施策紹介 まちづくりの『官民連携』に向けた 自治体のひと工夫 ·...

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115 Vol.73 No.4 2019 SHINTOSHI 国土交通省大臣官房付 鹿子木 靖 (前 都市局まちづくり推進課 官民連携推進室長) ちづくりの『官民連携』に向けた 自治体のひと工夫 施策紹介 1.官民連携まちづくりの潮流 「官民連携まちづくり」という言葉は馴染みが無 いかもしれませんが、これまでに無かった考え方 やアプローチ、体制による民間主導のまちづくり が全国に広がりつつあります。 エリアマネジメントは、様々な施策で来訪者・ 住民へのサービス向上などを通じてエリアの価値 向上に取り組みます。リノベーションまちづくり は、空き家の利活用を連鎖的に展開し、新たなビ ジネスの創出とエリアの再生を目指します。公園、 河川、道路等の公共空間を活用した賑わいづくり も広がっており、行政が施設を再整備して活用を 促す事例も見られます。 これらの活動では、民間も公益的なまちづくり やまちの課題解決へのコミットを強く意識するよ うになっています。ビジネスとして、楽しみとし て、また、自己実現の機会を感じながら生き生きと 取り組むプレイヤーが全国で生まれています。街 を経済効率だけでなく自分達の生活に取り戻す、 あるいは家族や仲間との時間を大切にする、人間 性回復のムーブメントの要素を感じることもあり ます。そして活動の成果として新たな創業・雇用 や、家賃・地価の回復、歩行者数・滞在時間の増加 など、明確な効果を生んでいる地区も見られます。 一方で行政の視点から見ると、そもそも今後の 高齢化・人口減少のサイクルも見据えた地域の多 岐に渡る課題に対応するには、行政だけの取り組 みではとても立ちゆかないということは明らかで す。地域の活性化、空き地・空き家問題、コミュ ニティの維持や醸成、雇用の場の確保、労働力の 確保、子育て支援、防災、防犯など、いずれの分 野も官民の連携が欠かせない課題ばかりです。 民間から見ても行政から見ても今こそお互いに 連携してまちづくりを進めることが必要でかつ機 運も高まっており、こうした取り組みは今後加速 度的に広がっていくと考えています。 2.民間のまちづくりを応援する 自治体の工夫 こうした官民連携まちづくりの立ち上がり期に 誰が主導するかは、地域の事情やプレイヤーの存 在、取り組む内容によって変わってきますが、取 り組みの広がりや持続性を考えると、民間側が主 体性を持ってそれぞれの発想で自由に活動してい ただき、行政は必要な場面で支援、あるいは連携 していくやり方にシフトしていく方が、理想的だ と考えています。 民間が何か新しいまちづくりの取り組みを始め ようというときには行政の支援が欠かせません。 その際に対応する行政側の担当者が民間の取り組 みを応援しようと思うか否かで、調整の結果が大 きく変わってくるのは明らかです。民間の取り組 みに好意的な職員が役所の少数派である場合、役 所内で頑張れば頑張るほど孤立するといったケー スも良く聞かれます。行政の部署が一丸となって 民間を支援、あるいは民間と連携しようというマ インドを持ち、実行することが重要で、民間のま ちづくりを応援するため、具体的に工夫を凝らす 自治体も増えてきました。 (1 )民間の悩みに円滑に対応するための取り組み (ワンストップ相談窓口など) 例えば外で行うイベントの開催一つとっても施 設管理者、交通管理者、消防、保健所等、様々な

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115 Vol.73 No.4 2019 SHINTOSHI

国土交通省大臣官房付 鹿子木 靖(前 都市局まちづくり推進課 官民連携推進室長)

