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CAD/CAM 20150508 歯科補綴学2B 1 顎機能咬合再建学分野 重本

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CAD/CAM

20150508 歯科補綴学2B

1 顎機能咬合再建学分野 重本

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本格的な歯科用デジタル技術の発展,歯科接着技術の進歩ならびに再生医療技術の進化には著しいものがあり,クラウンブリッジ補綴学領域においては, CAD/CAM技術を

応用したメタルフリー歯冠補綴装置の実用化, クラウンブリッジ補綴臨

床への歯科接着技術適用の有用性の見直し,口腔インプラン卜技術の革新と安定化などがなされつつあります.これらの補綴新技術は,

その重要性が歯科領域においても叫ばれて久しい patient/problem centered care をますます実効ある

ものとすることに貢献しており,その意味においてこれらの技術の習得はこれからの歯科医師にとって必須となるでしょう.

2 顎機能咬合再建学分野 重本

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学習目標 1.CAD/CAMによる補綴装置製作の臨床

的意義を説明できる. 2.代表的なシステムの特徴と製作方法を

説明できる. 3.CAD/CAM用ブロックの種類と特徴を説

明できる. 4.CAD/CAMクラウン製作時の各ステップ

における注意点を説明できる.

3 顎機能咬合再建学分野 重本

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CAD/CAM コンピュータを利用し,設計・生産を一貫して行う技法. CADはコンピュータ援用設計,CAMはコンピュータ援用製造の意味.データ

ベース化された設計情報および図形などの視覚情報を基にコンピュータ内部で設計モデルを作成し,これに基づいて NC工作機械やロボットを制御して生産工程を自動化する.

4 顎機能咬合再建学分野 重本

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臨床的意義 クラウンブリッジなど補綴装置の製作法 ●1960年代 バンドクラウンから鋳造冠 ●鋳造冠からCAD/CAM冠 一大変革期を迎えようとしている

5 顎機能咬合再建学分野 重本

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鋳造冠 <利点> 高い適合性 高い強度 <欠点> 鋳造欠陥の不可避 金属の持っている優れた性質を100%

保った修復装置を製作することはできなかった.

6 顎機能咬合再建学分野 重本

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歯科用CAD/CAM冠(ブリッジ) <利点> 工業的に均一に作られたブロックを削り出して修復装置を製作するために,材料がもつ本来の優れた物性をそのまま引き継いだ補綴装置をつくることができる. 安定した材質,製作期間の短縮,製作行程の簡素化,データの保存できる. <欠点> 鋳造修復と異なり金属材料以外の場合はろう付けや溶接ができない.

7 顎機能咬合再建学分野 重本

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歯科用CAD/CAM

クラウンブリッジ補綴学 第5版 医歯薬出版 矢谷博文,三浦宏之,細川隆司,小川匠 編

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クラウンブリッジの製作方法

計測

設計CAD

加工CAM

3次元形態モデル

設計ソフトウエア

加工機

補綴装置

歯科用CAD/CAMによる クラウンブリッジの製作方法

形態計測

WaxUp

鋳造

咬合器装着

補綴装置

鋳造法による クラウンブリッジの製作方法

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計測 S-WAVEスキャナー

設計(デザイン) GO2dental

加工(ミーリング) DWX-50

移動・変形・拡大・縮小

自動配置

スキャンデータ

5軸同時制御

Virtual articulator バーチャル咬合器

計測 設計 加工

株式会社松風提供資料より 10 顎機能咬合再建学分野 重本

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<計測> 1.通法により印象採得し,製作した歯型,

対合歯列模型,インターオクルーザルレコードを3Dスキャナで計測する.

2.口腔内スキャナで口腔内を直接ス

キャンする(光学印象).

11 顎機能咬合再建学分野 重本

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3Dスキャナー

株式会社松風提供資料より 12 顎機能咬合再建学分野 重本

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Lava™ Chairside Oral Scanner C.O.S.

鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供

口腔内スキャナー(光学印象)

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鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供

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鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供

15 顎機能咬合再建学分野 重本

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光学印象(口腔内スキャナー)の特徴 ●消毒の必要もなく,感染防止にも役立つ. ●消毒による印象精度への影響の回避できる. ●印象材の硬化を待たなくてよいので,患者の苦痛が少ない. ●嘔吐反射のある患者にも応用できる. ●口腔内スキャナーの小型化 ●リアルタイムで形成の確認ができるため,その場で形成の修正も可能. ●再形成後には,修正した部位のみ再度光学印象し,以前のデータと重ね合わせ修正可能. ●データが残っているため,もう一度同じクラウンを製作することもできる. ●支台歯の反射を抑え精度のよい印象を採るために,形成後に酸化チタンのスプレーを噴霧する必要(最新の機器ではスプレーの必要もなく,カラーで高精度の画像が得られる機器も登場している). ●支台歯,対合歯列とともに咬合時の光学印象を頬側より採り,そのデータをもとにコンビュータが自動的に上下の模型の咬頭嵌合位を再現できる. ●ライブラリーをもとに,ある程度自動で標準的なクラウンの設計が可能を行う ●CADデータをもとに光造形法で模型を製作したり,CAMで模型を削り出したり することもできる.

16 顎機能咬合再建学分野 重本

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<設計> CADソフトウェアによる設計 コンピュータに取り込まれた支台歯のマージン部を確認,修正を行うと,対合歯列ならびにインターオクルーザ,ルレコードのデータをもとにCADソフトが標準的な歯冠形態を提示するので,適宜画面上で修正を行い,クラウンのデザインを決定する.

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モデルの移動・変形・拡大・縮小 モデリング機能

株式会社松風提供資料より 18 顎機能咬合再建学分野 重本

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Virtual 咬合器

exocad 社Hp(http://www.exocad.com/dental-cad.shtml)より引用

Virtual articulator バーチャル咬合器

19 顎機能咬合再建学分野 重本

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咬合面の再現

咬頭嵌合位

右側方運動経路 1mm~5mm

左側方運動経路 1mm~5mm

上顎左側第一大臼歯

鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供

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咬合面の設計

ソフトウェア: FreeForm ハプティックデバイス: PHANTOM (SensAble Technologies Inc)

外側形態の成形

鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供 21 顎機能咬合再建学分野 重本

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加工

1.ミリングマシンによる切削加工 CAMソフトウェアによりブロックの切削を行う. 前歯部で,は審美性が重要視されるため,フレームを切削加工

し,その上に陶材を築盛してクラウンブリッジを完成させる. 築盛

する陶材は,ジルコニアにはジルコニア用陶材,アルミナにはアルミナ用陶材などフレームに用いた材料の熱膨張係数と合った向材を用いる.切削加工では, 通常,ジルコニアは切削しやすい

ようにチョーク状の半焼結のブロックを使用するため,切削後に完全焼結を行って強度を上げる.アルミナの場合も切削されたままの状態では強度が不足するので,ガラス浸潤を行う.

2.ラピッドプロトタイピングとよばれる積層造形がある 積層造形にはコバルトクロム合金製のクラウン,ブリッジ製作に

用いら れる粉末焼結式積層法(素材粉末を数十μmの厚さで層

状に敷き詰め,高出力のレーザービームなどで直接焼結を繰り返して造形する方法)などがある.

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加工機

ディスク(ワックス)

ディスク(ジルコニア)

ブロック(ハイブリッドレジン)

ミリニングバー 株式会社松風提供資料より 23 顎機能咬合再建学分野 重本

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積層造形(ワックス)

材料を小さな粒子として,インクジェット方式で噴射し,積層式にワックスパターンを造形する

造形ピッチ:25.4μm

ワックスパターン

OPCクラウン

三次元ワックス造形装置

鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学講座 小川匠教授提供 24 顎機能咬合再建学分野 重本

