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筋線維の活動は 筋力は・・筋線維が収縮して 関節を介して骨格を動かし 対象物に力を加え 対象物に加えたスピードで パワーとして計算される

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Page 1: 筋線維の活動はaka.gmobb.jp/yamakensensei/renraku/musclepower.pdf• FOGとFGとはトレーニングにより変動するが • SOとFG&FOGの比率は変わらない!3×3システムによる動作の発現

筋線維の活動は筋力は・・筋線維が収縮して関節を介して骨格を動かし対象物に力を加え対象物に加えたスピードでパワーとして計算される

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筋活動の3つの種類

• 等尺性収縮(アイソメトリック)

• 等張性収縮(アイソトニック)

さらに、短縮性(コンセントリック)

通常の収縮はこれ

伸張性(エキセントリック)

下りで体重を支えると・・

• 等速性収縮(アイソカイネティック)

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筋活動の様式と発揮される力

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発揮される筋力の複雑さ・・

• 筋線維の収縮と走行方向(羽状筋など)

• 筋線維の集合した筋‐腱(起始と停止)

• 多関節性(関節をまたいで)の動き

てこの原理(真の筋力と発揮された筋力)

• 筋線維や筋群の協働性と拮抗性

Muscle performance

⇒ Motor performance

⇒ Sports performance

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筋力の向上は・・

• 末梢性の要因としては

筋線維の肥大と筋の肥大(張力の増大)

• 中枢性の要因としては

筋線維収縮の同期性

主動筋と拮抗筋の抑制

動作の改善

動機付けとモチベーション

• Man-Machin interface として用器具の改善

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筋力の発揮パターンは・・

• 一過性の最大筋力発揮(砲丸投など)

• 間欠性の最大筋力発揮(バレーボールのアタックやブロックなど)

• 反復される最大下筋力発揮(スキーのスラロームなど)

• 反復される持続的筋力発揮(ラグビーのスクラムなど)

• 長時間にわたり反復する筋力発揮(マラソンや自転車ロードレースなど)

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• ウェイトトレーニングを中止すべき指標

周囲長や挙上重量が増加しているにもかかわらずパフォーマンスが向上しない

• 室伏選手(ハンマー投)の筋力トレーニングと動きの結合

“眠っている感覚まで・・”

• 「初動負荷理論」の意味するもの

運動方向(ベクトル)への力の加え方

筋力が向上しても・・

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室伏広治のトレーニングでは・・

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筋線維の種類は3種類

• 遅筋系線維(SO)は酸化能力が高く・・

• 速筋系線維(FG)は解糖能力が高い

さらに、

中間の性質を持つ速筋系線維(FOG)も・・

• 三つの筋線維が混合して「筋」の性質を決定

• ただし機能発達には成長段階によって異なる

• FOGとFGとはトレーニングにより変動するが

• SOとFG&FOGの比率は変わらない!

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別の呼び方もあります

• FF系線維(電気的収縮特性 90~100Hz)

50㌘相当の張力と100㍉秒程度の収縮可能時間

• FR系線維(両者の中間的性質)

15㌘相当の張力と150㍉秒程度の収縮可能時間

• ST系線維(電気的収縮特性 35~45Hz)

数㌘相当の張力と200㍉秒以上の収縮可能時間

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3種類の筋線維

FG:さらにFG1、FG2・・?FOG:トレーニングでFGへSO:長距離選手の腓腹筋では80%を占める

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速い錐体路細胞は・・

• Fast PT細胞

→ 相動性運動単位

• Slow PT細胞

→ 緊張性運動単位

ということは・・

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実は筋ごとに筋線維組成が異なる

各関節ごとの動作(役割)の違い各個人ごとの筋組成の違い「ヒラメ筋」は何故共通性が高いのか?

スキルを支える速筋系線維⇒ 主要な張力発揮と

運動方向を決定?

遅筋系線維⇒ 補完的張力発揮と

ミトコンドリアによる乳酸利用?