ちづくりの『官民連携』に向けた自治体のひと工夫ま施策紹介

1.官民連携まちづくりの潮流「官民連携まちづくり」という言葉は馴染みが無いかもしれませんが、これまでに無かった考え方やアプローチ、体制による民間主導のまちづくりが全国に広がりつつあります。エリアマネジメントは、様々な施策で来訪者・住民へのサービス向上などを通じてエリアの価値向上に取り組みます。リノベーションまちづくりは、空き家の利活用を連鎖的に展開し、新たなビジネスの創出とエリアの再生を目指します。公園、河川、道路等の公共空間を活用した賑わいづくりも広がっており、行政が施設を再整備して活用を促す事例も見られます。これらの活動では、民間も公益的なまちづくりやまちの課題解決へのコミットを強く意識するようになっています。ビジネスとして、楽しみとして、また、自己実現の機会を感じながら生き生きと取り組むプレイヤーが全国で生まれています。街を経済効率だけでなく自分達の生活に取り戻す、あるいは家族や仲間との時間を大切にする、人間性回復のムーブメントの要素を感じることもあります。そして活動の成果として新たな創業・雇用や、家賃・地価の回復、歩行者数・滞在時間の増加など、明確な効果を生んでいる地区も見られます。一方で行政の視点から見ると、そもそも今後の高齢化・人口減少のサイクルも見据えた地域の多岐に渡る課題に対応するには、行政だけの取り組みではとても立ちゆかないということは明らかです。地域の活性化、空き地・空き家問題、コミュニティの維持や醸成、雇用の場の確保、労働力の確保、子育て支援、防災、防犯など、いずれの分野も官民の連携が欠かせない課題ばかりです。

民間から見ても行政から見ても今こそお互いに連携してまちづくりを進めることが必要でかつ機運も高まっており、こうした取り組みは今後加速度的に広がっていくと考えています。

2.民間のまちづくりを応援する 自治体の工夫こうした官民連携まちづくりの立ち上がり期に誰が主導するかは、地域の事情やプレイヤーの存在、取り組む内容によって変わってきますが、取り組みの広がりや持続性を考えると、民間側が主体性を持ってそれぞれの発想で自由に活動していただき、行政は必要な場面で支援、あるいは連携していくやり方にシフトしていく方が、理想的だと考えています。民間が何か新しいまちづくりの取り組みを始めようというときには行政の支援が欠かせません。その際に対応する行政側の担当者が民間の取り組みを応援しようと思うか否かで、調整の結果が大きく変わってくるのは明らかです。民間の取り組みに好意的な職員が役所の少数派である場合、役所内で頑張れば頑張るほど孤立するといったケースも良く聞かれます。行政の部署が一丸となって民間を支援、あるいは民間と連携しようというマインドを持ち、実行することが重要で、民間のまちづくりを応援するため、具体的に工夫を凝らす自治体も増えてきました。

(1�)民間の悩みに円滑に対応するための取り組み(ワンストップ相談窓口など)例えば外で行うイベントの開催一つとっても施設管理者、交通管理者、消防、保健所等、様々な

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部署と相談、調整する必要があります。行政手続きに慣れていない民間のまちづくりのプレイヤーが役所の複数の部署に取り組みを説明して回り、それぞれ課題を解決しながら手続きを進めていくことは、相当に骨の折れる作業であることが容易に想像できます。静岡県の沼津市は都市計画部まちづくり政策課に民間のまちづくりのワンストップ相談窓口を設置して専属の職員を配置するとともに、庁内の意欲ある職員からなる部局横断の「公民連携プロジェクトチーム」を編成しています。民間からの相談は、窓口の職員と事案に応じたプロジェクトチームのメンバーが共同で応対するなどして、いわゆるたらい回しを防ぎながら民間の取り組みをバックアップしています。この部局横断で民間を応援する沼津市の体制は年々拡充してきました。(図①)さらに、沼津市は商工会議所と連携して、リノベーションまちづくりや起業支援等にかかるまちなか相談所を商店街に開設しており、事前予約があれば先述のプロジェクトチームとも連携して土日や夜間にも対応するなど、相談しやすい環境の確保に取り組んでいます。庁内の体制を整えて民間を応援する取り組みは他の自治体にも見られます。例えば札幌市(まちづくり政策局都心まちづくり推進室)、仙台市(都市整備局市街地整備部都心まちづくり課等が地域によって分担)、和歌山市(市長公室政策調整課)な

