第7章 総合原価計算i - kagoshima ueco · web...

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Page 1: 第7章 総合原価計算I - Kagoshima Ueco · Web view原価計算では,第一次の計算段階で原価の費目別計算を(原価計算基準9),第二次の計算段階で部門別計算を(原価計算基準15),そして,第三次の計算段階で単位製品の製造原価を算定する製品別計算を行います(原価計算基準

第 8 章 総合原価計算 I(単純総合原価計算)

8.1 総合原価計算とは8.2 完成品総合原価と完成品単位原価の計算8.3 完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算手続き8.4 完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算方法8.5 減損・仕損の処理

学習の要点

原価計算では,第一次の計算段階で原価の費目別計算を(原価計算基準 9),第二次の計算段階で部門別計算を(原価計算基準 15),そして,第三次の計算段階で単位製品の製造原価を算定する製品別計算を行います(原価計算基準 19)。製品別計算の方法には,前章に学んだ個別原価計算の他に,総合原価計算があります。本章および次章では,この総合原価計算について学習します。

本章のキーワード:単純総合原価計算,継続製造指図書,完成品単位原価,完成品総合原価,当期総製造費用,月末仕掛品原価,加工費,始点投入材料,加工進捗度,完成品換算量,月初仕掛品原価,総製造費用,当月投入,正常減損費,発生点,度外視法,正常仕損費,仕損品評価額

8.1 総合原価計算とは

総合原価計算は,規格化された製品を反復連続的に生産する見込生産を行う製造現場に適した原価計算法です。受注生産のための個別原価計算では,受注毎に発行する特定製造指図書に集計した製造原価合計額を受注サイズ(生産ロット)で除して受注品の単位原価を求めますが,総合原価計算(process costing)では,原価計算期間(通常一ヶ月)における原価総額すなわち総製造原価(完成品総合原価)を同期間の生産量でもって除し単位製品の製造原価(完成品単位原価,unit costs)を求めます。例えば,ホップ,麦芽,水などを原料とするビールを年間(12 ヶ月間)を通して製造している工場が,月間に 10 万本のビールを生産し,月間総製造原価が 2,000 万円であるとしたら,1 本あたりの原価は 200 円(20,000,000 円÷100,000 本)となります。なお,生産が反復連続的に行われる製造環境では,継続製造指図書(standing production order, process production order)を生産指示に用いることがありますが,個別原価計算における特定製造指図書と異なり,総合原価計算での重要性は希薄です。

総合原価計算は,計算対象となる製品が単一種類(同種)製品なのか,多種製品なのか,あるいは等級品なのか,といった基準で分類されます。原価計算基準 20 は,(1)単純総合原価計算,(2)等級別総合原価計算,(3)組別総合原価計算の類型に総合原価計算を区分します。単純総合原価計算(single process costing)は計算対象となる製品が同種製品の場合の,等級別総合原価計算は等級品の場合の,組別総合原価計算は多種製品であるが等級品でない場合の,原価計算法です。また,総合原価計算では,工程別に計算を行うか否かにより,単一工程総合原価計算と工程別総合原価計算に分類されます。

本章は,単一種類(同種)の製品を反復連続的に大量に生産する場合に用いる単純総合原価計算(原価計算基準 21)の仕組みや計算構造を中心に学習します。他の総合原価計算法は次章で学びます。

(Question8-1 総合原価計算とはに取り組みましょう)

8.2 完成品総合原価と完成品単位原価の計算–1–

Page 2: 第7章 総合原価計算I - Kagoshima Ueco · Web view原価計算では,第一次の計算段階で原価の費目別計算を(原価計算基準9),第二次の計算段階で部門別計算を(原価計算基準15),そして,第三次の計算段階で単位製品の製造原価を算定する製品別計算を行います(原価計算基準

原価集計の単位が期間生産量である総合原価計算(原価計算基準 24)では,完成品単位原価は,次式のとおり,分子となる完成品総合原価(完成品原価,total cost accounted for)を分母である完成品数量で除して求めます。

な お , 上式 に お け る当 月 製 造 費用 は 原 価 計算 期 間 , たとえば1ヶ月間に消費したすべての原価要素の合計金額のことです。月初ならびに月末に仕掛品在庫が存在しなければ,完成品総合原価=当月製造費用となりますが,これは現実的でありません。同種製品を反復生産する単純総合原価計算では,当月総製造費用(当期総製造費用=月初仕掛品原価+当月費用)を完成品と期末仕掛品とに分割計算することで完成品総合原価を算定し,完成品総合原価を製品単位に均分して単位原価を求めます (原価計算基準 21)。月初仕掛品原価は前月末に計算されており,また,当月製造費用は当月の消費原価合計額ですので,「月末仕掛品原価」を算定すれば,当期総製造費用からこれを控除することにより完成品総合原価が求まります。

