第5章 環境編 - gypsumboard-a.or.jp5.2.3 廃石膏ボード排出量の長期予測...

14
石膏ボードは、建築物の壁や天井材等の内装材料として大量に使用されており、新築及び解体 工事の建築現場からは石膏ボードの廃材が発生する。 これらの廃石膏ボードの処理・処分状況をみると、ほとんどの新築系廃材は石膏ボードメーカ ーに回収されて、ボード用原料としてリユースされているが、解体系廃材は、一部、セメント用 原料や地盤安定化資材としてリサイクルされているものの、大部分は埋立処分されている。今後 の廃石膏ボード排出量の増大を考えると、最終処分場の確保の問題もあり、廃石膏ボードの再資 源化は重要課題である。 5.1 石膏ボードはそもそも資源循環型製品である 1)石膏ボードの原材料のうち大部分は再資源の活用であり、資源循環型製品の優等生である。 図5-1で見る通り、原料石膏の7割近くが、他産業の生産工程で排出された硫黄分を回収した 副産石膏であり、それに一度製品化した石膏ボードを市場から回収・再原料化したリサイクルボ ードを加えると、平成22(2010)年度の実績では、原料の77%が再資源化品である。 2)更に、年間約17万t使用している石膏ボード用原紙は、段ボールや新聞等の回収古紙をほぼ 100%使用している。 ─ 195 ─ 20% 21% 22% 23% 26% 27% 32% 33% 32% 32% 38% 40% 41% 26% 31% 34% 34% 31% 31% 32% 32% 29% 30% 30% 28% 29% 53% 46% 41% 39% 38% 37% 31% 30% 34% 32% 26% 25% 23% 1% 2% 3% 4% 5% 5% 5% 5% 5% 6% 6% 7% 6% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 排煙脱硫石膏  その他副産石膏 輸入天然石膏 リサイクルボード 図5-1 石膏ボード生産量の原料石膏の割合 第5章 環境編

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Page 1: 第5章 環境編 - gypsumboard-a.or.jp5.2.3 廃石膏ボード排出量の長期予測 参考までに、図5-3に2106年までの排出量の長期予測(2005年の国勢調査時の固定資産台帳を

石膏ボードは、建築物の壁や天井材等の内装材料として大量に使用されており、新築及び解体

工事の建築現場からは石膏ボードの廃材が発生する。

これらの廃石膏ボードの処理・処分状況をみると、ほとんどの新築系廃材は石膏ボードメーカ

ーに回収されて、ボード用原料としてリユースされているが、解体系廃材は、一部、セメント用

原料や地盤安定化資材としてリサイクルされているものの、大部分は埋立処分されている。今後

の廃石膏ボード排出量の増大を考えると、最終処分場の確保の問題もあり、廃石膏ボードの再資

源化は重要課題である。

5.1 石膏ボードはそもそも資源循環型製品である

1)石膏ボードの原材料のうち大部分は再資源の活用であり、資源循環型製品の優等生である。

図5-1で見る通り、原料石膏の7割近くが、他産業の生産工程で排出された硫黄分を回収した

副産石膏であり、それに一度製品化した石膏ボードを市場から回収・再原料化したリサイクルボ

ードを加えると、平成22(2010)年度の実績では、原料の77%が再資源化品である。

2)更に、年間約17万t使用している石膏ボード用原紙は、段ボールや新聞等の回収古紙をほぼ

100%使用している。

─195─

20% 21% 22% 23% 26% 27%

32% 33% 32% 32% 38% 40% 41%

26% 31% 34%

34% 31% 31%

32% 32% 29% 30% 30%

28% 29%

53% 46% 41% 39% 38% 37%

31% 30% 34% 32% 26% 25% 23%

1% 2% 3% 4% 5% 5% 5% 5% 5% 6% 6% 7% 6%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

排煙脱硫石膏  その他副産石膏 輸入天然石膏 リサイクルボード

図5-1 石膏ボード生産量の原料石膏の割合

第5章 環境編

Page 2: 第5章 環境編 - gypsumboard-a.or.jp5.2.3 廃石膏ボード排出量の長期予測 参考までに、図5-3に2106年までの排出量の長期予測(2005年の国勢調査時の固定資産台帳を

