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2020 工業経営:第 7 回) 2020 10 27 日) Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 1 - 第 7 回 経営目標とする財務指標Ⅱ:カルビーの事例 1.カンブリア宮殿 カルビー松本晃会長の VTR を観て,気づいた点を整理しよう。 ・カルビーの強さはどこにあるのか? 国内におけるスナック市場のシェア: カルビーの上位 4 銘柄(売上高:放送当時) ポテトチップス: 億円 じゃがりこ: 億円 かっぱえびせん: 億円 ジャガビー: 億円 カルビーの新製品開発と商品企画力の特徴 ・松本晃会長はどんな人か? 1972 伊藤忠商事入社,1986 年子会社へ出向し,シェアを伸ばす。 1993 ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)に入社,1999 年に社長に就任し, 売上高を 倍に伸ばす。2009 カルビー会長に就任。 ・松本会長就任後のカルビーの変化 スナック市場のシェアを 支配する。 →なぜそのようなことが必要なのか? 「棚卸し」の重要性:やること,やらないことの優先順位付け いいこと・やるべきことはやる。 やろうとしたができなかったことを抽出する。 できないことは何か。やるべきか,やらないべきか。 社員との直接対話 会長就任後に 200 回行う。そこで問うのは VISION や理念の共有 J&J の経営におけるコア「クレド(Credo)」を重視した経営 カルビーグループビジョン 顧客・取引先から,次に従業員とその家族から, そしてコミュニティから,最後に株主から 尊敬され,賞賛され,そして愛される会社になる。 ・(顧客は)買いたいものを買うのではなく,買いたい人から買う。 だから人を育てることが重要。仕事とは人の関わりそのものである。 繰り返し伝える。「理解」「納得」「行動」

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  • (2020 工業経営:第 7 回) (2020 年 10 月 27 日)

    Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 1 -

    第7回 経営目標とする財務指標Ⅱ:カルビーの事例 1.カンブリア宮殿 カルビー松本晃会長のVTRを観て,気づいた点を整理しよう。 ・カルビーの強さはどこにあるのか? 国内におけるスナック市場のシェア: % カルビーの上位 4 銘柄(売上高:放送当時) ① ポテトチップス: 億円 ② じゃがりこ: 億円 ③ かっぱえびせん: 億円 ④ ジャガビー: 億円 カルビーの新製品開発と商品企画力の特徴

    ・松本晃会長はどんな人か? 1972 年 伊藤忠商事入社,1986 年子会社へ出向し,シェアを伸ばす。 1993 年 ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)に入社,1999 年に社長に就任し, 売上高を 倍に伸ばす。2009 年 カルビー会長に就任。 ・松本会長就任後のカルビーの変化 スナック市場のシェアを 支配する。 →なぜそのようなことが必要なのか?

    「棚卸し」の重要性:やること,やらないことの優先順位付け ① いいこと・やるべきことはやる。 ② やろうとしたができなかったことを抽出する。 ③ できないことは何か。やるべきか,やらないべきか。 社員との直接対話 → 会長就任後に 200 回行う。そこで問うのは VISION や理念の共有 J&J の経営におけるコア「クレド(Credo)」を重視した経営 → カルビーグループビジョン

    顧客・取引先から,次に従業員とその家族から,

    そしてコミュニティから,最後に株主から

    尊敬され,賞賛され,そして愛される会社になる。 ・(顧客は)買いたいものを買うのではなく,買いたい人から買う。 → だから人を育てることが重要。仕事とは人の関わりそのものである。 繰り返し伝える。「理解」「納得」「行動」

  • (2020 工業経営:第 7 回) (2020 年 10 月 27 日)

    Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 2 -

    2.カルビーの財務業績推移 ・過去 8 カ年の業績の推移

    単位:百万円 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

    現金・預金 4,469 18,238 19,448 17,342 18,783 18,891 22,784 23,961

    受取手形・売掛金 11,911 11,139 18,763 19,787 17,392 21,119 23,021 28,600

    有価証券 0 0 13 13,999 29,997 34,995 28,999 28,999

    棚卸資産 4,669 4,276 4,920 5,661 6,522 8,037 9,268 9,895

    その他の流動資産 3,418 3,767 4,703 5,981 6,140 6,499 6,853 6,389

    流動資産合計 24,467 37,420 47,847 62,770 78,834 89,541 90,925 97,884

    建物・構築物 24,006 21,678 20,580 20,634 20,970 20,369 25,915 27,734

    機械装置・運搬具 16,746 14,550 14,052 14,329 16,400 17,159 23,998 28,144

    土地 11,739 10,707 10,721 10,790 10,773 11,501 11,642 11,626

    その他の固定資産 1,189 1,543 2,188 3,700 2,023 10,725 8,604 3,331

    有形固定資産合計 53,680 48,478 47,541 49,453 50,166 59,754 70,159 70,835

    無形固定資産合計 7,701 6,734 6,073 5,297 4,613 4,555 5,559 4,483

    投資その他の資産合計 7,808 6,761 7,012 7,270 7,353 8,117 8,233 8,808

    固定資産合計 69,190 61,973 60,627 62,022 62,132 72,427 83,953 84,126

    資産合計 93,657 99,393 108,474 124,793 140,966 161,968 174,878 182,011

    流動負債合計 24,344 21,288 22,636 26,468 28,673 34,227 33,469 37,079

    固定負債合計 5,543 5,180 5,420 5,639 7,827 8,940 9,939 9,875

    負債合計 29,887 26,469 28,056 32,107 36,500 43,168 43,408 46,954

    資本金 7,756 10,744 11,252 11,586 11,946 11,975 12,008 12,020

    資本剰余金 7,324 10,312 10,820 11,154 11,514 11,543 11,572 4,781

    利益剰余金 46,395 49,938 56,141 64,215 74,259 84,956 98,013 111,936

    その他の純資産 2,295 1,930 2,204 5,730 6,747 10,326 9,876 6,319

    純資産合計 63,770 72,924 80,417 92,685 104,466 118,800 131,469 135,056

    負債・純資産合計 93,657 99,393 108,474 124,793 140,966 161,968 174,878 182,011

    売上高 146,452 155,529 163,268 179,411 199,941 222,150 246,129

    252,420

    売上原価 88,041 90,482 94,187 100,889 112,731 124,588 139,095 140,847

    売上総利益 58,411 65,047 69,081 78,522 87,209 97,561 107,033 111,573

    販売費及び一般管理費 48,878 54,329 56,833 62,731 67,492 73,378 78,908 82,732

    営業利益 9,533 10,717 12,247 15,790 19,717 24,183 28,125 28,841

    営業外収益 511 492 557 1,569 1,151 1,939 576 536

    営業外費用 504 639 318 232 86 507 2,156 751

    経常利益 9,539 10,570 12,486 17,127 20,782 25,615 26,545 28,625

    特別利益 305 1,274 1,200 119 426 18 554 279

    特別損失 2,296 3,513 752 1,267 672 1,416 976 1,204

    税引前当期純利益 7,548 8,331 12,934 15,979 20,536 24,217 26,123 27,700

    法人税等 3,531 4,078 5,838 6,539 8,450 10,103 8,091 8,754

    当期純利益 4,017 4,253 7,096 9,440 12,086 14,114 18,031 18,946

  • (2020 工業経営:第 7 回) (2020 年 10 月 27 日)

    Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 3 -

    ・財務諸表をもとに下記の比率を計算してみよう。 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

    自己資本当期利益率 6.30% 5.83% 8.82% 10.19% 11.57% % % %

    総資産営業利益率 10.18% 10.78% 11.29% 12.65% 13.99% % % %

    売上高営業利益率 6.51% 6.89% 7.50% 8.80% 9.86% % % %

    売上高当期利益率 2.74% 2.73% 4.35% 5.26% 6.04% % % %

    総資産回転率 1.564 回 1.565 回 1.505 回 1.438 回 1.418 回 回 回 回

    自己資本比率 68.09% 73.37% 74.13% 74.27% 74.11% % % %

    財務レバレッジ 1.469 倍 1.363 倍 1.349 倍 1.346 倍 1.349 倍 倍 倍 倍

    3.カルビーの経営戦略と今後の経営課題:クレド(理念)経営と日常的な取り組み ・経営基本方針 → イノベーション(成長戦略)とコスト・リダクション(コスト削減)

    ◯ コスト・リダクションに向けた取り組み → 売上高営業利益率 15%を目指す

    単位:百万円 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

    売上高 146,452 155,529 163,268 179,411 199,941 222,150 246,129

    252,420

    売上原価 88,041 90,482 94,187 100,889 112,731 124,588 139,095 140,847

    売上原価率 60.12% 58.18% 57.69% 56.23% 56.38% % % %

    ◯ イノベーション(成長戦略) ・国別売上高の推移

     2013年度の売上高は、1,999億円(前期比11.4%増)、営業利益197億円(同24.9%増)となり、売上・利益とも、5期連続で過去最高を更新しました。 国内事業においては、主力の「ポテトチップス」「じゃがりこ」の積極展開や「コーン系スナック」の伸長などによりスナック市場シェアを拡大、また「フルグラ」の売上も大きく伸長し、カルビーは、シリアル食品市場のナンバー1となりました。「フルグラ」は、新しい朝食の形として注目を集め急成長を続けています。2014年2月には生産ラインを増設し、生産能力を1.5倍に拡大しました。 一方「コスト・リダクション」では、集中購買や稼働率の向上などにより、製造原価率低減に努めました。 海外事業では、北米でのペプシコグループ、中国での康師傅(カンシーフ)グループとの事業を開始いたしました。また、2013年7月にインドネシアでWings(ウィングス)グループとの合弁会社を、2014年3月には英国に子会社を設立しました。さらに5月、フィリピンでUniversal Robina Corporation(ユニバーサル ロビーナ コーポレーション)との合弁会社を設立いたしました。 今期もより一層のスピードと競争力を持って事業活動を進め、売上高2,130億円、営業利益225億円を目指します。

     グローバル食品企業の強さは高い利益率。カルビーグループでは、当面の営業利益率目標をグローバル食品企業水準の15%とし、引き続き「イノベーション(成長戦略)とコスト・リダクション」を経営の二本柱として事業を推進してまいります。 イノベーションでは、最優先で海外事業の強化を継続していきます。新製品開発の強化・スピードアップを図り、国内市場のシェア拡大を進めていきます。ペプシコとの連携強化やL&Aのチャンスにも取り組んでまいります。 新規事業につきましては、アンテナショップ「カルビープラス」や「ギャレット ポップコーン ショップス」を展開し、お客さまから大変高い支持をいただいております。また、本年4月に初めての百貨店直営店舗「GRAND Calbee(グランカルビー)」と「フルグラ」直売店舗「grano-ya (グラノヤ)」も開業しました。さらに、eコマース事業も積極的に展開してまいります。直接お客さまとのコミュニケーションを図れるこれらの事業は、新製品開発や、新規事業を生み出す力でもあると考えています。 これからも「継続的成長と高収益体質の実現」を目指し革新を続けていくことにより、「グローバル食品企業への転換」を進めてまいります。

    経営の二本柱

    継続的成長と高収益体質の実現

    コスト・リダクション

    原材料費の低減

    生産の効率化及び稼働率の向上

    販売費の適正化

    イノベーション(成長戦略)

    新製品開発

    海外事業の拡大

    ペプシコとの連携強化

    国内シェア拡大

    新規事業開発 L&A

    ※L&A(ライセンス契約と事業買収)

    500

    1,500

    2,000

    2,500売上高(億円) 営業利益(億円)

    年度0

    50

    1,000 100

    150

    200

    250

    0

    2,130

    1,7941,632 157

    2251,999 197

    122

    2011 2012 2013 2014(予想)

     当期の業績と今後の取り組み

    代表取締役社長 兼 COO

    伊 藤 秀 二

    5期連続で過去最高益を達成。「グローバル食品企業への転換」をスピード感ある取り組みで実現します。

    Q▶ 5期連続過去最高益を達成されましたが、 当期の概況についてお聞かせください。

    Q▶ 今後目標とする指標、また具体的な取り組みに  ついてはいかがですか?

