授業科目名 戦略的人的資源管理 庭 本 佳 子・...

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115 授業科目名 (講義題目) 戦略的人的資源管理 開講学期 前期集中 2 単位 担当教員 庭 本 佳 子 講義コード 科目区分 対象学生 選 択 1・2 年生 20176018 開講予定日 8/19(①②)、20(③④)、21(⑤⑥)、22(10:30~16:30、⑦⑧⑨)、 9/16(⑩⑪)、17(⑫⑬)、18(⑭⑮) 履修条件 なし キーワード 人事管理、戦略、組織、人材育 全体の教育 人的資源管理の考え方や雇用システム に関する基本的な概念や理論を理解す る。 個別の学習 受講者自身が職場で経験してい る問題について、理論や概念を 参照して見つめ直し、実践に活 かしていく。 授業形態 (項   目) ・講義・演習 Lecture, Seminar 使用する ・板書 Writing on whiteboard ・テキスト(紙媒体) Textbook, Printed material ・スライド資料(電子媒体) Electronic media (内   容) 授業担当教員による理論・概念の解説を主とした形態であり、時折、学生との問答を通 じて、関連の知識を深めていきます。また、ケーススタディでは、事前に学修した基礎的 な知識を基に、特定の題材や問題を取り上げて、さらに知識等を深めていきます。講義と は異なり、学生が主体的に考える学修姿勢が求められます。 This class will be conducted mainly by teacher’s lecture and board writing. Students are sometimes requested to ask questions to the topics. The case study class will pick up specific topics. Students are requested to join class proactively. 授業の概要 本講義では、人的資源管理論ないし戦略的人的資源管理論から得られる知見を取り入れ つつ、日本企業がおかれている制度的環境に即して人事管理に関わる諸問題をとりあげ、 その解決の方向性を探っていく。 グローバル競争の激化と技術的環境の変化をうけて、企業が持続的競争優位を構築して いくためには、価値ある資源としての人材を育成し活用していくことが極めて重要な課題 となっている。これを踏まえて、本講義では日本企業における人事管理のこれまでとこれ からを3つの側面から照射していく。 ① 経営学とりわけ人のマネジメント論の視座から人事管理に関わる諸問題を見る(第1 ~4講)。 ②これまで日本企業で展開されてきた人事管理のメカニズムを知る(第5~9講)。 ③ 日本企業が直面している環境変化や人材の多様化によって、人事管理の現場で生じて いる課題と解決の方向性を探る(第10~15講)。 授業の進め方 指定テキストを中心に適宜教材を配布し、受講者とのディスカッションを交えながらテー マごとに関連する理論や事例を学んでいく。詳細は各回の概要を参照されたい。 なお、受講者数や理解度によっては、シラバスに記載の講義予定を変更する可能性があ る。

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Page 1: 授業科目名 戦略的人的資源管理 庭 本 佳 子・ shrmの考え方と代表的なモデルを紹介する。 <ディスカッション・ポイント> ・ 戦略、hrポリシー、各人事施策の関わりについて検討する。

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授業科目名(講義題目) 戦略的人的資源管理 開 講 学 期

単 位 数前期集中2単位

担 当 教 員 庭 本 佳 子講義コード 科 目 区 分

対 象 学 生選 択

1・2年生20176018

開講予定日8/19(①②)、20(③④)、21(⑤⑥)、22(10:30 ~ 16:30、⑦⑧⑨)、9/16(⑩⑪)、17(⑫⑬)、18(⑭⑮)

履 修 条 件なし

キーワード人事管理、戦略、組織、人材育成

全体の教育目 標

人的資源管理の考え方や雇用システムに関する基本的な概念や理論を理解する。

個別の学習目 標

受講者自身が職場で経験している問題について、理論や概念を参照して見つめ直し、実践に活かしていく。

授 業 形 態(項   目)

・講義・演習 Lecture, Seminar

使 用 す る教 材 等

・板書 Writing on whiteboard・テキスト(紙媒体) Textbook, Printed material・スライド資料(電子媒体) Electronic media

授 業 形 態(内   容)

授業担当教員による理論・概念の解説を主とした形態であり、時折、学生との問答を通じて、関連の知識を深めていきます。また、ケーススタディでは、事前に学修した基礎的な知識を基に、特定の題材や問題を取り上げて、さらに知識等を深めていきます。講義とは異なり、学生が主体的に考える学修姿勢が求められます。

This class will be conducted mainly by teacher’s lecture and board writing. Students are sometimes requested to ask questions to the topics. The case study class will pick up specific topics. Students are requested to join class proactively.

