第4回:ジャズ~その1 -...
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田中幸太郎:リズム生き生き、グルーヴ・プロデュース 楽曲の印象を大きく左右するリズム・アレンジ。ジャンル固有のリズム・パターンを流用するだけで満足してい
ませんか? もちろんさまざまなリズム・パターンを知っておくことは、リズム・アレンジの幅を広げるために
必要なことですが、そのパターンに単純に当てはめるだけではダメ。楽曲に魂を吹き込むには、そこから先の創
意工夫が重要です。キーワードは“グルーヴ”。DTM では、データをエディットすることによって、さまざまなグ
ルーヴ感を生み出すことができます。本セミナーでは、楽曲に最適なグルーヴをプロデュースするためのデータ・
エディット方法を考察。インストラクターはドラマーでもあるレコーディングエンジニア・作曲家の田中幸太郎
氏。若い感性でリズム・アレンジに切り込んでいただきます。
第 4 回:ジャズ~その 1 (2009 年 12 月 28 日)
前回までのブルースに引き続いて、今回からはジャズのリズム・プログラムをしていきたいと思います。20世紀の初頭に
アメリカ南部で生まれたと言われているジャズには長い歴史があり、時の流れとともにさまざまなスタイルが生まれてき
ています。今回はそのへんを整理し、ジャズと呼ばれる音楽に共通して流れているリズムの特徴について考察してみまし
ょう。
■変化し続けるジャズ
一言に”ジャズ”と言っても、時代や背景によってスタイルや音楽性が異なってきます。多くのプレーヤーに演奏され発
展を続けてきており、ジャズと呼ばれる音楽には次のようにいくつもの名前で呼ばれ、そのそれぞれは雰囲気や音楽性も
さまざまです。
★ジャズの種類
• ニューオーリンズ・ジャズ …… ニューオーリンズ発祥で、奴隷から解放された黒人が始める。即興演奏中心。
• ディキシーランド・ジャズ …… 黒人が演奏するジャズを白人が真似て始めた。管楽器中心で、やはり即興中心。
• スウィング・ジャズ …… ディキシーランド・ジャズ以降に、白人中心で大人数編成で演奏される、ビッグバン
ド形態。アンサンブル中心。
• ビバップ …… モダン=近代的なジャズの始まり。各パートのアドリブによるソロ回しを演奏するようになる。
• モード・ジャズ …… ビバップの演奏において、コード進行の制約から解放され、より自由な表現が可能になる。
マイルス・デイヴィスにより確率される。
■ジャズの楽曲構成
現代においてジャズを演奏する場合には、しばしば古くから知られている、いわゆるスタンダード・ナンバーが取り上げ
られます。「枯葉」「酒とバラの日々」「いつか王子様が」「マイ・ファニー・バレンタイン」などといった曲が有名ですね。
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これらの曲を単純にカバーするのではなく、ジャムやセッションと呼ばれるように即興で演奏するのがジャズの醍醐味で
あり、また今日一般的とされるジャズの演奏形態となっています。
■ ジャズのバンド編成
下記のような編成があります。左から順に、演奏者の人数、呼び名、代表的な楽器編成となっています。
また、これらのほかにも下記のような呼び名の編成があります。
• ジャズ・コンボ …… 3~8人程度の編成のバンドを呼びます。
• ビッグバンド …… ジャズ・コンボよりも大人数での編成になり、ジャズ・オーケストラ形態であるバンドを呼
びます。クラシックのオーケストラと同様に、ホーンセクションがあったり、ジャズ・コンボのような即興演奏
中心ではなく、アンサンブル重視の演奏であることが多いです。
■ジャズのデモ演奏
5 小節のジャズのデモ演奏です。編成はピアノ・ベース・ドラムのシンプルなトリオとなっています。
■ジャズの演奏
ジャズにおける基本的な演奏方法を、先ほど聞いたデモ曲の譜面を元に解説していきます。
Drum
Bass
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★スウィング
譜面を読む上で気をつけなければいけないのは、冒頭に記載があるように、2連続する 8分音符は 3連符の真ん中抜きを
表しているということ。そしてこのスウィングのビートを文字で表すと、「チーンチッキチーンチッキ」になります。「チ
ーン」や「チッキ」というのは、ライド・シンバルのサウンドを表しているとおり、ジャズ・ドラムでメインのビートを
刻むのは、多くの場合ライド・シンバルになります。
★バックビート
1・3拍目をアップ・ビート(オモテ拍)と呼ぶのに対して、2・4拍目をバック・ビート(ウラ拍)と呼びます。ポピュラー・
ミュージックでの多くは、2・4拍目にスネア・ドラムを打つのに対して、ジャズ・ドラミングではフット・ハイハットに
よる刻みになります。譜面上の[2][4]の位置です。
スネア・ドラムほど強烈なバックビートを演奏する訳ではないですが、フット・ハイハットによってリズム・セクション
におけるウラ拍の意識を聴く側に印象づけます。
★4 ビート
4 ビートのほかにも、2ビート、8ビート、16ビートのようなビート種類が存在します。リズムを構成する最小単位の音
符によって呼び名が変わってきますが、ジャズの場合は「4ビート」となります。
譜面上に①②③④とありますが、その位置が 4分音符=4ビートを形作る重要なアクセントとなります。後述のウォーキ
ングとの兼ね合いが、ジャズのグルーヴ感を生み出す重要なポイントになるわけです。
★ウォーキング
ウォーキングとはジャズにおけるベースの奏法で、一般的にはウォーキング・ベースと呼ばれます。上記のベース譜にあ
るように、ドラムのライド・シンバルに合わせてベースも四分音符を刻みます。
「ジャズらしい」ウォーキング・ラインは、この曲のように一音一音違う音を選んで打ち込むと作れます。
これらのポイントを押さえるだけでもジャズの演奏には聞こえますが、もっとジャズプレイヤーらしい演奏を再現するに
は、まだまだ色々なコツやテクニックがあります。どのようにプログラムすれば良いかは、今回の「ジャズの基本」を押
さえた上で、次回のコラムで解説していきたいと思います。