(Question8-2 完成品単位原価の計算に取り組みましょう)

8.3 完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算手続き

月末仕掛品原価を算定すれば完成品総合原価が求まりますので,総合原価計算においては月末仕掛品原価の計算は極めて重要な計算手続きです。完成品総合原価と月末仕掛品原価を算定する計算においては,原則として,直接材料費と加工費を別々に計算し,それぞれの計算結果から月末仕掛品原価の負担額をはじめに算定します。本節では,総合原価計算の勘定連絡を確認し,その上で,完成品総合原価と月末仕掛品原価の計算手続きを学びます。

(1) 総合原価計算の勘定連絡図

総合原価計算では,製造原価を直接材料費と加工費(conversion costs)に区分して計算します(原価計算基準 24(一))。加工費には,直接材料費以外の製造原価要素,すなわち直接労務費,直接経費および製造間接費が含まれます(原価計算基準8(三))。したがって総合原価計算の勘定連絡図では,個別原価計算と異なり,図表 8-1 のように直接材料費以外の製造原価要素を加工費勘定に集計します。

図表 8-1  総合原価計算の勘定連絡図

–2–

完成品総合原価完成品単位原価= 

 完成品数量

 ただし,完成品総合原価=月初仕掛品原価+当月製造費用-月末仕掛品原価=当月総製造費用-月末仕掛品原価

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(2) 月末仕掛品の直接材料費

総合原価計算では,製造原価が直接材料費と加工費に区分されるので,月末仕掛品の計算は直接材料費と加工費を別個に計算します。直接材料費は,通常,作業が開始される時点(作業着手時点および工程の始点)で 100%投入されます。これを始点投入材料とよびます。

たとえば,月末仕掛品 500 個が存在し,それらは平均して 60%しか完成していないとします。こうした完成度合いを加工進捗度(stage of completion)といいます。加工進捗度がたとえ 60%であっても,始点投入材料の場合,作業開始時点で材料が 100%投入されていますので,月末仕掛品の直接材料費は 500 個分となります(図表 8-2)。すなわち,期末仕掛品加工費の算定とは異なり,材料に関する進捗度は1とみなされ,期末仕掛品の材料に関する完成品換算量は数量そのものと同じとなります。

図表 8-2  直接材料費・加工費の発生状況

(3)月末仕掛品の加工費

直接材料費と異なり,加工費は作業が開始される時点から製品が完成する時点(作業完了時点および工程の終点)まで比例して発生します(図表 8-2)。月末仕掛品 500 個が存在し,それらの加工進捗度が 60%であるとすると,月末仕掛品の加工費は 500 個×0.6(60%)=300 個 と計算されます。このように月末仕掛品の加工費を算定する際には加工進捗度を考慮します(原価計算基準 24(一))。

(4)月末仕掛品原価の計算

月末仕掛品の原価は,月初仕掛品原価と当月製造費用を,直接材料費と加工費に分け,完成品数量と月末仕掛品の完成品換算量に応じた按分計算を行うことで,求めます(原価計算基準

–3–

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24(一))。直接材料費は,材料が始点投入の場合,単位当たりでは完成品も仕掛品も同額となり,月末

仕掛品原価の直接材料費は,次式のとおり,当月直接材料費を完成品数量と月末仕掛品数量の合計で除し,それに月末仕掛品数量に乗じると,求まります。

材料が始点投入される場合,直接材料費は1個あたりでは完成品も仕掛品も同じです。例えば,直接材料費の合計が 35,000 円で完成品が 50 個,月末仕掛品が 20 個の場合,35,000 円÷(50+20)個から,1個あたり 500 円と計算できます。この 500 円に月末仕掛品数量 20 個を乗じれば,月末仕掛品の直接材料費は 10,000 円と計算できます(図表 8-3)。

図表 8-3  直接材料費・加工費の按分

月末仕掛品の直接材料費 =

当月の直接材料費完成品数量+月末仕掛品数量

× 月末仕掛品数量

加工費の算定では,仕掛品の完成の程度を表す加工進捗度を考慮して求める完成品換算量(equivalent unit)というコンセプト(概念)を用います。例えば,加工進捗度が 50%の場合は完成品 0.5 個分に相当します。そこで,月末仕掛品 20 個の完成品換算量は,図表 8-3 のように,20 個×50%(0.5)=10 個となります。1個あたりの加工費は,次式のように当月の加工費を完成品数量と月末仕掛品の完成品換算量の合計で除して計算します。本例では,54,000 円÷(50 個+20 個×0.5)=@900 円となります。この 900 円に月末仕掛品の完成品換算量 10個を乗じれば,月末仕掛品の加工費が 9,000 円となります。