授 業 の 概 要 本講義では、人的資源管理論ないし戦略的人的資源管理論から得られる知見を取り入れつつ、日本企業がおかれている制度的環境に即して人事管理に関わる諸問題をとりあげ、その解決の方向性を探っていく。グローバル競争の激化と技術的環境の変化をうけて、企業が持続的競争優位を構築して

いくためには、価値ある資源としての人材を育成し活用していくことが極めて重要な課題となっている。これを踏まえて、本講義では日本企業における人事管理のこれまでとこれからを3つの側面から照射していく。①経営学とりわけ人のマネジメント論の視座から人事管理に関わる諸問題を見る(第1

~4講)。②これまで日本企業で展開されてきた人事管理のメカニズムを知る(第5~9講)。③日本企業が直面している環境変化や人材の多様化によって、人事管理の現場で生じて

いる課題と解決の方向性を探る(第10~15講)。

授業の進め方 指定テキストを中心に適宜教材を配布し、受講者とのディスカッションを交えながらテーマごとに関連する理論や事例を学んでいく。詳細は各回の概要を参照されたい。なお、受講者数や理解度によっては、シラバスに記載の講義予定を変更する可能性があ

る。

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教科書および参 考 図 書

◎受講前に受講者が入手する必要がある資料平野光俊・江夏幾多郎(2018)『人事管理―人と企業、ともに活きるために』有斐閣。「2,100円 +税」○受講開始後に必要となる可能性がある資料サンデー・ジャコービィ(2005)『日本の人事部、アメリカの人事部―日米企業のコーポレートガバナンスと雇用関係』東洋経済新報社●知識を拡げるために読んだ方がよい資料各テーマの理解を深めるために必要な文献は、授業の中で適宜、紹介する。

試験・成績評価 の 方 法 等

授業の議論への参加状況(40%)、レポート(60%、第1回目、第10回目、第15回目)を総合して評価する。

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第 1 回 目

<講義テーマ>人的資源管理の視点、ガイダンス

<講義のねらい>・講義のすすめ方、スタンスを説明する。・人事管理の基本的な考え方を紹介する。

<ディスカッション・ポイント>・なぜ理論を学ぶのか、経営学や人的資源管理論の知見と実践との架橋について検討する。

<参考文献等>・テキスト序章。・守島基博(2010)「社会科学としての人材マネジメント論に向けて」『日本労働研究雑誌』第600号、69-74頁。

第 2 回 目

<講義テーマ>組織マネジメントと人事管理

<講義のねらい>・組織マネジメントにおける人事管理の位置づけを整理する。

<ディスカッション・ポイント>・従業員が「働く」「仕事をする」ことを組織論的に整理し、組織マネジメントにおいて人事管理がどのような機能を担うのか検討する。

企業組織の持続的競争優位との関係において、従業員の企業特殊能力を育成することの合理性を検討する。

<参考文献等>・テキスト第1章。・Barnard, C. I. (1938) The Functions of the Executive, Harvard University Press(山本安次郎・田杉競・飯野春樹訳『経営者の役割(新訳)』ダイヤモンド社、1968年).

第 3 回 目

<講義テーマ>システムとしての人事管理

<講義のねらい>・戦略および組織と人事システムの内的整合性・外的整合性を理解する。・SHRM の考え方と代表的なモデルを紹介する。

<ディスカッション・ポイント>・戦略、HR ポリシー、各人事施策の関わりについて検討する。・外部環境・内部環境に応じた、人事管理を構成する各要素の適切な組み合わせを考察する。

<参考文献等>・テキスト第3章。・Pfeffer, J. (1998) The Human Equation: Building Profits by Putting People First, Harvard Business School Press (守島基博監修、佐藤洋一訳『人材を活かす企業―「人材」と「利益」の方程式』翔泳社、2010年)・Wright, P. M., McMahan, G. C. & McWilliams, A. (1994) “Human resources and sustained competitive

advantage: a resource-based perspective”, International Journal of Human Resource management, 5 (2), 301-326.