ども民間の相談のワンストップサービスに取り組んでいます。仙台市は行政側でワンストップ相談窓口体制を取るとともに、民間主体で編成する「せんだいリノベーションまちづくり実行委員会」にも公務員タスクフォースを置き、民間主体のまちづくりが広がるよう重層的に取り組んでいます。

(2)職員の地域活動への参加を支援する事例民間のまちづくりを応援するにしても、地域によっては民間の担い手そのものが不足しており、全国のまちづくり団体でも人材の確保を課題の上位に挙げるところが多く存在します。神戸市は地域の様々な課題を解決する民間の取り組みが不可欠であるにも関わらずその担い手が不足していることに鑑み、市職員が副業として報酬を得て地域貢献活動に取り組むことを推奨しています。活動の分野はまちづくりを始め防災、経済活性化など、公益性のある分野が広く対象となっています。昨年末からは対象職員の在職期間要件を緩和するとともに、活動地域の要件も神戸市内に限らないよう拡大しています。この取り組みはまちづくり等の担い手不足に対応するだけでなく、副業として認めることで近年の働き方改革のコンセプトにも通じるところがあります。また、愛知県岩倉市では、市役所と商工会の若手がプライベートで空き家を一軒借り、様々な交流イベントを開催しています。プロジェクト名は参加を呼びかける「○○やるってばよ!」などか

民間主導による官民連携事業推進のための支援体制の強化 ~静岡県沼津市~

平成27年度・官民連携推進の専門職員を配置・庁内部署を横断した組織として「公民連携推進プロジェクトチーム」を設置(リノベーションまちづくり推進事業を対象)

平成28年度・官民連携推進の専門部署を設置・「公民連携推進プロジェクトチーム」の事業に公共施設公民連携推進事業を追加

平成29年度・企画部、財務部、市民福祉部、産業振興部、生活環境部、都市計画部、建設部、教育委員会、議会事務局の9部局14課から27人がプロジェクトチームに参加

➢専門部署である「まちづくり政策課」がワンストップ窓口となり、個別案件ごと必要となる分野の担当と連携し相談の受付、対応

➢プロジェクトチームは希望制により意欲ある職員を配置

・「リノベーションまちづくり」 「まちづくりファンド」 「まちなかの商業振興」「起業・経営支援」に係る相談受付等 H28年度実績:49件(延べ470名)

・市と商工会議所で組織した「沼津市リノベーションまちづくり実行協議会」が運営

・商店街の中心に位置し、土日や夜間(事前予約)でも対応することで、相談しやすい環境を確保

・相談の内容により市(プロジェクトチーム)、商工会議所の職員を派遣 まちなか相談所

■市役所内に官民連携の横断的組織「公民連携推進プロジェクトチーム」を設置■行政手続きのワンストップ化やまちなか相談所設置により民間主導のまちづくりをバックアップ

○庁内連携体制の構築により行政手続きや相談をワンストップで対応

○「まちなか相談所(平成28年10月開設)」 ※(現)新仲見世商店街の中心

H27.7.1企画部政策企画課公民連携推進担当 5人(兼務)

H27.10.23企画部政策企画課公民連携推進担当 5人(兼務)

公民連携推進プロジェクトチーム職員14人

H28.4.1企画部ぬまづの宝推進課5人(専属)、5人(兼務)

公民連携推進プロジェクトチーム職員17人

H29.4.1【窓口】都市計画部 まちづくり政策課 まちづくり推進係3人(専属)、1人(兼務)