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CAD/CAMシステムで用いられる材料には ジルコニア,セラミック,コンポジットレジン,チタン,コバルトクロムなどさまざまな材料がある.また,鋳造用のパターン製作用にPMMA,ワックスなどのブロックもある. ジルコニアは曲げ強度が1.000~1.200 MPaと高いため, クラウンから臼歯部のロングスパンブリッジまで幅広く用いることができる.近年,高透光性ジルコニアが開発され,臼歯部ではフルジルコニアのクラウンやブリッジも製作されている. セラミックブロックは臼l密部のクラウンに用いられる.単色のブロックだけではなく,1個のブロックで透過性や色調に変化を与えたセラミックブロックも開発されている. 小臼歯部で,はメタルクラウンの代わりにCAD/CAMによるコンポジッ卜レジンクラウンが保険適用となった.

加工材料

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CAD/CAM製作時の注意点 特に重要な注意点:支台歯形成と咬合調整,装着 <支台歯形成>オールセラミッククラウンの支台歯形成に準じる. ①形成面を滑沢にし,アンダーカットをつくらない. ②偶角部を曲面に仕上げ,鋭利な部分を残さない.CAD/CAMではブロックを

削り出してクラウンを製作するため,鋭利な部分があるとパーが入らず適合不良となる. ③ フィニッシュラインから軸面にかけて曲面で,移行するラウンデッドショルダーあるいはデイープシャンファー形態とする. ④クラウンの厚みが均一になるようにすることが重要である. <咬合調整,装着> ジルコニア以外のメタルフリー材料の場合は接着性のレジンセメントを用いて装着し,歯質と一体化させてから咬合調整を行う. セラミッククラウンやコンポジットレジンクラウンの場合はシラン処理を行った後に,接着性レジンセメントを用いて装着するが,シリカを含有していないアルミナやジルコニアの場合は,アルミナ,ジルコニア専用の処理剤にて処理をする.

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加工材料、加工機(ミリニングバー)により削除量は異なる。 27 顎機能咬合再建学分野 重本

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保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針

公益社団法人日本補綴歯科学会 医療問題検討委員会

平成26年度の診療報酬改定により,歯科用CAD/CAM装置を用い,均質性及び表面性状を向上させたハイブリッドレジンブロックから削り出された小臼歯部の歯冠補綴であるCAD/CAM冠が保険導入された.このCAD/CAM冠には,これまでの補綴とは異なる対応が求められるが,その適切な術式については周知されていない.そこで,(公社)日本補綴歯科学会は,保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針を作成することとした.

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保険診療におけるCAD/CAM冠について CAD/CAM冠の定義 CAD(Computer- Aided Design)はコンピュータ支援による設計,CAM(Computer- Aided Manufacturing)はコンピュータ支援による加工・製作

のことで,CAD/CAM冠は,歯科用CAD/CAMシステムを用いてCAD/CAM冠の設計を行った後,製造機械と連結して,CAD/CAM冠の加工・製作を行った補綴装置を指し,保険診療においてはCAD/CAM冠用材料との互換性が制限されない歯科用CAD/CAM装置を用いて,作業用模型で間接法により製作された歯冠補綴装置をいう.

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保険診療におけるCAD/CAM冠に関する施設基準 (1)歯科補綴治療に係る専門の知識および3年以上の経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること. (2)保険医療機関内に歯科技工士が配置されていること.なお,

歯科技工士を配置していない場合は,歯科技工所との連携が図られていること. (3)保険医療機関内に歯科用CAD/CAM装置が設置されてい

ること.なお,保険医療機関内に設置されていない場合は,当該装置を設置している歯科技工所との連携が図られていること.

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保険診療におけるCAD/CAM冠用材料の定義 次のいずれにも該当すること. (1)薬事法承認又は認証上,類別が「歯科材料(2)歯冠材料」で

あって,一般的名称が「歯科切削加工用レジン材料」であること.

(2)シリカ微粉末とそれを除いた無機質フィラーの2種類のフィラーの合計が60%以上であり,重合開始剤として過酸化物

を用いた加熱重合により作製されたレジンブロックであること.

(3)1歯相当分の規格であり,複数歯分の製作ができないこと. (4)CAD/CAM冠に用いられる材料であること.

