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54:721 はじめに HIV は免疫系に加えて神経系へも向性を持ち,感染初期に HIV に感染した単球が血液脳関門をこえて中枢神経系に侵入 し潜伏する 1.その結果,感染初期に髄膜炎 2を生じたり, 慢性的な中枢神経障害によって認知機能低下(HIV-associated neurocognitive disorders; HAND)をきたしたりすることが知 られている 3HIV に対しては抗 HIV 薬を組み合わせた com- bination antiretroviral therapycARTがおこなわれるように なり,その予後は著明に改善している 4今回,cART により 2 年間にわたって血中 HIV-RNA が陰性化していたにもかかわ らず,薬剤耐性化にともなう HIV 脳症を発症した 1 例を経験 したので,文献的考察を加えて報告する. 症  例 患者:57 歳,男性 主訴:認知機能低下 既往歴:高血圧症. 生活歴:大学卒業後は会社員として勤務.結婚しているが 受診時には単身赴任中であった.若い頃から同性者や com- mercial sex worker との多数の性交渉歴があった.飲酒歴は 1 日にワインをグラス 2 杯程度で,喫煙歴は 20 歳から 36 歳ま 1 日数本程度であった. 家族歴:特記事項なし. 現病歴:2010 1 月に呼吸困難を訴えて他院を受診し, ニューモシスチス肺炎と診断された.その際に HIV 陽性が判 明し,当院免疫血液内科を受診した.以後,アタザナビル(ATV400 mg/ 日とアバカビル+ラミブジン(ABC 600 mg + 3TC 300 mg)合剤 1 / 日による治療を受けており,2010 3 より 2011 10 月までは血中 HIV-RNA は陰性化していた. 2011 12 月頃から職場で話した内容をすぐに忘れる,携帯 電話の使い方がわからない,といった症状が出現した.帰省 した際にも携帯電話の置き場所を忘れたり,約束した内容を 何度も忘れたりすることがあった.通常の会社業務をおこな うことも困難になったため, 2012 1 月に当院精神科外来を 受診した.頭部 MRI で大脳白質病変を指摘され,亜急性進行 性の認知症の精査加療のため当科に入院した.なお,家族へ の聴取の結果,抗 HIV 薬の怠薬はみとめられなかった. 入院時現症:一般身体診察では異常なし.神経学的診察で は,意識は清明であったが,しばらく会話を続けると徐々に 辻褄が合わなくなる状態であった.脳神経領域や全身の運動 系,感覚系は正常で,腱反射は上下肢とも正常,協調運動にも 異常はみられなかった.自律神経障害はみとめなかった.知 能および高次機能検査では HDS-R revised Hasegawa dementia scale11/30 点,MMSE mini-mental state examination22/30 点,FAB 12/18 点,International HIV dementia scale 10/12 点, MoCA montreal cognitive assessment17/30 点とそれぞれ低 下していた. 検査所見:血液検査では可溶性インターロイキン 2 受容体 (化学発光酵素免疫測定法)の軽度上昇(731 U/ml)をみとめ, CD4 陽性 T 細胞は 298 /ul と低下しており,血中 HIV-RNA 4,700 コピー /ml と上昇していた.髄液検査では軽度の細 胞数増多(10 /ul)と蛋白上昇(54 mg/dl)があり,髄液 HIV-RNA 5,200 コピー /ml と血中よりも高値であった.髄 液中の可溶性インターロイキン受容体は 50 U/ml 未満で JC 症例報告 cART 開始 2 年後に薬剤耐性化による HIV 脳症をきたした 1 関谷 博顕 1* 川本 未知 1十河 正弥 1吉村  元 1今井 幸弘 2幸原 伸夫 1要旨:症例は 57 歳男性である.HIV(human immunodeficiency virus)に対する cART(combination antiretroviral therapy)中に認知機能低下が出現し,頭部 MRI で両側大脳白質や脳幹部に病変をみとめた.髄液中 HIV-RNA が 血中 HIV-RNA よりも高値を示し,薬剤耐性検査で抗 HIV 薬への耐性が判明.薬剤耐性と中枢神経移行性を考慮 して抗 HIV 薬を変更し,認知機能の改善と髄液中 HIV-RNA の陰性化がえられた.抗 HIV 薬の選択にあたっては, 中枢神経移行性を考慮することが重要である. (臨床神経 2014;54:721-725Key words: HIV,薬剤耐性,認知症,HIV 脳症 *Corresponding author: 神戸市立医療センター中央市民病院神経内科〔〒 650-0046 神戸市中央区港島南町 2 丁目 1-11神戸市立医療センター中央市民病院神経内科 2神戸市立医療センター中央市民病院臨床病理科 (受付日:2013 10 25 日)