以上の手続きで算定した月末仕掛品の直接材料費と加工費の合計額が月末仕掛品原価です。

【例題8-1】 月末仕掛品原価の計算 伊集院製紙(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき(1)月末仕

掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  当月投入  50 個  当月製造費用  月末仕掛品 20 個(0.5)   直接材料費 100,000 円  完成品   30 個   加工費   120,000 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,また,月初仕掛品はない。仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-1 解答】(1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

70,000 円 150,000 円 @5,000 円

–4–

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 (解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =40,000 円 + 30,000 円 =70,000 円(2)完成品総合原価 =100,000 円 + 120,000 円 − 70,000 円 =150,000 円(3)完成品単位原価 = 150,000 円 ÷ 30 個 = @5,000 円 

(練習問題8-1 完成品単位原価の計算に取り組みましょう)

8.4 完成品総合原価と期末仕掛品原価の計算方法

先の例題(8-1)では,簡略化のために,月初仕掛品を導入しませんでした。しかし,通常,月末仕掛品も月初仕掛品も存在します。月初仕掛品が存在する場合,平均法,先入先出法および後入先出法のいずれかの方法により,月初仕掛品原価と当月製造費用とを完成品と期末仕掛品とに分割し,完成品総合原価と期末仕掛品原価を算定します(原価計算基準 24(二))。

(1)平均法

平均法とは,図表 8-4 のように月初仕掛品原価を当月製造費用と同等に扱って月末仕掛品原価を計算する方法です(原価計算基準 24(二)1)。すなわち,次式のように,月初仕掛品原価と当月製造費用の合計である総製造費用を,直接材料費は完成品数量と月末仕掛品数量で,加工費は完成品数量と月末仕掛品完成品換算量で,按分して計算します。

図表 8-4 平均法による計算

【例題8-2】 平均法による単純総合原価計算国分製粉では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき平均法により(1) 月末仕

掛品原価,(2) 完成品総合原価および(3) 完成品単位原価を計算しなさい。

–5–

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生産データ   原価データ  月初仕掛品 40 個(0.4) 月初仕掛品原価  当月投入  100 個 直接材料費 6,100 円   合計   140 個 加 工 費 9,000 円  月末仕掛品 60 個(0.5) 当月製造費用  完成品   80 個 直接材料費 24,000 円

加 工 費 90,000 円

材料すべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-2 解答】(1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

39,900 円 89,200 円 @1,115 円 (解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =12,900 円 + 27,000 円 =39,900 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,100 円 + 24,000 円 − 12,900 円 =17,200 円  加 工 費 = 9,000 円 + 90,000 円 − 27,000 円 =72,000 円

89,200 円(3)完成品単位原価 = 89,200 円 ÷ 80 個 = @1,115 円 

なお,総合原価計算でも個別原価計算と同様に仕掛品勘定および原価計算表に記入が行われます。この例題では次のようになります。

–6–

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 (Question 8-3 平均法による月末仕掛品原価の計算に取り組みましょう)

(2)先入先出法

先入先出法では,先に製造に着手したものが先に製品として完成していくと考え,月初仕掛品を先に完成させ,その後,当月投入分の製造に着手するというフレームで計算します(図表8-5)。この方法では月初仕掛品原価のすべてを完成品原価に算入する一方,完成品数量から月初仕掛品数量(完成品換算量)を差し引いた数量と月末仕掛品完成品換算量との比により,当月製造費用を完成品と月末仕掛品とに按分し,完成品総合原価および月末仕掛品原価を算定します(原価計算基準 24(二)2)。したがって,月末仕掛品の直接材料費および加工費は次式で求めます。

図表 8-5 先入先出法による計算

【例題8-3】 先入先出法による単純総合原価計算伊敷繊維(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき先入先出法によ

り(1) 月末仕掛品原価,(2) 完成品総合原価および(3) 完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ   原価データ  月初仕掛品 40 個(0.4) 月初仕掛品原価  当月投入  100 個 直接材料費 6,100 円   合計   140 個 加 工 費 9,000 円  月末仕掛品 60 個(0.5) 当月製造費用  完成品   80 個 直接材料費 24,000 円

加 工 費 94,000 円

材料すべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-3 解答】(1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

44,400 円 88,700 円 @1,108.75 円(解説)