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Page 32: CAD/CAM - 2hotetu.webcrow.jp2hotetu.webcrow.jp/CADCAM.pdf · 1.通法により印象採得し,製作した歯型, 対合歯列模型,インターオクルーザル レコードを3dスキャナで計測する.

CAD/CAM装置 CAD/CAM冠用材料との互換性が制限されない歯科用CAD/CAM装置を用いることとなっており,複数企業のCAD/CAM冠用材料に対応できる装置を指す. なお, CAD/CAM冠用材料装着部の変更又は加

工プログラムの改修(追加,変更)により,複数企業のCAD/CAM冠用材料に対応できる装置も対応となる.

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保険診療における適応症 適応症は,全部被覆冠と同様であり,維持力に十分な歯冠高径があること,過度な咬合圧が加わらないこと等が求められる.適応可能な症例については,個別具体的に判断することとなるが,適応症,推奨できない症例,考慮すべき事項は以下の通りとなる.また,部分床義歯の支台歯,事実上の最後臼歯については,適応症とするためのエビデンスが得られていないため,当面は慎重に適用を検討すべきである. なお,後継永久歯がない乳臼歯に対して,必要があって製作する場合のCAD/CAM冠については,維持力に十分な歯冠高径があること,過度な咬合圧が加わらないこと等から歯科医学的に適切であると判断された場合には適用が可能であると考えられる. (1)適応症 ・小臼歯の単冠症例 (2)推奨できない症例 ・咬合面クリアランスが確保できない症例 ・過小な支台歯高径症例 ・顕著な咬耗(ブラキシズム)症例 (3)考慮すべき事項 ・部分床義歯の支台歯 ・事実上の最後臼歯(後方歯の欠損) ・高度な審美性の要望

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保険診療におけるCAD/CAM冠の製作 <支台歯形成> 適切なクリアランス,滑沢かつ単純な形態,丸みをもたせた凸隅角部,円滑で明確なマージン形態とフィニッシュラインが求められる. (1)咬合面 ・約1mmのガイドグルーブを付与する. ・頬側,舌側内斜面ともに,咬頭傾斜に沿ってガイドグルーブが平らになるように切削し,なめらかな逆屋根形状にする. ・クリアランスは,1.5~2.0 mm以上にする. (2)頬側面・舌側面 ・頬側面は咬頭側と歯頸側それぞれに咬合面と同様1 mm弱のガイドグルーブを付与 し,2面形成する. ・軸面テーパーは片面6~10°の範囲におさめる. ・舌側も頬側と同様に形成する. (3)隣接面 ・隣接歯を傷つけないことが重要であり,隣接面に歯質が一層残るように軽くバーを通すイメージで形成する. ・両隣接面のテーパーも片面6~10°の範囲におさめる.

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保険診療におけるCAD/CAM冠の製作 <支台歯形成> (4)軸面・マージン部 ・概形成ができたら,続けて支台歯全周の辺縁形態をディープシャンファーに修正する. ・フィニッシュラインが鋸歯状とならないよう特に滑らかに仕上げることが大切である. ・舌側面も頬側面と同様に修正する. ・クリアランスは,軸面で1.5 mm以上,マージン部で約1.0mmにする. (5)隅角部 ・咬合面―軸面部に鋭角な部分がないように丸みを帯びた形状にする (6)削除量の確認 ・あらかじめ作製したシリコーンインデックスなどで削除量を確認する.

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保険診療におけるCAD/CAM冠の製作 <印象・咬合採得> ・歯肉圧排操作を確実に行い,フィニッシュラインを明示する. ・シリコーンゴム印象材と咬合採得用シリコーンゴムによる印象・咬合採得が望ましい.

<調整・研磨> ・隣接面のコンタクト強さは,コンタクトゲージを用いて確認し,コンタクトが強い場合は咬合紙でマーキングして調整する.

・CAD/CAM冠を試適し,マージン部の適合を確認(視診,探針)する.

・咬頭嵌合位および側方運動の咬合接触点を確認し,咬合調整を行う.