山崎 健(新潟大学) 13

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三つのエネルギー生産系• すべての筋収縮は・・

アデノシン三燐酸(ATP)が、

アデノシン二燐酸(ADP)と燐酸基(Pi)に分かれたエネルギーで収縮する

• これを補填するのに・・

①クレアチン燐酸(PCr)からATPへ

②グリコーゲンからピルビン酸を経て乳酸へ

③ミトコンドリアで乳酸を酸化して、さらに

④有酸素的に炭水化物や脂質を利用

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継続可能時間は・・

• ハイパワー系は最速7秒で終わり

クレアチン燐酸からのATP再合成

• ミドルパワー系も+33秒でおしまい

グリコーゲンからの解糖系(ピルビン酸から乳酸へ)

乳酸は筋肉量の0.3%蓄積すると運動遂行制限

• ただし乳酸の85%は再利用されるエネルギー源

• 乳酸を生成するFG系線維と酸化するSO系線維

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有酸素的解糖と無酸素的解糖

遅筋系 速筋系

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「乳酸シャトル」の意味するもの・・

山崎 健(新潟大学) 18

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有酸素的解糖と無酸素的解糖

遅筋系 速筋系

フォックスとマティウズ(1981)

この時には運び屋MCT4が必要

=高強度✕短時間トレーニング

この時には運び屋のMCT1が必要

=低強度✕長時間トレーニング

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3×3システムによる動作の発現

定本ら(1987年)の図を山崎が改変

動きをつくり出すシステム

TypeⅠ TypeⅡa TypeⅡb

エネルギーをつくり出すシステム

ATP-PCr系 ○ ◎ ◎

解糖系 △ ◎ ●

有酸素系 ◎ ○ △

2014/3/25 第62回現代スポーツ研究会

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筋力トレーニングの方法• 最大挙上重量(1RM)

• アイソトニック・トレーニング

ピラミッド法と逆ピラミッド法

筋線維の種類と順序(出力特性と抗疲労性)

• アイソキネティック・トレーニング

全関節角度で筋力発揮が可能(マシンが必要)

• EMS法は「逆順で使えない?」との報告も

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筋力トレーニングの効果は?

• 単関節性の動きではわかりやすいが・・

• アイソキネティック装置での測定でないと・・

• 動作と組み合わせた測定方法の工夫

立幅跳、垂直跳、立五段跳、ウェイトリフティング(ハイクリーン&ジャーク、スナッチ等)

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速筋系と遅筋系の役割分担

• 主要な張力と運動方向(スキル)決定に関与する速筋系(FG:TypeⅡb)

• 補完的張力を発揮しながら「乳酸シャトル」でミトコンドリア工場をフル稼働する遅筋系(TypeⅠ、FOG:TypeⅡa、心筋も?)

• 問題は「どうやって使うのか」ということ

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• ついた筋力は・・

• つけた動かし方で発揮される(特異性)

• ということは・・

試合(形式)こそが練習である!• ボート競技のストロークの距離は・・

乗艇トレーニングでは改善されず、ウェイトトレーニングが必要

トレーニングのリアリティ

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• スキルの獲得

• 獲得したスキルを発揮しながら筋収縮

• 筋収縮の反復によるトレーニング効果

• 新たなスキル獲得を可能として

• スキルが変容して新たな課題が生まれ

• 新たなスキルの獲得

• 新たなスキルを発揮しながら筋収縮・・・・

いかに「合理的動き」を獲得しまた改善(変容)してゆくのか?

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運動を継続すること持久力は・・筋線維が収縮して関節を介して骨格を動かし長時間対象物に力を加え続け対象物に加えたスピードでパワーとして計算される

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筋線維の種類は3種類

• 遅筋系線維(SO)は酸化能力が高く・・

• 速筋系線維(FG)は解糖能力が高い

さらに、

中間の性質を持つ速筋系線維(FOG)も・・

• 三つの筋線維が混合して「筋」の性質を決定

• ただし機能発達には成長段階によって異なる

• FOGとFGとはトレーニングにより変動するが

• SOとFG&FOGの比率は変わらない!

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3×3システムによる動作の発現

定本ら(1987年)の図を山崎が改変

動きをつくり出すシステム

TypeⅠ TypeⅡa TypeⅡb

エネルギーをつくり出すシステム

ATP-PCr系 ○ ◎ ◎

解糖系 △ ◎ ●

有酸素系 ◎ ○ △

2014/3/25 第62回現代スポーツ研究会

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並列的に3×3システムを駆動する?