5.2 廃石膏ボードの排出量

排出量については、石膏ボードメーカーに回収されたボード用の廃石膏ボード(ほとんどが新

築系である)以外は、全国ベースでの実績データはなく、早稲田大学の小松幸夫教授の固定資産

台帳による建物の残存率から計算した建物寿命(小松幸夫「1997年と2005年における家屋寿命の

推計」日本建築学会計画系論文集2008.10)に基づき、石膏ボード工業会が推計した値のみである。

5.2.1 廃石膏ボード排出量推計値

平成22(2010)年3月、石膏ボード工業会で8年振りに排出量の推計を見直した結果、建物の長

寿化が進んでいることや、新設住宅着工戸数が減少傾向から、平成14(2002)年時の予測に比べ

排出量はかなり少なくなっていることが推定された。

いずれにせよ、過去に大量に施工された石膏ボードは、解体時には建設廃棄物として排出され

ることになり、今回の推計によれば2050年頃まで増大し続けることとなる。

年間排出量が100万tを超えたのは  2006年(前回推計では1997年)

150万tを超えるのは  2019年(前回推計では2007年)

200万tを超えるのは  2025年(前回推計では2014年)

300万tを超えるのは  2039年(前回推計なし)

となると推計された。(図5-2参照)

5.2.2 都道府県別廃石膏ボード発生量推計値

地域別の廃石膏ボードの発生状況については、環境省が平成23(2011)年3月、石膏ボード工

業会による全国排出量推計値と建築統計データを活用し、平成21(2009)年の地域別発生量の推

計を発表した。(表5-1参照。出典:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課

「平成22年度廃石膏ボードの再資源化促進に係る実態調査報告書」)

─196─

740

796

854

914

977

1,042

1,108

1,177

1,247

1,319

1,392

1,467

1,543

1,620

1,697

1,776

1,855

1,934

2,013

2,092

2,171

2,248

2,325

2,401

2,475

2,547

2,617

2,684

2,748

2,810

295

295

295

295

295

163

163

163

163

163

161

161

161

161

161

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

159

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

2024

2025

2026

2027

2028

2029

2030

2031

2032

2033

2034

2035

2036

2037

2038

廃石膏ボード排出量[千t]

新築系排出量[千t] 解体系排出量[千t]

図5-2 廃石膏ボードの年間排出量推計(2010年版)

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5.2.3 廃石膏ボード排出量の長期予測

参考までに、図5-3に2106年までの排出量の長期予測(2005年の国勢調査時の固定資産台帳を

基に推計した建物寿命を前提にし、2028年までの民間シンクタンクの新設住宅着工戸数の予測値

を延長して推計)をすると、2052年頃には、年間排出量はピークを迎えて340万tとなり、その

後は、265万t前後で均衡して行くと思われる。

─197─

※1 石膏ボード工業会資料より    ※2 建築統計年報 平成18~22年度版データに基づく5カ年の平均値

全国

新築系

新築系排出量推計※1

(万t)

解体系

解体系排出量推計※1

(万t)

合計 年間総排出 量推計

(万t)※1

合計 解体系

年間総排出 量推計

(万t)

解体系 排出量 推計

(万t)

除却建築物 床面積の 県別割合

(%)

除却建築物 床面積

※2

(m2)

新築系 排出量 推計

(万t)

着工建築物 床面積の 県別割合

(%)

着工建築物 床面積

※2

(m2)

全国 29.5 74.0 103.5

都道府県別

新築系

北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 新潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄 合計

6,418,945 1,397,107 1,562,157 3,009,811 1,285,584 1,293,457 2,322,791 4,276,099 2,999,605 2,840,614 9,270,792 8,262,029 16,784,233 11,018,208 3,120,071 1,519,645 1,645,874 1,031,090 1,048,234 2,667,316 2,770,737 5,732,591 11,295,700 2,856,619 2,390,321 2,681,986 10,469,305 6,878,019 1,364,923 1,012,966 592,418 772,080 2,203,023 3,337,434 1,635,235 829,431 1,299,050 1,658,763 675,361 6,335,558 1,113,233 1,263,504 2,071,126 1,516,119 1,332,717 1,897,651 2,004,499 161,764,036