・研磨は,口腔外でセラミックス材料と同様のステップで行う.

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保険診療におけるCAD/CAM冠の装着 歯質とCAD/CAM冠の一体化を図るため,接着性レジンセメントを使用することが必須である. (1)口腔内試適後,CAD/CAM冠内面を弱圧下でアルミナサンドブラスト処理することが推奨される. (2)超音波洗浄やリン酸エッチング処理などでCAD/CAM

冠内面を清掃し,乾燥後にシランカップリング剤含有プライマーを塗布する(シラン処理). (3)乾燥後に接着性レジンセメントをCAD/CAM冠内面に塗布して装着する. (4)余剰セメントに数秒間光照射(セメントの種類により異な

る)を行い,接着性レジンセメントを半硬化させた後,除去する.なお,セメントの種類によっては,歯面処理が必要である.

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保険診療におけるCAD/CAM冠の管理について ・物品(食品・工業製品など)の生産・流通履歴管理により,物品の流通経路を生産段階から消費段階まで追跡が可能な状態のことをトレーサビリティ(traceability)といい,CAD

/CAM冠を含む歯科技工全般について追跡・調査が可能な状態としておくことが望まれている. ・CAD/CAM冠の材料にLOT番号が記載されているシールが用意されている場合,これを保管することが望ましい.

38 顎機能咬合再建学分野 重本

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CAD/CAMが従来のクラウンブリッジに影響するもの <全部被覆冠> あらかじめコンピュータ画面上で設計したクラウンの形態データにしたがって金属ブロックから直接削り出すCAD/CAM(computer aided design/computer aided manufacturing)法も利用される.また,材料として陶材を使用する場合も,このCAD/CAM法が利用される. <ブリッジの適用と他の治療方法> 歯の欠損に対する治療方法としては,近年の歯科医療の発展で確立されつつある口腔インプラントをはじめとして,CAD/CAMテクノロジーの歯科医療への導入によりジルコニアセラミックスなどの新しい材料の臨床応用も可能となり,多種多様である. <ブリッジの連結法> 最も多用されるのは固定性連結で一塊として製作する方法とろう付けを用いる方法とがある.一塊として製作する方法では金属を鋳造してブリッジを製作する方法が一般的であったが,近年では金属やセラミックスのブロックからCAD/CAMによって製作する方法も可能である.支台装置とポンティックが一体となっており,強度と安定性で優れている.

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CAD/CAMが従来のクラウンブリッジに影響するもの <ブリッジの材料の選択> ブリッジの製作には機械的強度が高く,審美性に優れ,かつ長期的に安定した材料を選択すべきであり,今後はCAD/CAMなどによるデジタル技術を用いた製作法が一般化することを念頭に置く必要がある. <補綴装置の製作法> 鋳造法による製作からCAD/CAMによる製作に移行しつつある. <支台歯形態の変遷> マージン部:全部鋳造冠 ナイフエッジ→ フィニッシュラインが不明確 鋸歯状マージンになりやすい.シャンファー(より明確かつスムーズなライン) 前装冠 前装部ショルダー,舌側シャンファー,隣接面にステップのあるウィング形成→前装部ショルダーから隣接点部を超えるあたりから徐々にショルダーの幅が少なくなり,舌側のシャンファーに移行するウィングレスに形成 前装冠軸面:唇面の形態にあわせて二面形成がおこなわれていたが,最近では切縁側1/3に前装の厚みを増して透明感を与えるためにさらに少し傾斜をつける三面形成が行われるようになった. CAD/CAMによるメタルフリー修復がさかんに行われるようになり,前装冠やジャケット

冠ではショルダー形態にかわって,ディープシャンファー形態やショルダー形態の軸面の立ち上がる部分を曲面にしたラウンデットショルダー形態が用いられるようになってきた. 40 顎機能咬合再建学分野 重本

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参考資料 クラウンブリッジ補綴学 第5版 医歯薬出版 矢谷博文,三浦宏之,細川隆司,小川匠 編 保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針 公益社団法人日本補綴歯科学会 医療問題検討委員会

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