公民連携推進プロジェクトチーム職員27人

『横断的組織の変遷』

図① 沼津市の民間まちづくり支援の体制

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施策紹介

ら「tebayo」と命名し、市職員、民間事業者、市民などの縁・つながりをつくりながら街の PRもしています。市もシティプロモーション素材の一つとして活用しながら間接的に取り組みを応援しています。「tebayo」は長野県塩尻市職員が立ち上げた「nanoda」の取り組みに共感して始めたとのこと。こうした若手等の意欲ある公務員が公私問わず街に飛び込み、地域の活性化に向けて自ら活動したり、勉強会を開いたりというケースは各地に広がりつつあるようです。

(3)民間と連携する行政の姿勢を明確にした事例官民連携まちづくりの取り組みを行政内部、及び民間を含めて広げていくため、まちづくりのビジョンなどに官民連携の取り組みを明確に位置づけ、行政の姿勢を対外的にはっきりと打ち出す自治体も増えてきました。なかでも大阪府大東市は既にまちづくり会社と連携して進めているような公民連携まちづくりのプロジェクトを加速していくことを念頭に「大東市公民連携に関する条例」を制定しました(平成30年4月施行)。民間と連携する事業を定義するとともに、連携に関するプロセスを明確に条例に位置づけ、従来なら行政が実施していた事業を含め、前例にとらわれない新たな事業手法の検討や、様々な公的サービスへの民間事業者の参画を促すこととしています。(図②)

(4)民間の公共施設活用を促す環境整備公共施設の空間を民間がイベント等に活用しやすいよう、手続きを定型化することも含めて行政が活用の為の制度を仕立てている事例も見られます。エリアマネジメント団体がしっかりと機能しているような地域では、公共施設活用の手引きなども作成しながら、プレイヤーの手間をなるべく省いて活動を促す役割を、民間が担っている事例も見られます。岡山市の西川(にしがわ)緑道公園は街の中心部にあるにも関わらず、以前は市民で賑わう場所ではありませんでした。しかし全国都市緑化フェアの会場の一つとなったこともきっかけに、デッキの建設や電源の設置等、イベントで使いやすいように公園を改修するとともに、「西川パフォーマー事業」という市の事業として仕立て、イベント等を実施したい団体の認定と併せて、公園内の行為許可申請、保健所や消防署への届け出手続き等の代行やイベントの PR等、民間の活動を支援しています。(図③)なお、街路空間を活用した官民連携による地域の賑わいづくりの取り組みや、人間中心の空間を目指した街路空間再編の取り組みについて、街路交通施設課が事例集として取りまとめています。取り組みのプロセスなども記述しているのでご参照ください。http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_gairo_tk_000081.html

公民連携の取組を加速する条例を制定 ~大阪府大東市~

「公民連携」の取組を行政組織内及び民間に広げるため、 「大東市公民連携に関する条例」を制定し、公民連携の定義を明確にするとともに、基本方針や手続き等のプロセスを規定。

■「公民連携」および「公民連携事業」の定義の明確化定義を明確化し、長期的なまちづくりにおける「公民連携」及び「公民連携事業」の推進を担保。

■事業の検討・実施・評価検証等に係る手続きの整備公民連携に関するプロセスを明確化し①前例・既存手法にとらわれない新たな事業手法の検討・導入の促進や、②様々な公的サービスへの民間事業者の参画を促し、サービスの質的充足を図る。

「大東市公民連携に関する条例」(平成30年4月1日施行)

(条例の概要)

以下全ての要件を満たす事業。

ア 複数の地域経営の課題を解決する事業であること。イ 地域の価値を向上させる事業であること。ウ 地域経済の発展および循環に寄与する事業であること。エ 公的負担の軽減を図ることを目的とする事業であること。オ 金融機関等から資金調達を行う等自立的かつ持続可能な事業であること。

→エリア価値を高める事業が対象。公共事業であっても、公共事業とあわせてより効果的な民間事業が行われる場合等、要件に合致する場合、位置付け可能。

(大東市公民連携事業の定義)

