4.1.1 設計条件として設定する事項 耐震設計の設計条件として、以下の事項を考慮し、適切な設計を行うものとする。 (1)一般条件 a.構造形式 b.基礎形式 c.計画高 d.内水位 e.地下水位 (2)土質条件(単位体積重量、内部摩擦角、粘着力等) (3)使用材料(コンクリート、鉄筋など) (4)常時荷重 (5)地震時荷重 [解 説] (1)から(4)までの条件は、常時考慮すべき事項であり、各施設の設計基準や設計指針に基づいて 設定する。なお、既設構造物の耐震診断においては、実運用水位を考慮することにより合理的な耐 震性能の照査が可能になる場合や、部材の劣化を適切に評価する必要がある場合などがあり、新規 構造物の耐震設計とは異なる配慮が必要である。これらについては、「第 7 章 耐震診断」を参照 されたい。 (5)の地震時荷重としては、地上構造物に作用する慣性力や地中構造物(暗渠(ボックスカルバ ート)等)に作用する地盤の応答変位から受ける換算荷重等を考慮する。 後述の4.3 荷重5.3 震度法」、「5.4 地震時保有水平耐力法」及び「5.5 応答変位 」の各項に詳細事項を記述した。また、液状化が懸念される地盤において考慮する荷重や土質 条件については、「第 6 章 液状化の検討」に記述した。 地震時荷重の設定においては、「4.2 耐震設計に用いる諸係数及び設定事項」に定める事項 を設定する必要がある。

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Page 1: 第4章 耐震設計における設計条件...第4章 耐震設計における設計条件 65 第4章 耐震設計における設計条件 4.1 設計条件の設定 構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考

第4章 耐震設計における設計条件

65

第4章 耐震設計における設計条件

4.1 設計条件の設定

構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考

慮する荷重は、計算法に応じて適切に設定する。

[解 説]

耐震性能の照査は、各施設の設計基準や設計指針の内容に準拠し、地震動の作用を適切に考慮

した耐震計算法により行う。耐震設計法は、「第 5 章 耐震設計手法」に示す。

考慮する荷重の表現形式は、慣性力が支配的となる地上構造物に適用する震度法や、地盤挙動

に支配される地中構造物に適用する応答変位法などの計算法により異なり、次に示す規定に基づ

いて適切に設定するものとする。

4.1.1 設計条件として設定する事項

耐震設計の設計条件として、以下の事項を考慮し、適切な設計を行うものとする。

(1)一般条件

a.構造形式 b.基礎形式 c.計画高 d.内水位 e.地下水位 等

(2)土質条件(単位体積重量、内部摩擦角、粘着力等)

(3)使用材料(コンクリート、鉄筋など)

(4)常時荷重

(5)地震時荷重

[解 説]

(1)から(4)までの条件は、常時考慮すべき事項であり、各施設の設計基準や設計指針に基づいて

設定する。なお、既設構造物の耐震診断においては、実運用水位を考慮することにより合理的な耐

震性能の照査が可能になる場合や、部材の劣化を適切に評価する必要がある場合などがあり、新規

構造物の耐震設計とは異なる配慮が必要である。これらについては、「第 7 章 耐震診断」を参照

されたい。

(5)の地震時荷重としては、地上構造物に作用する慣性力や地中構造物(暗渠(ボックスカルバ

ート)等)に作用する地盤の応答変位から受ける換算荷重等を考慮する。

後述の「4.3 荷重」、「5.3 震度法」、「5.4 地震時保有水平耐力法」及び「5.5 応答変位

法」の各項に詳細事項を記述した。また、液状化が懸念される地盤において考慮する荷重や土質

条件については、「第 6 章 液状化の検討」に記述した。

地震時荷重の設定においては、「4.2 耐震設計に用いる諸係数及び設定事項」に定める事項

を設定する必要がある。

Page 2: 第4章 耐震設計における設計条件...第4章 耐震設計における設計条件 65 第4章 耐震設計における設計条件 4.1 設計条件の設定 構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考

第4章 耐震設計における設計条件

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4.2 耐震設計法に用いる諸係数及び設定事項

耐震設計に用いる諸係数及び設定事項は、以下のとおりである。

(1)地域別補正係数

(2)地盤種別

(3)固有周期

(4)耐震設計上の地盤面

[解 説]

耐震設計に用いる諸係数及び設定事項については、地震動レベル、構造物の種類、地形、地質

等を考慮し、適切に定める必要がある。

4.2.1 地域別補正係数

耐震設計に用いる地域別補正係数 Cz は、図-4.2.1 の地域区分に従い、表-4.2.1 の値を用

いる。

表-4.2.1 地域別補正係数 Cz

地域区分 地域別補正係数 Cz

A 1.0

B 0.85

C 0.7

[解 説]

地域別補正係数 Cz は、震度法、地震時保有水平耐力法及び応答変位法の地震力の算定に用いる

設計水平震度を計算するためのものである(「5.2 設計水平震度」参照)。

Cz は、図-4.2.1、表-4.2.2 の地域区分で分けられている地域に対して表-4.2.1 の値を用いる。

ただし、対象構造物が地域区分の境界線上にある場合は、係数の大きい方を用いる。

図-4.2.1 地域別補正係数の地域区分

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第4章 耐震設計における設計条件

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表-4.2.2 地域区分 (2002 年 11 月現在)

地域

区分 対象地域

A

北海道のうち釧路市、帯広市、根室市、沙流郡、新冠郡、静内郡、三石郡、浦河郡、様似郡、幌泉郡、河東郡、上

川郡(十勝支庁)、河西郡、広尾郡、中川郡(十勝支庁)、足寄郡、十勝郡、釧路郡、厚岸郡、川上郡、阿寒郡、白

糠郡、野付郡、標津郡、目梨郡

青森県のうち三沢市、十和田市、八戸市、上北郡、三戸郡

岩手県、宮城県

福島県のうち福島市、二本松市、相馬市、原町市、いわき市、伊達郡、相馬郡、安達郡、田村郡、双葉郡、石川郡、

東白川郡

茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県、山梨県

富山県のうち富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、砺波市、新湊市、中新川郡、上新川郡、射水郡、婦負郡、東礪

波郡、西礪波郡

石川県のうち金沢市、小松市、七尾市、羽咋市、松任市、加賀市、鹿島郡、羽咋郡、河北郡、能美郡、石川郡、江

沼郡

静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県

鳥取県のうち鳥取市、岩美郡、八頭郡、気高郡

徳島県のうち徳島市、鳴門市、小松島市、阿南市、板野郡、阿波郡、麻植郡、名東郡、名西郡、那賀郡、勝浦郡、

海部郡

香川県のうち大川郡、木田郡

鹿児島県のうち名瀬市、大島郡

B

北海道のうち札幌市、函館市、小樽市、室蘭市、北見市、夕張市、岩見沢市、網走市、苫小牧市、美唄市、芦別市、

江別市、赤平市、三笠市、千歳市、滝川市、砂川市、歌志内市、深川市、富良野市、登別市、恵庭市、伊達市、札

幌郡、石狩郡、厚田郡、浜益郡、松前郡、上磯郡、亀田郡、茅部郡、山越郡、檜山郡、爾志郡、久遠郡、奥尻郡、

瀬棚郡、島牧郡、寿都郡、磯谷郡、虻田郡、岩内郡、古宇郡、積丹郡、古平郡、余市郡、空知郡、夕張郡、樺戸郡、

雨竜郡、上川郡(上川支庁)のうち東神楽町、上川町、東川町及び美瑛町、勇払郡、網走郡、斜里郡、常呂郡、有

珠郡、白老郡

青森県のうち青森市、弘前市、黒石市、五所川原市、むつ市、東津軽郡,西津軽郡、中津軽郡、南津軽郡、北津軽

郡、下北郡

秋田県、山形県

福島県のうち会津若松市、郡山市、白河市、須賀川市、喜多方市、岩瀬郡、南会津郡、北会津郡、耶麻郡、河沼郡、

大沼郡、西白河郡

新潟県

富山県のうち魚津市、滑川市、黒部市、下新川郡

石川県のうち輪島市、珠洲市、鳳至郡、珠洲郡

鳥取県のうち米子市、倉吉市、境港市、東伯郡、西伯郡、日野郡

島根県、岡山県、広島県

徳島県のうち美馬郡、三好郡

香川県のうち高松市、丸亀市、坂出市、善通寺市、観音寺市、小豆郡、香川郡、綾歌郡、仲多度郡、三豊郡

愛媛県、高知県

熊本県のうち熊本市、菊池市、人吉市、阿蘇郡、菊池郡、上益城郡、下益城郡、八代郡、球磨郡

大分県のうち大分市、別府市、臼杵市、津久見市、佐伯市、竹田市、日田郡、玖珠郡、大分郡、直入郡、大野郡、

南海部郡、北海部郡

宮崎県

C

北海道のうち旭川市、留萌市、稚内市、紋別市、士別市、名寄市、上川郡(上川支庁)のうち鷹栖町、当麻町、比

布町、愛別町、和寒町、剣淵町、朝日町、風連町及び下川町、中川郡(上川支庁)、増毛郡、留萌郡、苫前郡、天塩

郡、宗谷郡、枝幸郡、礼文郡、利尻郡、紋別郡

山口県、福岡県、佐賀県、長崎県

熊本県のうち八代市、荒尾市、水俣市、玉名市、本渡市、山鹿市、牛深市、宇土市、宇土郡、玉名郡、鹿本郡、葦

北郡、天草郡

大分県のうち中津市、日田市、豊後高田市、杵築市、宇佐市、東国東郡、西国東郡、速見郡、下毛郡、宇佐郡

鹿児島県(名瀬市及び大島郡を除く)

沖縄県

引用・参考文献

ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 V.耐震設計編(2002)

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第4章 耐震設計における設計条件

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4.2.2 地盤種別

耐震設計上の地盤種別は、原則として次式で算出される地盤の特性値 TG をもとに、表

-4.2.3 により区分するものとする。

n

1i si

iG V

HT 4 ··············································· (4.2.1)

ここに、TG :地盤の特性値(s)

Hi :i 番目の地層の厚さ(m)

Vsi :i 番目の地層の平均せん断弾性波速度(m/s)

i :当該地盤が地表面から基盤面まで n 層に区分されるときの、

地表面から i 番目の地層の番号。基盤面とは、粘性土層の場合

は N 値が 25 以上、砂質土層の場合は N 値が 50 以上の地層の

上面、若しくは平均せん断弾性波速度 Vsi=300m/s 程度以上の

地層の上面をいう。

ただし、実測値がない場合は(1)、(2)に示す式により求めてもよい。

表-4.2.3 耐震設計上の地盤種別

地盤種別 地盤の特性値 TG(s)

I種 TG<0.2

Ⅱ種 0.2≦TG<0.6

Ⅲ種 0.6≦TG

(1) 地上構造物の場合(橋梁、頭首工、擁壁、開水路、ファームポンド(PC、RC)、ポ

ンプ場(吸込、吐出し水槽)、(杭基礎)

粘性土層の場合 Vsi=100Ni1/3 (1≦Ni≦25) ···················· (4.2.2)

砂質土層の場合 Vsi= 80Ni1/3 (1≦Ni≦50) ···················· (4.2.3)

ここに、Ni:標準貫入試験による i 番目の地層の平均 N 値

(2) 地中構造物の場合(パイプライン、暗渠(ボックスカルバート)、ポンプ場(吸込、吐

出し水槽))ただし、地表面が基盤面と一致する場合はI種地盤とする。

表-4.2.4 表層地盤のせん断弾性波速度 Vsi (せん断ひずみとの関係)

堆積時代別土質

Vsi(m/s)

せん断ひずみのレベル

10-3 10-4 10-6

洪積層 粘性土 129N 0.183 156N0.183 172N0.183

砂質土 123N 0.125 200N0.125 205N0.125

沖積層 粘性土 122N0.0777 142N0.0777 143N0.0777

砂質土 61.8N0.211 90N0.211 103N0.211

*1 砂、粘土の組成分の百分率により区分した。表層地盤ではせん断ひずみが 10-3レベルの値

を用い、基盤においては 10-6レベルの値を用いる。

*2 ポンプ場(吸込、吐出し水槽)は、応答変位法による場合、本表を用いる。

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第4章 耐震設計における設計条件

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[解 説]

地盤種別は、震度法、地震時保有水平耐力法及び応答変位法の地震力の算定に用いる設計水平

震度を計算するためのものである。

ポンプ場(吸込、吐出し水槽)においては、震度法では以下に示す(1)地上構造物の場合、応答

変位法では(2)地中構造物の場合を適用する。

(1) 地上構造物の場合(橋梁、頭首工、擁壁、開水路、ファームポンド(PC、RC)、ポン

プ場(吸込、吐出し水槽)、杭基礎)