–7–

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(1)月末仕掛品原価 =14,400 円 + 30,000 円 =44,400 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,100 円 + 24,000 円 − 14,400 円 =15,700 円  加 工 費 = 9,000 円 + 94,000 円 − 30,000 円 =73,000 円

88,700 円(3)完成品単位原価 = 88,700 円 ÷ 80 個 = @1,108.75 円 

(練習問題8-2 先入先出法による単純総合原価計算に取り組みましょう)

(3)後入先出法

後入先出法では,後に製造に着手したものが先に製品として完成すると考えますので,当月投入分を先に完成させ,その後に月初仕掛品に着手するというフレームで計算します。この方法では,月末仕掛品の完成品換算量のうちで月初仕掛品の完成品換算量に相当する部分については月初仕掛品原価をそのまま適用して評価し,月末仕掛品の完成品換算量を超過する月初仕掛品の完成品換算量と完成品数量との比により,当月製造費用を完成品と月末仕掛品とに按分し,月末仕掛品に按分された額と月初仕掛品原価の合計額をもって月末仕掛品原価とする一方,完成品に按分された額は完成品総合原価とします(原価計算基準 24(二)3)。後入先出法による月末仕掛品原価の計算では,月初仕掛品完成品換算量と月末仕掛品完成品換算量の大小で計算方法が異なります。

図表 8-6 後入先出法による月末仕掛品原価の計算

(a) 月初仕掛品数量(完成品換算量)=月末仕掛品数量(完成品換算量)の場合月初仕掛品数量ないし月初完成品換算量が月末仕掛品数量ないし月末完成品換算量と同量の

場合には,月初仕掛品原価がそのまま月末仕掛品原価となります(図表 8-6 の(a))。

(b) 月初仕掛品数量(完成品換算量)>月末仕掛品数量(完成品換算量)の場合この場合は,月末仕掛品原価は月初仕掛品原価から計算します。当月投入分のすべてが完成

品総合原価の部分を構成しております(図表 8-6 の(b))。したがって,月末仕掛品の直接材料費および加工費は次式で求めます。

–8–

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(c) 月初仕掛品数量(完成品換算量)<月末仕掛品数量(完成品換算量)の場合この場合は,月初仕掛品はすべてが未完成であり,かつ,当月投入分の一部も未完成です。

したがって,月末仕掛品原価は,月初仕掛品原価の全部に当月製造費用の一部を合算して求めます(図表 8-6 の(c))。したがって,月末仕掛品の直接材料費および加工費は次式で求めます。

【例題8-4】 後入先出法による単純総合原価計算鹿屋飲料(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき後入先出法によ

り(1)月末仕掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 60 個(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  200 個 直接材料費 6,100 円   合計   260 個 加 工 費 9,000 円  月末仕掛品 80 個(0.3) 当月製造費用  完成品   180 個 直接材料費 24,000 円

加 工 費 93,960 円

材料はすべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-4 解答】 (1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

15,700 円 117,360 円 @652 円(解説)

直接材料費:月初仕掛品量 60 個<月末仕掛品量 80 個(上記(c)の場合)

加工費:月初仕掛品の完成品換算量 60 個×0.5>月末仕掛品の完成品換算量 80 個×0.3     (上記(b)の場合)

 –9–

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(1)月末仕掛品原価 =8,500 円 + 7,200 円 =15,700 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,100 円 + 24,000 円 − 8,500 円 =21,600 円  加 工 費 = 9,000 円 + 93,960 円 − 7,200 円 =95,760 円

117,360 円(3)完成品単位原価 = 117,360 円 ÷ 180 個 =@652 円

(練習問題8-3 後入先出法による単純総合原価計算に取り組みましょう)

(4)材料投入の時点と直接材料費の計算

材料の投入についてこれまでは,(a) 工程の始点ですべて投入されるものと説明してきました。ただ,実際には,(b) 工程を通じて平均的に投入される場合や,(c) 工程の終点で投入される場合があり,それぞれで,直接材料費の計算が異なります(図表 8-7)。既に述べましたように,(a)の場合は,月末仕掛品の加工進捗度に関係なく,直接材料費の計算では月末仕掛品と完成品とを同等に扱います。(b)の場合は,製造過程が進むにつれ比例的に材料費が累積されます。したがって,加工費の場合と同様に加工進捗度を考慮した月末仕掛品原価の計算を行います。(c)の場合は,完成間際まで材料が投入されないので,月末仕掛品に材料費が発生することはありません。

図表 8-7 投入時点と直接材料費の計算

【例題8-5】 材料の投入と直接材料費の計算(株)薩摩食品では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき平均法により,