• 単一システムに依存していては破綻する

100m走は「持久走?」(末續慎吾)

⇒ スピード曲線は60m以降低下する

フルマラソンも「速筋系」が重要

⇒ スピードとランニングスキルの維持

• そもそもなぜ同一筋内に3×3システムが存在するのか?

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速筋系と遅筋系の役割分担

• 主要な張力と運動方向(スキル)決定に関与する速筋系(FG:TypeⅡb)

• 補完的張力を発揮しながら「乳酸シャトル」でミトコンドリア工場をフル稼働する遅筋系(TypeⅠ、FOG:TypeⅡa、心筋も?)

• 問題は「どうやって使うのか」ということ

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ただし・・

• 三つのエネルギー供給系はあくまでも「総体としての概念」

• 三つの筋線維も同じく「総体としての概念」

• 股関節・膝関節・足関節・・

大腰筋,大腿四頭筋,ハムストリングス,腓腹筋,ヒラメ筋・・その中にそれぞれが複雑な性質をもつ筋線維が混在する

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三種類の筋線維

FG:さらにFG1、FG2・・?FOG:トレーニングでFGへSO:長距離選手の腓腹筋では80%を占める

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三つのエネルギー生産系• すべての筋収縮は・・

アデノシン三燐酸(ATP)が、

アデノシン二燐酸(ADP)と燐酸基(Pi)に分かれたエネルギーで収縮する

• これを補填するのに・・

①クレアティン燐酸(PCr)からATPへ

②グリコーゲンからピルビン酸を経て乳酸へ

③ミトコンドリアで乳酸を酸化して、さらに

④有酸素的に炭水化物や脂質を利用

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継続可能時間は・・

• ハイパワー系は最速7秒で終わり

クレアチン燐酸からのATP再合成

• ミドルパワー系も+33秒でおしまい

グリコーゲンからの解糖系(ピルビン酸から乳酸へ)

乳酸は筋肉量の0.3%蓄積すると運動遂行制限

• ただし乳酸の85%は再利用されるエネルギー源

• 乳酸を生成するFG系線維と酸化するSO系線維

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長時間の運動を支えるもの

• 持久性は「有酸素系」だけではない

• 解糖系も駆動しなくてはスピードが出ない

• 「スタミナが切れましたね~」は実は解糖系(グリコーゲン)の枯渇でスピードが維持できなくなる現象

• スピードのある選手のスピードを「使い切らせる」戦術も・・

解糖系を終わらせ「有酸素系」でロングスパート

• 運動効率の維持にかかわる「速筋系線維(!)」

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運動の継続を阻害するもの

• エネルギー源の枯渇

• 体温の急上昇

• 脱水症と熱中症

• 発汗によるミネラルの欠乏と痙攣誘発

• 最大換気量の頭打ち(毎分150㍑)と肺拡散容量

• 心拍出量の頭打ち

心拍数×拍出量×動静脈間酸素較差(100ml)

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疲労研究は運動生理学の基本

• 労働生理学という分野で生産性向上を・・

• セ-チェノフ(ロシア:1935年)の「積極的休息」とその後の拡大解釈

• 中枢性疲労と末梢性疲労ということ

• 掛声効果と「脱抑制現象」

• 速筋系筋群内での交替(ドミナント)?

同一運動強度でも毎分60回転と90回転では参加できる筋群が異なる・・

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筋出力の心理的限界と“掛け声効果”

つまり“脳”が抑制しているらしい

(中枢性疲労)

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運動強度と乳酸濃度

呼吸性換気閾値(VT)

解糖系の活動亢進

血中乳酸濃度の上昇

LTとOBLA

運動強度の臨界点

OBLAの際の走行スピードでパフォーマンスを推定

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持久力のトレーニングは

• ディスタンストレーニング

VO2Max. の65~70%:1時間以上

• エアロビック・インターバルトレーニング

VO2Max.の70~80%:4mM以下、5~15分

• ペーストレーニング

VO2Max.の80~90%:8~15mM、3~10分

• アネロビック・インターバルトレーニング

VO2Max.の95~120%:15~20mM、30秒~4分間

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最大心拍数と安静時心拍数からあるアスリートの測定例から

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E4

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各ゾーンの比率は・・実はよくわからない!

