第8章 画像強調第8章 画像強調 1. 画像強調の種類...
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第8章�画像強調�1.�画像強調の種類�
画像強調とは,画像データの解析にあたり,解析者が画像内容を的確に認識しやすいように,解析目的に応じた加工を加えること.
画像強調には
�・
�・
�・
がある.�
2.�濃度変換�2.1ヒストグラム�ヒストグラムは,画像を構成するピクセルの輝度値(DN値あるいはCCT値)の出現回数をグラフにしたもの.�
ヒストグラムの横幅が広ければ,ダイナミックレンジの広い画像�
ヒストグラムが左によっていれば,暗い画像�
ヒストグラムが右によっていれば,明るい画像�
頻 度�
DN�
2.2�濃度変換の種類�
�画像を強調して解析者に認識しやすくするために, ��������������を濃度変換という.
�濃度変換には以下のやり方がある.
�・
�・
�・
�・
その他に,コントラスト増幅と濃度分割を組み合わせた等濃度比という方法がある.�
2.3�濃度抽出�
頻 度�
DN�
閾値�
山� 海�
ある閾値を定めてデータを分ける. 例えば,海と山をある閾値で分け,別々の色づけを行うとわかりやすい画像になる.�
濃度抽出とは,閾値を定めてデータを分けること.�
2.4�濃度抽出の画像例�
山における植生をもっと細かく分類したいので,山の領域を拡大して濃淡の幅を増やす.�
2.5�コントラスト増幅1�
頻 度�
DN�
海�山�
255�
頻 度�
DN�
山部分を拡大�
255�
�強調したい画像の濃淡の幅や狭い領域内に分布するヒストグラムを拡大する.�
2.6�コントラスト増幅2�
狭い範囲に分布しているヒストグラム全体のダイナミックレンジを大きくしてやる.�
頻 度�
DN�255�
頻 度�
DN�255�
2.7�コントラスト増幅の画像例�
2.8�濃度分割�
頻 度�
DN�255�
頻 度�
DN�255�
元々はひとつの領域として表示� 分割して複数色で表示�
画像の濃淡の幅を複数個に分割して,それぞれの区分に異なる濃度や色を割り当てる.�
2.9�濃度分割の画像例�
2次,3次多項式や対数関数,指数関数など�
画像濃度の連続性にこだわらずにコントラストを強調できる.ただし,画像濃度には不連続が生じる.�
傾きが部分的に異なる,すなわち部分的に異なる強弱をつけることが可能�
2.10�関数変換�
関数によって濃度を変化させる方法�
ヒストグラム変換は,原ヒストグラムを望ましいヒストグラムになるように輝度値を変換することである.�
2.11 �ヒストグラムの平滑化�
ヒストグラム平滑化�
ヒストグラム正規化�
人間の目には濃度の頻度分布が正規分布に近いとき,見やすいといわれる.�
2.12�ヒストグラムの正規化�
原画像�
線形変換画像�
ヒストグラム平滑化画像�
2.13�濃度変換事例�
3.�画像間演算�
共通の地域を対象とした異なる画像間で演算を行うことを画像間演算という.�
画像間演算�
���������(異なる時期に観測した画像間の演算) 目的:時間経過に伴う画像の変化の観察�
���������(異なるバンド間の演算) 目的:共通内容の強調,共通雑音成分の相殺など�
画像はデジタル化された数値データであるから,演算ができる!�
3.1�演算の方法1 �ー算術演算ー�加減乗除を組み合わせて,画像間の演算を行う.
例�地球規模での植生分布を把握するため,植生指標が作成されている.代表的なものとして,��������������がある.�
���NDVI=(NIR-VIS)/ (NIR+VIS)�
�NIR:近赤外域の観測値,VIS:可視域の観測値(一般に,赤色域)�
ランドサットの場合では,��NDVI=(MSS7-MSS5)/(MSS7+MSS5),あるいは��NDVI=(TM4-TM3)/(TM4+TM3)�である.�
NDVIは-1~1の値をとるため,これを0~255になるように変換する必要がある.数値が大きい程,��������ことを意味する.�
TMバンド3�
TMバンド4�
NDVI画像�(シュードカラー)�
3.2�NDVI画像の事例�
NDVI=(TM4-TM3)/(TM4+TM3)�
3.3�演算の方法2�ー論理演算ー�
画像間の論理和・論理積などの論理演算を組み合わせることで,論理的な特徴を抽出する.�
例�行政区域の広がりを0と1でマスクし,画像データと論理積をとることにより,対象とする行政区域に対する画像データだけを切り出すことができる.�
4.�空間フィルタリング�
�空間フィルタリングとは,入力画像に何らかのフィルタ関数をあてはめ,画像を改良する手法である.簡単に言うと,ぼんやり見えているものをはっきりさせる処理のこと.�
�空間フィルタリングにより,ノイズの除去,エッジや線の強調,画像の鮮鋭化などの効果が得られる.�
�一般に,原画像データの[2×2]~[8×8]ピクセル程度(最もよく使われるのが[3×3]ピクセル )の小領域に対し,マスクをかけ統合化を行う.このマスクを別名ウインドウという.�
4.1�フィルタリングの方法�
これが������������������(別名���������������).画像データ上にこのようなマスクを作り,画像に重ねながら移動する.�
F(x, y)
(この場合は平滑化フィルター) G(x, y)�
4.2�平滑化(スムージング)フィルタ�1)�平均フィルタ �
平滑化フィルタによりノイズの影響を小さくできる(除去はできない). しかしその反面,原画像の輝度をなだらかにするため,ぼやけさせるというマイナスの効果もある.�
後で9で割る� 後で10で割る�
���������(ただし,自分自身には2倍の重みをつけている)�
2)�メジアン(中央値)フィルタ�
3×3マスク上の各ピクセル値のメジアンで置き換える.�元の画像をぼやかさせることなく,ノイズの影響を小さくできる.�
例えば�
20 22 25 45 73 122 180 190 213
これがメジアン�
20 45 73 8522 122 180 18125 190 213 203
4.3�微分(差分)フィルタ �
�微分(差分)フィルタとは,注目画素の近傍の画素の輝度がどのぐらい変化しているかという情報を用いて,画像中の線や縁を強調するフィルタである.差分とは簡単にいうと”引き算による差”ということ.�
83 85 70 70 68 7375 76 71 68 70 7472 72 69 71 71 7473 72 69 69 69 7374 73 72 69 71 7371 72 72 73 72 73
F(x,y)
y
x
原画像データ�
微分の定義�
1)�1次微分フィルタ �ー�水平方向1次微分フィルタ�ー�1次微分フィルタは,������1次微分フィルタと�������1次微分フィルタに分けられる.�
水平方向1次微分フィルタ �
f(x-1,y-1) f(x, y-1) f(x+1, y-1)
f(x-1, y) f(x, y) f(x+1, y)
f(x-1, y+1) f(x, y+1) f(x+1, y+1)
原画像データ�
×
すなわち,原画像データf(x, y)の水平方向の差が大きいと,置き換えられた値g(x, y)も大きくなる.�水平方向微分フィルタを施すと,鉛直方向の境界が強調される �(�������������������がクッキリする).�
2)�垂直方向1次微分フィルタ �
垂直方向微分フィルタ�
f(x-1,y-1) f(x, y-1) f(x+1, y-1)
f(x-1, y) f(x, y) f(x+1, y)
f(x-1, y+1) f(x, y+1) f(x+1, y+1)
原画像データ�
×
�すなわち,原画像データf(x, y)の垂直方向の差が大きいと,置き換えられた値g(x, y)も大きくなる.垂直方向微分フィルタを施すと,水平方向の境界が強調される(�����������������がクッキリする).�
3 )�Sobelフィルタ �1次微分を行う際,注目画素に近い画素の重みを大きくしたのが�����������である.�
Sobel垂直フィルタ�Sobel水平フィルタ�
重み2倍�
4)�2次微分フィルタ��2次微分フィルタは,上下,左右の各変化の変化率,すなわち2階微分をとることにより実現できる.これは数学的には,ラプラシアンを計測することである.2次微分フィルタを����������という.�
2次微分の定義�
�1次微分フィルタは,隣り合うデータの変化の大きいところを強調する.しかし,輪郭を構成する線の両隣のデータの差が常に大きいとは限らない.そこで,差分量の変化が大きいところをクローズアップしようというのが2次微分フィルタである.�
5)�ラプラシアン�
このフィルタは,注目画素とその上下左右の4近傍の画素の差分を取っている.これにより,周りの画素と自分自身との輝度の開き具合いが端的に計量できる.方向性を問わない対称的な差分方式であるため,自分の輝度が身の回りのそれと,どの程度掛け離れているかの適切な指標となる.
4近傍ラプラシアン� 8近傍ラプラシアン�
このフィルタは,4近傍ラプラシアンの時よりも,もっと良く周りを見渡そうとした結果,斜め方向も数え,8つの近傍との差分を取っている.輪郭線強調の精度は4近傍よりもよい.�
4.4�ローパスフィルタ��電気工学では低い周波数のみ通過させる回路のことを�������������������という.音でいうと,低音だけを通過させるフィルターである.�画像処理における低い周波数とは�����������������のことをいう(高い周波数とは輝度変化の激しい部分).�
ローパスフィルターの例�平均フィルタ!�
�ローパスフィルターとは言い換えると,輝度変化の激しい部分をカットするフィルターのことであり,画像のデイテールの細かい部分を押さえてしまう機能を持つ.�
「ぼかして」しまう!�
4.5�ハイパスフィルタ�
高い周波数だけ通過させるフィルターのことをハイパスフィルターという.画像でいうと�������������������,つまり細かいディテールの部分を通過させるフィルターである.これにより,エッジやコンターが強調される.
ハイパスフィルターの例�
�隣近所のピクセルは,ローパスフィルターでは平均に協力していた.ハイパスフィルターでは,隣近所のピクセルにはマイナスの重みが設定されている.�
�これは,新しく計算しようとするピクセルは隣近所のピクセルによる影響を振り捨てて,輝度の変化を強調させるためである.