月末仕掛品原価と完成品総合原価に含まれる直接材料費を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 60 個(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  200 個 B 直接材料費 6,000 円   合計   260 個 当月製造費用  月末仕掛品 80 個(0.5) A 直接材料費 24,000 円  完成品   180 個 B 直接材料費 65,500 円

A 材料すべてが工程の終点で投入され,B 材料は工程を通じて平均的に投入される。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-5 解答】月末仕掛品原価の直接材料費 完成品総合原価の直接材料費

13,000 円 82,500 円(解説)

–10–

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A 材料は工程の終点ですべてが投入されるので,全額が完成品総合原価となります。また原価データで示されているように,同じ理由で A 材料の場合,月初仕掛品原価も発生しません。 したがって A 材料の月末仕掛品材料費=0円となり,24,000 円の全額が完成品総合原価になります。

一方で B 材料の場合,加工費と同様に加工進捗度を考慮して月末仕掛品原価を計算します。平均法による計算なので当月の直接材料費を完成品数量と月末仕掛品の完成品換算量で按分します。

(1)月末仕掛品原価 =0 円 + 13,000 円 =13,000 円(2)完成品総合原価  A 直接材料費 =24,000 円  B 直接材料費 = 6,000 円 + 65,500 円 − 13,000 円 =58,500 円

82,500 円

8.5 減損・仕損の処理

通常,月初仕掛品数量・当月投入数量の合計と完成品数量・月末仕掛品数量の合計,すなわち投入量の合計と産出量の合計は一致すると考えられます。しかし実際には,例えばビール製造の場合のように,発酵過程での蒸発による原材料の消失すなわち減損や,機械の故障などに伴う加工の失敗などが起こりえます。これらを減損・仕損といいます。

減損(waste)とは,製品の加工中に起こる原材料の蒸発・紛散・ガス化・煙化などによる消失,および製品化しない無価値な原材料の発生を指します。また,仕損(spoilage)とは,製品の加工中に生じた失敗などによる一定の品質や規格にあわない不合格品の発生を指します。この不合格品を仕損品とよびます。なお,産出とならない減損・仕損の部分を歩減(ぶべり)とよんでおり,投入量合計に対する産出量の割合を歩留(ぶどまり)といいます。原価計算では,歩減による価値犠牲(減損費および仕損費)を考慮しなければなりません。

減損費は減損発生までにかかった原価を集計して算定します。仕損の場合,減損と同様に仕損が発生した時点でそれまでにかかった原価分が仕掛品原価になります。なお,仕損の場合,通常の商品として販売することはできないが,B 級品といった形で値引きして販売することがあります。このように売却価額や利用価額がある場合,見込まれる価値を仕損品評価額といい,この価値分は仕損費から控除されます。したがって仕損費=仕損品原価−仕損品評価額となります。

(1) 正常減損費(正常仕損費)の処理

総合原価計算では,歩減のなかで発生が避けられないものを正常減損(正常仕損)とよび,そうでないものを異常減損(異常仕損)といいます。会計処理の方法は正常か異常かにより異なります。正常減損費(正常仕損費)は,製品の製造に必要な原価と考えますので,完成品と月末仕掛品に負担させ,製造原価として計算します(原価計算基準 27)。なお,正常減損費は,工程における発生点によって,完成品のみに負担させるか,それとも完成品と月末仕掛品の両者に負担させるかが決まります。

図表 8-8 正常減損(仕損)の処理

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正常減損費(正常仕損費)の良品(完成品と月末仕掛品)への負担計算に,正常減損費(正常仕損費)を分離計算しない度外視法(method of neglect)と,分離計算する非度外視法があります。本書では度外視法にもとづく負担計算を学びます。

(2) 正常減損が工程の終点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも大きな値の工程点)で発生する場合

正常減損が工程の終点で発生する場合,図表 8-8 の(1)のように,正常減損費は完成品にだけ負担させます。これは,月末仕掛品が,正常減損の発生点である工程の終点を通過していないためです。また,正常減損が月末仕掛品の加工進捗度よりも後の地点で発生する場合も,月末仕掛品は減損発生点を通過しておらず,同じく正常減損費を完成品にだけ負担させ,月末仕掛品には負担させません。〔平均法〕正常減損が工程の終点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも大きな値の工程点)

で発生する場合において,月末仕掛品原価を平均法で求める算式は次の通りです。

【例題8-6】 正常減損が工程の終点で発生する場合(平均法)桜島化学(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき平均法により

(1)月末仕掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 40kg(0.4) 月初仕掛品原価  当月投入  200kg 直接材料費 6,000 円   合計   240kg 加 工 費 9,750 円  月末仕掛品 60kg(0.5) 当月製造費用  正常減損  30kg 直接材料費 24,000 円  完成品   150kg 加 工 費 90,000 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,正常減損は工程の終点で発生している。仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-6 解答】 

