炭素原子の 構造と性質 - nikkan...13 14 6.02×1023個 鉛筆12本 ビール12本 1ダース...
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有機分子は炭素原子、水素原子、酸素原子な
どの原子からできています。そのため、原子
の構造と性質を知ることは、有機化学の基礎
となります。
第1章炭素原子の構造と性質
002
1 電子雲と原子核 それでは原子とはどのようなものでしょうか?原子は雲でできた球のようなものです。球に見えるのは電子雲であり、複数個の電子からできています。そして電子雲の中心には原子核という高密度の小さな粒子が存在します。原子核の直系は原子直径の 1万分の 1ほどですが、原子の重さの99.9%は原子核にあります。2 原子核の構造 原子核は陽子(記号 p)という粒子と中性子(n)という粒子からできています(図 1)。原子の世界の重さは質量数という単位で表されますが、陽子と中性子は共に質量数 1 です。それに対して電子の質量数は 0 です。また、 1 個の陽子は+1単位の電荷を持ちますが、中性子は電荷を持ちません。それに対して電子は-1の電荷を持ちます。 原子核を構成する陽子の個数を原子番号(記号 Z)といいます。一方、陽子の個数と中性子の個数の和を質量数(記号A)といいます。Zと Aはそれぞれ元素記号の左下、左上に添え字で表す約束です。3 電子雲 原子は原子番号と同じ個数の電子を持ちます。この結果、原子は電気的に中性となります。後に詳しく説明しますが、原子の性質、反応性は電子雲によって決まります。 ところが、原子の中には原子番号が同じで質量数の異なるものがあります。これらは電子雲が同じですから反応性は同じなのですが、質量数(重さ)は異なります。このような原子を同位体といいます。炭素には12C、13C、14C などが知られていますが、大量に存在するのは12C です。 原子番号が同じ原子の集合を元素といいます。つまり、炭素という元素には 3種以上の原子(同位体)が存在することになります。
私たちが実感できる宇宙は物質からできています。物質の多くは分子の集合体であり、全ての分子は原子からできています。つまり、私たちが実感できる宇宙は原子からできているのです。��
原子の構造1-
1
003
第1章 炭素原子の構造と性質
◉原子は原子核と電子雲からできている。◉原子核は陽子と中性子からできている。◉原子は同数の陽子と電子からできているので電気的に中性である。
原子核の構造図1
名 称
原
子原子核
電 子
記 号
e
陽 子 p
中性子 n
電 荷
-1
+1
0
質量数
0
1
1
質量数 A(陽子数+中性子数)
元素記号(carbonの頭文字)
原子番号 Z(陽子数+中性子数)
全体をも元素記号という
電子 e(マイナス)
原子核
中性子 n
陽子 p(プラス)
同位体の例図2
元素名
記 号
水素 炭素 酸素 塩素
1H(H)
陽子数 1
中性子数 0
存在比% 99.98
2H(D)
1
1
0.015
3H(T)
1
2
12C
6
6
98.89
13C
6
7
1.11
16O
8
8
99.76
18O
8
10
0.20
35Cl
17
18
75.53
37Cl
17
20
24.47
分子量 1 12 16 35.5
表の中で例えば、炭素の同位体はたくさんあるが、安定しているのは表の12C と13C。
004
1 原子量 1個の原子はたいへんに小さく軽いので、その重さを量るのは不可能です。しかし、原子もたくさん集まれば一定の重さになります。そして、ある個数だけ集まれば質量数(に gをつけた)重さになるでしょう。このときの原子集団の個数をアボガドロ定数(6.02×1023)といいます。そして、アボガドロ数個の集団を 1 モルといいます。鉛筆12本の集団を 1ダースというのとまったく同じことです。 つまり、炭素の同位体12C が6.02×1023個集まると、その集団の質量は12g となるのです。しかし炭素には12C の他の同位体も存在します。そこで簡単にいえば、12C、13C、14C を含めた質量数の平均値をとり、これを原子量ということにしています。 原子量は各原子の相対的な重さを表す数値であり、たいへんに重要です。しかし、同位体の組成が変化したら原子量も変化します。そこで、定期的に数値の見直しが行われています。2 分子量 分子は原子からできています。分子の相対的な重さを表す指標を分子量といいます。分子量はその分子を構成する全ての原子の原子量の総和のことをいいます。つまり H2O なら Hの原子量=1、酸素の原子量=16であることから、分子量は1×2+16=18となります。メタノールCH3OHなら Cの原子量が12であることから、12+1×3+16+1=42となります。 全ての気体は 0℃、 1 気圧の下では 1 モルが22.4L(リットル)の体積を示すことが知られています。つまり、都市ガスのメタン CH4は 0 ℃、 1 気圧では22.4L で分子量に等しい16g なのです。空気の平均分子量は28.8ですから、メタンは空気より軽いのです。風船にメタンを詰めれば、風船は空気中を上昇することになります。
物質とは有限の体積と有限の質量を持つもののことをいいます。これがないと精神とか、幽霊ということになります。物質が原子からできていることを考えればわかるように、物質の質量の基本は原子の質量ということになります。�
原子量と分子量1-
2
005
第1章 炭素原子の構造と性質
◉原子の重さを相対的に表した数値を原子量という。◉分子を構成する全原子の原子量の総和を分子量という。◉アボガドロ数個の原子、分子の集団を 1モルという。
1 モルと原子量図1
12C
98.90% 10%
平均値=12.01(原子量)
~0%
13C 14C
6.02 × 1023個
鉛筆12本
ビール12本
1ダース
1モル
分子量図2
6.02 × 1023個
6.02 × 1023個 6.02 × 1023個 6.02 × 1023個
H2Oの分子量
Hの原子量 Oの原子量 Hの原子量
HOH HOH HOH HOHHOHHOHHOHHOH
HOH HOH HOH
分子を構成する全ての原子の原子量の和を分子量といいます。