概略の目安は、表-4.2.5 となる。

表-4.2.5 地盤種別の概略の目安

I種 良好な洪積地盤及び岩盤

Ⅱ種 I、Ⅲ種地盤に属さない洪積、沖積地盤

Ⅲ種 沖積地盤のうち軟弱地盤

地盤種別は、式(4.2.1)から求まる地盤の特性値 TGを基に、表-4.2.3 により区別することを原

則とした。なお、TG は元来微小ひずみ振幅領域における表層地盤の固有周期であるが、ここで

は地盤の特性値と称する。Vsi は弾性波探査や PS 検層によって測定するのが望ましいが、実測値

がない場合は、式(4.2.2)及び式(4.2.3)によって N 値から推定してもよい。

式(4.2.2)は粘性土層について N 値 1~25 の範囲で、式(4.2.3)は砂質土層について N 値 1~50

の範囲で、実験値から導いた推定式である。なお、N 値が 0 の場合は Vsi=50m/s としてよい。

堤体や盛土等、地表面が平坦でなく、図-4.2.2(a)に示すように、堤体内にフーチングを設ける場

合には、下部構造の振動が堤体の振動に影響されるので、堤体の天端を地表面と見なし地盤の特

性値を求めるものとする。図-4.2.2(b)に示すように、フーチングを堤体下の地盤内に設ける場合

には周辺の平均的な地表を地表面と見なして地盤の特性値を求める。

(a) 堤体内にフーチングを設ける場合 (b) 堤体下の地盤内にフーチングを設ける場合

図-4.2.2 堤体や盛土における地表面の取り方

数多くの地盤を対象とした計算結果によれば、地盤の特性値 TG と沖積層厚 HA 及び洪積層厚

HD には相関があり、図-4.2.3 により近似的に地盤種別を区分できる。したがって、相当深く標準

貫入試験を行っても基盤面が現れない場合など、地盤の特性値 TG を式(4.2.2)及び式(4.2.3)で

求め難い場合には、図-4.2.3 により地盤種別分類を行ってもよい。

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第4章 耐震設計における設計条件

70

図-4.2.3 沖積層厚 HA と洪積層厚 HD による地盤種別

(2) 地中構造物の場合(パイプライン、暗渠(ボックスカルバート)、ポンプ場(吸込、吐出し

水槽))

表-4.2.4 は、砂、粘土の組成分の百分率により区分した。また、表層地盤ではせん断ひずみ

に 10-3レベルの値を用い、基盤においては 10-6レベルの値を用いる。

表層地盤の特性値 TG を、表-4.2.4 により Vsi を算定し、次式により求める。

n

1i si

iG V

HT 4 ··············································· (4.2.4)

ここに、Hi :第 i 層厚(m)

Vsi :第 i 層厚の平均せん断弾性波速度(m/s)

(3) 基盤面は、粘性土層の場合は N 値が 25 以上、砂質土層の場合は N 値が 50 以上の地層

の上面、若しくは平均せん断弾性波速度 Vsi=300m/s 程度以上の地層の上面とする(工学

的基盤面)。

(4) 表層地盤の特性値 TG の算定例を以下に示す。

表-4.2.6 せん断弾性波速度の算定例

層 層厚

Hi(m) 土質 平均 N 値 算定式 速度(Vsi) Hi/Vsi

表層 第 1 層 25.0 T S 2 61.8N 0.211 71.5 0.3497

第 2 層 5.0 T N 5 122.0N 0.0777 138.3 0.0362

計(HS) 30.0 0.3859

基盤 K S 50 205N 0.125 334.3

土質分類…S:砂質土 N:粘性土 T:沖積層 K:洪積層

∴TG=4×0.386=1.54

表-4.2.3 より、0.6≦TG であるため、Ⅲ種地盤となる。

引用・参考文献

ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 V.耐震設計編(2002)

START

2HA+HD≦10(m)

HA:沖積層厚(m)

HD:洪積層厚(m)

HA≧25(m)

I種地盤 Ⅱ種地盤 Ⅲ種地盤

YES

YES

NO

NO

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第4章 耐震設計における設計条件

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ⅱ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997 年版)(1997)

4.2.3 固有周期

(1)固有周期

a. 固有周期の算出に当たっては、構造部材に生じる変形の大きさに見合った剛性を用い

るとともに、原則として基礎地盤の変形の影響を考慮するものとする。

b. 耐震設計上の地盤面より下方の構造部分には、慣性力、地震時土圧及び地震時動水圧

を作用させなくてもよい。

(2)算定方法

a.設計振動単位が、1 基の下部構造とそれが支持している上部構造部分からなる場合

2.01=T ·············································· (4.2.5)

ここに、 T :設計振動単位の固有周期(s)

δ :耐震設計上の地盤面より上にある下部構造の重量の 80%と、それ

が支持している上部構造部分の全重量に相当する力を慣性力の作

用方向に作用させた場合の上部構造の慣性力の作用位置における

変位(m)

b.設計振動単位が、複数の下部構造とそれが支持している上部構造部分からなる場合

2.01=T ·············································· (4.2.6)

dssusw

dssusw 2

= ········································· (4.2.7)

ここに、 T :設計振動単位の固有周期(s)

w(s) :上部構造及び下部構造の位置 s における重量(kN/m)

u(s) :上部構造及び耐震設計上の地盤面より上の下部構造の重量に相当

する水平力を慣性力の作用方向に作用させた場合にその方向に生

じる位置 s における変位(m)

は設計振動単位全体に関する積分を示す。なお、図-4.2.19 に示すように離散型の骨組

構造にモデル化する場合には、式(4.2.7)の δは式(4.2.40)によって求めてもよい。

c.PC タンクの固有周期算定

PC タンクの固有周期は、式(4.2.8)、式(4.2.9)により求める。

2

2

22

2 1213

2γ・=

Ha

gE'

aH

Tc

π ····························· (4.2.8)

ここに、 T2 :PC タンク満水時の固有周期(s)

H2 :PC タンクの全水深(m)

EC :コンクリートのヤング係数(kN/m2)

g :重力加速度(9.8m/s2)

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第4章 耐震設計における設計条件

72

2

2

3

3

・・2

・γγ=γ

H

aH

a

tw

c

tanh

a' ····························· (4.2.9)

ここに、 γw :水の単位体積重量(9.8kN/m3)

γc :コンクリートの単位体積重量(kN/m3)

a :PCタンクの内半径(m)

t :PCタンクの壁厚(m)

[解 説]

(1)固有周期算定方法の適用

ある構造物が自由に揺れるとき、その物理的性質、形状から定まる固有の周期を固有周期とい

い、固有振動数の逆数で表される。地震に対して構造物を安全に設計するためには、地盤・構造

物が持つ固有周期を考えて設計することが重要であり、固有周期と地盤種別により設計水平震度

の標準値を算出する。

構造物の種類、地震力算定法、地震動レベルに応じた固有周期算定方法の適用を表-4.2.7 に示

す。ファームポンド(PC)の地震荷重は地震時動水圧のみを考慮することから、固有周期は満

水時のみとする。

表-4.2.7 構造物の種類、地震力算定法、地震動レベルに応じた固有周期算定方法

固有周期算定方法 構造物の種類 地震力算定方法 地震動

レベル

δ2.01=T

農道橋、水路橋、水管橋、頭首工、

杭基礎(設計振動単位が、1 基の下

部構造とそれが支持している上部構

造からなる場合)

震度法

(固有周期を考慮する) レベル 1

農道橋、水路橋、水管橋、頭首工、

杭基礎(設計振動単位が、1 基の下

部構造とそれが支持している上部構

造からなる場合)

地震時保有水平耐力法 レベル 2

δ2.01=T 、

dssusw

dssusw2

=δ

iuW

uW

ii

i

2ii

δ

農道橋、水路橋、水管橋、頭首工、

杭基礎(設計振動単位が、複数の下

部構造とそれが支持している上部構

造からなる場合)

震度法

(固有周期を考慮する) レベル 1

農道橋、水路橋、水管橋、頭首工、

杭基礎(設計振動単位が、複数の下

部構造とそれが支持している上部構

造からなる場合)

地震時保有水平耐力法 レベル 2

2

2

22

2 1213

2・=

H

a

cgE

'

a

HT

γπ

ファームポンド(PC) 震度法

(固有周期を考慮する) レベル 1

ファームポンド(PC)

震度法

(固有周期と構造物特性係数を

考慮する)

レベル 2

* ファームポンド(RC)は、地盤種別にかかわらず Khc20を 0.7 とすることから、実際に固有周期は算出しない。

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第4章 耐震設計における設計条件

73

(2)固有周期

a.固有周期の特性

物が揺れる状態を描くと、図-4.2.4のようになる。縦軸は揺れる量、すなわち振幅で 初の位

置を原点(0)に、(+)から(-)、(-)から(+)(右から左あるいは上から下)へと繰り返される。

横軸を時間にとると、揺れは 0 から(+)、そして 0 に戻り(-)となり、また 0 に戻る。この間

の時間を周期という。このような揺れ方を繰り返しながら、あるときは大きく、そしてあると

きは小さく、時間とともに構造物固有の揺れ方(振動数・周期)をして、次第に収まり元の位置

に戻る。

図-4.2.4 振動図

構造物は大きさ・高さ・硬さにより当然揺れ方は異なり、その物理的性質、形状から定まる固

有の振動特性を持っている。振動特性には、固有振動数と固有振動モードがあり、固有振動数と

は、構造物を自由に揺らせた時に も揺れやすい振動数(Hz)であり、そのときの振動形状を、固

有振動モードという。また、固有振動数の逆数が固有周期(s)であり、固有周期が短い構造物ほ

ど速く揺れ、固有周期が長い構造物ほどゆっくりと揺れる。

b.T=2.01 の根拠

構造物の固有周期は、構造物の種類、剛性、重量分布、基礎の条件等で複雑に変化し、また、

振動次数によっても変化する。しかし、一般に構造物の振動においては地震時にある振動次数(通

常 低次数)の振動が卓越して現れ、それに対する固有周期は、図-4.2.5 のような、1 自由度の力

学系を仮定して算出することが近似的に可能である。この場合の固有周期 T は、式(4.2.10)によ

り求める。

gk

WT 2= ················································ (4.2.10)

ここに、 T :固有周期(s)

W :振動する物体の重量(kN)

k :バネ係数(kN/m)

g :重力加速度(9.8m/s2)

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第4章 耐震設計における設計条件

74

この力学系において、構造物の変位と固有周期の関係が以下のように表される。

図-4.2.5 1自由度の力学系

上部構造重量による鉛直変位δは、式(4.2.11)で与えられる。

k

W= ························································ (4.2.11)

これを式(4.2.10)に代入すれば、鉛直方向の振動に対して、式(4.2.12)が得られる。

2.01≒2=g

T ··········································· (4.2.12)