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(1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価21,750 円 108,000 円 @720 円

 (解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =7,500 円 + 14,250 円 =21,750 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,000 円 + 24,000 円 − 7,500 円 = 22,500 円  加 工 費 = 9,750 円 + 90,000 円 − 14,250 円 = 85,500 円

108,000 円 (3)完成品単位原価 = 108,000 円 ÷ 150kg = @720 円 

〔先入先出法〕正常減損が工程の終点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも大きな値の工程点)で発生する場合において,月末仕掛品原価を先入先出法で求める算式は次の通りです。

【例題8-7】 正常減損が工程の終点で発生する場合(先入先出法)桜島化学(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき先入先出法によ

り(1)月末仕掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 40kg(0.4) 月初仕掛品原価  当月投入  200kg 直接材料費 6,000 円   合計   240kg 加 工 費 9,750 円  月末仕掛品 60kg(0.5) 当月製造費用  正常減損  30kg 直接材料費 24,000 円  完成品   150kg 加 工 費 93,120 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,正常減損は工程の終点で発生している。仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

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【例題8-7 解答】 (1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

21,600 円 111,270 円 @741.8 円(解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =7,200 円 + 14,400 円 =21,600 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,000 円 + 24,000 円 − 7,200 円 =22,800 円  加 工 費 = 9,750 円 + 93,120 円 − 14,400 円 =88,470 円

111,270 円 (3)完成品単位原価 = 111,270 円 ÷ 150kg = @741.8 円 

(3) 正常減損が工程の始点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも小さな値の工程点)で発生する場合

正常減損が工程の始点で発生する場合,図表 8-8 の(2)のように,正常減損費は完成品と月末仕掛品の両者に負担させます。これは月末仕掛品も減損の発生時点を経過しているためです。また,正常減損が月末仕掛品の加工進捗度よりも前の地点で発生している場合も,月末仕掛品が減損発生点を通過しており,同じく正常減損費を完成品と月末仕掛品の両者に負担させます。〔平均法〕正常減損が工程の始点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも小さな値の工程点)

で発生する場合において,月末仕掛品原価を平均法で求める算式は,度外視法のもとでは,次の通りです。すなわち,最初から正常減損分は工程に投入されなかったものとして無視し,計算することにより,正常減損費を完成品と期末仕掛品に負担させます。

【例題8-8】 正常減損が工程の始点で発生する場合(平均法)桜島化学(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき平均法により

(1)月末仕掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 40kg(0.4) 月初仕掛品原価

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  当月投入  200kg 直接材料費 6,600 円   合計   240kg 加 工 費 9,900 円  月末仕掛品 60kg(0.5) 当月製造費用  正常減損  30kg 直接材料費 27,000 円  完成品   150kg 加 工 費 90,000 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,正常減損は工程の始点で発生している。仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-8 解答】 (1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

26,250 円 107,250 円 @715 円 (解説)

   

(1)月末仕掛品原価 =9,600 円 + 16,650 円 =26,250 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,600 円 + 27,000 円 − 9,600 円 =24,000 円  加 工 費 = 9,900 円 + 90,000 円 − 16,650 円 =82,250 円

107,250 円 (3)完成品単位原価 = 107,250 円 ÷ 150kg = @715 円 

〔先入先出法〕正常減損が工程の始点(または,月末仕掛品の加工進捗度よりも小さな値の工程点)で発生する場合において,月末仕掛品原価を先入先出法で求める算式は,度外視法のもとでは,次の通りです。すなわち,最初から正常減損分は工程に投入されなかったものとして無視し,計算することにより,正常減損費を完成品の当期投入分(着手分)と期末仕掛品に負担させます。

【例題8-9】 正常減損が工程の始点で発生する場合(先入先出法)桜島化学(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき先入先出法によ

り(1)月末仕掛品原価,(2)完成品総合原価および(3)完成品単位原価を計算しなさい。

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生産データ 原価データ  月初仕掛品 40kg(0.4)  月初仕掛品原価  当月投入  200kg 直接材料費 6,000 円   合計   240kg 加 工 費 9,800 円  月末仕掛品 60kg(0.5)   当月製造費用  正常減損  30kg 直接材料費 23,800 円  完成品   150kg 加 工 費 98,400 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,正常減損は工程の始点で発生している。仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

【例題8-9 解答】 (1)月末仕掛品原価 (2)完成品総合原価 (3)完成品単位原価

26,400 円 111,600 円 @744 円(解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =8,400 円 + 18,000 円 =26,400 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 6,000 円 + 23,800 円 − 8,400 円 = 21,400 円  加 工 費 = 9,800 円 + 98,400 円 − 18,000 円 = 90,200 円