公民連携により、満足度等が上昇

大東市における公民連携のイメージ

図② 大東市公民連携に関する条例の概要

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(5)都道府県による市町村等の取り組みの支援官民連携まちづくりの推進のため、市町村や県民の人材育成等に取り組む県もでてきています。秋田県は県内のコンパクトで持続可能なまちづくりを進めるために、都市計画や立地適正化計画による土地利用の規制・誘導と、官民連携まちづくりによるまちのコンテンツの充実を車の両輪として併せて取り組むことが重要と考え、普及・啓発や人材育成の取り組みに力を入れています。自治体職員を対象とした計画制度や取り組みの勉強会・研究会や、民間の方も含めた官民連携まちづくりの講習会、ワークショップ等を定期的に行っています。また、栃木県は県内の中心市街地活性化の取り組みの一環として、市町職員を対象にリノベーションまちづくりを実践する人材育成に取り組んでいます。平成 30年度から3年間で重点的に取り組んでおり、行政と民間の役割を考えるための講習会や、市町毎に編成したチームによるまちづくりの社会実験の実践と効果計測、取り組み内容の分析等を行うこととしています。この他にも岩手県、新潟県、鳥取県、香川県なども官民連携まちづくりに向けた自治体職員の人材育成や市町村の支援に取り組んでいます。

その他、行政の様々な民間まちづくり支援の取り組み事例をホームページにまとめているので、こちらもご参照ください。(図④)

http://www.mlit.go.jp/common/001274272.pdf

Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

⾃治体等による⺠間まちづくり⽀援の取組み事例

(2018年度版)

国⼟交通省 都市局 まちづくり推進課官⺠連携推進室

図④ 自治体の取り組み事例集

3.官民連携まちづくり支援 のための国の取り組み

(1)民間のまちづくり活動を促す制度もちろん国も地域の官民連携まちづくりを支援する様々な取り組みを進めています。例えば「都市再生特別措置法」には、民間の公共空間活用の為の規制緩和や、活動を支える協定制度等、官民連携まちづくりの推進に活用できる様々な枠組みが措置されています。『都市再生推進法人制度』は、同法により市町村がまちづくりのパートナーとなるまちづくり会社等を指定するものです。まちづくり会社等はいわば公的なお墨付きとともに、法に基づく権限や

民間が使い易いように公園を改修(イベントデッキの新設、電源の設置、支障植栽の撤去 など)

イベントは市が共催。公園使用料を免除するとともに、公園内行為許可申請、保健所や消防署への届け出手続き等を市が代行。

イベントのPR支援

公園を活用した民間主役の賑わいづくりの環境整備 ~岡山市~

人通りも利用頻度も低かった中心市街地の西川(にしがわ)緑道公園で、賑わいづくりに意欲のある市民に行政が寄り添い、ハード・ソフト面から積極的にサポート

平成21年に全国都市緑化フェアの会場の一つとなり、参画した市民団体等より継続的な市民協働のイベント開催を求める声

《きっかけ》

《従来の公園》

平成22年度に西川パフォーマー事業を立ち上げ公園で自主的に賑わいづくりのイベント等を実施する団体を市が認定し、活動を支援。

■市民の関心が低い ■人通りが少ない■イベントなどの使い勝手が悪い(ハード・ソフト)

平成28年度は47団体が登録、計49日間イベント開催

【活動は2部門から選択】 【認定条件】・公園の魅力を高める・営利や宣伝目的のみでは無い・広く市民が鑑賞・参加 等

【地域との調整】認定団体は地域の関係者や市と公園活用事業協議会を組織し、円滑な事業運営に向け協議

岡山市の支援

イベントプロデュース部門複数の団体が参加するイベントを企画実施

パフォーマンス部門自らの団体による文化活動や付随する物品・飲食販売

有機生活マーケット いち

図③ 岡山市の公園利活用の取り組み

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施策紹介

財源措置が利用できる等、様々なメリットを受けられるもので、近年その指定が増えています(図⑤、⑥)。同じく同法に基づき、民間団体が道路、公園等を利用してオープンカフェや広告板等を設置する『特例占用制度』や、関係者が協定を結び、役割分担しながら民地を含めて公共的空間を創出・活用する為の『都市利便増進協定』等の制度も活用が進んでいます。(図⑦)。なお、都市再生特別措置法を活用した官民連携まちづくりについては、実務担当者が実践的に使