4.0% 0.9% 1.0% 1.9% 0.8% 0.8% 1.4% 2.6% 1.9% 1.8% 5.7% 5.1% 10.4% 6.8% 1.9% 0.9% 1.0% 0.6% 0.6% 1.6% 1.7% 3.5% 7.0% 1.8% 1.5% 1.7% 6.5% 4.3% 0.8% 0.6% 0.4% 0.5% 1.4% 2.1% 1.0% 0.5% 0.8% 1.0% 0.4% 3.9% 0.7% 0.8% 1.3% 0.9% 0.8% 1.2% 1.2% 100%

1.2 0.3 0.3 0.5 0.2 0.2 0.4 0.8 0.5 0.5 1.7 1.5 3.1 2.0 0.6 0.3 0.3 0.2 0.2 0.5 0.5 1.0 2.1 0.5 0.4 0.5 1.9 1.3 0.2 0.2 0.1 0.1 0.4 0.6 0.3 0.2 0.2 0.3 0.1 1.2 0.2 0.2 0.4 0.3 0.2 0.3 0.4 29.5

1,337,332 308,713 248,822 413,422 282,755 398,700 493,585 500,287 365,314 350,894 910,881 850,793 2,280,733 1,481,647 748,367 229,921 162,198 158,318 170,810 462,208 384,017 749,706 1,752,184 329,833 355,690 289,944 1,252,848 929,111 191,958 142,847 131,508 276,928 313,860 393,531 353,864 110,571 198,016 224,541 86,881 496,637 135,045 176,239 602,211 441,777 293,636 161,101 256,959

23,187,145

5.8% 1.3% 1.1% 1.8% 1.2% 1.7% 2.1% 2.2% 1.6% 1.5% 3.9% 3.7% 9.8% 6.4% 3.2% 1.0% 0.7% 0.7% 0.7% 2.0% 1.7% 3.2% 7.6% 1.4% 1.5% 1.3% 5.4% 4.0% 0.8% 0.6% 0.6% 1.2% 1.4% 1.7% 1.5% 0.5% 0.9% 1.0% 0.4% 2.1% 0.6% 0.8% 2.6% 1.9% 1.3% 0.7% 1.1% 100%

4.3 1.0 0.8 1.3 0.9 1.3 1.6 1.6 1.2 1.1 2.9 2.7 7.3 4.7 2.4 0.7 0.5 0.5 0.5 1.5 1.2 2.4 5.6 1.1 1.1 0.9 4.0 3.0 0.6 0.5 0.4 0.9 1.0 1.3 1.1 0.4 0.6 0.7 0.3 1.6 0.4 0.6 1.9 1.4 0.9 0.5 0.8 74.0

5.4 1.2 1.1 1.9 1.1 1.5 2.0 2.4 1.7 1.6 4.6 4.2 10.3 6.7 3.0 1.0 0.8 0.7 0.7 2.0 1.7 3.4 7.7 1.6 1.6 1.4 5.9 4.2 0.9 0.6 0.5 1.0 1.4 1.9 1.4 0.5 0.9 1.0 0.4 2.7 0.6 0.8 2.3 1.7 1.2 0.9 1.2 103.5

表5-1 都道府県別の廃石膏ボードの発生量の分布

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5.3 廃石膏ボードの処理・リサイクルの流れ

廃石膏ボードの処理・リサイクル状況を、環境省の平成20年度「廃石膏ボードの再資源化促進

方策推進検討業務」調査報告書(12頁、29頁)を、基に石膏ボード工業会の平成21(2009)年の

新排出量推計値で推定した。

5.3.1 新築系廃石膏ボードのフロー

新築工事現場から搬出される30万tのうち、25万t(75%)を石膏ボード工場が受入し(その

内、直接持ち込み41%、中間処理施設経由34%)、その他リサイクル施設では11%を受入れて再

資源化されている。管理型処分場処分やリサイクル/埋立判別不可分は15%以下で、都市部近郊

ではほとんどリサイクルされている。(図5-4参照)

─198─

4,000

3,500

3,000

2,500

2,000

1,500

1,000

500

0

新築系排出量[千t]

解体系排出量[千t]