c.固有周期と設計水平震度

(a) 橋軸方向

(b) 橋軸直角方向

図-4.2.6 設計振動単位

橋梁の固有周期 T は、上部構造の慣性力作用位置における変位 δより求める。

橋梁構造における固有周期の計算は、揺れる部分が 1 基の下部構造とそれが支えている上部構

造からなる場合(図-4.2.6)には、式(4.2.5)により計算できる。

この場合の変位量は、基礎構造物の水平変位・回転角による変位、下部構造躯体の曲げ変形・

回転変形を全て合わせた値である(図-4.2.7 参照)。

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第4章 耐震設計における設計条件

75

図-4.2.7 固有周期の計算に用いる変位

固有周期が決まると、図-4.2.8~図-4.2.10 から設計水平震度の標準値が定められる。固有周

期が 1sec を超えると設計水平震動の標準値は減少するため、これらを乗じて求められる設計水平

震度は、結果として小さな値となる。

図-4.2.9 地震時保有水平耐力法に用い

るレベル 2 地震動タイプIの

設計水平震度の標準値 Khc0

図-4.2.8 震度法(固有周期を考慮する)に用いる

レベル 1 地震動の設計水平震度の標準値

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第4章 耐震設計における設計条件

76

図-4.2.10 地震時保有水平耐力法に用いるレベル 2 地震動(タイプⅡ)の設計水平震度の標準値 Khc0

すなわち、構造物の特性を考慮して変形を大きくし固有周期を伸ばすと、作用力を減じること

が可能となり高層ビルのように免震構造とすることができるが、変形に対する構造上の配慮は不

可欠となる。

また、図-4.2.8、4.2.9 と傾向が逆転しているのは、実測記録に基づいているためである。

d.慣性力

(a)設計振動単位

慣性力は、設計振動単位ごとに、固有周期に応じて算出する。

橋の振動特性は部材の剛性及び高さ、基礎地盤の特性、上部構造の特性等によって変化するた

め、橋を地震時に同一の振動をするとみなし得る設計振動単位に分割して、それぞれの設計振動

単位ごとに慣性力を算出するものとした。

設計振動単位は、慣性力の作用方向、橋の形式、支承の固定条件、橋脚間の固有周期特性等に

応じて、原則として表-4.2.8 に示すように定める。表-4.2.8 において、橋脚間の固有周期特性が

橋脚ごとに大きく異ならないとは、仮に橋を 1 基の橋脚とそれが支持している上部構造部分に分

割して、それぞれを一つの設計振動単位とみなして求めた固有周期の 大値と 小値の比が 1.5

未満であることをいう。

(b)慣性力の作用方向

慣性力としては、直交する水平 2 方向の作用力を考慮するものとし、一般に橋軸方向及び橋軸

直角方向に別々に作用させるものとしてよい。ただし、下部構造の設計における土圧の水平成分

の作用方向が橋軸方向と異なる場合には、慣性力の作用方向は、土圧の水平成分の作用方向及び

それに直角となる方向とする。

(c)支承部の慣性力

支承部の設計においては、上記(b)に規定する水平 2 方向の慣性力とともに、鉛直方向の慣性力

も考慮する。

(d)慣性力の作用位置

上部構造の慣性力の作用位置は、その重心位置とする。ただし、直橋の場合には、橋軸方向に

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第4章 耐震設計における設計条件

77

作用させる慣性力については、上部構造の慣性力の作用位置は支承の底面としてよい。

表-4.2.8 設計振動単位

橋の形式 橋軸方向 橋軸直角方向 設計振動単位

連続桁橋

橋軸方向の支承条件

地震時水平力分

散構造の場合

橋軸直角方向に固定条件の場合に

は、以下に示す橋脚間の固有周期

特性に応じて設計振動単位を定め

耐震設計上複数の

下部構造とそれが

支持している上部

構造部分からなる

とみなす場合

多点固定の場合

橋脚間の固有周期特性

大きく異なる

一点固定の場合

大きく異ならない

耐震設計上1 基の

下部構造とそれが

支持している上部

構造部分からなる

とみなす場合

アーチ橋

ラーメン橋

その他

耐震設計上複数の

下部構造とそれが

支持している上部

構造部分からなる

とみなす場合

単純桁橋

橋軸方向の支障条件

地震時水平力分

散構造の場合

(橋軸直角方向に固定条件の場合には、以下による)

固有・可動条件

を有する場合

耐震設計上1 基の

下部構造とそれが

支持している上部

構造部分からなる

とみなす場合

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第4章 耐震設計における設計条件

78

(3)固有周期の算定方法

設計振動単位が、単数の場合と複数の場合において、固有周期をそれぞれ以下のとおり算定す

るものとする。各ケースにおける一般的な固有周期の計算フローを、図-4.2.11、図-4.2.12 に示

す。

基 礎 形 式 基礎の水平変位及び回転角

直接基礎 杭基礎

………………………………………………………式(4.2.13)参照

δP:下部構造躯体の曲げ変形(m) h :下部構造躯体下端から上部構造の慣性力の作用位置までの高さ(m)

EI

hW.

EI

hW PPUP 8

80

3

33

下部工躯体の曲げ変形

基礎のばね定数の算出

基礎の抵抗を表すばね定数の算出(表-4.2.10 参照)

杭頭剛結の杭の軸直角方向ばね定数は下表による。

杭頭剛結合 杭頭ヒンジ結合

h≠0 h=0 h≠0 h=0

K1 21

123

3

h

EI

34 EI 501

33

3

.h

EI

32 EI

K2、K321

K 22 EI 0 0

K4 2h1

5.0h1h1

EI43

3

β

β

β

β EI2 0 0

K1、K2、K3、K4:杭頭剛結の場合の杭の直角方向ばね定数

(kN/m、kN/rad、k・m/m、k・m/rad)

地盤反力係数、ばね定数の算出

…………式(4.2.20)参照

…………式(4.2.24)参照

…………式(4.2.26)参照

…………式(4.2.25)参照

………式(4.2.27)参照

……………式(4.2.28)参照

kV :底面の鉛直方向地盤ばね定数

kSB :底面の水平方向せん断ばね定数

43

0 30

/

VVV .

Bkk

VSB kk

DV E.

k30

10

DH E.

k30

10

DDD GE 12

2DS

tD V

gG

基礎の抵抗を表すばね定数

Ass=kSBAB

Asr=Ars=0 ……………式(4.2.19)

Arr=kVIB

AB:底面の面積(m2)

基礎の抵抗を表すばね定数

……式(4.2.33)参照

n:杭の本数

n

iiVPrr

rssr

ss

yKnKA

nKnKAA

nKA

1

24

32

1

耐震設計上の地盤面における水平力とモーメントの算出

…………………………………式(4.2.18)参照

WU :対象とする下部構造躯体が支持する上部構造部分の重量(kN)

h0 :耐震設計上の地盤面から上部構造の慣性力の作用位置までの高さ(m)

WP :下部構造躯体の柱部の重量(kN)

hP :下部構造躯体の柱部の高さ(m)

WF :下部構造躯体のフーチング又はケーソンの重量(kN)

hF :下部構造躯体のフーチング又はケーソンの高さ(m)

280

280

80

00

0

FFF

PPU

FPU

hW.h

hW.hWM

WW.WH

基礎の水平変位と回転角の算出

………式(4.2.17)参照

δ0 :基礎の水平変位(m)

θ0 :基礎の回転角(rad)

rssrrrss

ssrs

rssrrrss

srrr

AAAA

AMAH

AAAA

AMAH

000

000

固有周期の算出

……………………式(4.2.5)参照

δ=δP+δ0+θ0h0 ………式(4.2.16)参照 012.T=

図-4.2.11 設計振動単位が単数の場合の固有周期の計算フロー

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第4章 耐震設計における設計条件

79

基礎のばね定数の算出

(図-4.2.11 参照)

橋梁を骨組化する。

上部構造及び下部構造の剛性と重量を算出し、橋をモデル化する。

1. 部材の剛性を算出する。

2. 橋台のモデル化に際しては、橋台背面の重量、変形等の影響は無視する。

3. 基礎の変形は、基礎の抵抗を表すばねによって考慮する。

4. 上部構造を表すはりの位置は、上部構造の重心とする。

5. 固有周期の算定においては可動支承の摩擦の影響を無視してよい。ただし、斜橋、曲線橋等で慣性力の

作用方向と可動支承の可動方向が一致しない場合には、可動方向に直角方向の分力も生じるため、支承の

可動方向を正しくモデル化しなければならない。

6. 上部構造の相対変位に対する拘束条件は、表-4.2.11 による。ここで、固定支承の鉛直軸周りの拘束条件

は支承の構造を考えると固定であると考えられるが、計算の簡便さを考慮して一般には自由としてよい。

7. ゴム支承等の剛性を利用して慣性力の分散を図る場合には、その剛性をばねとしてモデル化してよい。ただ

し、固定部材によって水平変位を拘束する固定型ゴム支承又はすべり機構を有する可動型ゴム支承(すべり

ゴム支承)を用いる場合には、原則として固有周期及び慣性力の算出に際してゴム支承の剛性を考慮せず、一

般の支承と同じ扱いをする。

離散型骨組構造モデルの有限要素法による変位の解析

w(s) :上部構造及び下部構造の位置 s における重量(kN/m) u(s) :上部構造及び耐震設計上の地盤面より上の下部構造の重量に相当する水平力を慣性力の作用方

向に作用させた場合にその方向に生じる位置 s における変位(m) F :上部構造及び耐震設計上の地盤面より上の下部構造の重量に相当する水平力を慣性力の作用方

向に作用させた場合にその方向に生じる断面力(kN 若しくは kN・m)

変位量の算出

iii

iii

uW

uW 2

…………………式(4.2.39)参照

固有周期の算出

2.01T …………………………式(4.2.6)参照

図-4.2.12 設計振動単位が複数の場合の固有周期の計算フロー

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第4章 耐震設計における設計条件

80

a.部材の剛性

固有周期の算定に当たっては、構造部材に生じる変形の大きさに見合った剛性を用いるととも

に、原則として基礎地盤の変形の影響を基礎に対する地盤ばねにより考慮しなければならない。

ここで、構造部材に生じる変形の大きさに見合った剛性を用いることとしたのは、構造部材に

よっては、その変形によって剛性が大きく変形するものがあるためである。一般的には以下のよ

うに取り扱ってよい。

(a)橋脚の剛性

橋脚の剛性は、震度法による耐震計算では橋脚の断面を有効とみなして算出される剛性を、地

震時保有水平耐力法による耐震計算では橋脚の降伏剛性を用いる。ここで、降伏剛性は、橋脚の

曲げ変形による降伏時の割線剛性 Ky をいい、橋脚の降伏耐力 Py と降伏変位 δy の比(Ky=Py/δy)に

より求める。

(b)上部構造及び基礎の剛性

上部構造及び基礎の剛性は、震度法による耐震計算及び地震時保有水平耐力法による耐震計算

ともに、全断面有効とみなして算出してよい。これは、一般にはこうした部材には主たる塑性ヒ

ンジが生じないこと、また、固有周期を長く見積もることにより地震力を過小評価することを避

けるためである。同じ主旨で、固有周期を算出する際の地盤反力係数については、震度法による

耐震計算、地震時保有水平耐力法による耐震計算ともに、式(4.2.25)、式(4.2.26)によるものと

する。

軟岩、硬岩に直接基礎が設置されている場合には、一般に固有周期の算定には基礎地盤の変形

の影響はほとんどないため、これを無視してよい。

(c)支承の剛性

地震時水平力分散構造に用いる積層ゴム支承のように、変形によって剛性がほとんど変わらな

い支承では、その剛性を用いる。免震支承のように等価剛性が変形によって変化する支承では、

「道路橋示方書 V耐震設計編」9.3.3 に規定する、有効設計変位に相当する等価剛性を用いるも

のとする。

b.下部構造躯体の曲げ変形

下部構造躯体が等断面の場合には、曲げ変形 δP は式(4.2.13)により算出してよい。

なお、式(4.2.13)~式(4.2.15)は設計振動単位が単数の場合に用いる。

EI

hW

EI

hW PPUP

8

0.8

3

33

····································· (4.2.13)

ここに、 WU :対象とする下部構造躯体が支持する上部構造部分の重量(kN)

WP :下部構造躯体の重量(kN)

EI :下部構造躯体の曲げ剛性(kN・m2)

h :下部構造躯体下端から上部構造の慣性力の作用位置までの高さ(m)

hP :下部構造躯体の高さ(m)

なお、下部構造躯体が変断面又はラーメン形式の場合には、その構造形式に応じて変位を求め

るものとする。ただし、このような場合には、下部構造躯体の曲げ変形 δPとして、上部構造部分

の重量と下部構造躯体の重量を用いて、式(4.2.14)により算出してもよい。

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第4章 耐震設計における設計条件

81

EI

WhP

3

3

················································· (4.2.14)

ここに、 W :下部構造体の曲げ変形 δP を算出するための等価重量(kN)で、式

(4.2.15)により求める。

W=WU+0.3WP ······························ (4.2.15)

c.基礎の水平変位及び回転角

(a)設計振動単位が単数の場合

設計振動単位が 1 基の下部構造とそれが支持している上部構造部分からなる場合には、1 自由度

系の振動理論を用いて、式(4.2.5)により固有周期を求めるものとした(図-4.2.11 参照)。ここで、

当該下部構造が支持している上部構造部分とは、表-4.2.8 に示す点線で囲まれた一体の構造系の

うちの上部構造部分とする。

式(4.2.5)のδは、式(4.2.16)により算出することができる。

δ=δP+δ0+θ0h0 ············································· (4.2.16)

ここに、 δP :下部構造躯体の曲げ変形(m)

δ0 :基礎の水平変位(m)

θ0 :基礎の回転角(rad)

h0 :耐震設計上の地盤面から上部構造の慣性力の作用位置までの高さ

(m)

図-4.2.13 固有周期算定モデル

基礎の水平変位 δ0 と回転角 θ0 は、式(4.2.17)で算出してよい(図-4.2.14 参照)。

rssrrrss

ssrs

rssrrrss

srrr

AAAA

AMAH

AAAA

AMAH

000

000

····································· (4.2.17)

ここに、 H0 :耐震設計上の地盤面における水平力(kN)

M0 :耐震設計上の地盤面におけるモーメント(kN・m)

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第4章 耐震設計における設計条件

82

Ass、Asr、Ars、Arr:基礎の抵抗を表すばね定数(kN/m、kN/rad、kN・m/m、kN・m/rad)