指定日 所在地 法人名H23.12.9 札幌市 札幌大通まちづくり 株式会社H24.3.2 富山市 株式会社 まちづくりとやま

H24.3.30 飯田市株式会社 飯田まちづくりカンパニー特定非営利活動法人 南信州おひさま進歩特定非営利活動法人 いいだ応援ネットイデア

H24.5.28 川越市 株式会社 まちづくり川越H25.4.18 福井市 まちづくり福井 株式会社

H25.9.3 千代田区一般社団法人 大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会秋葉原タウンマネジメント 株式会社

H25.9.25 牛久市 牛久都市開発 株式会社H25.12.27 草津市 草津まちづくり 株式会社H26.1.14

柏市一般社団法人 柏の葉アーバンデザインセンター

H26.2.14 一般財団法人 柏市まちづくり公社H26.3.31 一般財団法人 柏市みどりの基⾦H26.7.29 大阪市 一般社団法人 グランフロント大阪TMOH27.3.9 東海市 株式会社 まちづくり東海H27.3.20 ⻑浜市 えきまち⻑浜 株式会社H27.3.26 新宿区 一般社団法人 新宿副都心エリア環境改善委員会H27.6.2

千代田区一般社団法人 有楽町駅周辺まちづくり協議会

H27.6.24 一般社団法人 日比谷エリアマネジメントH27.7.15 むつ市 田名部まちづくり 株式会社H28.1.14 仙台市 一般社団法人 荒井タウンマネジメントH28.6.30 目⿊区 株式会社 ジェイ・スピリットH28.7.12 さいたま市 一般社団法人 美園タウンマネジメントH28.9.1 桜井市 桜井まちづくり 株式会社

指定日 所在地 法人名H29.7.7 岐阜市 柳ヶ瀬を楽しいまちにする 株式会社H29.10.4 さいたま市 一般社団法人 アーバンデザインセンター大宮H29.10.10 東京都港区 一般社団法人 新⻁通りエリアマネジメント

H29.12.26和歌山市

特定非営利活動法人 砂山バンマツリ特定非営利活動法人 愛福会株式会社 紀州まちづくり舎株式会社 sasquatch(サスカッチ)一般社団法人 みんとしょ株式会社 真田堀家守舎株式会社 ワカヤマヤモリ舎株式会社 宿坊クリエイティブ

H30.1.29 ユタカ交通 株式会社H30.2.20 大津市 株式会社 まちづくり大津H30.2.22 名古屋市 栄ミナミまちづくり 株式会社H30.3.23 豊田市 一般社団法人 TCCMH30.3.26 大船渡市 株式会社 キャッセン大船渡H30.5.11 渋谷区 一般社団法人 渋谷駅前エリアマネジメントH30.6.24 静岡市 一般社団法人 草薙カルテッドH30.10.1 川口市 川口都市開発 株式会社H30.10.5 春日井市 高蔵寺まちづくり 株式会社H30.10.26 合志市 株式会社 こうし未来研究所H30.11.1 ⽔⼾市 株式会社 まちみとラボH30.11.27 東京都港区 一般社団法人 竹芝エリアマネジメントH30.12.18 前橋市 公益財団法人 前橋市まちづくり公社H30.12.28 多治⾒市 多治⾒まちづくり 株式会社

※枠内は平成30年の新規団体

和歌山市

図⑥ 都市再生推進法人一覧(2018年 12月末時点)

・都市再生推進法人第1号である「札幌大通まちづくり株式会社」は、札幌市の大通地区で社会実験を⾏いつつ、平成25年8⽉12日よりオープンカフェ・広告板事業を実施し、オープンカフェ等の収入を道路維持管理、地域イベント等のまちづくりに還元している。