1951

1956

1961

1966

1971

1976

1981

1986

1991

1996

2001

2006

2011

2016

2021

2026

2031

2036

2041

2046

2051

2056

2061

2066

2071

2076

2081

2086

2091

2096

2101

2106

廃石膏ボード排出量[千t]

図5-4 新築系廃石膏ボードの処理・リサイクルフロー

図5-3 廃石膏ボード年間総排出量の長期予測

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5.3.2 解体系廃石膏ボードのフロー

解体工事現場から搬出される約80万tのうち、約37万t(46%)が中間処理施設に搬入・処理

されている。

解体現場等から中間処理施設経由で石膏ボード工場の原料としてリサイクルされるのは全体の

僅か3万t(4%)強である。

その他のリサイクル施設で処理されている約28万t(35%)の約半数14万t弱は紙と石膏に分

離しただけの単純破砕品かと思われるので、これに管理型処分場での処分されている約19万tと

リサイクル/埋立判別不可分約29万tを合計すると約62万t(78%)となり、実態としては解体

系の8割近くがリサイクルに回されていないものと思われる。(図5-5参照)

5.4 リサイクル用途の現状と課題

現在事業規模でリサイクルが行われている用途と今後の新たな展開が検討されているものは、

中間処理施設経由では、全国で10数万t程度あると思われるが、すでにルートの確立している石

膏ボード原料用や一部のセメント原料用を除くと、土木資材分野の土質改良材としての用途展開

がほとんどであり、他の新たな大口の用途が見えてきていない。

大口用途として期待されている地盤安定化資材向けにおいても、排煙脱硫石膏や石灰などの競

合品とのコスト競争力や、環境安全性の確保の対策など、種々検討すべき課題が山積している。

(表5-2参照 出典:環境省平成21年度「廃石膏ボードの再資源化促進方策業務検討」調査報告

書36頁)

─199─

図5-5 解体系廃石膏ボードの処理・リサイクルフロー

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5.5 ボード用原料としての廃石膏ボードの受入れ条件

ボード用原料として廃石膏を再利用するためには、製品の品質確保の観点から以下の受け入れ

条件となっている。

(1)金物、泥、壁紙等の異物が付着していないこと

(2)石膏ボードと識別できる程度に原形を残していること

石膏粉で受け入れる場合は、ボードメーカーと品質管理で合意していること

(3)水濡れしていないこと

5.6 廃石膏ボードの法的取扱い

5.6.1 廃棄物処理法における取扱い

平成11(1999)年6月17日に、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が改正され、廃石膏ボー

ドは従来の安定型産業廃棄物から管理型産業廃棄物の扱いとなった。ただし、ボード用原紙に分

離した石膏粉については、従来同様安定型産業廃棄物の扱いとなった。

平成17(2005)年6月に(独)国立環境研究所から「安定型最終処分場における高濃度硫化水

素発生機構の解明ならびに環境汚染防止対策に関する研究」の報告書が出され、紙を分離した廃

石膏ボードの石膏粉自体に硫化水素発生原因があるとの見解が出された。

─200─

用途

(1)石膏ボード原料

(2)セメント原料

(3)土質改良材

   ①セメント系固化材

   ②石灰系固化材

   ③石膏系固化材

(4)建材材料

(5)ため池堤体遮水材

(6)アスファルトフィラー

(7)農業資材

(8)その他

・全ての事業所で新築系を主体として受け入れ

・関東、関西、中京地区で解体系を異業種連携

 事業形態で受け入れ

・一部メーカーが受け入れ

・凝結調整剤としては排煙脱硫石膏が主体

・半水石膏を7~10%混入

・公共工事に限定

・法面での緑化工事に実績あり

・ケイ酸カルシウム板の原材料として販売

・老朽化したため池の改修用

・道路のアスファルトへ骨材として石粉代替で混入

・肥料、用地改良材として実績あり

・白線用粉末、魚礁ブロック等の添加材

リサイクルの状況

表5-2 石膏ボードのリサイクル用途

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これに対し(社)石膏ボード工業会としては、平成12(2000)年7月に発表した「硫化水素の