    売上高・営業利益の推移■ 売上高 ■ 営業利益

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  • (2020 工業経営:第 7 回) (2020 年 10 月 27 日)

    Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 4 -

    ・国内菓子市場の推移とスナック市場シェア

    ・コスト削減をどう捉えるか?:考え方と実践(日経トップリーダー2014 年 6 月号から) コストをどう切り分けるか? → 一般的には「変動費」と「固定費」だが,カルビーでは「変動費」「減価償却費」 「固定費」に切り分ける。 → 毎年多額の設備投資を行っているので,減価償却費をコントロールする必要。 investment(投資)か,expense(出費)かを見極める。 商品販売力が向上すれば,工場稼働率も向上する。 → 2009 年当時,工場稼働率は 60%強であった。→ 工員の労働意欲低下 工場稼働率を 8割に引き上げれば,売上に占める固定費の割合がグッと下がる。 設備投資を控えて,内部留保を貯めこんでいく。 → 過剰投資を止めて,保守を中心にする。減価償却費=固定費を低減させることにつ ながり,製品原価が低減。生まれた利益は内部留保として次期以降の投資に。 包装代を削減,価格 2割引を実現 → 商品の包装代が原価に占める割合として高い。 → 2009 年以前は工場ごとにそれぞれ発注していた。 コンビニ向けは 3ヶ月で商品がローテーションするので,廃棄ロスが多かった。 → 包装袋は本社で一括購入し,在庫を抑えるようにした。 ポテトチップスは 2割値下げが可能になり,他社との競争力が増した。 ・理念経営の必要性(日経トップリーダー2013 年 4 月号から) J&J のクレド「我が信条」に,会社のステークホルダーに対する責任と優先すべき順 番について記載されている。 → ① 顧客・取引先,② 社員とその家族,③ コミュニティ,④ 株主 ◎ マネジメント・コントロール・システム(Management Control System:MCS) → 組織成員を導くコントロールにはいくつかの方法がある。 例)結果・環境・行動 信条(Belief)・境界(Boundary)・診断的(Diagnostic)・相互作用的(Interactive) 文献)若林計志『MBA 流 チームが勝手に結果を出す仕組み』PHP ビジネス新書

    横田絵理ほか『マネジメント・コントロール - 8 つのケースから考える人と経営の方向性』有斐閣

  • (2020 工業経営:第 7 回) (2020 年 10 月 27 日)

    Copy Right, 2020, TOBITA Tsutomu レジュメ・講義資料のコピー,他人への譲渡,売却等の行為は認めません。 - 5 -

    【課題提出】 〔課題 1〕 レジュメ p.3 の計算結果を踏まえて,ROE の成長が実現された最大の要因について以下の言葉と数値を示しながら説明してください。

    (用語)財務レバレッジ,売上高当期利益率,総資産回転率,売上原価 〔課題 2〕 この数年間のカルビーにおける ROE の成長が〔課題 1〕によって説明されましたが,それを実現するために具体的にどのような戦略が反映されてのことでしょうか?「コスト

    リダクション」と「イノベーション」という 2つの用語を用いて 200文字程度で説明してください。

    以上の課題は下記の QR コードへアクセスし,Google Form へ回答してください。 締め切りは 10月 29日(木)23:59です。いかなる理由があっても遅れは認めません。 課題提出の URL:https://forms.gle/y9qQ123nnpSxgYM7A