第5章交流回路 - 北海道大学...22 00 0 1 12 22 sin dt (cos )dt t e t vv t t vv t t 0 e 2 v...

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第5章 交流回路

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  • 第5章 交流回路

  • 交流電圧波形

    発電機によって発生する起電力は、時間とともに変動する電圧で、これを交流電圧(Alternating Voltage)という。交流電圧波形における瞬間電圧 V(t) は、最大値(振幅) V0 と角速度 を用いて、

    となる。ここで、 は位相角(初期位相)、すなわち t = 0 でどの角度に相当するかを示す。

    2つの正弦波 V1、V2 を考える。

    これら2つの正弦波を合成すると、

    となり、同形式になる。ただし、このときの振幅 VT と位相角 T は、

    となる。

    0( ) sin( )V t V t

    V

    t

    V0

    V0

    T = 2 /

    波形の合成

    1 01 1

    2 02 2

    sin( )sin( )

    V V tV V t

    1 2

    01 1 02 2sin( ) sin( )sin( )T T

    V V VV t V tV t

    2 201 02 01 02 1 22 cos( )TV V V V V

    1 01 1 02 2

    01 1 02 2

    sin sintan cos cosT

    V VV V

    12f T

  • 交流の実効値

    交流は周期的に値を変えるので、直流の電圧(電流)計を用いると、針が定まらずに振れ続ける(瞬時値)。そこで、その大きさ、または強さを決められた量として表現するために実効値(Effective Value)を用いる。実効値は、瞬時値を2乗して1周期について平均し、その平方根から得られる。

    電圧の瞬時値を、V = V0sintとすると、実効値 Ve は、

    よって、

    交流電流の実効値 Ie も同様に、

    となる。

    一般に、交流用の電圧計や電流計は実効値で表現するように作られている。つまり、家庭用電源の電圧100[V]とは実効値なので、実際には+141[V]から141[V]、最大電圧差(peek-to-peek値)では、282[V]にもなる。

    2 2 200

    2 20 0

    0

    1

    1 22 2

    sin dt

    ( cos )dt

    Te

    T

    V V tTV VtT

    02e

    VV

    V

    t

    V0

    V00sinV V t

    2V

    02e

    II

  • 交流回路での抵抗

    導体中の電子の振る舞いは、電界が変化する場合でも変わらない。すなわち、交流回路でも直流回路と同様に、V = RI のオームの法則は成り立つ。

    図のようなVR回路において、

    交流回路の抵抗で消費される電力は、P = VI より、

    となり、平均の電力は、

    となる。これを電力の実効値という。

    交流回路の電力

    のとき、オームの法則より、電流は、

    となる。

    0sinV V t

    00sin sin

    VVI t I tR R

    RV

    V

    I

    2 220 0 1 22sin ( cos )

    V VP t tR R

    t

    20VR

    20

    2eVP R

  • 交流回路とコンデンサー

    直流電流はコンデンサーに電荷がたまる(過渡状態)と、その後は流れなくなる。

    交流電流は電子が振動運動しているので、電荷がたまり始めるとすぐに逆向きの電圧に変わる。そのため、電流が流れ続けるのと同じ状態となる。

    CVコンデンサーに蓄え

    られる電荷はQ = CVなので、

    0sinQ CV t

    VI

    電荷の時間的な変化が電流なので、

    となり、電流の位相は電圧より / 2だけ進む。

    0

    0 2

    d cosd

    sin( / )

    QI CV tt

    CV t

  • コンデンサーのリアクタンス

    交流回路でのコンデンサーの電圧と電流の関係は、

    となり、これらの最大値の関係より、

    が得られる。この比例定数 XC (抵抗に相当する)をコンデンサーのリアクタンスという。この式より、 が大きい、すなわち周波数 f が高いほど抵抗は小さくなることがわかる。

    ※位相が / 2 ずれているときの電圧と電流の比をリアクタンスという。

    リアクタンスより、コンデンサーは高周波の信号に対しては抵抗が小さく、低周波の信号に対しては抵抗が大きくはたらく。そのため、図のように入れることで信号に入る高周波のノイズを除去することができる。このようなコンデンサーをノイズカットコンデンサーという。

    0 01V IC

    1CX C

    0

    0 2sinsin( / )

    V V tI CV t

    ノイズカットコンデンサー

    電気製品

    C

  • 交流回路とコイル

    コイルは導体でできているため、直流電流に対しては、過渡状態を過ぎた後はほとんど抵抗がない。

    交流電流に対しては、自己誘導起電力が常に電流の変化を妨げる方向に発生するため、電流が流れにくくなる。

    誘導起電力が電源の電圧と釣り合っているので、

    LV

    よって、

    となり、電流の位相は電圧より / 2だけ遅れる。

    0 0d sind

    IL V tt

    0 0 2cos sin( / )V VI t tL L

    VI

  • コイルのリアクタンス

    交流回路でのコイルの電圧と電流の関係は、

    となり、これらの最大値の関係より、

    が得られる。この比例定数 XL をコイルのリアクタンスという。この式より、 が大きい、すなわち周波数 fが高いほど抵抗は大きくなることがわかる。

    1つのスピーカーでは可聴範囲の20[Hz]から20[kHz]の音を再生するのは難しい。そこで、低音の得意な大きなスピーカー(ウーハー)と高音の得意なスピーカー(ツィーター)を組み合わせたものが2ウェイスピーカーである。