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Page 1: cART 開始 2 HIV 脳症をきたした 1...bination antiretroviral therapyがおこなわれるように(cART) なり,その予後は著明に改善している4).今回,cART

54:721

はじめに

HIVは免疫系に加えて神経系へも向性を持ち,感染初期にHIVに感染した単球が血液脳関門をこえて中枢神経系に侵入し潜伏する 1).その結果,感染初期に髄膜炎 2)を生じたり,慢性的な中枢神経障害によって認知機能低下(HIV-associated

neurocognitive disorders; HAND)をきたしたりすることが知られている 3).HIVに対しては抗HIV薬を組み合わせた com-

bination antiretroviral therapy(cART)がおこなわれるようになり,その予後は著明に改善している 4).今回,cARTにより2年間にわたって血中HIV-RNAが陰性化していたにもかかわらず,薬剤耐性化にともなうHIV脳症を発症した 1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

症  例

患者:57歳,男性主訴:認知機能低下既往歴:高血圧症.生活歴:大学卒業後は会社員として勤務.結婚しているが受診時には単身赴任中であった.若い頃から同性者や com-

mercial sex workerとの多数の性交渉歴があった.飲酒歴は 1

日にワインをグラス 2杯程度で,喫煙歴は 20歳から 36歳まで 1日数本程度であった.家族歴:特記事項なし.現病歴:2010年 1月に呼吸困難を訴えて他院を受診し,ニューモシスチス肺炎と診断された.その際にHIV陽性が判明し,当院免疫血液内科を受診した.以後,アタザナビル(ATV)

400 mg/日とアバカビル+ラミブジン(ABC 600 mg + 3TC

300 mg)合剤 1錠 /日による治療を受けており,2010年 3月より 2011年 10月までは血中 HIV-RNAは陰性化していた.2011年 12月頃から職場で話した内容をすぐに忘れる,携帯電話の使い方がわからない,といった症状が出現した.帰省した際にも携帯電話の置き場所を忘れたり,約束した内容を何度も忘れたりすることがあった.通常の会社業務をおこなうことも困難になったため,2012年 1月に当院精神科外来を受診した.頭部MRIで大脳白質病変を指摘され,亜急性進行性の認知症の精査加療のため当科に入院した.なお,家族への聴取の結果,抗 HIV薬の怠薬はみとめられなかった.入院時現症:一般身体診察では異常なし.神経学的診察では,意識は清明であったが,しばらく会話を続けると徐々に辻褄が合わなくなる状態であった.脳神経領域や全身の運動系,感覚系は正常で,腱反射は上下肢とも正常,協調運動にも異常はみられなかった.自律神経障害はみとめなかった.知能および高次機能検査ではHDS-R(revised Hasegawa dementia

scale)11/30点,MMSE(mini-mental state examination)22/30

点,FAB 12/18点,International HIV dementia scale 10/12点,MoCA(montreal cognitive assessment)17/30点とそれぞれ低下していた.検査所見:血液検査では可溶性インターロイキン 2受容体

(化学発光酵素免疫測定法)の軽度上昇(731 U/ml)をみとめ,CD4陽性 T細胞は 298個 /ulと低下しており,血中 HIV-RNA

は 4,700コピー /mlと上昇していた.髄液検査では軽度の細胞数増多(10個 /ul)と蛋白上昇(54 mg/dl)があり,髄液HIV-RNAが 5,200コピー /mlと血中よりも高値であった.髄液中の可溶性インターロイキン受容体は 50 U/ml未満で JCウ

症例報告

cART開始 2年後に薬剤耐性化による HIV脳症をきたした 1例

関谷 博顕1)* 川本 未知1) 十河 正弥1)