で、基礎形式が直接基礎では底版下面の地盤のばね定数を示し、杭

基礎の場合では杭群全体の動的な地盤の動的なばね定数を示す。

また、ここに示されている基礎のばね定数、Ass、Asr、Ars、Arr は、以下のように説明される。

Ass :底版が回転しないようにして、底版を軸直角方向に単位量だけ変位させるとき

の底版に作用させる軸直角方向力(kN/m)

Asr :底版が移動しないようにして、底版を単位量だけ回転させるときの底版に作用

させる軸直角方向力(kN/rad)

Ars :底版が回転しないようにして、底版を軸直角方向に単位量だけ変位させるとき

の曲げモーメント(kN・m/m)

Arr :底版が移動しないようにして、底版を単位量だけ回転させるときの底版に作用

させる曲げモーメント(kN・m/rad)

ここで、杭基礎の場合は底版を杭頭部と読み替える。

図-4.2.14 耐震設計上の地盤面における荷重と変位

下部構造が等断面の場合には、H0、M0は式(4.2.18)で与えられる。

20.8

20.8

0.8

FFF

PPU

FPU

hWh

hWhWM

WWWH

00

0

··················· (4.2.18)

ここに、 WU :対象とする下部構造躯体が支持する上部構造部分の重量(kN)

WP :下部構造躯体の柱部の重量(kN)

WF :耐震設計上の地盤面より上にあるフーチング又はケーソンの重量

(kN)

h0 :耐震設計上の地盤面から上部構造の慣性力の作用位置までの高さ

(m)

hP :下部構造躯体の柱部の高さ(m)

hF :耐震設計上の地盤面より上にあるフーチング又はケーソンの高さ

(m)

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第4章 耐震設計における設計条件

83

直接基礎及び杭配置が対象で鉛直杭のみの杭基礎においては、それぞれ、式(4.2.19)及び式

(4.2.33)により、基礎の抵抗を表すばね定数を簡便に算出することができる。

ア.直接基礎

Ass=kSBAB

Asr=Ars=0 ···················································· (4.2.19)

Arr=kVIB

ここに、 kSB :底面の水平方向せん断地盤ばね定数(kN/m3)

kV :底面の鉛直方向地盤ばね定数(kN/m3)

AB :底面の面積(m2)

IB :底面の断面二次モーメント(m4)

固有周期を算出する際は、地震時に地盤に生じる変形に相当する地盤の剛性から地盤反力係

数を求めるため、地盤反力係数は式(4.2.25)及び式(4.2.26)により求めるものとする。

3/4

0.3

V

VV

Bkk 0

················································ (4.2.20)

3/4

0.3

H

HH

Bkk 0

··················································· (4.2.21)

VV AB ······················································· (4.2.22)

HH AB ······················································ (4.2.23)

VSB kk ························································ (4.2.24)

DH Ek

0.3

10

···················································· (4.2.25)

DV Ek

0.3

10

···················································· (4.2.26)

DDD GE ν12 ·················································· (4.2.27)

2

DSt

D Vg

G

····················································· (4.2.28)

ここに、 kV :鉛直方向地盤ばね定数(kN/m3)

kH :水平方向地盤ばね定数(kN/m3)

kV0 :鉛直方向地盤反力係数(kN/m3)

kH0 :水平方向地盤反力係数(kN/m3)

BV :基礎の換算載荷幅(m)(表-4.2.9 参照、BH を Bv と読み替える。)

BH :荷重方向に直交する基礎の換算載荷幅(m)(表-4.2.9 参照)

AV :鉛直方向の載荷面積(m2)

AH :荷重作用方向に直交する基礎の載荷面積(m2)

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第4章 耐震設計における設計条件

84

kSB :水平方向せん断地盤ばね定数(kN/m3)

ED :地盤の動的変形係数(kN/m2)

νD :地盤の動的ボアソン比

GD :地盤の動的せん断変形係数(kN/m2)

γt :土(地盤の)の単位体積重量(kN/m3)

g :重力加速度(9.8m/s2)

VDS :地盤のせん断弾性波速度(m/s)

λ :鉛直方向地盤ばね定数に対する水平方向せん断地盤ばね

定数の比で、λ=1/3~1/4 とする。

表-4.2.9 基礎の換算載荷幅 BH(m)

基 礎 形 式 BH(m) 備 考

直 接 基 礎 HA

ケ ー ソ ン 基 礎 eee LBB ≦

杭 基 礎 /D

鋼 管 矢 板 基 礎 eeLB/D ≦ 常時、暴風時及びレベル 1 地震時

eee LBB ≦ レベル 2 地震時

地中連続壁基礎 eee LBB ≦

地盤ばね定数の算出に用いる i 番目のせん断弾性波速度 VDSi は、建設地点で実測されたせん断

弾性波速度 VSi がある場合には、式(4.2.29)及び式(4.2.30)によって算出する。

VDSi=cV・VSi ················································ (4.2.29)

········································· (4.2.30)

ここに、 VDSi :基礎の抵抗を表すばね定数の算出に用いる i 番目の地層の平均せ

ん断弾性波速度(m/s)

VSi :i 番目の地層の平均せん断弾性波速度(m/s)

cV :地盤ひずみの大きさに基づく補正係数

建設地点で実測されたせん断弾性波速度 VSi がない場合には、式(4.2.31)により推定する。

·················· (4.2.31)

ここに、 Ni :標準貫入試験による i 番目の地層の平均 N 値

地盤の動的ポアソン比は、一般の沖積及び洪積地盤では、地下水位以浅では 0.45、地下水位以

深では 0.5 とし、軟岩では 0.4、硬岩では 0.3 としてよい。

また、固有周期の算出に際しては、「7.2 水平地盤における液状化判定」に規定するように耐震

設計上ごく軟弱な粘性土層又は橋に影響を与える液状化が生じると判定された土層がある場合には、

sm300≧0.8

sm300<0.8

/V

/Vc

si

siV

粘性土層の場合 Vsi=100 31 /iN (1≦Ni≦25)

砂質土層の場合 Vsi= 80 3/1iN (1≦Ni≦50)

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第4章 耐震設計における設計条件

85

土質定数の低減を見込まないものとする。

イ.杭配置が対称で鉛直杭のみの杭基礎

(ア)地盤のばね定数算出に用いる一般式

Ass、Asr、Ars、Arr は、基礎の抵抗を表す地盤のばね定数( kN/m、 kN/rad、 kN・

m/m、kN・m/rad)で、基礎天端に単位水平力と単位モーメントをそれぞれ別々に作用さ

せたときの水平変位と回転角から、式(4.2.32)により算出する。

HMMH

Hrr

HMMH

Hrs

HMMH

Msr

HMMH

Mss

A

A

A

A

0000

0

0000

0

0000

0

0000

0

··········································· (4.2.32)

ここに、 H0 、 H0 :基礎天端に単位水平力を与えたときに基礎天端に生じる水平

変位と回転角(m/kN、rad/kN)

M0 、 M0 :基礎天端に単位モーメントを与えたときに基礎天端に生じる

水平変位と回転角(m/kN・m、rad/kN・m)

δ0H、θ0H、δ0M、θ0Mの算出においては、基礎の種別に応じて、「道路橋示方書 Ⅳ下部構造編」

の解説に示す、地盤抵抗特性を考慮した解析モデルを用いればよい。ただし、地盤反力係数

の基準値は、式(4.2.25)及び式(4.2.26)によるものとする。

(イ)地盤のばね定数算出に実際に用いる式

································· (4.2.33)

LEA

aK PPVP ················································ (4.2.34)

ここに、 n :杭の総本数(本)

yi :i 番目の杭の杭頭の座標(m)

K1、K2、K3、K4:表-4.2.10 に示す杭頭剛結合の場合の杭の軸直角方向ばね

定数(kN/m、kN/rad、kN・m/m、kN・m/rad)

KVP :杭の軸方向ばね定数(kN/m)

AP :杭の純断面積(m2)

EP :杭のヤング係数(kN/m2)

L :杭長(m)

a :下式により算定する。D は杭径。

打込み杭(打撃工法) a=0.014(L/D)+0.72

n

1iiVPrr

rssr

ss

yKnKA

nKnKAA

nKA

24

32

1

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第4章 耐震設計における設計条件

86

打込み杭(バイブロハンマ工法) a=0.017(L/D)-0.014

場所打ち杭 a=0.031(L/D)-0.15

中掘り杭 a=0.010(L/D)+0.36

プレポーリング杭 a=0.013(L/D)+0.53

鋼管ソイルセメント杭 a=0.040(L/D)+0.15

杭の軸直角方向ばね定数(杭の根入れ深さが十分に長い場合(βLe≧3))は、表-4.2.10 により

求めることができる。

表-4.2.10 杭の軸直角方向ばね定数

杭頭剛結合 杭頭ヒンジ結合

h≠0 h=0 h≠0 h=0

K1 2

123

3

h

EI

1

34 EI 0.51

33

3

h

EI

32 EI

K2、K3 2

1K 22 EI 0 0

K4 21

0.51

1

43

3

h

h

h

EI

EI2 0 0

ここに、 β :杭の特性値 4

4EIDkHβ (m-1) ··················· (4.2.35)

λ :β

1h (m) ··································· (4.2.36)

kh :水平方向地盤ばね定数(kN/m3)

D :杭径(m)

EI :杭の曲げ剛性(kN・m2)

杭基礎設計便覧等を参照すること。

鋼管ソイルセメント杭の曲げ剛性は、ソイルセメントの一軸圧縮強度

が1N/mm2程度の場合には、その寄与度がわずかなため、鋼管のみ

の曲げ剛性としてよい。

h :設計上の地盤面から上の杭の杭軸方向の長さ(m)

また、ここに示されている 1 本の杭の動的な杭頭ばね定数 K1~K4 は、以下のように説明さ

れる。

K1 :杭頭部が回転しないようにして、杭頭部を杭軸直角方向に単位量だけ変位させる

ときの杭頭部に作用させる杭軸直角方向力(kN/m)

K2 :杭頭部が移動しないようにして、杭頭部を単位量だけ回転させるときの杭頭部に

作用させる杭軸直角方向力(kN/rad)

K3 :杭頭部が回転しないようにして、杭頭部を杭軸直角方向に単位量だけ変位させる

ときの曲げモーメント(kN・m/m)

K4 :杭頭部が移動しないようにして、杭頭部を単位量だけ回転させるときの杭頭部に

作用させる曲げモーメント(kN・m/rad)

この概念図を、図-4.2.15 に示す。

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第4章 耐震設計における設計条件

87

図-4.2.15 杭軸直角方向のばね定数の概念図

(ウ)杭の特性値 βの算定

杭の水平方向地盤反力係数 kH を算出するためには杭の特性値 βの算出が必要である。したが

って、kH 及び β を定めるためには、 初に適切に kH を仮定し、式(4.2.21)並びに式

(4.2.35)を満足させるように繰り返し計算を要する。

一般には、このようにして kH を定めるが、式(4.2.21)、式(4.2.25)、式(4.2.35)及び

表-4.2.9 にある杭基礎の場合の換算載荷幅の式を展開すると、杭の換算載荷幅 BH は以下

のように整理することもできる。

29

1229

4

1.1615 DEEI

BD

H

·········································· (4.2.37)

β

DBH を、式(4.2.37)に代入すると、βは下式のように表される。

29

529

8

・0.74124β DEEI

D

········································· (4.2.38)

地震時保有水平耐力法に用いる固有周期を算出する際には、橋脚の降伏剛性を用いて式

(4.2.13)により δP を用いる必要があり、橋脚の降伏変位 δy を δP とみなしてはならない。これ

は、式(4.2.13)があくまでも耐震設計上の地盤面より上にある下部構造の重量の 80%とそれ

が支持している上部構造の全重量に相当する力を作用させた場合の上部構造の慣性力の作用

位置における変位 δ を基に、固有周期を算出するようになっているためである。同様に、式

(4.2.17)により δ0、θ0 を求める際には、上記の慣性力が作用する時に生じる H0、M0 を用いなけれ

ばならない。

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第4章 耐震設計における設計条件

88

(b)設計振動単位が複数の場合

設計振動単位が複数の下部構造とそれが支持している上部構造部分からなる場合には、式

(4.2.6)により固有周期を算出するものとした。式(4.2.7)により δを求めるに際して、具体的に

は以下の手順による。

① 部材の剛性を算出する。

② 橋台のモデル化に際しては、橋台背面土の質量、変形等の影響を無視してよい。

③ 基礎地盤の変形の影響は、基礎の地盤ばねによって考慮する。

④ 上部構造を表すはりの位置は、図-4.2.16及び図-4.2.17に示す上部構造の重心位置とする。

⑤ 固有周期の算定に関しては可動支承の摩擦の影響を無視してよい。ただし、斜橋、曲線橋

等で慣性力の作用方向と可動支承の可動方向が一致しない場合には、可動方向に直角方向の

分力も生じるため、支承の可動方向を正しくモデル化しなければならない。

⑥ 上下部構造間の相対変位に対する拘束条件は、一般には、支承形式に応じて表-4.2.11 に

よる。ここで、固定支承の鉛直軸回りの拘束条件は支承の構造を考えると固定であると考え

られるが、計算の簡便さを考慮して一般には自由としてよい。

⑦ ゴム支承等の剛性を利用して慣性力の分散を図る場合には、その剛性をばねとしてモデル

化してよい。ただし、固定部材によって水平変位を拘束する固定型ゴム支承又はすべり機構

を有する可動型ゴム支承(すべりゴム支承)を用いる場合には、原則として固有周期及び慣

性力の算出に際してはゴム支承の剛性を考慮せず、一般の支承と同じ扱いとする。

表-4.2.11 支承部のモデル化の例(上下部構造間の相対変位の拘束)