111,600 円 (3)完成品単位原価 = 111,600 円 ÷ 150kg = @744 円 

(Question 8-4 正常減損費の処理と練習問題 8-4 正常減損費の処理に取り組みましょう)

Column マイナスの原価をプラスの利益に

身近なニュースを原価という視点で見ると興味深いものになることがあります。例えば海洋生物が異常発生し,現地の漁業に多大な被害を及ぼしているというニュースをよく耳にします。一方で,それを食べられる製品に加工して販売する取り組みもまた,ニュースとして聞くことがあります。各地で異常発生したナルトビエイ(エイの一種)についても,通常の魚と同じように切り身

にしたり,食べやすいシュウマイに加工してそれを販売することで,漁業に被害をもたらす困った存在だったものが利益を生み出す資源になったという取り組みが実際にもあるのです。

この場合,ナルトビエイは魚を捕獲する際に大量に獲れてしまうものなので原材料費が無料に近く,しかも豊富です。つまりほぼ無料の材料費と,食用にする為の加工費を加えて完成す

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るナルトビエイ製品の原価は,通常の魚類製品よりも安価です。異常発生したエイを処分する際には膨大な費用がかかります。したがって加工したエイが売

れれば売れるほど処分費用が少なくて済みます。それどころか利益を生み出すのです。そして,この取り組みは問題そのものの最終的な解決につながる可能性も秘めていることから,エイの異常発生に悩む地元の漁業にとっては,まさに「ピンチをチャンスに」「マイナスの原価をプラスの利益に」変えることのできた取り組みといえるでしょう。

Questions

Question 8-1 総合原価計算とはつぎの文章を完成させるのに必要な語句を語群から選び,その記号を解答欄に記入しなさい。

 a 大量生産方式 b 単純総合原価計算 c 個別原価計算 d 受注生産方式 e 総合原価計算  

( ① )は注文を受けてから製品を生産する( ② )のための原価計算方法である。一方で,( ③ )はある種類の製品を大量に継続的に生産する( ④ )のための計算方法である。また,そのなかでも単一種類の製品を大量に生産する場合は( ⑤ )という方法で原価を計算する。

〈解答欄〉① ② ③ ④ ⑤

Question 8-2 完成品単位原価の計算次のデータにもとづいて,A 製品の完成品単位原価を求めなさい。

当月の完成品総合原価 870,000 円    完成品数量 2,000 個

<解答欄>A 製品の完成品単位原価

Question 8-3 平均法による月末仕掛品原価の計算次のデータにもとづいて,平均法により月末仕掛品原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 60 個(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  80 個 直接材料費 60,000 円   合計   140 個 加 工 費 84,000 円  月末仕掛品 40 個(0.5) 当月製造費用  完成品   100 個 直接材料費 192,000 円

加 工 費 252,000 円

材料すべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄> 月末仕掛品原価

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Question 8-4 正常減損費の処理次のデータにもとづいて,先入先出法により月末仕掛品原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 60kg(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  80kg 直接材料費 60,000 円   合計   140kg 加 工 費 84,000 円  月末仕掛品 40kg(0.5) 当月製造費用  正常減損  10kg 直接材料費 192,000 円  完成品   90kg 加 工 費 252,000 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,正常減損は工程の終点で発生している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄>月末仕掛品原価

練習問題

練習問題 8-1 完成品単位原価の計算国分製粉(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき,(1) 月末仕掛品

原価,(2) 完成品総合原価,(3) 完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  当月投入  120 個  当月製造費用  月末仕掛品 40 個(0.5)   直接材料費 180,000 円  完成品   80 個   加工費   280,000 円

材料すべてを工程の始点で投入しており,月初仕掛品はないものとする。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄>(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

              練習問題 8-2 先入先出法による単純総合原価計算伊敷繊維(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき先入先出法により

(1) 月末仕掛品原価,(2) 完成品総合原価および(3) 完成品単位原価を計算しなさい。また,(4) 仕掛品勘定と(5) 原価計算表も完成させなさい。

生産データ  原価データ  月初仕掛品 60 個(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  80 個 直接材料費 60,000 円   合計   140 個 加 工 費 84,000 円  月末仕掛品 40 個(0.5) 当月製造費用  完成品   100 個 直接材料費 192,000 円

加 工 費 252,000 円

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材料すべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄>(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

        

練習問題 8-3 後入先出法による単純総合原価計算伊集院製紙(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき後入先出法によ