オープンカフェ等の都市利便施設の札幌大通まちづくり(株)による日常管理等を定めた都市利便増進協定を締結

札幌大通まちづくり(株)

まちづくりへの還元道路維持管理、地域イベント

市都市再生整備計画に位置付け

・オープンカフェ設置・運営・広告板の設置

収益の還元

公的空間の

開放

都市再生整備計画を提案

占⽤区域、占⽤物件

今後の整備予定箇所

占用物件(H25整備済)オープンカフェ、広告板等

市電停留所(H27整備済)

協定区域︓⼀般国道36号歩道部

整備済箇所

位置図

市電ループ化区間(サイドリザベーション方式)

協定締結者︓北海道開発局、札幌大通まちづくり(株)(都市再生推進法人)

協定締結日︓平成25年4⽉10日都市利便増進施設︓⾷事施設、広告板、ベンチ等日常管理に関する事項︓札幌大通まちづくり(株)が日常の管理業務、都市利便増進施設を活用したイベント等を実施

札幌市大通地区における例【社会実験(H20〜)を経てオープンカフェを恒久設置(H25.8〜)】

都市利便増進協定

道路占⽤許可の特例

取組み以前 オープンカフェ開設後(H25.8〜)

・にぎわいと魅⼒の創出・美観維持、駐輪対策の徹底

図⑦ 官民連携まちづくり制度の活用事例(札幌市大通すわろうテラス)

⺠間まちづくり団体(株式会社、社団・財団法人、NPO法人等)

都市再生整備計画の提案

市町村都市再生協議会(都市開発事業を施⾏する⺠間事業者も参加可能)

市 町 村

協議会を組織可能

★団体の信⽤度・認知度の向上

地域の土地所有者

(⺠間⼜は⾏政)

各種協定への参画

⼟地の譲渡⇒税制優遇

指定による主なメリット

★法に基づく協定制度等の活⽤ ★国の各種補助・融資・税制特例等の活⽤

★⾏政から⾒た公平性・透明性の確保

都市再生推進法人に指定(法第118条)

都市再生推進法人とは、都市再生特別措置法に基づき、地域のまちづくりを担う法人として、市町村が指定するもの。(平成19年度〜)★指定された団体は、まちづくり活動のコーディネーターや推進主体としての役割を期待

図⑤ 都市再生推進法人制度の概要

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えるよう、各種制度を詳細に解説した『手引き』を作成、ホームページで公開しておりますので、ご活用下さい(図⑧)。このページには、都市再生推進法人の指定を受けるメリット(具体的に法人が活用できる各種制度)や、法律に基づく制度の実績や事例なども載せてあります。http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000047.html

官⺠連携まちづくりの進め⽅-都市再生特別措置法等に基づく制度の活⽤⼿引き-

実務担当者がまちづくりの現場でより実践的に使えるよう、都市再生特別措置法等に基づく各種制度の内容やメリット、活用プロセス、運用実績・運用事例などを具体的に解説した手引きです。

内 容 総論 都市再生整備計画 都市再生推進法人 市町村都市再生協議会 道路占用許可、河川占用許可、都市公園占用許可の特例 都市利便増進協定、都市再生(整備)歩⾏者経路協定、低未利用⼟地利用促進協定 関連制度等︓「⺠間まちづくり活動の財源確保に向けた枠組みの⼯夫に関するガイドライン」、

「都市のスポンジ化対策」に関する記載等 運用実績・運用事例︓各種制度の活用実績等

この⼿引きは、下記サイトよりダウンロードできます︕URL︓http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000047.html