支承条件 橋軸方向 橋軸直角

方向 鉛直方向 橋軸回り

橋軸直角

回り

鉛直軸

回り

固定支承 拘束 拘束 拘束 拘束 自由 自由

可動支承 自由 拘束 拘束 拘束 自由 自由

ゴム支承 ばね*1 ばね*1 拘束*2 拘束*2 自由*2 自由*2

免震支承 ばね*1 ばね*1 拘束*2 拘束*2 自由*2 自由*2

*1 橋軸方向及び橋軸直角方向の両方向にゴム支承あるいは免震支承で指示される場合について示した。

*2 厳密にはばね支持となるが、解析結果への影響は一般に小さいため、このようにしてよいものとした。

*3 変位制限構造等により支承の移動を拘束する場合には、その条件をモデル化に考慮する。

図-4.2.16 上部構造における慣性力の作用位置

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第4章 耐震設計における設計条件

89

図-4.2.17 下部構造の耐震設計における上部構造の慣性力の作用位置

前記①~⑦で求めたモデルに上部構造及び耐震設計上の地盤面から上の下部構造の重量に相当

する力を慣性力の作用方向に静的に作用させ、その方向から生じる変位を m 単位で求める。

なお、図-4.2.18 に示すように、離散型の骨組構造にモデル化する場合には、式(4.2.7)の δは

式(4.2.39)によって求めてもよい。

iii

iii

uW

uW 2

δ ······················································ (4.2.39)

ここに、 Wi :上部構造及び下部構造の節点 i の重量(kN)

ui :上部構造及び耐震設計上の地盤面より上の下部構造の重量に相当する

力を慣性力の作用方向に作用させた場合にその方向に生じる節点 i に

おける変位(m)

なお、Σは設計振動単位全体に関する和を示す。

また、別途固有値解析を行って固有周期を求める場合には、これを式(4.2.5 又は式(4.2.6)の T

としてよい。

図-4.2.18 固有周期算定モデル

(設計振動単位が複数の下部構造とそれが支持している上部構造部分からなる場合(橋軸直角方向))

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第4章 耐震設計における設計条件

90

4.2.4 耐震設計上の地盤面

耐震設計上の地盤面とは、設計地震動の入力位置であるとともに、その面より上方の構造部

分には地震力を作用させるが、その面よりも下方の構造部分には地震力を作用させないという

耐震設計上仮定する地盤面のことである。

耐震設計上の地盤面は、常時における設計上の地盤面とする。ただし、地震時に地盤反力が

期待できない土層がある場合は、その影響を考慮して適切に耐震設計上の地盤面を設定するも

のとする。

[解 説]

橋脚、堰柱等の耐震計算では、地震力として慣性力を構造物に作用させる。地上の構造部分に

対しては、慣性力を外力とみなすことは明解であるが、基礎等地中部分に対しては、地盤と基礎

との振動状態を考えて慣性力を作用させなければならない。

橋脚、堰柱等の耐震計算では、静止した地盤中にある基礎に慣性力が作用し、これにより基礎

に変形、変位が生じるとみなす。しかし、実際にはまず、地盤に地震による変形が生じ、これに

より基礎も振動する結果、基礎に変形が生じる。地上部分の構造物と異なったメカニズムで生じ

る基礎構造の変形を震度法という設計計算の中で地上部分と同じように取扱うために考え出され

たのが、耐震設計上の地盤面である。

耐震設計上の地盤面は、一般に常時の設計における設計地盤面とする。ただし、ごく軟弱な粘

性土層及びシルト質土層、又は液状化する砂質土層で耐震設計上土質定数を 0 とする土層がある

場合には、耐震設計上の地盤面はその層の下面に設定しなければならない。現地盤面より深さ 10m

程度までの地盤の良否が基礎の水平抵抗に大きく影響し、既往の震災もこの部分から生じた場合

が多い。このため、耐震設計上地盤反力が期待できない土層がある場合には、耐震設計上の地盤

面をその層の下面に設定するものとする。

また、耐震設計上の地盤面より上方の躯体、フーチング等には、地中であっても慣性力を考慮

する。慣性力はフーチング等の重量から、排除した土の重量を差し引いた重量により求める。た

だし、地盤反力が期待できない土層が存在する場合は、この土層の下面より上方の構造物部分に

は、その重量に慣性力を考慮する。

(1)耐震設計上の地盤面(常時における設計上の地盤面)

常時における設計上の地盤面は、長期にわたり安定して存在し、水平抵抗ができることを考慮

して設定するものとする。一般に、以下の事項を考慮して定めるものとする。

a.洗掘による地盤面の低下

b.圧密沈下

c.凍結融解の影響

d.施工による地盤の乱れ

(2)地盤反力が期待できない土層がある場合

a. 耐震設計上の地盤面は図-4.2.19 及び図-4.2.20 に示すとおり、前記(1)に示す常時における

設計上の地盤面とする。ただし、ごく軟弱な土層又は液状化する砂質土層で耐震設計上地盤

反力が期待できない土層がある場合には、耐震設計上の地盤面はその層の下面に設定する。

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第4章 耐震設計における設計条件

91

図-4.2.19 橋脚における耐震設計上の地盤面

図-4.2.20 橋台における耐震設計上の地盤面

b. 地盤反力が期待できない土層が互層状態で存在する場合には、図-4.2.21 に示すように、

耐震設計上の地盤面は少なくとも層厚が 3m 以上の地盤反力が期待できる土層の上面として

よい。これは、現在のところ、地盤反力が期待できない土層がそれ以前の地盤反力が期待で

きる土層に及ぼす影響を定量的に評価することはできないが、既往の震災事例等を踏まえて

上記のように設定したものである。

図-4.2.21 中間に地盤反力が期待できる土層がある場合の耐震設計上の地盤面

(3)耐震設計上ごく軟弱な土層

現地盤面から 3m 以内にある粘性土層及びシルト質土層で、一軸圧縮試験又は原位置試験によ

り推定される一軸圧縮強度が 20kN/m2 以下の土層は、耐震設計上ごく軟弱な土層とみなすもの

とする 1)。

(4)耐震設計上の土質定数の低減

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第4章 耐震設計における設計条件

92

a. 前記(3)によりごく軟弱な土層と判断された土層は、耐震設計上その土質定数を 0 とする。

b.「7.2 水平地盤における液状化判定」により橋に影響を与える液状化が生じると判定された

砂質土層は、液状化に対する抵抗率 FL の値に応じて耐震設計上土質定数を低減させるものと

する。

表-4.2.12 土質定数の低減係数 DE

FL の範囲

現地盤面か

らの深度 x (m)

動的せん断強度比 R

R≦0.3 0.3<R

レベル 1 地震動

に対する照査

レベル 2 地震動

に対する照査

レベル 1 地震動

に対する照査

レベル 2 地震動

に対する照査

FL≦1/3 0≦x≦10 1/6 0 1/3 1/6

10<x≦20 2/3 1/3 2/3 1/3

1/3<FL≦2/3 0≦x≦10 2/3 1/3 1 2/3

10<x≦20 1 2/3 1 2/3

2/3<FL≦1 0≦x≦10 1 2/3 1 1

10<x≦20 1 1 1 1

(5)土質定数を耐震設計上 0 又は低減させる土層の取扱い

土質定数を耐震設計上 0 又は低減させる土層の重量は、それ以下の地盤に対して負載重量とし

て働くものとする。

引用・参考文献

ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編 (2002)

ⅱ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅰ.共通編 Ⅳ.下部構造編(2002)

1) 一般に、一軸圧縮強度が 20kN/m2以下の粘性土及びシルト質土は、試験時に供試体を自立させることが困難な程度に軟弱であ

るため、地震時に基礎を有効に支持する効果が期待できない。このことから、このような土層を耐震設計上ごく軟弱な土層と

みなすものとする。

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第4章 耐震設計における設計条件

93

4.3 荷 重

耐震設計に当たっては、構造物の種類、構造物の置かれた環境、重量などに応じて、以下に

示す荷重を考慮するものとする。

(1)地震時荷重

a.慣性力

b.地盤変位による外力

c.地震時土圧

d.地震時動水圧

e.水面動揺

f. 液状化地盤の流動力

(2)地震動の方向

地震動の方向としては、一般に直交する水平2方向を独立に考慮する。ただし、構造物の特

性によっては、鉛直方向も考慮しなければならない。

[解 説]

(1)荷 重

地震動の影響として考慮すべき荷重は、上記のものが考えられる。慣性力に関して、積載重量

には、地震と同時に作用する確率を考えれば、この 大値を考慮する必要はないが、永久荷重及

び従たる変動荷重は考慮しなければならない。また、構造物と地盤との動的相互作用に起因する

荷重は、両者における地震動変位の相対的な相違によるもので、構造物の躯体表面に対して垂直

方向と接線方向に作用する荷重である。これを考慮しなければならない構造物は、橋台、擁壁な

どの土圧を受ける抗土圧構造物や地中構造物などであるが、杭などの基礎構造物でも必要に応じ

て考慮することが望ましい。

地盤の液状化に関しては、これが生じないように処置することが耐震設計の基本であるが、こ

の処置が技術的に困難な場合又は著しく不経済となる場合では、構造物の耐震性向上に及ぼす地

盤の寄与分を無視して設計しなければならない。また、地表面が傾斜していたり、常時偏土圧が

作用する場合には、液状化によって地盤流動が生じるおそれがあるので、液状化の影響を考慮す

る必要がある。液状化地盤の取扱い及び地盤流動による流動力については、「第 6 章 液状化の

検討」を参照されたい。

(2)地震動の方向

構造物に作用する地震動は、一般に水平方向の地震動が支配的である。したがって、耐震設計

においても、一般に水平方向の地震力に対する安全性の検討を行えばよい。また、水平の地震動

は水平の任意の方向に作用するが、これに直交する水平 2 方向に同時に作用するとして計算する

ことは煩雑であり、かつ、地震動を過大に評価することになる。したがって、一般に水平 2 方向

で独立に安全性の検討を行ってよい。

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第4章 耐震設計における設計条件

94

4.3.1 慣性力

ポンプ場(吸込、吐出し水槽)、ファームポンド(RC)など剛性が高く固有周期の短い施設

や、橋梁・頭首工、ファームポンド(PC)などの比較的固有周期の長い施設のどちらにおい

ても、地震動によって構造物躯体及び積載物の慣性力を受ける。

[解 説]

地震の影響は、固有周期など施設の構造特性を考慮する必要がある。特に橋梁・頭首工の地上

構造物のレベル 2 地震動に対しては、構造物の塑性変形によるエネルギー吸収を考慮して、降伏

点を通る割線剛性を用いて算出した固有周期により設計水平震度を算定し、慣性力 F を求める。

また、構造物躯体に作用する慣性力は、耐震設計法の種類にかかわらず考慮しなければならな

い。

表-4.3.1 慣性力の算定

耐震設計方法 地 震 動 固有周期の算定 慣性力に用いる震度 慣 性 力

震 度 法 レベル 1 地震動

必要に応じて弾性剛性

を適用した固有周期を

考慮

固有周期 T を考慮しない設計水

平震度 Khg

固有周期を考慮する設計水平震

度 Kh

F=W・Khg

F=W・Kh

W:躯体自重

(以下、同じ)

①震度法

(固有周期と構造

物特性係数を考慮

する)