• ドイツでの1500mと5000mランナー10名の2年間の追跡調査では・・

• E1とE2は3mM以下、E3は3-7mM、E4は7mM以上

①閾値のスピードは、1週間のE3トレーニングの回数に比例して向上する。閾値の運動回数を2週間に1回から1週間に1回、2週間に3回、最終的には1週間に2回に増やしてゆくと閾値スピードは伸び続ける

②閾値スピードは、E3トレーニングが全体の23%、E4が13%、E1及びE2が64%のときに最高になる

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Defense-arousal system という考え方(個人によって臨界スピードは異なる)

Hilton(1982) 及び 中村と山本(1991) の概念より山崎が作製、2005

交感神経系領域

副交感神経系領域 ここらは緊急事態!

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持久力トレーニングの指標

• 最大酸素摂取量:トレーニングを積むと変動しない?

• 運動強度と血中乳酸濃度と心拍数モニタ

LTとOBLAの測定が重要(改善される)

• 中強度の運動では血糖動員性も重要

• オーバートレーニングの予防

• トレーニング計画と食事計画(と休養計画)

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回復過程には・・

• 栄養の摂取が不可欠

炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素

• 消費カロリー以下の食事摂取を続けると・・

グリコーゲン枯渇とタンパク質分解

筋組織や赤血球の分解

トレーニング終了後も同じ問題がある

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そこで・・

練習(してから)サボると強くなるメカニズム

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組み合わせを考える・・

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いかに「合理的動き」を獲得しまた改善(変容)してゆくのか?

• スキルの獲得

• 獲得したスキルを持続的に発揮

• 運動の反復によるトレーニング効果

• 新たなスキルの獲得と持続を可能として

• スキルが変容して新たな課題が生まれ

• 新たなスキルの獲得と持続的発揮が

• さらにトレーニングを進める・・・・が!

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例えば単純な長距離ランニングでも・・

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「乳酸シャトル」の意味するもの・・

山崎 健(新潟大学) 52

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膝関節や足関節でエネルギーを吸収

膝関節伸展速度は“疾走速度”には貢献しない?

NHK放映、進化する義足(2008年)より

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膝関節や足関節を固定している?

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「骨格-筋モデル」として考えれば

単純にするため以下の筋群に限定(1本脚)

股関節:

a.大腰筋 b.大腿四頭筋 (屈曲)

c.ハムストリングス (伸展)

膝関節:

c.ハムストリングス d.腓腹筋 (屈曲)

b.大腿四頭筋(伸展)

c.ハムストリングス & b.大腿四頭筋(固定)

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足関節:

d.腓腹筋(伸展) e.前脛骨筋(屈曲)

d.腓腹筋 & e.前脛骨筋(固定)

膝関節&足関節の固定の程度≒バネ係数

バネ係数(弾性効率)の変容

⇒ “Short Stretch Cycle” の制御

ピッチとストライドのコントロールによる走法変容?

+ 左右脚の協調したランニング動作?

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股関節 膝関節 足関節

伸展 屈曲 伸展 屈曲 固定 伸展 屈曲 固定

大腰筋 ◎

大腿四頭筋 ○ ○ ○

ハムストリングス ◎ ○ ○

腓腹筋 ○ ○

前脛骨筋 ○ ○

股関節 膝関節 足関節

伸展 屈曲 伸展 屈曲 固定 伸展 屈曲 固定

大腰筋 ◎

大腿四頭筋 ○ ○ ◎

ハムストリングス ◎ ○ ◎

腓腹筋 ○ ◎

前脛骨筋 ○ ◎

単純化した各関節筋群の活動の様相(例えば,上:前半ストライド型,下:後半ピッチアップ型)

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実際の長距離レース中のランニング動作

• 男子10000mレース中の1/30秒で撮影されたビデオ画像より画像解析ソフトSilicon Coach Proを用いて以下の項目を検討した

• 対象者は全日本大学駅伝出場者4名(30’12”~31’47”)

• 2000m、4800m、8800m地点での1.ストライド 2.ピッチ 3.疾走スピード

4.それぞれの4歩分の相関分析

5.膝関節伸展速度(最大屈曲~離地)

と疾走スピードの相関分析

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2000m(レース前半)

4歩区間:秒速4.9~5.3mで推移

Sub.A Strd&Speed(R²=1.00) Pitch&Speed(R²=0.12)

KnEx&Speed(R²=0.03)

Sub.B Strd&Speed(R²=0.80) Pitch&Speed(R²=0.97)