吉村  元1) 今井 幸弘2) 幸原 伸夫1)

要旨: 症例は 57 歳男性である.HIV(human immunodeficiency virus)に対する cART(combination antiretroviral therapy)中に認知機能低下が出現し,頭部 MRI で両側大脳白質や脳幹部に病変をみとめた.髄液中 HIV-RNA が血中 HIV-RNA よりも高値を示し,薬剤耐性検査で抗 HIV 薬への耐性が判明.薬剤耐性と中枢神経移行性を考慮して抗 HIV 薬を変更し,認知機能の改善と髄液中 HIV-RNA の陰性化がえられた.抗 HIV 薬の選択にあたっては,中枢神経移行性を考慮することが重要である.(臨床神経 2014;54:721-725)Key words: HIV,薬剤耐性,認知症,HIV脳症

*Corresponding author: 神戸市立医療センター中央市民病院神経内科〔〒 650-0046 神戸市中央区港島南町 2丁目 1-1〕1)神戸市立医療センター中央市民病院神経内科2)神戸市立医療センター中央市民病院臨床病理科(受付日:2013年 10月 25日)

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臨床神経学 54 巻 9 号(2014:9)54:722

イルスや HSV,VZV,EBV,HHV-6,HHV-7もすべて陰性だった.頭部MRIでは T2強調像で両側大脳半球深部白質から脳幹にかけて淡い高信号域がみられた(Fig. 1).拡散強調像では高信号域はなく,ガドリニウム造影でも造影効果はみられなかった.入院後経過:抗 HIV薬への耐性化をうたがい,薬剤耐性

検査をおこなったところ,HIV遺伝子の 184コドンのメチオニンがイソロイシン,バリンに変異していることが判明し,ラミブジンに高度耐性,アバカビルにも数倍程度の耐性があることが明らかとなった.薬剤耐性化によるHIV脳症と診断し,入院 20日目より抗 HIV薬をラルテグラビル(RAL)800 mg/日とジドブジン(AZT)600 mg/日,ダルナビル(DRV)800 mg/日,リトラビル(RTV)100 mg/日へと変更した(Fig. 2).注意障害や記銘力障害は徐々に改善し,薬剤変更から 2週間後の入院 36日目には HDS-R・MMSEともに 30点と正常化した.しかし,頭部MRIでは白質病変が拡大し,左尾状核や視床にも高信号をみとめるようになったためグリオーマや悪性リンパ腫の除外が必要と考え,入院 40日目に右前頭葉より開頭脳生検をおこなった.生検組織のHE(hematoxylin-eosin)染色ではリンパ球の浸潤とミクログリアの集簇がみられ,GFAP(glial fibrillary acidic protein)染色では反応性アストロサイトをみとめた.CD3染色では血管周囲に T細胞の浸潤があったが,CD4陽性の T細胞はほとんどみられず,浸潤している T細胞は CD8陽性であった.異型細胞はなく,JCウイルスなどの各種ウイルスの PCR(polymerase chain reaction)も陰性であり,HIV脳症と矛盾しない所見であった.治療を継続したところ,その後も注意障害や記銘力障害は改善傾向を示し,薬剤変更から 1ヵ月後の入院 50日目には髄液中のHIV-

RNAも感度以下となり,頭部MRIでの白質病変もゆっくりと縮小した.

考  察

本症例はHIVに対して 2年間の cARTを受けている経過中に薬剤耐性化をきたしHIV脳症を呈した.一般にHIVの治療失敗(treatment failure)は治療に対する反応が不十分な状態と定義され,ウイルス学的失敗と免疫学的失敗がある 5).ウイルス学的失敗とは,血中のHIV-RNAが 200コピー /ml以下にならないものと定義されており,治療開始後 24週経っても2回連続してHIV-RNAが 200コピー /ml以下にならないばあいやウイルス血症抑制後に 2回連続して HIV-RNAが 200コピー /ml以下にならないばあいがある.免疫学的失敗は,ウイルス増殖が抑制されているにもかかわらず,十分なCD4陽性リンパ球数まで到達・維持できない状態と定義されている.治療失敗の原因のひとつに,抗HIV薬に対するHIVの耐性化がある.本症例では,アタザナビル(ATV)とアバカビル+ラミブジン(ABC + 3TC)合剤による治療を受け,2年間にわたってウイルス血症が抑制されていたが,入院時点では血中 HIV-RNAの上昇,CD4陽性リンパ球の低下があり,HIV