②地震時保有水平耐

力法

レベル 2 地震動 降状剛性を適用した固

有周期を考慮

固有周期、低減係数より算定

した設計水平震度

①Khc2=Cz・Cs2・Kh c20

CS2=4+1

1

②Kh2=Cz・Cs・Kh c0

CS=1-μ2

1

a

①F=W・Khc2

②F=W・Khc

*1 建築学会では、構造物特性係数 CS2=

4+1

1を用いる。

*2 道路橋示方書では、CS=1-μ2

1

a

を用いる。この CSを構造物特性補正係数という。

ここに、μa :完全弾性型の復元力持性を有する構造系の許容塑性率で鉄筋コンクリートの場合には、

μa=1+ により算出する。

δu :終局変位

δy :降伏変位

α :安全係数

4.3.2 地盤変位による外力

パイプライン、暗渠(ボックスカルバート)などの線状地中構造物やポンプ場(吸込、吐

出し水槽)などの地震時挙動は、施設周辺地盤の動きに支配される。これら施設の耐震設計に

おいては、地盤変位に起因して施設に発生する躯体の変形や応力について考慮しなければなら

ない。

[解 説]

y

yu

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第4章 耐震設計における設計条件

95

図-4.3.1 のような 2 連ボックスカルバートにおいて、躯体は対象深さにおける慣性力を受ける

と同時に、地盤の変位振幅を強制的に受けることになる。

この場合、応答変位法においては、断面力を算定する上で地盤ばねモデルを考慮し、地盤の変

位振幅を地盤ばねで換算した外力を作用させ、躯体内の応力計算を行う。

地震時において、ボックスカルバートの頂版、底版部の変位量が異なることから、図-4.3.3 の

ように周面せん断力を考慮する必要がある。

また、ポンプ場(吸込、吐出し水槽)は、レベル 2 地震動において応答変位法を用いる場合のみ

地盤変位による外力を考慮する。

図-4.3.1 対象深さにおける設計水平震度 図-4.3.2 地盤の変位振幅図

(レベル 2 地震動)

図-4.3.3 躯体に作用する地震時周面せん断力τと地震時土圧荷重 p(z)等のモデル図

引用・参考文献

ⅰ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997)

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第4章 耐震設計における設計条件

96

4.3.3 地震時土圧

地震時土圧は、構造物の種類、土質条件、設計地震動のレベル、地盤の動的挙動等を考慮し

て、適切に設定するものとする。

(1) 背面土が良質な材料で密に締固められた条件においては、レベル 1 地震動及びレベル 2

地震動のいずれに対しても適用可能な修正物部・岡部法を原則として用いるものとする。

(2) 上記(1)以外の条件の場合、レベル 1 地震動に対しては物部・岡部法を適用してもよい。

(3) 擁壁については試行くさび法を用いるものとする。

(4) 地震時保有水平耐力法における杭の軸直角方向の抵抗特性及びフーチング前面地盤の

抵抗特性を算定する場合の地震時の受働土圧強度は、クーロンの土圧係数を用いて求め

るものとする。

[解 説]

(1)修正物部・岡部法

a.修正物部・岡部法を以下に示す。

下記 b.で説明するように、地震時土圧としてより合理的に適用できる式である。本指針に掲げ

る施設で地震時土圧を算定する場合は、原則としてレベル 1 地震動及びレベル 2 地震動のいずれ

にも適用できる式(4.3.1)を用いるものとする。すなわち、地震時土圧は分布荷重とし、その主

働状態における土圧強度を算出するものとする。

EAEAtea KqhKP ············································ (4.3.1)

ここに、 Pea :深さ h(m)における地震時主働土圧強度(kN/m2)

KEA :地震時主働土圧係数で、式(4.3.2)により算出してよい。

(a) 背面が土とコンクリートの場合

砂及び砂礫 KEA=0.21+0.90Kh

砂質土 KEA=0.24+1.08Kh ········ (4.3.2)

(b) 背面が土と土の場合

砂及び砂礫 KEA=0.22+0.81Kh

砂質土 KEA=0.26+0.97Kh

Kh :地震時土圧の算出に用いる設計水平震度

γt :土の単位体積重量(kN/m3)

q' :地震時の地表載荷荷重(kN/m2)

また、q'は地震時に確実に作用するもののみとし、活荷重は含まないものとする。

なお、背面土が良質な材料で密に締固められた条件以外の場合、下記(2)の物部・岡部法を適用す

る。

b. 従来、レベル 1 地震動に対する耐震性能の照査に用いる地震時主働土圧係数は式(4.3.5)

の物部・岡部の方法により算出していた。物部・岡部の方法は、クーロン土圧に地震の影響

を考慮したもので、ある震度が作用した時にすべり面が生じ、そのすべり面上で同一のせん

断強度が発揮されている状態の土圧を算出するものである。

Page 33: 第4章 耐震設計における設計条件...第4章 耐震設計における設計条件 65 第4章 耐震設計における設計条件 4.1 設計条件の設定 構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考

第4章 耐震設計における設計条件

97

しかし、レベル 2 地震動において地盤に作用すると考えられる震度、例えば耐震設計上の

地盤面における水平震度に対して式を適用すると、想定されるすべり土塊領域が非常に大き

くなり、実際の現象と異なるといった問題点が生じる。これに対し、物部・岡部法をレベル 2

地震動で想定している震度まで適用する手法として、近年、修正物部・岡部法が提案されて

いる。修正物部・岡部法は、物部・岡部法に比べて、レベル 2 地震動を想定した模型実験結

果を説明できることが明らかになっており、また兵庫県南部地震における土圧に抗する構造

物の被災事例についても、構造物背後に生じたすべり面の角度を合理的に説明できるもので

ある。そこで、レベル 1 地震動及びレベル 2 地震動のいずれに対しても適用可能な修正物部・

岡部法に基づいて地震時主働土圧を算出することとした。式(4.3.1)は、一般的な橋台背面土

の材料、施工状況、橋台の形状、設計への適用性等を考慮し、修正物部・岡部法に基づいて

算出される地震時主働土圧係数を簡易な近似値により与えられたものである。式(4.3.1)を算

出した条件を c.に示す。

c. 背面土は、良質な材料で密に締固めるため、地盤のせん断抵抗は、ピーク強度を発現した

後、残留強度へと低下する。したがって、ここでは橋台の背面土は、表-4.3.2 に示す程度の

単位体積重量が確保できる砂、砂礫、砂質土で入念に施工されることを前提に、土質に応じ

た背面土のせん断抵抗角のピーク角度φpeak と残留強度φres を表-4.3.3 のように仮定した。表

-4.3.3 に示すせん断抵抗角の値は、密な砂質材料に対して、すべり破壊が生じる際の状態に

近いと考えられる平面ひずみ状態でのせん断抵抗角に粘着力の影響も反映させて想定したも

のである。

表-4.3.2 土の単位体積重量(kN/m3)

地盤 土 質 ゆるいもの 密なもの

砂及び砂礫 18 20

砂 質 土 17 19

粘 性 土 14 18

砂及び砂礫 20

砂 質 土 19

粘 性 土 18

*1 地下水位以下にある土の単位体積重量は、それぞれの表中の値か

ら 9 を差し引いた値としてよい。

*2 砕石は砂利と同じ値とする。また、ずり、岩塊等の場合は種類、

形状、大きさ及び間隙等を考慮して定める必要がある。

*3 砂利混じり砂質土又は砂利混じり粘性土にあっては、混合割合及

び状態に応じて適当な値を定める。

*4 地下水位は施工後における平均値を考える。

表-4.3.3 地震時土圧算定のための土質定数

φpeak φres

砂及び砂礫 50° 35°

砂質土 45° 30°

(2)物部・岡部法

a. 前記(1)c.の条件以外のレベル 1 地震動の場合、地震時水平土圧は物部・岡部法を適用する

とともに、粘着力の有無を考慮して算定する。

適用する施設としては、ファームポンド、ポンプ場(震度法の場合)、擁壁、開水路等がある。

土圧の計算に用いる土の分類と土質諸数値は、一般に表-4.3.4 を参考にする。

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第4章 耐震設計における設計条件

98

表-4.3.4 土圧の計算に用いる土の種類と土質諸数値 (単位:kN/m3)

土の種類 飽和単位

体積重量

湿潤単位

体積重量内部摩擦角(°)

① 細粒子をほとんど含まない砂利、粗砂等

(GP、GW、SP、SW等細粒分5%未満を目安) 20 18 30

② 細粒子を含んだ砂利、砂等

(G-F、S-F等細粒分5~15%を目安) 20 18 25

③ シルト質細砂、粘土を含む砂利等

(GF、SF等細粒分15~50%を目安) 20 18 20

*1 土質定数は、土質、排水条件、施工法等によって異なるので、土質試験等の調査を実施して、そ

の適正値を定めるのが望ましい。しかし、これらの調査や試験には多くの労力と時間を要する上に、

適切な土質定数の決定には豊富な経験と高度な技術力を必要とするため通常の設計作業においては

表-4.3.4 の値を参考とする。

*2 飽和単位体積重量は、水中土 10kN/m3、水 9.8kN/m3 とする。

*3 特に重要な構造物、大規模な土工事及び玉石等を含む礫質土や非常に軟弱な粘性土等の特殊な土質

には適用できない。

(a)地震時主働土圧

ア.粘着力を無視する場合

(ア)非飽和土の場合

EAEAtVea K

qhKKP

βαcos

αcosγ1 ····························· (4.3.3)

EAEAtVEA hK

qKhKP

βαcos

αcos

2

11 2γ ························· (4.3.4)

ここに、 Pea :地震時主働土圧強度(kN/m2)

PEA :地震時主働土圧(kN/m)

KEA :地震時主働土圧係数

γt :土(背面土)の単位体積重量(kN/m3)

h :地表面から土圧強度(又は土圧)を求めようとする位置までの深さ(m)

q :単位斜面面積当たりの等分布荷重(kN/m2)

α :構造物背面又は仮想背面が鉛直面となす角(°)

(反時計回りを正とする)

β :構造物背面の地表面が水平面となす角(°)

(反時計回りを正とする)

····· (4.3.5)

φ:背面土の内部摩擦角(°)

δ:構造物背面と土との摩擦角又は仮想背面における摩擦角(°)

(反時計回りを正とする)

ただし、90°≦α+δ+θとなる場合には適用できない。

また、φ-β-θ<0 となる場合には、φ-β-θ=0 として計算する。

V

h

KK

tan-1

θ 1 ·················································· (4.3.6)

ここに、 Kh:地震時土圧の算出に用いる設計水平震度

2

2

2

βαcosθδαcos

θβφsinδφsin1θδαcosαcosθcos

θαφcos

EAK

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第4章 耐震設計における設計条件

99

KV:地震時土圧の算出に用いる設計鉛直震度(鉛直方向を考慮しない場合、

KV=0)

Kh、KVの変化によるθの値を、表-4.3.5 に示す。

表-4.3.5 Kh、KV をパラメータとしたθの値

KV Kh

0 0.05 0.10 0.15 0.20

0.1

0.2

0.3

0.4

5°40'

11°20'

16°40'

21°50'

6°00'

11°50'

17°30'

22°50'

6°20'

12°30'

18°30'

24°00'

6°50'

13°20'

19°30'

25°10'

7°10'

14°00'

20°30'

26°30'

図-4.3.4 地震時主働土圧

(イ)飽和土の場合

この場合には、次式により得られる土圧強度及び土圧のほか、水圧を考慮する。

EAEAVea K

qKh'K1P

βαcos

αcosγ ····························· (4.3.7)

EAEA

2VEA Kh

qKh'KP

βαcos

αcosγ2

11 ························· (4.3.8)

ここに、P'ea :地震時主働土圧強度(kN/m2)

P'EA :地震時主働土圧(kN/m)

K'EA :地震時主働土圧係数

2

2

2

coscos

sinsin1coscoscos

cos

EAK ········ (4.3.9)

γ

γθ t・

V

h1

K1K

tan ············································ (4.3.10)

ここに、γ':土の水中単位体積重量(kN/m3)

その他の記号は式(4.3.3)に同じ。

イ.粘着力を考慮する場合

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第4章 耐震設計における設計条件

100

粘着力を考慮する場合には、粘性土の自立高さを考慮して土圧強度を式(4.3.11)、土圧を式

(4.3.12)により算定する。

EAEA0tea Kq

KzhPβαcos

αcosγ

································· (4.3.11)

EAEA0tEA hKq

KzhPβαcos

αcosγ2

1 2

···························· (4.3.12)

ここに、 z0:粘性土の自立高さ(m)

2

φ+45tan

γ

2

t0

cz ·································· (4.3.13)

ここに、c:土の粘着力(kN/m2)

その他の記号は式(4.3.3)に同じ。

なお、式(4.3.11)、式(4.3.12)によることが適当でない場合には、原則としてクーロン、物

部理論に基づいて算定するものとする。

(b)地震時受働土圧

ア.粘着力を無視する場合

(ア)非飽和土の場合

EPEPtVep Kq

hKK1Pcos

cos ····························· (4.3.14)

EPEP2

tVEP hKq

KhKPcos

cos

2

11 ························· (4.3.15)

ここに、Pep :地震時主働土圧強度(kN/m2)

PEP :地震時主働土圧(kN/m)

KEP :地震時主働土圧係数

····· (4.3.16)