KnEx&Speed(R²=0.19)

Sub.C Strd&Speed(R²=0.00) Pitch&Speed(R²=0.77)

KnEx&Speed(R²=0.95)

Sub.D Strd&Speed(R²=1.00) Pitch&Speed(R²=0.12)

KnEx&Speed(R²=0.05)

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4800m(レース中半)

4歩区間:秒速5.0~5.4mで推移

Sub.A Strd&Speed(R²=1.00) Pitch&Speed(R²=0.16)

KnEx&Speed(R²=0.78)

Sub.B Strd&Speed(R²=1.00) Pitch&Speed(R²=0.27)

KnEx&Speed(R²=0.94)

Sub.C Strd&Speed(R²=0.00) Pitch&Speed(R²=0.56)

KnEx&Speed(R²=0.04)

Sub.D Strd&Speed(R²=0.42) Pitch&Speed(R²=0.86)

KnEx&Speed(R²=0.92)*負相関(r=-0.96)

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8800m(レース後半)

4歩区間:秒速5.1~5.4mで推移

Sub.A Strd&Speed(R²=0.04) Pitch&Speed(R²=0.92)

KnEx&Speed(R²=0.01)

Sub.B Strd&Speed(R²=0.11) Pitch&Speed(R²=0.92)

KnEx&Speed(R²=0.48)

Sub.C Strd&Speed(R²=0.68) Pitch&Speed(R²=0.94)

KnEx&Speed(R²=0.92)

Sub.D Strd&Speed(R²=0.23) Pitch&Speed(R²=0.99)

KnEx&Speed(R²=0.64)*負相関(r=-0.80)

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10000mレース中の各変数の推移

2000m

4800m

8800m

Strd&Speed

Pitch&Speed

KnEx&Speed

Strd&Speed

Pitch&Speed

KnEx&Speed

Strd&Speed

Pitch&Speed

KnEx&Speed

Sub.A ◎ × × ◎ △ ◎ × ◎ ×

Sub.B ◎ ◎ △ ◎ ○ ◎ × ◎ 〇

Sub.C × ◎ ◎ × 〇 × ◎ ◎ ◎

Sub.D ◎ × × 〇 ◎ ◎* △ ◎ ◎*

決定係数(R²)の範囲 (*は負相関)

0.64~(◎)、0.25~0.63(〇)、0.16~0.24(△)、0.15以下(×)

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以下の課題を20本繰り返すとすれば・・

M.T.Turvey,P.N.Kugler(1984):AN ECOROGICAL APPROACH TO PERCEPTION AND ACTION,(In ”Human Motor Action:Bernstein Reassessed”)pp.375

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「乳酸シャトル」の意味するもの・・

山崎 健(新潟大学) 65

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3×3システムによる動作の発現

定本ら(1987年)の図を山崎が改変

動きをつくり出すシステム

TypeⅠ TypeⅡa TypeⅡb

エネルギーをつくり出すシステム

ATP-PCr系 ○ ◎ ◎

解糖系 △ ◎ ●

有酸素系 ◎ ○ △

2014/3/25 第62回現代スポーツ研究会

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Y= [PCrN] × [SkN] (ATP-PCr系とスキル)

+ [GlyN] × [SkN] (解糖系とスキル)

+ [MtcN] × [SkN] (有酸素系とスキル)

+ b (残差:その他の要因:賞賛や褒章)

[N] はその時点でのエネルギーレベルの変数

スキルも個別的に対応してトレーニングが行われる

ただし「ランニング」というスキルは共通の性質を持つので

トレーニングのプロセスでは・・

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PCr0 Gly0 Mtc0 Smα

PCr1 Gly1 Mtc1 Smβ

Y= PCr2 Gly2 Mtc2 × Smγ

: : : :

PCrN GlyN MtcN Smω

“エネルギー系残存レベル(モード)に対応したスキルモード”

(“パワードライブモード”や“エコドライブモード”などの切替え)

運動習熟によるスキルモード複合体の独立

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“コオーディネーション”という概念:独・ハルトマン(ライプチッヒ学派)、2009年

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“コオーディネーション”にかかわる7つのカテゴ

リー(ハルトマン:2009)

“インテグレイション(統合)”という概念も

しかしこのモデルには“エネルギー供給系”が入っていない・・?

「系」の外側は入れない・・?