治療失敗となっていた.抗HIV薬による治療中に治療失敗となった際には服薬アドヒアランスを確かめるとともに,薬剤耐性検査をおこなうことが推奨される 5).薬剤耐性の診断には genotype検査と phenotype検査があり,我が国では抗HIV

薬の選択や再選択の目的で genotype検査をおこなうことが保険適応となっている.本症例では,genotype検査によってアミノ酸変異がみとめられ,薬剤耐性が判明した.耐性検査に基づいた抗 HIV薬を選択することで HIVの治療成績が改善したとの報告もあり 6),HIVの治療失敗がうたがわれたばあいには薬剤耐性検査を積極的におこなう必要がある.

HIVの神経合併症として,cART以前には感染者の約 30%が病期の進行とともに遂行機能障害や記銘力低下,思考緩慢,無気力などをきたしていた 7).1996年以降,cARTが導入さ

Fig. 1 Brain MRI T2 weighted images.

MRI showed multiple high-intensity lesions in the white matter of both bilateral frontal lobes and brain stem. TR 3,500.0 ms, TE

92.0 ms, ST 5.0 mm.

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cART開始 2年後に薬剤耐性化によるHIV脳症をきたした 1例 54:723

Fig. 2 Clinical course.

Although the patient had taken atazanavir, abacavir, and lamivudine for 2 years, the cognitive impairment developed 2 months prior

to admission. His MMSE was 22/30, and HIV-RNA was 5,200 copy/ml in cCSF. The brain magnetic resonance imaging showed high

intensity areas in the white matter of the both frontal lobes and brain stem. Since the drug-resistance was revealed, the new

regimen of cART including raltegravir, zidovudine, and darunavir/ritonavir was introduced. Although his cognitive function

improved to be normal (MMSE 30/30) in 2 weeks, the high intensity area expanded. We thus performed a brain biopsy and

diagnosed as HIV encephalopathy. We continued the new regimen. Six months later, HIV-RNA turned to be undetectable in CSF

and the white matter lesion decreased. (ATV = atazanavir, 3TC = lamivudine, ABC = abacavir, RAL = raltegravir, AZT = zidovudine,

DRV/r = darunavir boosted by ritonavir).

Table 1 Overview of the anti-retroviral drugs and their CNS penetration effectiveness (CPE-score)10).

4 3 2 1

NRTIs Zidovudine (AZT/ZDV) Abacavir (ABC)Emtricitabine (FTC)

Didanosine (DDI)Lamivudine (3TC)Stavudine (d4T)

Tenofovir (TDF)Zalcitabine (ddC)

NNRTIs Nevirapine (NVP) Delarvirdine (DLV)Efavirenz (EFV)

Etravirine (EVR)

PIs Indinavir/ritonavir (IDV) Darunavir/ritonavir (DRV)Fosamprenavir/ritonavir

Indinavir (IDV)Lopinavir/ritonavir (LPV)

Atazanavir (ATV)Atazanavir/ritonavir

Fosamprenavir (FPV)

Nelfinavir (NFV)Ritonavir (RTV/RPV)

Saquinavir (SQV)Saquinavir/ritonavir

Tipranavir (TPV)

Entry/fusion inhibitors Maraviroc (MRV) Enfuvirtide (INN)

Integrase inhibitor Raltegravir (RGV)

NRTIs = nucleoside reverse transcriptase inhibitors, NNRTIs = non-nucleoside reverse transcriptase inhibitors, PIs = proton inhibitors.