ただし、φ+β-θ<0 となる場合には適用できない。

その他の記号は式(4.3.3)に同じ。

(イ)飽和土の場合

EPEPVep K

qhK'K1P

cos

cosγ ····························· (4.3.17)

EPEP

2VEP Kh

qKhKP

cos

cos

2

11 ························· (4.3.18)

ここに、P'ep :地震時主働土圧強度(kN/m2)

P'EP :地震時主働土圧(kN/m)

K'EP :地震時主働土圧係数

····· (4.3.19)

2

2

2

coscos

sinsin-1coscoscos

cos

EPK

2

2

2

coscos

sinsin-1coscoscos

cos

EPK

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第4章 耐震設計における設計条件

101

ただし、φ+β-θ'<0 となる場合には適用できない。

その他の記号は式(4.3.3)、式(4.3.7)に同じ。

イ.粘着力を考慮する場合

EPEP0tep Kq

KzhP

cos

cos ································· (4.3.20)

EPEP0tEP hKq

hKzhP

cos

cos2

2

1 ··························· (4.3.21)

ここに、 z'0:地震時受動土圧における粘性土の自立高さ(m)

2

452

tanc

zt

0 ············································· (4.3.22)

その他の記号は式(4.3.3)に同じ。

図-4.3.5 震時受働土圧

(3)擁壁及び開水路の地震時土圧の算定

擁壁は土地改良事業計画設計基準・設計「農道」に準じ、開水路は土地改良事業計画設計基準・

設計「水路工」に準じて、地震時土圧を算定する。

a.適用土圧公式

コンクリート擁壁の設計に用いる土圧は、壁背面の傾斜や土との壁面摩擦にも対応できるクー

ロン系の土圧公式を適用し、擁壁背面の複雑な断面形状に対して的確に対応できる「試行くさび

法」により算定することを原則とする。

ただし、開水路及びブロック積擁壁(水路)の土圧算定については、式(4.3.23)に示すクーロ

ン公式を用いるものとする。

EAtVea Ki

qhKP

+sin

sin・+・1 ······························ (4.3.23)

ここに、 Pea :地震時主働土圧強度(kN/m2)

KV :設計鉛直震度

γt :土の単位体積重量(kN/m3)

h :背面地表面からの深さ(m)

q :載荷重強度(kN/m2)

θ :壁背面の傾斜角(°)

I :壁背面土の傾斜角(°)

KEA :地震時主働土圧係数

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第4章 耐震設計における設計条件

102

b.壁面摩擦角

壁面摩擦角δの値は、過去の実験結果を参考にすると、擁壁の場合常時において、φ/2≦δ≦2/3

φ、また地震時において、0≦δ≦1/2φといわれているが、一般の設計の際には表-4.3.6 の値を用

いるものとする。ただし、擁壁背面の排水が十分でないと考えられる場合は、安全性を考えてδ

=0 とする。

表-4.3.6 壁面摩擦角δの値

擁壁の種類

重力式擁壁

もたれ式擁壁

ブロック積擁壁

逆 T 型擁壁

L型擁壁

計 算 の 種 類 安 定 計 算 安 定 計 算 部 材 計 算

摩擦角の種類 土とコンクリート 土 と 土 土とコンクリート

常 時 3

2 *1

β(図-4.3.6)

3

2

地震時 2

1

*2

cossin

sinsintan

1

ただし、

sin

sinsin

2

1

*1 β≧φのときは、δ=φとする。

*2 β+θ≧φのときは、δ=φとする。

θ:地震合成角(=tan-1Khg)

図-4.3.6 βの設定方法

c.土の粘着力

土の粘着力は締固めの度合い、含水状態、経時変化などの影響により、その評価が難しいこと、

また、こね返しの影響で粘着力が減少することから、一般的な設計においては粘着力 c=0 とす

る。

d.地震時の土圧

地震時土圧の算定には、試行くさび法において土くさびに水平方向の地震時慣性力を作用させ

る方法を用いる。

e.土圧の作用面及び作用位置

土圧の作用面は、重力式擁壁及びもたれ式擁壁についてはコンクリート背面とし、逆 T 型擁壁

及び L 型擁壁の部材計算においては、コンクリート背面、安定計算においては、かかと版を通る

鉛直な仮想背面とする。

また、土圧の作用位置は、試行くさび法の場合は土圧が三角形分布になるものと仮定し、壁高

H の 1/3 点と考える。

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第4章 耐震設計における設計条件

103

図-4.3.7 土圧の作用面及び作用位置

f.試行くさび法による土圧の算定

試行くさび法は極値法ともいわれ、図解法又は数値計算などによって図-4.3.8 に示すように、

壁下端から発生するすべり面の方向を種々に変化させ、それぞれのすべり面と壁背面に挟まれる

土くさびに作用する力の釣合いから壁に作用する土圧の極大値を求め、これを主働土圧とする方

法である。

図-4.3.8 主働すべり面、主働土圧の決定法

土圧を図解によって求める方法としては、クーロン系の土圧論に基づくクルマン

(Cul-mann)の図式解法が一般的である。クルマンの図式解法を示せば、以下のとおりである。

(図-4.3.9 参照)

・ A 点より水平面に対しφの角度をもった直線 A-G を引く。

・ 任意に仮定したすべり面 A-1、A-2、……につき ABCD1、ABCD2、……の重量 W1、W2、…

…を計算し、適当なスケールで A-G 上にプロットする。

・ W1、W2、……から A-G に対しεの角度をもった直線を引き、これとすべり面 A-1、A-2、

……の交点を H、J、……とし、これらを曲線で結ぶ。

・ 後に上記の手順で得られた曲線 A、H、J、……上に A-G と平行な接線を引き、接点を T

とすれば、主働土圧合力の大きさが T-W に、またすべり面が直線 A-T に求まる。

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第4章 耐震設計における設計条件

104

図-4.3.9 クルマンの図解法

(a)地震時の土圧

地震時においては、図-4.3.11(a)に示すように、土くさびの重心に慣性力(=Khg・W)が作用す

るものと考えると、連力図は図-4.3.11(b)のように描くことができる。

ア.地震時の主働土圧

WPEA

EAEA

coscos

sin ···································· (4.3.24)

sin

cos

EAEAV

EAEAH

PP

PP ············································ (4.3.25)

HhP3

1 ······················································· (4.3.26)

ここに、 PEA :地震時の主働土圧(kN/m)

PEAH :地震時の主働土圧の水平成分(kN/m)

PEAV :地震時の主働土圧鉛直成分(kN/m)

ωEA :仮定したすべり面が水平面となす角(°)

θ :地震合成角(=tan-1Khg)(°)

Khg :設計水平震度(式(5.2.1)参照)

δ :地震時の壁面摩擦角(表-4.3.6 参照)(°)

φ :背面工の内部摩擦角(°)

α :壁背面と鉛直面のなす角(°)

hP :土圧の作用点までの鉛直距離

H :壁高

図-4.3.10 地震時主働土圧の水平成分と鉛直成分

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第4章 耐震設計における設計条件

105

図-4.3.11 地震時主働土圧の考え方

イ.地震時の受働土圧

WPEP

EPEP

coscos

sin ··································· (4.3.27)

ここに、 PEP :地震時受働土圧(kN/m)

ωEP :仮定したすべり面が水平面となす角(°)

図-4.3.12 地震時受動土圧の考え方

(4)杭の地震時受働土圧強度の算定

地震時保有水平耐力法における杭の軸直角方向の抵抗特性及びフーチング前面地盤の抵抗特性を

算定する場合の地震時の受働土圧強度は、以下により求める。

a.杭の軸直角方向の抵抗特性

杭の軸直角方向の抵抗特性は、水平方向地盤反力係数 kHE を初期勾配とし、水平地盤反力度の

上限値 PHUを有する弾塑性型モデルとする(図-4.3.13)。これらは式(4.3.28)、表-4.3.7 により算

定する。

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第4章 耐震設計における設計条件

106

図-4.3.13 地盤の抵抗特性

Upp

H

pα=η

α=η

HU

kkHE kk

p ··············································· (4.3.28)

ここに、 kHE :地震時保有水平耐力法に用いる水平方向地盤ばね定数(kN/m3)

PHU :水平地盤反力度の上限値(kN/m2)

kH :地震時水平方向地盤ばね定数(kN/m3)

PU :地震時受働土圧強度(kN/m2)

αk :単杭における水平方向地盤ばね定数の補正係数

αp :単杭における水平地盤反力度の上限値の補正係数

ηk :群杭効果を考慮した水平方向地盤反力係数の補正係数

ηp :群杭効果を考慮した水平地盤反力度の上限値の補正係数

表-4.3.7 杭軸直角方向抵抗特性の補正係数

地盤の種類 αk αp*2 ηk ηp

砂質地盤 1.5 3.0 2/3

*1

粘性土地盤 1.5 1.5 1.0

*1 ηpαp=載荷直交方向杭中心間隔/杭径(≦αp)

*2 N≦2 の粘性土地盤ではαp=1.0 とする。

*3 砂質地盤の 前列杭以外の杭の pHU は表による

算定値の 1/2 とする。

地震時の受働土圧強度はクーロンの土圧係数 KEP を用いて、式(4.3.29)、式(4.3.30)により求

める。

EPitiEPU KcqhKp 2・ ··································· (4.3.29)

2

cos

sinsin1cos

cos

E

EE

2

EPK ······························· (4.3.30)

ここに、 pU :地震時の受働土圧強度(kN/m2)

γti :地盤 i 層の土の単位体積重量(kN/m3)

hi :地盤 i 層の層厚(m)

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第4章 耐震設計における設計条件

107

q' :地震時の耐震設計上の地盤面での載荷荷重(kN/m2)

c :土の粘着力(kN/m2)

φ :土のせん断抵抗角(°)

δE :地震時の壁面摩擦角(-φ/6)(°)

b.フーチング前面地盤の水平抵抗特性

フーチング前面の地盤が長期的に安定して存在するか、又は埋戻された地盤が原地盤以上の強

度を有する場合で、土質が良質で設計上水平抵抗を期待できる場合は、フーチング前面の水平抵

抗を考慮してよい。

フーチング前面地盤の水平抵抗特性は、水平方向地盤ばね定数 kHE を初期勾配とし、水平地盤

反力度の上限値 PHUを有する弾塑性型としてモデル化する。

ア.フーチング前面地盤の水平方向地盤ばね定数 kHE

フーチング前面地盤の水平方向地盤ばね定数 kHE は、式(4.3.31)により算出する。

3/4ー

00.3

=α

H

HHE

Bkk k ···································· (4.3.31)

ここに、 HEk :水平方向地盤反力係数

HB :フーチング前面の換算載荷幅(m)

BH=Be(ただし、BH≦ ee LB)

Be :フーチングの有効前面幅(m)

Le :フーチングの有効根入れ長(m)

kα :kHの推定に用いる補正係数=1.0

イ.フーチング前面地盤の水平地盤反力度の上限値 PHU

フーチング前面地盤の水平地盤反力度の上限値は、ケーソン基礎に準じ式(4.3.32)により算出

する。

PHU=αppEP ····················································· (4.3.32)

ここに、 αp :水平地盤反力度の上限値の割増し係数で、次式により求める。

αp=1.0+0.5(z/Be)≦3.0 ······················· (4.3.33)

z :地盤面からの深さ(m)

Be :フーチングの有効前面幅(m)

pEP :深さ z における地震時の地盤の受働土圧強度(kN/m2)

(式(4.3.34)参照)

Page 44: 第4章 耐震設計における設計条件...第4章 耐震設計における設計条件 65 第4章 耐震設計における設計条件 4.1 設計条件の設定 構造物の耐震性能の照査は、地震動の作用を適切に考慮した耐震設計法によるものとする。考

第4章 耐震設計における設計条件

108

図-4.3.14 フーチング前面地盤の水平地盤反力度の上限値の例

地震時の地盤の受働土圧強度 pEPは、式(4.3.34)により、KEP は式(4.3.30)により求める。

EPitiEPEP KcqhKp ・2・・ ································· (4.3.34)

引用・参考文献

ⅰ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 V.耐震設計編(2002)

ⅱ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 I.共通編 Ⅳ.下部構造編(2002)

ⅲ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997)

ⅳ)農林水産省農村振興局:土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」(2001)

ⅴ)農林水産省構造改善局:土地改良事業計画設計基準・設計「農道」(1998)

4.3.4 地震時動水圧

水に接する各種構造物の耐震設計においては、地震時動水圧を考慮するものとする。

地震時の水圧は、構造物の加速度の大きさに比例して慣性力的な作用をする。また、自由水

面がある場合には、水面が自由振動(動揺、スロッシング)を起こした時に生じる二次的な作

用がある。一般には、その作用の大きい慣性力的な動水圧を設計に採用し、二次的な作用(水

面動揺)は、動的解析の対象としてその補足をすることが行われている。

[解 説]