「官民連携まちづくり」の手引き

平成31年3月 改訂

図⑧ 都市再生特別措置法等に基づく�制度の活用手引き

(2)財政的な支援官民連携まちづくりの取り組みを財政的に支援する制度もあります。補助金の制度としては、社会実験や先進的なノウハウの全国展開に利用できる『民間まちづくり活動促進・普及啓発事業』や、クラウドファンディングを活用した取り組みに、民都機構と地方公共団体が共同で拠出したファンドから補助する『クラウドファンディング活用型まちづくりファンド支援業務』などがあります。『都市・地域交通戦略推進事業』は、交通広場や通路等の交通施設整備を補助する制度ですが、新年度からは道路空間利活用の社会実験や歩行空間整備、電源設備や給排水施設の整備等を補助対象に追加とするとともに、交付先として先述の都市再生推進法人を追加しました。『国際競争力強化・シティセールス支援事業』は大都市に外国企業を呼び込む等の為、地域の国際競争力を向上させるハード、ソフトの補助制度ですが、新年度からは既存施設のリノベーションによるスタートアップ企業の支援施設を新たに補助対象とするとともに、中枢中核都市(都市再生緊急整備地域)を交付先に追加しました。起業が活発であることも、エリアの価値向上に大きく寄与

すると考えています。また、民都機構の『マネジメント型まちづくりファンド支援業務』は、地域金融機関と連携してファンドを組成し、一定のエリアのまちづくり事業にファンドから出資するもので、リノベーションまちづくりの展開などと相性が良いと思います。

(3)各種情報提供や情報交換の場の提供官民連携まちづくりに取り組んでいる自治体や民間主体への情報提供や、現場の課題や知見を共有する交流の場づくりにも力を入れています。例えば例年であれば2月頃に全国の都市再生推進法人や関係自治体が集まる交流の場を設けたり、やはり2~3月頃に各地方整備局等のブロック毎で行政と民間のまちづくり関係者が参加するセミナーを開催しています。学識経験者や全国のエリマネ団体が会員の『全国エリアマネジメントネットワーク』等とも連携し、取り組みを推進しています。

4.官民連携まちづくりの 推進に向けて官民連携のまちづくりを進めるにあたり、行政も民間も、お互いの立場を良く理解して、文字通り官と民がよく連携していく必要があります。行政は民間にとって判断の経営的視点やスピードが重要であることをよく理解する必要があります。行政が許認可などの判断を先送りにしていると、民間は行動のタイミングを逃してしまったり、悪くするとモチベーションを失うこともあるかもしれません。更に、行政が陥りがちな完璧主義でなく、実験的にとりあえずやってみるといった視点による支援が重要な場面もあります。行政の支援の姿勢が民間の活動の生産性を大きく左右すると言っても言い過ぎではないでしょう。また、民間側もその活動が地域にどんなインパクトを与えるかということについて意識し、いわゆるパブリックマインドを持つことが求められます。まちづくりにおける『官と民の連携』がうまくいっている地域とそうで無い地域では、10年、20 年後には地域の活力に大きな差がついているかもしれません。関連して国土交通省では、昨年5月に「官民ボー

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Page 7: 施策紹介 まちづくりの『官民連携』に向けた 自治体のひと工夫 · リノベーションまちづくり は、空き家の利活用を連鎖的に展開し、新たなビ

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施策紹介

ダーレスの都市空間創造」というプロジェクトを国土交通省生産性革命プロジェクトに追加しました。(図⑨)生産性革命プロジェクトは、人口減少社会を迎えているなか、潜在的な成長力を高めるとともに新たな需要を掘り起こしていくことなどのため、国土交通分野における生産性を高めていくためのプロジェクトです。「官民ボーダーレスの都市空間創造」は、公共空間を民間経済活動の場に開放していくとともに民間側にも公共的な機能を発揮してもらい、都市空間を多彩に形成・活

用することにより、人材の集積と交流、イノベーションの創発、都市の生産性の向上を図ることを目的としています。皆さんの地域でも、民間主導のまちづくりの芽が生まれているかもしれません。皆さんがこうした取り組みの応援団になって頂き、希望の膨らむ令和の時代にそれぞれの地域で官民連携のまちづくりが大きく育っていくことを願っています。(かのこぎ おさむ)

平成30年5月選定

図⑨ 官民ボーダーレスの都市空間創造

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