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臨床神経学 54 巻 9 号(2014:9)54:724

れたことで HIV脳症は減少している 8).しかし,血中で HIV

がコントロールされていても,HIV脳症をきたすことがある.これは,中枢神経移行性が低い抗HIV薬では,中枢神経系での抗 HIV薬の濃度が低く,HIVの増殖を十分に抑制できなかったり,薬剤耐性を獲得したりすることによる 9).本症例では,受診時の HIV-RNAのコピー数が血液よりも髄液中で高くなっており,中枢神経系でHIVが薬剤耐性を獲得した可能性が考えられる.薬剤耐性化によってHIV脳症を呈した報告は海外ではみられるが,本邦ではわれわれが検索したかぎりでは本症例が最初である.現在,髄液中の薬物濃度や化学的性質,治療成績などに基き,抗HIV薬の中枢神経移行性をスコアリングしたCPE(CNS

penetration effectiveness)score(Table 1)が提唱されている 10).本症例では当初の抗HIV薬の組み合わせではCPE scoreが 7点であり,ラミブジンとアバカビルへの薬剤耐性を加味したadjusted CPE score9)では 2点であったが,抗 HIV薬を変更することで CPE scoreは 10点となった.CPE scoreについてはその有効性が報告 9)11)される一方で,CPE scoreの高低で治療結果に有意差はないとの報告 12)もみられる.本症例ではCPE score 7点から 10点の組み合わせに変更することで,髄液中の HIV-RNAが陰性化するとともに認知機能の改善がえられた.このため,CPE scoreを考慮した抗 HIV薬の投与が有効だったと考えられる.抗 HIV薬によって血中の HIVが抑制されていたとしても,抗HIV薬の中枢神経移行性が低いばあい,中枢神経系での抗HIV薬濃度が低くなり,抗HIV薬への耐性獲得が生じる可能性がある.したがって,cART療法中の HIV感染患者で認知機能低下が生じたばあい,髄液中のHIVの検索や抗HIV薬への薬剤耐性を確認したうえで,適切な抗HIV薬への変更をおこなうことが重要である.本報告の要旨は,第 98回日本神経学会近畿地方会で発表し,会長

推薦演題に選ばれた.

※本論文に関連し,開示すべき COI状態にある企業,組織,団体

はいずれも有りません.

文  献

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HIV infection. Lancet Neurol 2005;4:543-555.

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Page 5: cART 開始 2 HIV 脳症をきたした 1...bination antiretroviral therapyがおこなわれるように(cART) なり,その予後は著明に改善している4).今回,cART

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Abstract

HIV encephalopathy due to drug resistance despite 2-year suppression of HIV viremia by cART

Hiroaki Sekiya, M.D.1), Michi Kawamoto, M.D.1), Masaya Togo, M.D.1), Hajime Yoshimura, M.D.1), Yukihiro Imai, M.D., Ph.D. 2) and Nobuo Kohara, M.D., Ph.D.1)

1)Department of Neurology, Kobe City Medical Center General Hospital 2)Department of Pathology, Kobe City Medical Center General Hospital

A 57-year-old man presented with subacute progression of cognitive impairment (MMSE 22/30). He had been diagnosed as AIDS two years before and taking atazanavir, abacavir, and lamivudine. HIV RNA of plasma had been negative. On admission, HIV RNA was 4,700 copy/ml and 5,200 copy/ml in plasma and in cerebrospinal fluid respectively, suggesting treatment failure of cART. The brain magnetic resonance imaging showed high intensity areas in the white matter of the both frontal lobes and brain stem. The drug-resistance test revealed the resistance of lamivudine and abacavir. We introduced the CNS penetration effectiveness (CPE) score to evaluate the drug penetration of HIV drugs. As the former regimen had low points (7 points), we optimized the regimen to raltegravir, zidovudine, and darunavir/ ritonavir (scoring 10 points). His cognitive function improved as normal (MMSE 30/30) in 2 weeks and HIV-RNA became undetectable both in plasma and CSF in a month. In spite of the cognitive improvement, the white matter hyperintensity expanded. To rule out malignant lymphoma or glioblastoma, the brain biopsy was performed from the right frontal lobe. It revealed microglial hyperplasia and diffuse perivascular infiltration by CD8+/CD4- lymphocytes. No malignant cells were found and the polymerase chain reaction analyses excluded other viruses. Considering the drug penetration to the central nervous system is important for treating HIV encephalopathy.

(Clin Neurol 2014;54:721-725)Key words: HIV, drug resistance, dementia, HIV encephalopathy