地震時動水圧は、表-4.3.8 に示す各種の算定式を用いて定める。

表-4.3.8 水槽タイプ別動水圧算定式の適用区分 1)

適用形状 自由水面あり 自由水面なし

円 形 Housner 法の円形用式(ファームポンド(PC))

速度ポテンシャル法(ファームポンド(PC)) ―――

矩 形

Westergaard 法(橋梁、頭首工、開水路、ファームポンド

(RC)、暗渠(ボックスカルバート)、ポンプ場(吸込、

吐出し水槽))

Housner法の矩形用式(ファームポンド(RC))

式(4.3.40)による。

(暗渠(ボックスカルバ

ート))

水で取り囲まれた

柱状構造物 式(4.3.42)による。(橋梁、頭首工) ―――

なお、水の圧縮性の影響は、水槽及び水槽塔等の構造寸法ではこれを無視しても差し支えない

が、管路構造物では圧縮性を考慮しないと過大な荷重を採用することになる。

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第4章 耐震設計における設計条件

109

(1)円 形

円形水槽の地震時動水圧は、土地改良事業設計指針「ファームポンド」に準拠するものとする。

同指針によれば、算定方法としては、速度ポテンシャル法と Housner 法が代表的で、他には有限

要素法、境界要素法、伝達マトリックス法などの数値解析法があり、どの方法を用いてもよいと

している。

地震時の周波数成分に応じて以下に示す 2 つを考慮するものとする。

①地震の短周期成分に応答する動水圧(衝撃圧)

②地震の比較的長周期成分に応答する動水圧(振動圧)

以下に Housner 法と速度ポテンシャル法を示す。また、速度ポテンシャル法の計算事例は土地

改良事業設計指針「ファームポンド」PC タンクの設計計算事例 1.2.3 設計荷重を参照する。

a.Housner 法の円形用式(ファームポンド(PC))-自由水面あり-

通常は、式(4.3.35)及び式(4.3.36)の衝撃圧のみを考慮すればよいが、非常に重要度の高い構

造物については式(4.3.37)で表される振動圧も加えた合成の動水圧を考慮する。

Ha

hHy

Hy

HKyp hwWr 3tan2

1・・3

2

····················· (4.3.35)

Hy

Ha

tanhHKyp

0

hwWr

8

5

3・・3

1 2

································ (4.3.36)

aH

h

ayH

hS

ga

yp VSwWs

1.837sin

1.837cos

・・・0.3402 3

2

··················· (4.3.37)

ここで、 pwr(y) :側壁に作用する衝撃圧の 大値(kN/m2)

Pwr(y) :側壁に作用する全衝撃圧の 大値(kN)

pws(y) :側壁に作用する振動圧の 大値(kN/m2)

g、γw :重力加速度(m/s2)及び水の単位体積重量(kN/m3)

a、H :タンクの内半径及び水深(m)

SV :速度応答スペクトル(m/s)

Kh :設計水平震度

y :水面からの鉛直距離(m)

ωs :s 次の固有円振動数

図-4.3.15 円形構造物(自由水面あり)に作用する動水圧(Housner 法)

動水圧 P は、その作用方向と振動方向が同一方向となった時に 大となる。

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第4章 耐震設計における設計条件

110

b.速度ポテンシャル法(ファームポンド(PC)-自由水面あり-

通常は、式(4.3.38)の衝撃圧のみを考慮すればよいが、非常に重要度の高い構造物については

式(4.3.39)で表される振動圧も加えた合成の動水圧を考慮する。

1SS

S

ShwWr

aH

kh

ayH

kh

kaKyp

cos

cos

・1

121・・・

2 ···················· (4.3.38)

aH

kh

ayH

kh

KS

ga

yp

S

S

2S

VSwWs

cos

cos

・1

1・・・・2 ······················ (4.3.39)

ここで、 kS : S1S

kJdkd

=0 を満足する正根(表-4.3.9)

添え字 S :自由水質点の次数。通常 S=1 で十分である。

J1 :ベッセル関数

他の変数は、a.の Housner 法と同じ

(2)矩 形

土地改良事業設計指針「ファームポンド」では、RC 構造における地震時動水圧は Westergaard

法の式、または Housner 法による長方形水槽の式の、どちらかにより求めるものとするとしてい

る。なお、Westergaard 法の式による計算事例は同指針 RC ファームポンドの設計 5.3.3 地震時動

水圧を参照する。

a.水の慣性力を考えた式(暗渠(ボックスカルバート))-自由水面なし-

深さ H 方向、奥行き B 方向とも一様分布とすると、壁体単位面積当たりの動水圧 p(kN/m2)は、

2

・・B

Kp wh ··················································· (4.3.40)

となり・これは 1 壁面単位面積当たりの動水圧=

1受圧面積

2の1・仮想質量

H/BH

とする考え方である。し

たがって、中間の壁は前後に p=Kh・γw・{(B/2)+(b/2)}の動水圧を受ける。

b.Westergaard 法(橋梁、頭首工、開水路、ファームポンド(RC)、暗渠(ボックスカルバート)、

ポンプ場(吸込、吐出し水槽))-自由水面あり-

HH

HbKP

ew

2whew

・5

2

・・・・12

7

····················· (4.3.41)

表-4.3.9 ks値

S ks 1 1.841

2 5.331

3 8.536

4 11.706

5 14.863

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第4章 耐震設計における設計条件

111

ここで、 Pew :構造物に作用する全地震時動水圧(kN)

Kh :設計水平震度

γw :水の単位体積重量(kN/m3)

H :水深(m)

Hew:水路底面から地震時動水圧の合力作用点までの距離(m)

b :地震時動水圧の作用方向に対して直角方向の躯体幅(m)

図-4.3.16 矩形構造物(自由水面有り)に作用する動水圧(Westergaard 法)

なお、「道路橋示方書」では、式(4.3.41)はレベル 1 地震動のみに用い、レベル 2 地震動は

動的解析によるものとしている。

c.Housner 法の矩形用式(ファームポンド(RC))-自由水面あり-

Hl

Hy

Hy

HKp2

hwew 3tanh2

1・・3 ······················· (4.3.42)

水槽上方から見て、地震方向が左右一方向に振動する場合は、次式に省略できる。

Hy

Hl

HKP

0

2hwew

8

5

3tanh・・3

1

······················ (4.3.43)

ここに、 pew:構造物に作用する動水圧(kN/m2)

Pew:構造物に作用する全動水圧(kN)

l:長方形水槽の長さの2

1(m)

y0:作用深さ(m)

他の変数は、b.Westergaard 法と同じ。

図-4.3.17 矩形構造物(自由水面有り)に作用する動水圧(Housner 法)

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第4章 耐震設計における設計条件

112

(3)周辺を完全に水で取り囲まれた柱状構造物(橋梁、頭首工)-自由水面あり-

周辺を完全に水で取り囲まれた柱状構造物に作用する地震時動水圧の合力及びその作用位置は、

式(4.3.44)、式(4.3.45)により算出するものとする。(図-4.3.18 参照)

なお、「道路橋示方書」では、式(4.3.44)、式(4.3.45)はレベル 1 地震動のみに用い、レベル 2

地震動は動的解析によるものとしている。

2.0≦Hb

の場合

Hb

ab

HAKP 0h4

1・・・・4

3w

4.0≦<2.0Hb

の場合

Hb

ab

HAKP 0h10

0.7・・・・4

3w ···························· (4.3.44)

Hb

<4.0 の場合

ab

HAKP 0h ・・・・40

9w

HH g7

3 ····················································· (4.3.45)

ここで、 P :構造物に作用する地震時動水圧の合力(kN)

Kh :設計水平震度

γw :水の単位体積重量(kN/m3)

H :水深(m)

Hg :地盤面から地震時動水圧の合力作用点までの距離(m)

b :地震時動水圧の作用方向に対して直角方向の躯体幅(m)

a :地震時動水圧の作用方向の躯体幅(m)

A0 :構造物の断面積(m2)

図-4.3.18 柱状構造物に作用する地震時動水圧

引用・参考文献

ⅰ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997)

ⅱ)農林水産省構造改善局建設部:土地改良事業設計指針「ファームポンド」(1999)

ⅲ)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅴ.耐震設計編(2002)

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第4章 耐震設計における設計条件

113

4.3.5 水面動揺

水槽の耐震設計では、一般的に水面動揺は考慮しない。極めて重要な施設の場合のみ水面動

揺の影響を考慮する。

貯水槽内の自由水面の動揺は、以下のいずれかの方法により検討するものとする。

(1)Housner 理論に基づく応答スペクトル法

(2)速度ポテンシャル理論に基づく応答スペクトル法

ただし、適切な入力地震波を用いる場合には、動的応答解析を行って求めてもよい。

[解 説]

自由水面のある水槽では、地震時に水面の自由振動が誘起され、越流又は屋根への衝撃圧等の

影響を与える。地震時にこのような水面動揺が誘起され、地震被害に結びつくかどうかは、水面

動揺の固有周期と地震動の周期特性に密接な関係がある。

Housner 理論及び速度ポテンシャル理論に基づく応答スペクトルは、以下のとおりである。

(1) Housner 理論によれば、液面動揺の振幅( 大波高)ηは、式(4.3.46)式により求められる。

1g

1.841coth0.408

2

R

RH

R

h

········································ (4.3.46)

RH

RSV

h 1.841tanh・

1.531 ··································· (4.3.47)

ここに、 R :貯水槽半径(cm) H:液面高さ(cm)

g :重力加速度(cm/s2) ω:一次角振動数(rad/s)

SV :速度応答スペクトル(cm/s)

SV は、EL Centro 1940 の地震波に対するスペクトル(U.S.AEC の TID レ

ポート 7024 等を参照)を使用して求める。

RH

Rg

1.841tanh・・1.841 ···································· (4.3.48)

(2) 速度ポテンシャル理論に基づき、速度応答スペクトルから決定される入力値に対して、応答

波高や変動液圧を計算すればよい。

VSRH

T

1.841tanh・0.245max ·································· (4.3.49)

ここに、T:スロッシング一次固有周期(s)

RH

Rg

T

1.841tanh・・1.841

22 ······························· (4.3.50)

ここに、 R:波面高さ(cm) H:貯水槽半径(cm)

SV:速度応答スペクトル(cm/s)

引用・参考文献

ⅰ)日本水道協会:水道施設耐震工法指針・解説(1997)

ⅱ)清水、山本、浜田他:速度応答スペクトルを用いた液体のスロッシング波高解析、日本機械学会講演論文集№.800-3(1980)

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第4章 耐震設計における設計条件

114

4.3.6 荷重の組合わせ

耐震設計における構造物の安全性は、常時荷重(自重及び常時の上載荷重)と地震時の荷重

の組合せにおいて、地震動レベルとケースごとに確認するものとする。

[解 説]

荷重の組合せは地震動レベルに応じて、それぞれで想定する限界状態において も厳しい条件

となるように設定する必要がある。

開水路の場合は、他の構造物と異なり、レベル 1 地震動とレベル 2 地震動とは同じ設定となる。

荷重の組合せは土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」に準拠しており、耐震設計法、地

震動レベルは「道路土工指針」に準拠している。「道路土工指針」では、レベル 1 地震動、レベ

ル 2 地震動とも震度法(固有周期を考慮しない)によるものとしており、設計水平震度の大きさ

のみが異なる。

開水路の条件に対する荷重の組合せを、表-4.3.10 に示す。

表-4.3.10 常時、地震時の荷重の組合わせ[開水路の場合]

荷重 浮上に対

する照査

部材の照査

常時 地震時(レベル1、レベル2)

ケースⅠ ケースⅡ ケースⅢ ケースI ケースⅡ ケースⅢ

死荷重(躯体自重) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

地震時慣性力 - - - - ○ ○ ○

自動車荷重等 - ○ - - - - -

土圧

水平土圧 - ○ ○ ○ - - -

鉛直土圧 △ △ △ △ △ △ △

地震時水平土圧 - - - - ○ - ○

外圧 外水圧 - ○ - - ○ - -

揚圧力 ○ ○ - - ○ 一 一

内圧 内水圧 - - ○ ○ - ○ ○

地震時動水圧 - - - - - ○ ○

地盤反力 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

* 鉛直土圧は底版の張出しがある場合に組合わせに入れる。

開水路では、転倒並びに水平支持に対する安定は実際上問題とならないが、擁壁や橋脚などで

は考慮する必要がある。地震時の各ケースに対し、図-4.3.19、図-4.3.20 及び図-4.3.21 に、荷重

の組合せ例を示す。

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第4章 耐震設計における設計条件

115

図-4.3.19 荷重図(ケースⅠ)

図-4.3.20 荷重図(ケースⅡ)

図-4.3.21 荷重図(ケースⅢ)