第₃章 2017 年透析導入患者の動態3.6 14.5 45.6 35.8 15.0 12.7 14.3 2.9 3.6...

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章 2017 年透析導入患者の動態 1臨床背景 患者調査票に記載された 2017 年の導入患者において,年齢と性別の記載が確認された患者数は 38,786 人で,男 性は 26,677 人,女性は 12,109 人であった(1₃補足表 1₃).導入患者全体の平均年齢は69.68 歳,男性68.90歳, 女性 71.41 歳であり,年々高齢化している(1₄補足表 1₄).導入患者を5歳刻みで層別化すると,最も割合が 高い年齢層は男性が 75 ~ 79 歳で,女性は 80 ~ 84 歳であった. 716 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在) 1₃ 導入患者 年齢と性別2017 20歳未満 20253035404550556065707580859095~歳 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 男性 女性 0.1 0.2 0.3 0.3 0.7 0.6 15.5 15.8 0.1 0.4 7.5 10.9 1.8 3.5 13.7 17.6 1.3 1.1 2.6 2.0 14.7 13.2 15.1 13.3 4.5 3.5 5.9 4.4 6.7 5.4 9.1 7.7 0.2 0.1 1₄ 導入患者 平均年齢の推移1₉₈₃-2017 12 13 15 17 16 14 1983 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 06 07 11 10 09 08 05 45 50 55 60 65 75 70 54.4 58.1 61.0 63.8 66.2 67.8 69.2 69.7 69.7

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Page 1: 第₃章 2017 年透析導入患者の動態3.6 14.5 45.6 35.8 15.0 12.7 14.3 2.9 3.6 慢性糸球体腎炎 慢性腎盂腎炎 間質性腎炎 急速進行性糸球体腎炎 妊娠高血圧症候群

第 ₃章 2017 年透析導入患者の動態

1.臨床背景 患者調査票に記載された 2017 年の導入患者において,年齢と性別の記載が確認された患者数は 38,786 人で,男性は 26,677 人,女性は 12,109 人であった(図 1₃,補足表 1₃).導入患者全体の平均年齢は 69.68 歳,男性 68.90 歳,女性 71.41 歳であり,年々高齢化している(図 1₄,補足表 1₄).導入患者を 5歳刻みで層別化すると,最も割合が高い年齢層は男性が 75 ~ 79 歳で,女性は 80 ~ 84 歳であった.

716 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

図 1₃ 導入患者 年齢と性別,201720歳未満 20~ 25~ 30~ 35~ 40~ 45~ 50~ 55~ 60~ 65~ 70~ 75~ 80~ 85~ 90~ 95~ 歳

18

16

14

12

10

8

6

4

2

0

男性

女性

0.1 0.2 0.3 0.30.7 0.6

15.515.8

0.10.4

7.5

10.9

1.8

3.5

13.7

17.6

1.3 1.1

2.62.0

14.7

13.2

15.1

13.3

4.5

3.5

5.9

4.4

6.7

5.4

9.1

7.7

0.2 0.1

図 1₄ 導入患者 平均年齢の推移,1₉₈₃-2017

導入患者の平均年齢の推移

12 13 15 171614 年1983 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 06 07 111009080545

50

55

60

65

75

70

4-2 導入患者 平均年齢の推移,1983-2017

54.4

58.161.0

63.866.2

67.869.2 69.769.7

Page 2: 第₃章 2017 年透析導入患者の動態3.6 14.5 45.6 35.8 15.0 12.7 14.3 2.9 3.6 慢性糸球体腎炎 慢性腎盂腎炎 間質性腎炎 急速進行性糸球体腎炎 妊娠高血圧症候群

 2017 年導入患者の原疾患で最も多いのは糖尿病性腎症で 42.5%,次いで慢性糸球体腎炎の 16.3%,腎硬化症の14.7%であり,原疾患不明は 13.2%であった(図 15,補足表 15). 導入患者の原疾患は,1998 年に慢性糸球体腎炎に代わって,糖尿病性腎症が原疾患の第 1位になって以来,一貫して増加していたが,近年はほぼ横ばいで推移している.慢性糸球体腎炎の割合は直線的に低下している.一方,腎硬化症および原疾患不明の割合は年々上昇している(図 16,補足表 16).

717わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

図 15 導入患者 原疾患と性別,2017

男性

女性

15.5 18.0

1.22.6

2.13.6

14.5

45.635.8

15.0

12.714.3

2.93.6

慢性糸球体腎炎慢性腎盂腎炎間質性腎炎

急速進行性糸球体腎炎妊娠高血圧症候群

その他の分類不能の腎炎多発性嚢胞腎遺伝性疾患腎硬化症悪性高血圧糖尿病性腎症

自己免疫性疾患に伴う腎炎アミロイドーシスによる腎障害

痛風腎腎・尿路結核

ウイルス感染症に伴う腎疾患腎・尿路結石腎・尿路腫瘍

閉塞性尿路障害・排尿障害パラプロテイン血症(骨髄腫等)

急性腎障害外因性腎障害

先天性腎尿路異常原疾患不明再導入その他

0 10 20 30 40 50 %

図 16 導入患者 原疾患割合の推移,1₉₈₃-20171312 14 15 17161983 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 07 111009080605

 

年0

10

20

30

40

50

60

70糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症多発性嚢胞腎慢性腎盂腎炎,間質性腎炎急速進行性糸球体腎炎自己免疫性疾患に伴う腎炎不明

2017年糖尿病性腎症 : 42.5%慢性糸球体腎炎 : 16.3%腎硬化症 : 14.7%多発性嚢胞腎 : 2.6%慢性腎盂腎炎,間質性腎炎 : 0.7%急速進行性糸球体腎炎 : 1.6%自己免疫性疾患に伴う腎炎 : 0.5%不明 : 13.2%

4-4 導入患者 原疾患割合の推移,1983-2017

Page 3: 第₃章 2017 年透析導入患者の動態3.6 14.5 45.6 35.8 15.0 12.7 14.3 2.9 3.6 慢性糸球体腎炎 慢性腎盂腎炎 間質性腎炎 急速進行性糸球体腎炎 妊娠高血圧症候群

2.死亡原因 2017 年導入患者の導入年内の死亡原因は,全体では感染症が 25.9%と最も多く,次いで心不全が 20.8%,悪性腫瘍が 10.8%,脳血管障害が 4.5%,心筋梗塞が 3.2%であった.心血管死の合計は 28.5%であった(図 17,補足表17).心不全は,2016 年 2017 年と連続して減少しており,今後の推移を注視したい.透析導入年内の死亡原因の推移をみると,1990 年代は心不全が最も多かったが,感染症が徐々に増加し,2006 年頃から感染症が心不全を上回り,最も多い死因となった.悪性腫瘍による死亡も増加傾向であり,2006 年以降,その割合は 10%を超えている.脳血管障害による死亡は,徐々に減少傾向を示している(図 1₈,補足表 1₈).

718 わが国の慢性透析療法の現況(2017 年 12 月 31 日現在)

図 17 導入患者 死亡原因と性別,20170 5 10 15 20 25 30

男性

女性

心不全

脳血管障害

感染症

消化管出血

悪性腫瘍

悪液質/尿毒症/老衰等

心筋梗塞

カリウム中毒/頓死

肝硬変症

自殺/拒否

腸閉塞

血液疾患

肺疾患

災害・事故死

その他

不明

18.9

8.3

11.613.8

7.78.7

26.9

12.0

24.6

23.9

4.25.1

図 1₈ 導入患者 死亡原因割合の推移,1₉₉0-20171990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 06 07 11 131210090805 1514 1716

年0

5

10

15

20

25

30

35

40

感染症心不全悪性腫瘍脳血管障害心筋梗塞

2017年感染症 : 25.9%心不全 : 20.8%悪性腫瘍 : 10.8%脳血管障害 : 4.5%心筋梗塞 : 3.2%