り(1) 月末仕掛品原価,(2) 完成品総合原価および(3) 完成品単位原価を計算しなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 60 個(0.8) 月初仕掛品原価  当月投入  120 個 直接材料費 60,000 円   合計   180 個 加 工 費 84,000 円  月末仕掛品 80 個(0.4) 当月製造費用  完成品   100 個 直接材料費 192,000 円

加 工 費 252,000 円

材料すべてを工程の始点で投入している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄>(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

        

練習問題 8-4 正常減損費の処理桜島化学(株)では単純総合原価計算を行っている。次のデータにもとづき平均法により(1)

月末仕掛品原価,(2) 完成品総合原価および(3) 完成品単位原価を計算しなさい。また,(4)仕掛品勘定と(5)原価計算表も完成させなさい。

生産データ 原価データ  月初仕掛品 50kg(0.5) 月初仕掛品原価  当月投入  500kg 直接材料費 30,450 円   合計   550kg 加 工 費 29,900 円  月末仕掛品 100kg(0.4) 当月製造費用  正常減損  20kg 直接材料費 163,000 円  完成品   430kg 加 工 費 285,000 円

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材料すべてを工程の始点ですべて投入しており,正常減損は工程の始点で発生している。また,仕掛品の( )内は加工進捗度を示す。

<解答欄>(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

        

解答

Question 8-1 総合原価計算とは① ② ③ ④ ⑤c d e a b

Question 8-2 完成品単位原価の計算A 製品の完成品単位原価 @435 円

(解説)A 製品の完成品単位原価=870,000 円 ÷ 2,000 個 = @435 円

Question 8-3 平均法による月末仕掛品原価の計算月末仕掛品原価 128,000 円

(解説)

 

月末仕掛品原価 =72,000 円 + 56,000 円 =128,000 円

Question 8-4 正常減損費の処理月末仕掛品原価 152,000 円

(解説)

月末仕掛品原価 =96,000 円 + 56,000 円 =152,000 円

練習問題 8-1 完成品単位原価の計算 (1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

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116,000 円 344,000 円 @4,300 円(解説)

  

(1)月末仕掛品原価 =60,000 円 + 56,000 円 =116,000 円(2)完成品総合原価 =180,000 円 + 280,000 円 − 116,000 円 =344,000 円(3)完成品単位原価 = 344,000 円 ÷ 80 個 = @4,300 円 

練習問題 8-2 先入先出法による単純総合原価計算(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

152,000 円 436,000 円 @4,360 円

(4) (5)

(解説)

 

(1)月末仕掛品原価 =96,000 円 + 56,000 円 =152,000 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 60,000 円 + 192,000 円 − 96,000 円 =156,000 円  加 工 費 = 84,000 円 + 252,000 円 − 56,000 円 =280,000 円

436,000 円 –21–

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(3)完成品単位原価 = 436,000 円 ÷ 100 個 = @4,360 円

練習問題 8-3 後入先出法による単純総合原価計算(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

148,000 円 440,000 円 @4,400 円(解説)

直接材料費:月初仕掛品量 60 個<月末仕掛品量 80 個月末仕掛品の加工費 =

100個-(60×0.5)個+(40×0.5)個×(40 個 ×0.5)= 56,000 円

252,000 円

加工費:月初仕掛品の完成品換算量 60 個×0.8>月末仕掛品の完成品換算量 80 個×0.4

 

(1)月末仕掛品原価 =92,000 円 + 56,000 円 =148,000 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 60,000 円 + 192,000 円 − 92,000 円 =160,000 円  加 工 費 = 84,000 円 + 252,000 円 − 56,000 円 =280,000 円

440,000 円 (3)完成品単位原価 = 440,000 円 ÷ 100 個 = @4,400 円

練習問題 8-4 正常減損費の処理(1) 月末仕掛品原価 (2) 完成品総合原価 (3) 完成品単位原価

63,300 円 445,050 円 @1,035 円(4) (5)

(解説)

 

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Page 23: 第7章 総合原価計算I - Kagoshima Ueco · Web view原価計算では,第一次の計算段階で原価の費目別計算を(原価計算基準9),第二次の計算段階で部門別計算を(原価計算基準15),そして,第三次の計算段階で単位製品の製造原価を算定する製品別計算を行います(原価計算基準

 

(1)月末仕掛品原価 =36,500 円 + 26,800 円 =63,300 円(2)完成品総合原価  直接材料費 = 30,450 円 + 163,000 円 − 36,500 円 =156,950 円  加 工 費 = 29,900 円 + 285,000 円 − 26,800 円 =288,100 円

445,050 円 (3)完成品単位原価 = 445,050 円 ÷ 430kg = @1,035 円 

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