発生について」に基づき、7つの条件が全て満たされなければ硫化水素は発生しないとの見解を

示した。

その条件とは、

① 液体状態の水が充分にあること。

② 利用可能な有機物があること。

③ 利用可能な硫酸イオン(硫酸化合物を含む)があること。

④ 空気の欠如(嫌気的状態)であること。

⑤ 硫酸還元菌の存在があること。

⑥ pH4~9であること。

⑦ 最適な温度範囲;30~38℃であること。

であり、処分場での硫化水素の発生は、水封状態で嫌気性になることや、他の有機物の混入な

ど安定型処分場の管理の問題の方が大きいとしたが、平成18(2006)年6月1日環境省は、紙を分

離した廃石膏ボードの石膏粉も管理型産業廃棄物の取扱いにするとの通知を出した。

5.6.2 建設リサイクル法における取扱い

平成20年(2008年)12月「建設リサイクル制度の施行状況の評価・検討について」の取り纏め

では、今後大幅な増加が見込まれる廃石膏ボード(特に解体系)の再資源化の取り組みの遅れが

指摘され、課題解決に向けて

①解体時の現場分別の徹底について措置を講ずる 

②将来の特定建設資材への指定追加を念頭に置き、実態調査の実施や再資源化の技術開発・ル

ートの拡大・需要の育成を図る

③廃石膏ボードの現場分別の方法検討と、その費用分担に関する発注者への情報提供を図る

の取り組みをすることとされた。

その後、石膏ボードメーカーに対しても、石膏ボードに占める廃石膏ボードの割合を更に向上

させる為の技術開発の取り組みをするよう、基本方針に追加明記された。

更に、平成22年(2010年)4月からは、施行規則の一部改訂により、特定建設資材である木材

の再資源化の促進をするため、木材の分別の妨げとなる建設資材(石膏ボード等)を先に取り外

すよう、解体工事の工程の順序を詳細化することとされた。

5.6.3 『廃石膏ボード現場分別解体マニュアル(概要版)』

国土交通省では、廃石膏ボードの現場分別の徹底を図り、廃石膏ボードの再資源化の促進や建

設廃棄物の適正処理、最終処分場の延命化等に寄与する事を目的に、平成23年3月『廃石膏ボー

ド現場分別解体マニュアル【試行版】』を作成した。(概要版は、表5-3の通り。)

─201─

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─202─

表5-3 廃石膏ボード現場分別解体マニュアル(概要版)

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5.7 環境安全性面での課題と対応策

廃石膏ボード粉を土木用資材に再利用する場合、環境安全性への対応策が重要である。

現在の製品では問題がないが、過去の製品に含まれていた石綿・重金属(ヒ素・カドミウム)

や、原料由来で限定的に含まれているフッ素のほか、特定条件下で発生する硫化水素などが問題

となる。(石綿や重金属類を含有した石膏ボードの確認方法は、表5-4、表5-5-1及び表5-

5-2を参照。)

いずれの物質も夫々、解体時の分別、中間処理での選別および最終処分場における維持管理の

徹底、並びにリサイクル製品製造過程での添加物の工夫により安全性の確保は可能であるが、コ

スト面での更なる検討を要する。

今後ますます増大する廃石膏ボードの処理に関しては、最終処分場での対応も限界が見えてき

ており、種々の課題への解決に向けて、官(国・地方行政機関)と学(学校・研究機関)と産

(製造者・排出事業者・解体業者・中間処理業者・処分場業者)が一体となって取り組まなけれ

ばならない。

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表5-4 石膏ボード製品における石綿(アスベスト)の含有について

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表5-5-1 ひ素及びカドミウムを含有する石膏ボードの対象製品及び識別方法

表5-5-2 ひ素及びカドミウム含有石膏ボードの裏面表示の詳細

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有害物質

ひ素

カドミウム

昭和48年(1973年)~平成9年(1997年)4月に小名浜吉野石膏(株)いわき工場で製造された製品 (裏面に「吉野石膏OY」と表示)

次のいずれかの方法により識別 ①石膏ボード裏面のOYの表示有無を確認 ②石膏ボード裏面のJISマークと許可番号、ロット番号により製造工場と製造年月を確認

平成4年(1992年)10月~平成9年(1997年)4月に日東石膏ボード(株)八戸工場で製造された製品

石膏ボード裏面のJISマークと許可番号、ロット番号により製造工場と製造年月を確認

対象製品 識別方法