    スピーカーネットワーク

    0

    0 2

    sin

    sin( / )

    V V tV

    I tL

    0 0V LI LX L

    C

    CL

    L

    中低音用ウーハー

    高音用ツィーター

  • 回路と交流波形

    レジスタンス回路

    電流は電圧と同位相となる。インピーダンス ZR は抵抗 Rだけとなる。

    ※インピーダンス:電流と電圧の比

    LV

    CV

    RV

    V, I

    t

    V, I

    V、 I

    0sinV V t

    0sinV V t

    0sinV V t

    0sinI I t

    0 2sin( / )I I t

    0 2sin( / )I I t

    キャパシタンス回路

    電流が電圧より / 2 だけ進む。インピーダンス ZC はリアクタンス XC = 1 / C となり、周波数が高くなるほど小さくなる。

    インダクタンス回路

    電流が電圧より / 2 だけ遅れる。インピーダンス ZLはリアクタンス XL = L となり、周波数が高くなるほど大きくなる。

    t

    t

  • LCR回路とインピーダンス

    図のような回路を考える。Cの両端の電圧を VC とすると、キルヒホフの法則から、

    となり、この式を微分すると、

    ところが、

    なので、これらの VC を消去すると、

    となる。電流Iは電圧Vと同じ周波数を持つので、

    と定義すると、

    となる。この関係はどんなtに対しても成り立つことから、

    となり、これらの関係から I0、 を求めると、

    R C L

    0sinV V t

    ddC

    IV V L RIt

    22dd d d

    d d ddCVV I IL R

    t t tt

    d( ) ddd d d

    C CCV VQI Ct t t

    202

    d d d cosd dd

    I I I VL R V tCt tt

    0sin( )I I t

    0

    00

    0

    1

    1 0

    sin cos cos sin

    cos sin sin cos

    I R L tqqqC

    VI R L tIC

    0 0

    1 01

    sin ( / )coscos ( / )sin /

    R L CR L C V I

  • これらの関係を図に表したものをベクトル図という。電流の位相は、コンデンサでは電圧より/2進み、コイルでは電圧より/2遅れる。電流を基準にして、それぞれの相対的な関係を図にすると、

    となり、これらより、インピーダンスの関係を導くこともできる。

    インピーダンスのベクトル表記

    となる。ただし、

    となる。この直流電流の抵抗に相当する量 Z をインピーダンスという。 を遅れ角または力率角という。 VR

    IVC

    IVL

    II

    1/C

    L

    R

    Z

    IL1/C

    2 211( / )/ sin

    cos

    Z R L CX L C ZR Z

    0 0/I V Z tan /X R

    V, I0sinV V t

    0sin( )I I t

    t

    ベクトル図

  • 直列回路のインピーダンス

    回路の種類 インピーダンス Z ベクトル図

    LCR直列回路

    CR直列回路

    LR直列回路

    22 1R L C

    22 1R C

    22R L

    Z

    Z

    Z

    R

    R

    R

    1L C

    1C

    L

  • 並列回路のインピーダンス

    回路の種類 アドミッタンス 1/Z ベクトル図

    LCR並列回路

    CR並列回路

    LR並列回路

    221 1CR L

    2 21 CR

    221 1R L

    1C L

    C

    1L

    1 R

    1 R

    1 R

    1 Z

    1 Z

    1 Z

  • 交流の複素数表示

    工学系では交流を複素数を用いて表現するのが一般的である。複素数表示の電圧と電流はそれぞれ、

    と表すことができる。

    例えば、直列回路の基本式

    を複素数表示を用いて計算すると、

    となり、

    となる。

    この複素数Zjは複素インピーダンスと呼ばれ、実数部はレジスタンスR、虚数部はリアクタンス X = L 1/C、その絶対値 |Zj|がインピーダンスZ、Zjが実軸となす角が力率角となる。

    0j tV V e

    0( )j tI I e

    22d d d

    d ddI I I VL R Ct tt

    2 /LI j R I C j V

    1j

    VZ R j LI C

    1/C

    L

    R

    Z

    実軸L1/C

    虚軸

    cos sin jjZ Z jZ Ze

  • LCR回路の共振

    LCR回路に入力する電圧は変化させずに周波数だけ変化させると、電流は図のように変化をする。これは、周波数が低いときはコンデンサーの抵抗が大きくなり、高いときはコイルの抵抗が大きくなるためである。特にコンデンサーとコイルのリアクタンスが等しいときをLC回路の共振という。

    ラジオはこの原理を利用して、ある特定周波数のものをだけを取り出して、信号に変換している。この回路を同調回路という。

    1L C

    R C L

    0sinV V t

    12 2

    fLC

    I

    1/ LC

  • 例題

    図のように、交流電圧E=100[V]の電源、リアクタンスX=4[]のコイル、R1[]、R2[]の抵抗からなる回路がある。回路を流れる電流I=20[A]、抵抗R1に流れる電流I1[A]と抵抗R2に流れる電流I2[A]との比がI1:I2=1:3であったとき、抵抗R1の値を求めよ。

    R1

    X

    E R2