授 業 計 画

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第 4 回 目

<講義テーマ>モチベーション管理としての人事管理

<講義のねらい>・行動科学と組織論の知見から従業員の心理的側面を理解する。・職業経験の蓄積から形成されるキャリアの視点から人事管理のあり方を考える。

<ディスカッション・ポイント>・資源的側面にとどまらない従業員像を検討する。・従業員視点から、組織と個人の適切な雇用関係を考察する。

<参考文献等>・テキスト第2章。・鈴木竜太(2018)『経営組織論』東洋経済新報社。

第 5 回 目

<講義テーマ>社員格付け制度

<講義のねらい>・企業の人事システムのコアとなっている社員格付け制度を理解する。・これまでの日本企業で主に展開されてきた社員格付け制度の特徴を把握する。

<ディスカッション・ポイント>・社員格付け制度の意義と制度の基盤となっている能力主義について検討する。・職能資格制度と職務等級制度の類似点・相違点を考察する。

<参考文献等>・テキスト第4章。・上林憲雄・平野光俊編著(2019)『日本の人事システム―その伝統と革新―』同文舘出版。

第 6 回 目

<講義テーマ>採用と組織社会化

<講義のねらい>・日本企業における採用活動の特徴を理解する。・組織文化と組織社会化プロセスについても学ぶ。

<ディスカッション・ポイント>・新規学卒一括採用の前提を再考し、今後の労働市場や企業の経営課題との関連において、望ましい採用活動の方向性を議論する。

・より良いマッチングのための取り組みについて検討する。

<参考文献等>・テキスト第5章。・稲葉祐之、井上達彦、鈴木竜太、山下勝著(2010)「キャリアで語る経営組織―個人の論理と組織の論理」有斐閣アルマ、第2章。

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第 7 回 目

<講義テーマ>適正配置とキャリア開発

<講義のねらい>・異動と昇進に焦点を当てて、どういう状態であれば適正配置といえるのか理解する。・キャリアマネジメントとしての異動の側面を検討する。

<ディスカッション・ポイント>・企業側と従業員側から見た異動の意義について考察し、双方に求められることを議論する。

<参考文献等>・本書第6章。・稲葉祐之、井上達彦、鈴木竜太、山下勝著(2010)「キャリアで語る経営組織―個人の論理と組織の論理」有斐閣アルマ、第4章。

第 8 回 目

<講義テーマ>評価と報酬

<講義のねらい>・能力主義が評価と報酬制度にどのように反映されているのか把握する。・MBO の趣旨を確認し、運用上の課題について検討する。

<ディスカッション・ポイント>・MBO による従業員の業績評価のポイントを整理する。・現場における評価の納得性問題と解決の方向性について考察する。

<参考文献等>・テキスト第7章。・高橋潔(2010)『人事評価の総合科学−努力と能力と構造の評価』白桃書房。

第 9 回 目

<講義テーマ>人材育成

<講義のねらい>・日本企業において従来行われてきた企業内人材育成の特徴を把握する。・企業主導の人材開発から組織開発を志向する近年の人材育成の考え方を紹介する。

<ディスカッション・ポイント>・企業内人材育成の合理性を企業の競争優位との関係で考察する。・エンプロイアビリティを念頭に置いた能力開発と雇用関係の新たの方向性について議論する。

<参考文献等>・テキスト第8章。・小池和男(1997)『日本企業の人材形成』中公新書。

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第 10 回 目

<講義テーマ>ダイバーシティ組織と HRM

<講義のねらい>・人材の多様化に即して、人事管理の変容の機微を見出し、現代の人事管理の現場で生じている課題とその解決について理解する。

<ディスカッション・ポイント>・雇用形態の多様化、女性活躍推進、外国人人材やシニア従業員といった多様な人材の活用に関して、今日の人事管理の現場で生じうる問題をとりあげる。

・ダイバーシティマネジメントの経営的意義と課題を考える。

<参考文献等>・テキスト第10章~13章。

第 11 回 目

<講義テーマ>ダイバーシティ組織と HRM に関するケーススタディ

<講義のねらい>・第10回目の講義部分の理解を深めるために、ケースを読みディスカッションを行う。・ケーススタディ回の詳細は、第1回目の授業時に説明する。

<ディスカッション・ポイント>・ダイバーシティと経営成果の関係について。・ダイバーシティに関する人事諸施策と従業員のキャリア開発との関係について。

<参考文献等>・ケース配布資料。

第 12 回 目

<講義テーマ>チーム組織と HRM

<講義のねらい>・近年のホットトピックであるプロジェクトチーム組織のマネジメントとチームワークに必要なリーダーシップについて把握する。

<ディスカッション・ポイント>・プロジェクトチームのメリットと、対話とシェアドリーダーシップという観点からチームワークに必要な条件について議論する。

・チーム組織を活かすための人事管理を考察する。

<参考文献等>・上林憲雄・庭本佳子(2020)『経営組織入門』文眞堂、第6章。・庭本佳子(2019)「新しい「働き方」とチームリーダーの役割」国民経済雑誌第220巻第1号、79-96頁。

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第 13 回 目

<講義テーマ>チーム組織と HRM に関するケーススタディ

<講義のねらい>・第12回目の講義部分の理解を深めるために、ケースを読みディスカッションを行う。・ケーススタディ回の詳細は、第1回目の授業時に説明する。

<ディスカッション・ポイント>・マトリックス組織 /プロジェクト組織等の組織構造によるライン、プロジェクトリーダーの権限関係と役割について。

・チーム活動のステージとリーダーシップの関係について。・チーム活動を促進する人事管理の制度設計について。

<参考文献等>・ケース配布資料。

第 14 回 目

<講義テーマ>グローバル組織と HRM

<講義のねらい>・多国籍企業の人材活用という観点から、グローバル経営における人事管理の課題を検討する。・グローバル・タレントマネジメントの構築に向けた日本企業における人事管理の方向性を考察する。

<ディスカッション・ポイント>・日本企業における「内なる国際化」問題とその取り組みについてプラス面 /マイナス面を議論する。・グローバル人材のキャリア形成と能力開発について考察する。

<参考文献等>・テキスト第14章。

第 15 回 目

<講義テーマ>グローバル組織と HRM に関するケーススタディ

<講義のねらい>・第14回目の講義部分の理解を深めるために、ケースを読みディスカッションを行う。・ケーススタディ回の詳細は、第1回目の授業時に説明する。

<ディスカッション・ポイント>・ローカル適応を進めるのか、機能別にグローバル統合していくのかといった組織構造について。・グレーディング、給与体系など人事制度について。・ガバナンス二重問題について。

<参考文献等>・ケース配布資料。